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―アーチボルト家―
[目覚めたジェーンは、苦労しながら、また血が滲んだ衣服を代える事にした。脂肪によって柔らかく、或いはこの年齢に相応しく醜く弛んだ皮膚は、青黒く、浅黒く、褐色の色をもって内出血と裂傷の程度を示している。
すっかり年をとってしまったように、艶をなくした髪の毛。左目の下に疲れが現れている。
怪我の程度が酷い所には布(包帯)を代える。
服は落ち着いた色合いの蒼褪めた色だった。顔を隠すように白い布を被る。]
ゴホッ……。
[セシリアが居たからこそ、どんな仕打ちであっても、どんな痛みであっても、精神力だけで動いてきた。]
―アーチボルト家―
[どれくらい眺めたであろうか。
――ジェーンは重く、重たい体を引き摺り、扉を開けた。扉の前には、糞尿が撒かれている。
ジェーンは一本の木の棒を支えに、セシリアの檻へと向かう。普段なら簡単に歩ける道は、今や厳しい峠の道に程近い。そして、出来るだけ人目を避けて行かねば、己の身が危うくなるのだ。
長い長い長い長い時間をかけて、奇跡のように、無事にジェーンは檻の近くへと現れる事が出来た。]
―聖銀の檻へ―
──檻・村長死亡の二日後──
[セシリアは昨日のネリーの呟きを思い出していた。
──果たして、不幸とはなんであろうか?
幸福とは、生きて行く意味とは。
セシリアは、自分へでは無い投石が、外れた塀にあたり弾ける音を聞く。遠くから檻へと近付いて来るあの姿は──。
…ジェーン・アーチボルド。]
[ジェーンは傍らの見張り役の兵士に開けてくれるように頼んだ。胡散臭そうに、そして、じろじろと無遠慮に体を見回す。]
私が狼なのでしたら……一緒に閉じ込めれば宜しいでしょうし、会話からボロが出るかもしれませんわよ…。
[失うものがないもの特有の口調で告げた。
見張り役はしぶしぶといった感じで鍵を開けると、後ろへと下がる。
ふと、見張り役は空を見上げる。雲行きが怪しい。雨が降るかもしれない、と檻横の幄舎に移動する。ここからでも話は聞けるだろう。]
[俄の曇天。
暗い空の下、はじめて檻の中で真正面からジェーンに向き合った。此処で一体、何を言えば良いのだろう──。]
…お母さん。
[立っているのもやっと、という態で見つめていたが、少女の呟きに母親は、ただ静かに微笑んだ。]
…セシリア、一度だけ、抱きしめていいかしら。
[セシリアは拘束された状況で出来るだけ、ジェーンと向かい合いやすい姿勢、目線の合うようにしようとする。金色のまま、元へは変化しない瞳の色。
ジェーンの言葉に、セシリアはジェーンの言葉に震えながら頷いた。]
[いまだ、セシリアとして人間の様な意識を持っている事を咎めもせず、それでも『彼女』を救う為に、命を課している己の従僕。]
お母さんには、幸福に──生きていて欲しいけれど。
[ヴィンセントが彼女を連れて、村を出てくれれば──と思う。
──…けれども、未練は、捨ててしまわなくては『彼女』が生き延びる事はむずかしいのではないだろうか。アーヴァインに捕まった様に──また。
…彼が捕えられ殺される事は──もっとも堪え難い。]
[頷きに、ジェーンは一歩一歩近づく。
金色の瞳にビクリとしたようであり、一瞬視線が揺らぐが、またセシリアの顔を見て、拘束された少女を抱きしめようとした。傷ついた右目の血臭――。]
………。
[匂いもセシリアのままだった。
柔らかい猫っ毛の髪が、左掌に包まれる。ほっそりとした、少女の体。]
お尋ね者 クインジーは、見習いメイド ネリー を投票先に選びました。
[眼鏡はもうジェーンの手に渡した。
