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当時、アストールは既に人としてはクェンタンと名乗っていた。
主と同様、凄惨な拷問を受け消耗しきっていた彼奴が地下室を脱出し得、主の救出に向かうことができたのは、終に“魔女”を火刑に伏すという段に於いて拷問吏に油断があったからに他ならない。
主の身は町外れに設営された火刑台に既に運ばれ、街衢は深閑としていた。
肉を裂き骨に直接食いこませられていた縛めを己の爪で肉を裂きながら漸く外し得たアストールは、拷問吏を喰らい僅かに己が身を癒した。
未だ疵が癒えきらぬ四肢を叱咤し、やっとの思いで火刑台に辿り着いたアストールが見たものは、酸鼻を極める拷問を更に凌駕する絶望だった。
其処でアストールが何人斬ったかは到底数えきれぬ。
襲い来る兵士を片っ端から叩き斬る彼奴の貌は憤悶に歪み、将に悪鬼羅刹さながらだった。切って斬って、伐り倒し、血脂で斬れなくなった剣を捨て去ってはまた新たな剣を取る。
劫火が柱の如く突き立ち主を焼く中、アストールにとっては寸刻の猶予もなかったろう。
壮絶な唸り声と共に終に呪わしき十字架を引き倒した時――
――麗しき姿の面影は微塵もなく、その肉体は皮膚ばかりか筋肉の殆どまでもが焼き尽くされていた。
その時のアストールの嗟歎は想像に難くない。
――――
槍衾に刺し貫かれながらも、漸く囲みを脱したアストールが最後に逃げ込んだのは小邑の教会だったという。
アストールは己の血を主の肉体に注ぎ、己と主の恢復を待ちながらと脱出の機会を窺っていた。
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却説――
そこから先の事は、アストールも己も正確なことは与り知らぬのだった。
教会に火が放たれ、アストールは奮戦虚しく捕らわれの身となり主と生き別れになってしまったからだ。
後に様々に聞いた話を縒り集めたところでは、一説では、主はその折には焼失せしものと見なされ追っ手の追求を逃れ得たという。
地下室の霊廟にありて、後日、小邑を占拠したイングランド兵により発見されることとなった。その折、身動きすること叶わなかった主は“腐らぬ死体”つまり“聖遺物”とみなされ戦利品として本国に鹵獲されたらしい。
イングランドのとある僧院にて、一人の修行僧が不注意にも主の顔に触れ――
――それが、主の覚醒の切欠となった。
他の説でも、最初は死体と誤認されたという類の話が最も多い。
死体を集めて埋めようとしたところ、恐らくは他の死体を喰らい幾分恢復した主が逃げおおせることができたとも、その後やはり捕虜となったとも混乱した折に又聞きで知り得たこと故にかなり模糊としている。
孰れ、王位継承の争乱に当時介入していたイングランド兵の撤収に併せて主は海を渡ったと伝え聞き、クェンタンはこの地へ至ったという次第であった。
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かのひとの従僕はその時、驚駭の剰り、一瞬喉を詰まらせた。
騎士達を解散させるとの言葉に、絶望に目の前が昏くなる。
やがて、哀願するように懇請した。
「エロイーズ様、お隠れになりますな。
太陽がなくなれば世界は死に絶えます。
光を求め天蓋へ手を差し伸べる樹が、歉りぬと互いに陽の光を奪い合うことがあるでしょうか。」
否。それが麗句でありイデアでしかないことを、従者自身がよくわかっていた。だが、それ故にこそ「分」を辨えるべく己に枷をかけた。
己は檻を求めたのだ――
そのひとなくば生きてはいけぬが故に。
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“檻”……
其処から自由になるのだろうか――
[私は、昏闇の中に暗愁の息を吐く。
凛冽とした大気に、喉が*凍えた*]
[ウェンディの様な子どもが、檻に何度もやってくると言うのは、セシリアにとっても不可思議な出来事だった。>>80]
[悲しいも何も。]
[悪い事も罰も何も。]
[厳密には生命の有り様そのものが人間と異なっているのだが、人肉を喰うと言うのは、彼女達に取って、日々の食事、肉、パンを求める事と何ら変わらない。
食餌に関して言うならば、必要以上に狩る事もない。
