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[重い音を立てて、刃の一部が床に喰い込んだ。]
矢張り、鍛錬を積んだ人の様には行かないもんだな……。
まあ。これでも目的は果たしたか。
そうですよ。枚坂さん。
それは死人だ。完璧な。
なら、首を切られる位、今更気にしないでしょうよ。
[枚坂に、冷たい視線を向けた。]
……妄念とは恐ろしいものだ。
君は戦場であまりにおぞましい様を見すぎたんじゃないか?
彼には安らかな眠りを向かえる権利と資格があっただろうに……
[ゆらりとたちあがる。瞳の奥で青白い火がともった。]
首を切られて、彼が痛みを感じるとでも?
もし化けて出るなら、もう一度私が切ってやりますよ。
情を乱されるとしたら、それは死んでる者じゃなく、生きてる者の方だ。
貴方は、この程度じゃ取り乱さない人だと思っていたんだがね。
倒れて、息をしなくなればそれで仕舞か!?
人にはその躰がある。
姿が残されている。
愛する人、
ゆかりのある者が――
いとおしむべきその形が。
無惨なかたちにされた彼の姿を――彼が知っている人が見ればどう思う!
“死ぬ”ということは、息をしなくなることじゃない。
心臓が止まることでもない。
生者がその者を“死者”だと切り捨てる時なんだ!
彼は、天賀谷さんを死なせたくないと思っていた。
その彼を惜しまなかったなら――
彼は浮かばれやしない。
[私は悲痛な声を絞り出す。]
いや……感情的になってすまなかった。
[息を吐き、じっと思いをかみしめた。]
だがね、ああ……
必要のないことだよ。
言ったように、彼は屍鬼じゃないんだ。
そして、屍鬼を滅ぼしてここから出るなら、彼が屍鬼として甦ることなんて考える必要などないことなのだから……ね。
貴方は理性的な判断をしている人のようだ。
それなら、私の言うことも理解してもらえるだろう?
残念ながら、私は彼を、そこまで知らないんですよ。
屍鬼に殺された者が本当に屍鬼に成るのかも、そうだとして、その過程にどれだけ時間が掛かる物なのかもね。
となれば、必要かも知れんことは、やって置くだけだ。
[部屋にあった、既に血に汚れたシーツで太刀を拭い、床の鞘を拾って納めた。]
確かに必要なことは、ある。
伝染病の予防のために、遺体を火葬に付したように。
――そうだね。
だが、これは必要なことではないさ……
[望月青年にしても、この目の前の雲井青年にしても、なにをそこまで恐れているのか、理解できないまま呟いた。]
枚坂さん。
そもそも今、何時だと思います?
天賀谷が死んだのは朝だった筈だ。
それから随分どたばたした。
私の腕時計は、もう昼をとっくに回ってる。
だが窓から見るとね、雲に隠れてはいるが、太陽は東側にあるように見える。
此処じゃ、時間と謂う観念は、無効なのかも知れませんよ。
──二階/水鏡前──
「夜桜さん、仁科――美蘭さん、それに翠さんも。
こんなところで立ち話をしていても、寒々しいばかりだ。
部屋で休むか、食堂でなにか食べたらどうだろうね。
せめて、お茶でも呑んで温まって。」
[親切にか、それとも、何処か場違いにも思える枚坂の言葉を受けた女中が、熱いお茶と握り飯をつくって持ってきた。夜桜は、そっと左右に頭を振り、碧や仁科達へと渡すように。
夜桜は、女中に耳打ちをする。
ぎょっとしたような表情をしていたが、程なくして女中は夜桜に頼まれたものを布に包み持ってきた。だが、その表情は蒼白であり、酸欠の様に口をパクパクとさせていた。夜桜は、倒れこむように縋りついてきた同僚から、布包みを受け取ると懐へとおさめた。]
「──藤峰さまのお名前が……!!!」
[取り乱している]
「藤峰さまのお名前の横に……屍鬼殺害の──血文字がぁぁ」
時間……
……ああ、そうだねぇ……
まるでずっと長い悪夢の中を彷徨っているようだ。
[雲井の言うように、外には超現実的絵画のような風景が広がっている。
私自身も少し休息の時間が必要なのだろうか、と思いながら。]
雲井さん、貴方も一服したらどうかな。
私は少し、食堂にでも行ってみるよ。
―三階自室―
ん……。
[どれほど眠っていたのか。
この世界に置いて時間という観念は無意味なのかも知れなかった。
……泥のような眠りから唐突に意識が浮かび上がる]
──二階/水鏡前──
[施波の姿は見止められないが、恐らくは使用人達は一同慄いているだろう。自分達の名が血文字の中になくとも、同じく天賀谷十三の元で働いていた男が、奇怪な血の滲みで屍鬼より殺されたと告知されたのだから。]
──。
[目を閉じ、また開けた時、既に夜桜の足は三階へと向いていた。
うろたえる同僚を尻目に──…]
―三階/天賀谷自室―
[枚坂が去ってから、藤峰の亡骸を覆うように、その汚れたシーツを掛けた。
それが唯一の心遣いだとでも謂う様に。]
悪夢ね。
夢なら、醒めれば全部無かった事に出来るんだが……。
これは悪夢じゃ無い。
引き返す道も、やり直す機会も、無いんだよ。
―回想―
[由良とコルネールの首を井戸水で清め、己も、血に染まった身体に水をかけた。
刀に水をかけ、そっと懐紙で拭い取る]
『二人を斬って、欠けはおろか曇りもない、か……』
[刀身は鏡のように澄んでいた。乱れのないまっすぐな刃紋が日と月の光を同時に受けて煌いている]
『俺は、こんなふうに澄んでいられるだろうか』
[目を伏せて、刀を鞘に収める。
清めた二つの首を真新しいさらしに包んで抱きかかえた]
……人の、首……。
[井戸を覗き込んで少し目を細めた]
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