セシリア・アーチボルドはもう居ないのだと言って。
今、彼女の手足を拘束する枷と鎖、聖銀の檻──。
母親はセシリアを檻から出したがっていたと言うのに、皮肉な事に、この場所から出る事が叶い、力を取り戻したなら。
セシリアは『彼女』に取り込まれ──『彼女』の一部として溶けて消え失せてしまうだろう。]
[びくりとされた事に、胸の痛みを感じる。
けれども──…温かい。
ふれたジェーンの豊かな身体。たゆたう様な母のぬくもり。
過酷な状況で酷い傷を負いながらも、変わらぬ。
血臭に気付き。
セシリアはジェーンの傷にさわらぬ様に、右目の周囲の肌にそっと軽いキスをした。]
[セシリアの変わらぬ仕草に。その触れるようなキスに、少しだけ、口元を綻ばせる。
ジェーンは強く強く、セシリアを抱きしめ。
頬に、一度だけキスをした。
一度だけ。]
牧師 ルーサーは、ちんぴら ノーマン を能力(守る)の対象に選びました。
[頬に触れる、日常の懐かしい習慣。
『彼女』がセシリアに乗り移ってからの時間、注がれてきた母親の愛情。──それが、深く、温かく、重く感じられた。
平凡な日常にあった頃の記憶が走馬灯の様に甦り。
ぎゅっと目を閉じる。けれども、彼女の有罪を示す書類に、名を書いた今は──]
……────。
[目を開いた。]
[壊れ物を扱うように、しかしやや名残惜しげにも、――ジェーンはセシリアから離れた。そして、彼女を見ながら話し始めた。]
貴方が、2年程前…でしょうか……言いつけを守らずに森へ行き、服を水浸しにして帰ってきた事がありましたね……。その時、貴方は川に落ちたと言っていたけれど――。
[呟くような声ではあるが、
幄舎に待機している兵士にも充分聞こえる声だ。]
そうではなかったのね……。
[菫色に近い碧眼が金色の瞳を見ている。]
[当時のセシリアには、家を抜け出し、森の川縁で読書をする習慣があった。夜の恐ろしい暗闇とは異なる──昼間の森。
気候が良ければおだやかですらあるその場所。
木漏れ日のやわらかな、その場所がセシリアのお気に入りだった。]
──…あの話を。
[ジェーンにセシリアの事が分からないはずが無い。]
…ずっと、それを。
この場所でお母さんが口にする瞬間が怖かった。
[唇同士を、くっと強く合わせ、]
心当たりがあるとすれば……それしかなかったわ……貴方がアーチボルト家で暮らしていた間、私はずっと――娘だと思っていました。
[しかし、首を振った。「いいえ」と。]
貴方はアーチボルトの娘です。
だから――あの眼鏡は、貴方のもの。
私にはもう、必要ありません。
[右手を振り上げ、セシリアの頬を平手打ちした。]
私は人間で……貴方は人狼……。
よく、お聞きなさい……、私は――人間だからこそ、貴方を守れない……守れません。
”ここ”にセシリア、貴方が”居よう”とも――っ!
[抑えようとも抑えきれない、体の震え。]
[蘇る。『彼女』にはまだ新しい記憶。そして「セシリア」の記憶。]
[こもれ日を背に菫色の瞳を見開いた、まだあとけない少女。]
[何時ものその場所。血まみれの「何か」。]
[黄金と淡い紫色が交錯し]
[草の上に何か転がる音]
[黒い影に少女の視界は覆われる。]
[白い喉だけを凝視する金の目][突き刺さる獣の牙の感触][聞きなれたくぐもった悲鳴]
[血の匂い][血の匂い][甘い][くちかけた]
[影はやがて少女の中に溶け込む。]
[セシリアは口内に人肉を味わった余韻が残っている事に気付く。]
[足元がふらついた。
日が傾く時刻に、母が待つ家に、セシリアは帰った。]
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