檻に拘束され、聖銀と傷の再生による摩耗がなければ、実のところ、暫く人肉を摂取する必要も無かった。セシリアに潜んだ「彼女」は13番目の月の夜から満月にかけて意識を取り戻し、狩りを行う事が多かったが、それも毎月の行為であるわけでも無かった。
ネリーはセシリアが喉笛を噛み切らなくとも、半刻〜3日以内に絶命しただろう。頭部から出血している場合、その場所の傷が浅く見えても死亡に至るケースが多い。ネリーに致命傷を与えたのは、グレンをはじめとする村人達──複数の人間の悪意、社会の弱者対する暴力によるものではなかったか。
かと言って、ウェンディに対して、超自然的なものに近く同時に人間でもある、己の有り様を説明する必然性は特に感じられなかった。]
[アーヴァイン]
[アーノルド]
[ルーサー]
[──檻──に関わった者達が死んで行った事で、聖銀の拘束力は徐々に弱くなりつつある事に気付いた。鎖でがんじがらめにされても、以前ほどの苦痛を感じない。
彼女は何故か少女の人形遊びに任せた。
年端のいかぬ少女に命令され、四苦八苦して鎖を巻く兵士の姿は傍からみて滑稽である、と冷めたことを考えながらも、己の身に拘束と罰を求めていた──。]
[────罰。]
[ひとつは己の弱さについて。
不完全な人狼を作りだしてしまうに至る状況。
その人狼を救い導く事も出来ぬ──至らなさ。]
[呪われた村][漆黒の][ナイフ][正しき覚醒に至らぬ屍体]
[カミーラは、人狼は群れ、仲間で行動すると村人に説明していた様だが、彼女にその様な「仲間」は居ない。世間に流布する人狼の噂を信じたまま、カミーラは死してしまった様に、彼女は思う。]
[処刑されたエロイーズの遺体は、多量の金貨と引替に悪魔を崇拝する異端者へ売られたとも言われる。火刑後に或いは火刑に処される前、水の審判を受けた後の仮死状態の死体が擦り替えられ売却されたとも、言われる。
彼女自身が呪われた状態で復活する事になったのは、復活の際何が執り行なわれていた所為で、あの様な状態で目覚める事になったのか、復活した彼女自身にも、分かってはいない。
ただ、カミーラを巻き込んでしまったのは確かである。]
[ひとつはやはり、ジェーンに対して罪悪感。
彼女の愛娘セシリアの身体を傷付けた事についての罰を含めて。セシリアがあの様な形で処女でなくなってしまったのは、彼女の所為だ──。]
[焼けた鉄棒][屈辱的な状況での][ケロイド][裂傷]
……………ぁあ。
[ノーマンよりもそれより以前に、セシリアは村の少年と一度関係を持っている。──誘惑したのはセシリアから。少年──ラッセルは既に人狼事件の被害者として葬られている。]
それは、私の──、
新月の夜毎に見る悪夢、陰惨な淫夢──過去の拷問の記憶によって、セシリア自身が、清らかな乙女で有る事に堪え難くなってしまったからだ。
[ミッキーの「誘惑」の件関してにも、彼女が抱く罪悪感が影響を及ぼしていると言う点で、類似性があると思われる。]
[ウェンディは、セシリアの躯にどのような興味を抱いているのか。聖鎖が、しろくまるい乳房の形状を強調する様に周囲をぐるりとかこって巻かれた。
外気に曝されていた冷たい鎖に縛られて、衣類の内側で乳房がぴんと張る。それを隠す事が出来ない不自由な立ち姿勢に屈辱を感じる。
目線を僅かに下ろしただけで分かるその光景に、彼女は己自身の身に穢れを感じて、睫毛を震わせながら息を零した。]
[乳房は重たげに張りつめ、内側から熱を孕み、彼女をさいなむ。
躯の芯がぐらぐらと揺れ──熱の奔流を止めて欲しくて、触れる手が欲しくなる。]
(──小さな少女の手ではなく。)
(大きなあの掌で、包まれたなら。)
(痛みなら。触れるものが、彼のその指先や犬歯であるならば。)
[そう言えば、この後も尋問が続くのならば。
クインジーが戻って来るのでは無いだろうか──。
彼に彼自身の事を聞いてみたいと、今にしてはじめて思ったものの、この姿で聞くことにも、彼の手で鎖を解かれ拘束され直す事にも躊躇い、羞恥心を感じた。]
嗚呼、そんな事よりも。
此処に──私が檻の様な場所にとどまっていてはいけない。
はやく、束縛を断ち切り、檻の外へ出なくては。
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