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…天賀谷様が迷わず逝けるよう首を落とされたことに対して、”ありがとう”と言える人だけが…真にあの方を思っていた人間だ。
そう思えた者だけが…
恐らくは彼の方を弔うに相応しいのだ。
そうとも俺は、弔いなどしない…するべきでない。
[...は立ち上がり、ゆるゆると部屋の出口へ向かう。
出てしまう前に一度立ち止まり、扉に手をかけ言う]
だからもう言わないでくれ、ひとりではないなどと。
…お医者様はきっと多くの死を見てきたろう。
軍におられた他の方々とて、それは同じ。
だが貧しい俺の故郷でだって、人一人死ぬることくらい、そう珍しいことでもなかったはずだ。
それなのにたかだか人一人、亡くなっただけでこうも心をかき乱されたのは…
ひとりではないなどと…その亡くなった一人がおれをひとりにしない唯一の人と、まともに顔も合わせぬくせして、手前勝手に心を寄せたからだ。
だからこそ、こうも辛いのだろう。
…だとしたら、夜桜さん。
こう思った方がずっと楽ではないか?
天賀谷様が亡くなっても、みな生きている。
ただし、それぞれにひとりで──たったひとりでだ。
そう思えば誰が死のうと、誰が殺されようと…いっそ殺してしまおうとも、もはや心を動かされるはずもない。
…そうして楽に心安く、そしてただただ自分が生きることだけ、考えていれば良いのだ。
[...は扉を開ける]
…睡眠薬や鎮静剤は必要ありません、枚坂先生。
ですがきっと先生の仰る通り、休むべきなのでしょう。
この中に人の肉を喰らう屍鬼が居るのなら、体力はある方が良いに決まっている…。
いつでも、自分だけは殺されぬよう身を守る力を…
…あるいは仁科さんの言っていた通り、それを倒すための力を、残しておく為にも。
藤峰さん。
あたしは、たかが一ヶ月やそこらの召使いに過ぎません。
親しみの篭もるやり取りもなければ、天賀谷さまへの愛情も、藤峰さんや仁科さん──ここにいる使用人の誰よりも薄くありましょう。
いいえ、弔いはあなたがしなければなりませんわ。
心凍りしは、心を堰き止め、何時の日か鉄砲水となりましょう。
[母親が子供を抱きしめるように、藤峰を胸元に抱いていた夜桜は、普段の何分もの一もない力で引き剥がされる事に抵抗しない。]
それに──
[夜桜は続ける]
あたしは、あのように泣けません。
流す心を持ちません。
[藤峰の眸へと夜桜は視線を合わせている。]
―書斎―
[禍々しい血の文字、屍鬼殺害と消された名。]
旦那様……。
[夜桜が去ったのにも気づかず、
立ち尽くした翠はゆるゆる首を振った。]
守る為に刀を取った筈なのに、
私は、……殺す為にこれを振るうのだろうか。
[唇を噛んだ。
ああ、それでも]
―――憎い。
[天賀谷を殺した屍鬼が。
瞳の底で炎が揺れた。]
『逃げないで下さいましな。』
[その言葉を、夜桜は飲み込む──。今の藤峰に届くかどうか解らず、また、今はそっとしておいた方がよいと思えた。]
人はひとりでありましょう。
そう、ひとりですわ。
ですが、ひとりで生きる事は叶いません。
それが、人の理。
ねェ、藤峰さん。
人は、鬼にも仏にもなれますけれど、それも他者あってのことと思いません?
