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「分相応な人物―」か……
[クインジーはややその言葉は謙遜が過ぎるのではないかと思ったのか首を傾げた。]
貴女は……ギャドスン先生がそのように扱う様を見ても、淑女なのでね。
一体どんな相手が伴侶たりえたものか
不思議に思えたものだが――
――不躾なことを聞いた。
[そのように詫び、多くを問わなかった]
罪――
[ルーサーなら、神の教えに従い、戒律と神の定めた大罪について話しただろうか。
数々の異端審問に携わった過去を持つクインジーはただ――
法と社会が定めるものだ――と云った]
ジェーンは見定めるつもりはないか?
“セシリア”の行く末を。
どのように彼女から真実が引き出され、それが彼女を何処へ導くかを。
[ウェンディはパンやお肉に手をつけている。大柄なクインジーの食事量とは全く異なる。あっと言う間にウェンディはお腹いっぱいになった。 それでも美味しくいただいた。]
もうお腹いっぱいだわ。ごちそうさま。
他にたってと希望者が居なければ、俺はセシリアを再び尋問することだろう。
“人狼”がすべて、処刑台に送られるその日まで……。
―宿坊―
[炉の中の火を見つめる、クインジーの陰影が揺らめいていた。
やがて、ウェンディは宿坊を出て自宅へと向かう。
姑く時を経て、男は静かにその場を後にした。]
──檻──
[ジェーンと共に宿坊へ食事に向かうと言うクインジーの言葉。
母が人間らしく過ごす事が出来そうだと言う安堵と、存在を線引きされた事に対して、胸を突かれた様な痛みを感じた。]
(異端尋問官って、何ですか。)
(何も言われたくない。)
(──教会に行くべき日に、あるいは、偶然村のどこかで出会った時に。
私をみてた事がありませんか?)
[思わず喉に出掛った言葉をのみこむ。
尋問の具体的行為、今の様に現実を突き付ける類の鋭い言葉、着替えや手当てと言った一時的な安堵を与える事で、逆に感じさせられる胸苦しさ。
多くの痛みを与えるクインジーの存在が、いつの間にか大きくなっている事に、戸惑う。]
[彼の事が知りたかった。
そして、彼のすべてを欲している自分自身がおそろしかった。
古き盟約が失われていなかったとは言えども、今の自分には彼に与えるものが何も無いと感じていた。
彼等の騎士団は、とうに滅びて存在しない。
そして彼女は今、檻の中の囚人──枷に繋がれたあわれな獣。彼の手助け無しには、着替えや食事はおろか、身じろぎすらもと言うふがいなさ。
────それなのに。]
(否、何もかもを失っているから。
彼にすがりついてしまいたいのかもしれない。)
[かつて、予言の声の波紋から騎士団の未来にきなくさい気配が漂いはじめた時期に。
彼女の従僕のひとり──鼻筋が猛禽類を思わせる──に、己は騎士達のためには、騎士団を解散させ、修道女となるのがよいのではなかろうかと、相談した事があった。
三人目の婚約者(顔もあわせた事がない)に辟易していた事、彼女に対する口がさのない噂。
それに何より、すべての騎士達に平等に接する事が彼女の中で困難になりつつあった事。
神の花嫁になってしまえば──。]
(私は弱い。かつても、今も。
今はもっと────。)
――――――――――――――――
目の前に立ちふさがった大きな影に、黒い外套の男は戦いた。
「何方に使いを?」
嗄れた声が男に問う。何故その事を――外套の男は眼鏡を直し、相手の表情を窺い知ろうとするように目を眇める。
目の前の男の向こうでは日昃の陽が山の稜線に消えゆき、その輪郭を橙色の赫きで縁取っていた。
「どこだっていいだろう! 私は君には用はない――」
その紳士の声に感情の色が混じり、稍上擦り震えていたのは男の指摘した事柄への後ろめたさの所以であっただろうか。
否。或いは既に、この男の怖ろしさに気づいていたが故にか。須臾の間とてこの男と差し向かいであることは危険であると本能が告げていた。
「……残念ながら、私には用がある」
眼窩に溜まった闇の中で、右の睛眸だけが冷たく乾いた光を湛えていた。仄日の中で世界の色が失われゆく。
周囲の音が消えた。
「貴方を異端、背教者として告発する」
影の輪郭が緩やかに持ち上がる。長大にして魁偉なその男の影の中へ、呑み込まれゆくようだった。遠く稜線にかかっていた陽が、今まさに消えゆこうとしている。
闇が広がる。
声にならない呟きに眼鏡の男の喉が戦慄いた。
影の中。擡げられた手の中で、銀の燦めきが蛇のようにうねる。その、積み重ねられた銀貨が緩りと崩れ落ちるような玲瓏な響きが、叫喚に彩られた死の音曲の前奏となった。
――――――
――――――
ヴィンセント・ギャドスン医師の遺体を森の中で最初に発見したのは、森の中の小屋にて生活を営むマイルズなる樽製造人であったと現地を後に訪れたシトー会の修道士の巡行録には記されている。
――――
四肢が引き千切られ、胴体は臓器を顕わにするように綺麗に裂かれていた。内臓は腑分けするように叮嚀に並べられ、一つ一つの臓器には医師所有の医学書の該当ページが針で止められていたという。
残念ながら、マイルズが発見した折には野犬が既に食い散らかしており、幾つかの部位は欠損していた。
医師の医学書はその断片を除いて、すぐ脇で、彼の人物の所持していた私物と共に焼却されていた。
外套には何故か鉛が詰め込まれていたとされるが、当然此の人物の私物ではない。
「外は金を施したれば、みる目眩暈くばかりなれども、内はみな鉛にて、その重きに比ぶればフェデリーゴの着せしは藁なり」
此村より一マイル半ほど南西の野逕脇の草群の中で頸骨を骨折したと思しき男性の遺体が発見されるのは、それから数日後の事。発見時には鴉がたかり、眼球は欠損していた。
遺体の腐敗の程度から、医師の死亡の同日前後の出来事と推定されるためここに附記する。
近辺で所有者の明らかでない乗用馬が発見されたことから、落馬による事故死と考えるのが妥当であろう。医師の死との因果関係は不明である。
――――
[婬蕩な妖婦であるとかのひとに噂が立った時、私はそれが剰りに慮外の事にて寧ろ秋毫の感興も催さずにいた。
私の知る主は凛として気高く、牢乎にして崩れたところのない人であった。それでいて辺幅を脩めぬ寛厚な人である。
己の則を過つ人ではない。
唯、誼を結ぶ者の心を惹きつけずにはおれぬ魅力は、その本質に於いて罪なのだろうか。強いて云うなれば、主の瑕疵とも云えぬ事柄にしか由を見いだせぬ己であった。]
[寧ろ――と私は思う。
かのひとのお側に仕え、姦邪の想いに心亂れる己に恥じ入るばかりだった。
主は常に変わることなく清きひとだ。
魔女を作り上げるのは邪な判事であり、それこそが己の悪しき稟性であると自照していた。]
『もっと己が大きく強くあれば――』
[右掌の痛みと熱を改めて感じる。その疵を人狼の力を用いて癒すことはなかった。
私自身の愚かさ、狷介の罪を忘れ得ぬように。]
「私が失われていた時間──」
「どうやって生きてきた?」
[主の呼びかけが耳に届く。]
太陽の姿が消えた闇夜のこと。
そう多くは語るべきことはありません……
[やや寂寞とした響きの声が答える。
私はその時のことを思い出していた――]
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