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―広場/檻の前―
[クインジーは濡れるに任せ、雨の降りしきる中広場に佇んでいた。
檻の方を向いてはいたが、眼差しは遥か遠く、辿り着くことのできぬ彼方へ旅をしているかのように茫漠としていた。]
ジェーン。俺はあんたが――
[娘をなんとしても助けたい――そう思っていると思ってたんだ、とその唇は呟いていただろうか。
だからこそ、ノーマンから受けた疵をおしてまでも証言に赴いたのではなかったのか。人狼審問の審議を始めた直後の、証言台の凛とした彼女の言葉を思った。]
俺は何をしたかったんだか……
[冷笑が口元に浮かぶ。
一度人狼や魔女の疑いをかけられたものが、そこから解放されることなどあり得ぬということなどよく知っていた筈ではなかったのか。
ならばこそ、その手続きの一つ一つを己自身の手で行い、結末を見届けようとした。
その時に万が一。万が一何かが――]
[セシリアは人狼ではなかったかもしれない――その証を見いだし得るかもしれない。
なにかありえぬことが起きて、己がとっくに知っているはずの現実を覆してくれることを。堰が決壊するように、充ちた強い何かが見たことのない場所へと己を至らしめることを――
それらをあり得ぬこと、とそれまで諦観に凍り付いていた己の心に、その時慥かに、ジェーンの言葉は叱咤するかのように響いた。
それは、晦暗に閉ざされた凍土に差した一筋の陽光のように感じられた。
それが――]
[クインジーは、人の間で生きていくため正しくそうあるべきだと彼女に宿坊で諭したことを思い出す。
自分がそうすべきだと説いたにも関わらず、彼女がその道を選択した時に己に生じた感情をひどく理不尽なものと感じながら、苦笑した。]
馬鹿だ、俺は――
それが当たり前で……
――そんな光景はいくらも見てきたというのに。
[逆巻く相矛盾する感情の暴風が遠のいた時、重い倦怠が心に纏い付いていた。]
『俺はどうする…… …どうしたいんだ……』
[檻を眺めていたクインジーはその時、閃光が瞬く空を仰いだ。
直後、轟音が周囲を圧した]
──檻──
[激しい雨が檻の周囲に青灰色の重い天幕を張った様だった。
湿気を多く含んだつめたい風が時折、彼女の髪を嬲る。
セシリアは、檻からは様子を伺い知る事が出来ない、尋問の行われているであろう詰め所を、何かに耐える様にじっと見つめていた。
ガリッと言う嫌な音。
抱えた膝。足枷の近くの皮膚を爪で削る音。
聖銀で出来た首輪。それに手枷と、足枷の周囲の変色した皮膚。
皮膚の内側の感覚。
何も起きない時間、じっとしていると、内側から沸き上がる疼痛、さまざまな記憶が堪え難い。それをやり過ごす為に、自らの爪で傷をつけ、血を流している。]
―水車小屋/教会崩落の少し後―
[落雷後の教会から貴重品を持ち出す等の事後処理の後、クインジーは私物を置いている水車小屋の詰め所に戻り、服を着替えた。
水車を修理するための道具が仕舞ってある物入れで、鎖を探す。
準備を整えると、厚手の外套を羽織り外へ出た。
雨は外套の縁を滑り落ちてゆく。]
『今は――あいつの真実を……』
[迷盲の中で道筋を見いだすために。
今必要なことは、最初の原点に立ち至り、人狼たる告発を受けたセシリアを今一度見定めることのように思われた。]
[カミーラの動きが目の前で不自然に止まった。
『彼女』は、爪で皮膚を突き刺す動作を繰り返しながら、カミーラをじっと観察した。
ナイフにこびり付いた臭いで、概要は理解したものの。まだ、カミーラが、あの村の何処で何をしていて、どうやって人狼になったのか──『彼女』にもまだ思い出せていない記憶が有る様に思う。]
(彼女は、人狼として不完全なのだろうか──。)
―檻―
少し……話がしたい
[眉を顰めるセシリアに、言葉をかけた。
外套を羽織り、肩からは布袋を下げている。
衛士に声をかけ、鍵を開けてもらう]
ああ。そうだ。
もしかしたら、多少長くなるかもしれない。
俺が逃がすかどうか心配なら、檻に鍵をかけていってくれ。
[衛士にそう頼み、その代償として枷の鍵を借りると檻の中へと入った。衛士は檻の鍵をかけ、何度も入り口を確認すると詰め所の中へと消えた。]
[セシリアの拘束は長きにわたり、その細い四肢に不似合いな無骨な枷は繊細で柔らかな肌を嘖んでいた。
足首近くの肌が疵つき、血が滲んでいる。
痛々しい姿に、眉を蹙めながら屈み込んだ。]
……どうした。
[足首をとった]
[足枷の近くの皮膚を抉る、その動作を止める。
ゆっくりと瞬きをすると、クインジーを見上げ口元だけに淡い笑みを漂わせた。]
──…話。長くなるかもしれないとは。
一体、何を…。
[雨は小降りになってきたものの、肌寒さは変わらない。
檻の周囲に人影はまばらだ。ほとんど居ないと言っても良い。
教会の火事が騒ぎになっている所為かもしれない。]
少し……な。
心配か?
人狼――なんだろう?
人狼なら、俺を殺すくらい造作ないはずだ。
――いや……
[セシリアの縛めに目を落とす。]
それがあると力が出ないのか?
―檻の前―
[暫くすると、クインジーが檻の所へ戻ってくるのを目撃する。別の場所で何かを終えた後なのだろうか。
カミーラは、彼が檻の中へ入っていき、檻の中の人狼とやりとりをしている所を見ている。]
――なあ。
本当に、檻の外に二人も人狼がいるのか?
[話しかけながら、衛士から借りた鍵で聖銀の足枷を外す。
青黒く変色した肌を、痛々しく感じながらそっと撫でる。]
お前はなにか悪いことをしたのか?
人間を喰らうのか?
あの調書に書かれている以外にも――なにかを――
[ノーマンの腕の肉を食いちぎったのは事実として慥かな事柄だった。だが、一瞬見えた牙は、火傷の激痛に激盪していた脳髄が見せた幻覚ではないか。或いは混乱した我々の集団幻想ではなかったのかと、クインジーは未だに信じ切れずにいた。]
牙はあるのか?
瞳は――
[そして、黄金色の瞳を覗き込み、瞬きをした。
不思議で――しかし心誘われる色だった]
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