[「この中に人の肉を喰らう屍鬼が居るのなら、体力はある方が良いに決まっている…。」
──「いつでも、自分だけは殺されぬよう身を守る力を…」
──「…あるいは仁科さんの言っていた通り、それを倒すための力を、残しておく為にも。」
今は、それでよい。
生きるためには、それでよい。]
──回想・3F自室→2F書斎──
これはまた……なんだっていうんだ、一体。
[書斎の壁には、自分を含めて14人の名が赤い文字で記されている。
天賀谷の名の下には、屍鬼殺害、と。居合わせた雲井と翠に問いかける。]
これが、ひとりでに、ですか。
どうせ、
一度は捨てられた命。
[独白。
翠は刀を構え直すと、血文字を今一度見遣る。]
旦那様、
伝承通りなのでしょう。
この中に居るのですね。
そして、抗う術を持った者も、此処に。
[居ない男へ問いかける。
夜桜の囁きを思い返し、]
『さつき様は――屍鬼ではない。』
[眼を細めた。
彼女は“そう”なのだろうか。
息を一つ吐く]
─3階客室(回想)─
[覚束無い足取りで扉に近付いたその時、突然扉が開け放たれた。
戸口に立っていたのは仁科だった。衣服はぐっしょりと濡れそぼっている上に、手や顔に一目で血と分かる赤い汚れに塗れている。
ぼんやりとした瞳が異様な姿を認めて、小さく首を傾げている暇に、仁科はあっという間に走り去った。
また一人、取り残された碧子であったが、仁科の登場が刺激となったのか、急速にその顔にしゃんとした意志が浮かんできた。]
『屍鬼は仲間を殺さない。
屍鬼が喰らうのは人だから。
けれど、人が人を殺すなら、
私は、私の務めを――』
[そこまで思案が及んだところで、男の声に振り向いた。]
……由良様。
[ひとりでに?問われ、頷いた]
はい。
私、この眼で確かに見ました。
この文字が描かれるところを。
[刀を手にした翠。]
『この女性にも、そういった心得が……。
天賀谷氏は屍鬼のことに関して本気だったという事か。』
[いまさらながらの実感。
ひとりでに描かれた事を翠の言で確認すると]
――そうですか。
ところで、その刀は?というか、あなたにも望月さんのような心得が?
……はい。
居合いを、少し。
[刀に視線を落としながら翠は答えた。]
と謂っても、
これは旦那様の刀の一つなのですけれどもね。
望月様のように、自分の刀を持っているわけでもありません。
[この部屋の中に入ったときの翠の眦を決した表情をふと思い出す。]
……翠さん、あなたもしかして、天賀谷さんを自分の手で解放しようと
……そう思われてそれを?
[そう尋ねる表情には、この極楽トンボに似つかわしくない色が浮かんでいる。]
刀をとりたいと謂った時、
天賀谷はことに喜んだ。
あの時は何故あのように喜んだのかなど良くわからなかったけれど。
『今なら分かる』
彼は屍鬼を斬る刀を集めていたのだ。
使い手が増えるのは喜ばしい事だったのだろう。
「翠は佳い子だね」
笑っていた。
―天賀谷私室―
「望月さま、ありがとうございました。」
[望月はぴくりと肩を震わせた。夜桜の声であった。しばらく息を詰めていたが、やがて、ほう、と吐き出す。
そのとき、確かに『荷は軽くなった』と感じたのだ]
[藤峰を慰めるように言葉をかける夜桜を見ている。そして、その腕の中から身を引き剥がそうとする藤峰を見ている]
[何一つ語るべき言葉を持たないままで]
『……俺は、何をしている』
もし、そういうことだったなら。
それから、今後そんなことを考えられるようだったら。
――――刀は使えませんが、俺で肩代わりさせてはもらえないでしょうか?
[しばし言いよどんだ後、そう言った]
アァ、苦しい。
…苦しい、苦しい。
[走り続けても、身体に纏い付く生臭く冷えた粘液から逃れるどころか、息苦しさは増して行く。何処へ行けば楽になるのか。]
『…一体、何が起きてるって言うんで。
此れも屍鬼の所為なのか──。』
……────。
[──…闇が、唐突に開けた。
ふと気付ば見慣れた書斎の書棚が見える。其れに重厚な木で出来た十三の書き机も。只、何故か上下が逆なのである。目の前にはシャンデリアが逆さまにアンティーク硝子独特の重たげな光を放っている。重力に反して。]
…何が、起きて。
[否、仁科が天井に立っていた。立っていると言うより、首だけが天井から突き出した形で、書斎を俯瞰していた。]
──三階・天賀谷の書斎(異時空)──
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