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[ヴィンセント先生の意識が祭壇の方向に向いた。幾ばくかの時間の余裕ができた。ウェンディは素早くしゃがみこみ、箱を目で丹念に調べた。中までは火の影響を受けていないように思われた。
ウェンディはポケットからハンカチ──布状のものを取り出して直接触らないようにしながら、つつくように箱を開けた。]
あ゛あ゛あ゛ああぁぁぁァァァ……………ッ!
[ネリーの絶叫が響く。
それは村人に殴られたが故か、狼の檻に投げ込まれた故か、或いは――人狼の犠牲になったとかいうカミーラが、彼女を見捨てたが故か――]
[瓦礫の中から司祭の遺骸を掘り出す作業は、時間がかかりそうだった。
どんな偶然か、遺骸の上半身は教会の十字架に貫かれていたのだ。
燃え残った法衣の一部から、それがたしかに司祭だったのだと確認すると、ヴィンセントはその作業が終わるのを見守らずに聖堂を後にした。
先程会話を交わした少女がどこに行ったのかまで、注意することはなく。]
[怜悧な切っ先は、閃光としか知覚されない。
瞬時に全てを溶融する太陽の光が目に飛び込んできたようだった。身を引き裂くような劇痛が駆け抜け、全身がビクビクと痙攣する。]
ァアアァアアア――
[喉を破裂させんばかりの絶叫が響く。
ガクガクと躰が揺れ、逆流した血潮に脳が激盪した。]
オレぁ……人間なンかェ?
人間なンかェ!?
………いや、オレは人間じゃねェ。
人間に生まれながらよォ……
人間さまァに殴られ、ひでェ言葉あびせられてよォ……
家畜よりも馬鹿にされたモンだェ……!
家畜ァ肉になる。肉になりゃァ人間が食うさ。
だが人間は、人間を食わねェ。
食わねェ代わりに、オレを家畜よりも下に見る。
人間たァ………何モンだェ。
この痛みをよォ……
この血をよォ……
食いちぎられた肉をよォ……
オレは………ひきずって、こン暗ェ闇を歩くんだ………!
[グレンをはじめとした村の男達が立ち去る。
カミーラはその後、一言ぼやく。]
これから先、この村は一体どうなるのだろうか…
[住人達がやったこの行為によって光が見えてくるのか、それとも滅びへのカウントダウンがまた1歩進むのかは、今はまだ分からない。
だが、どちらにしろ村の惨劇は今、本格的な幕を開けたのだ!]
これは…針だわ。けっこう大きそう。
[ウェンディは匂いを嗅いだりする。直接鼻を近づけると強烈な臭気だと昏倒しそうになるので、手で手繰り寄せながら。どうやら錆びてはいないようだ。]
たぶん、これが聖銀じゃないかしら。こう、普通の鉄とは違う輝きがあるわ。
[神父様が尋問の道具に使用するためのものなのか。
どちらにせよ、ウェンディにとっては都合の良さそうなものであった。他の大人に見られてはまずいと思い、素早く布に包み、自分のポケットに仕舞いこんだ。]
[全ての知覚を圧倒し、全身を隈無く走るその痛みは主の与えしもの。
一瞬にして正気を喪うほどの痛みに魂が揺さぶられる。
それは新たな誓いの証。
劇痛は今は圧倒的な快楽となって人たる者の意識を押し流そうとしていた]
ヴィンセント先生。
ヴィンセント先生、いませんか? 神父様はいましたか?
[ようやく止まっている足を動かしはじめ、祭壇の方向へ歩いていく。]
オレがもし狼っ子だったら、どんなにシアワセだったか……!
オレが狼っ子ならばよォ、腹ン中で人間を呪って、馬鹿にできンべよ……
………だが、オレぁ人間だ。
オレに唾吐く人間に尻尾振ってへえこらしねェと、オレはメシも食えず、雨風しのげる住む場所もねェ。
だから、オレぁ人間に従うしかねェ………
オレを馬鹿にする人間に、従うしかねェ………!
オレぁ、化けモンのくせに人間様よりシアワセな、狼っ子が憎い………
そして………
オレを見下し、踏み台にする、人間が憎い……!
[あまりの痛みに、意識を喪いかけていたのは一瞬だった。
赫怒と興奮が魂を震わせ、尋常ならざる力となって込み上げてくる。]
ぐぉおおおお!!!
[叫びと共に、眼窩に突き立った少女の右腕に左手が叩きつけられた。]
[この時、檻の方から叫び声が聞こえてくる。]
…檻の方へ、戻るか…!
[カミーラは、今いる場所から離れて急いで檻へ向かう。]
[彼女は、絶叫し痙攣する男の上に馬乗りになっている。
太腿でやさしく彼の胴を締めあげ、抉り取った左目を引き出しながら、残された男の右目を凝視している。]
[やがてウェンディは祭壇の中心部分に近づこうとしたが、その一歩手前で大人たちに行き先を阻まれた。]
「お嬢ちゃん、こんな所で何やってんだ!危ないからどいたどいた!」
[どうやってもこれ以上は進めてくれそうにない。ウェンディは無念にも諦めることにした。
その向こうにはヴィンセントが見た十字架があったのだが。]
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