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[勿論、江原は天賀谷の首を刎ねるべきと考えていた。
平和とは犠牲の上に成り立つ、常に危ういものである。
その尊い犠牲に対して、情けとかいうものを
介在させたら物事が立ち行かなくなってしまう。
もしも、藤峰がこのまま抵抗を続けるのであれば、
江原は、藤峰の命を奪うことすら考えていた。]
……………ん。
[仁科が、江原の左腕を引っ張る。激痛が走り、
江原の顔が、苦悶に歪む。]
……構わん!向かうから先に行け!
[仁科から詳しい話を聞いた後、額から噴出す汗を拭く。]
……やれやれ。
[苦痛を表情に残したままやっと立ち上がり、
十三の部屋へと*足を向ける*。]
―天賀谷私室―
[床に膝を付き、望月は首を抱いている。その頬には涙が光っている]
天賀谷さんは幸せだったんだ。だから、迷わないでくれ。
[あやすように語り掛けながら、人の首の重さは赤子の重さにほぼ等しいのだという話を思い出した。
首の重みを抱えたまま、藤峰が落ち着いたなら彼に首を託すべきだろうか、と*考えている*]
─3階・天賀谷の書斎─
[じくじくと天井の一角から、赤黒いものが染み出し拡がっていく。
そのうちに、白、の色が、ぽつりと絵の具を落としたかのように加わり。
やがて、目を伏せた女の顔ばせをくっきりと描き出す。
白と黒と紅で描かれた女の、その繊毛のような睫毛で縁取られた目が、ぱちりと開く。
すると、平面に過ぎなかった貌が、壁からせり出し……浮彫(レリーフ)の様に凹凸を備え始め……口接けを求める様に紅い唇がうっすらと開いて。
緩やかに巻いた後ろ髪まですっかりと、壁の中から抜け出すと、ふうわりと音も無く宙を舞った。]
──回想──
「斬れることは――
思い切れることは幸せなことだ……」
──せんせい。
あなたさまは、何か──後悔していますの?
[枚坂の後に続くように階上へ歩く。
血池が出来ていた箇所は、そこだけ黒ずみ、私室の奥より続く階段へ、軟体動物が這ったような血痕だけが残っている。
神気すら漂っているのではないかと思われた刀が、振るわれた。]
あはれ。
[男二人が静かに頬を濡らして泣いている。]
望月さま、ありがとうございました。
[深々とお辞儀をして礼を言うた。
死したものへの執着は、また、人を狂わせる。
死を受け入れるために──人は死者を弔う。弔いは、生者のためもあろう。]
藤峰さん。
[枚坂が藤峰から離れ、夜桜は近づいた──。]
主人を弔いましょう。
[涙溢るる頬に掌をあててすくいあげる。もう片の腕(かいな)を伸ばし、藤峰の頭を慰めるように*抱きしめようとした。*]
主人は死んでも、みな生きています。
藤峰さんは──ひとりではないのです。
─3階・天賀谷の書斎(異時空)─
[そこには何人もの人間が集まっていた。天賀谷に招待された客も居れば、使用人も居る。
皆、壁に描かれた血文字を見ているのだった。
そこに書かれた、自分と他人の名を。それは全部で14人分あった。
そして、「天賀谷 十三」の名の部分には、不鮮明ながらも赤い一本の線が抹消線の如くに引かれ、その下には「屍鬼殺害」と読める文字が追加されていた。
天井の隅から抜け出した女の貌は、血文字を認めると滑る様に降りて来て、居並ぶ人々の間に漂った。]
─3階・天賀谷の書斎(異時空)─
[奇妙なことに、首から上しかない女の貌がすぐ横に浮かんでいると云うのに、傍らに居る人々は一向にそれに驚いていない様子である。それどころか、その存在に気付いてさえ居ない事が窺える。
白い貌は、壁の血文字を凝視すると、眦を吊り上げた。]
……そうか。そうであったのか。
この屋敷を覆う結界はわたしを利用したもの……
“こちら”に在るわたしを“こちら側”に引き寄せる力の核として、この者達の生命を“あちら側”に打ち込んだ楔として……
わたしを狭間に留め外へと逃がさぬ為の呪……
わたしか、この者達の何れかが滅さぬ限り、その力の綱引きは中途で釣り合ったまま……永劫に出られはせぬ。
ええい、口惜しい……天賀谷め。
ようも、ようも……。
これが生命を賭してお前の為そうとした事であったか。あの水鏡は、これを為す為の呪物でもあったのか。
[ぎりぎりと歯を…今や牙の如く尖り出したそれを…咬み鳴らす。憤怒はまた、白い焔となって四方に散った。]
――承前>>128・自室――
[覚束ない足取りを杏に支えられて部屋へ戻ったさつきは、少女の手が導くままに長椅子に腰掛けた。憔悴の色濃い瞳には力もなく、朱に染まる封筒の重さに耐えかねたように手はだらりと垂れていた]
「……さつき、様。……お預かり、しますね」
[さつきの手から封筒を取って丸机に置くと、杏は室内の扉へと姿を消す。やがて水音が聞こえ始めた]
『――何の音、なの、かな――』
[浮かんだ疑問も泡沫に消えていく。何を考える気力も起きず、さつきはじっと座っていた。戻ってきた杏は更に幾度か部屋を出入りし、やがてさつきの腕を引いた]
「……さつき様、お湯の準備ができました」
――自室/バスルーム――
[杏の小さな手が石鹸をあぶく立てる。
其の掌が滑らかに往復し、逍遥としたさつきの素肌を細やかな白い泡で覆いつくしていく。裾をからげ、袖を捲り、甲斐甲斐しく奉仕を続けるメイドは傍らから手桶を取り、呼び掛けた。かすかに頷いたさつきの背中に温かな湯が注がれ、其の身が帯びた汚れと穢れを洗ぎ流していった]
――杏。
「――なんでしょう」
[主の呼びかけに、杏は傍らから其の貌を覗き込んだ。表情は無色。何物をも感じさせない声音がタイル張りの浴室に響いた]
――貴女も、脱ぎなさい。
[え、と息を詰めた少女の反応に、さつきは手桶を取って冷水の蛇口を捻った。其の行動の意図を解するよりも早く、杏に向け、桶を満たした水がぶち撒けられた]
――ほら。其の儘では、風邪を引いてしまうでしょう?
[濡れ濡れと紅い唇がくっと歪んだ。]
殺してやる。喰ろうてやる。
この者達、皆殺して此処から出てやる。
[その白い貌に大輪の牡丹のような艶やかな笑みが浮かぶ。
瞋恚の炎はいっそ灼熱を突き抜けて、全てを灰燼と化す劫火と変わった。]
──回想・3F自室──
[突然自室の扉が開かれる。戸口から覗き込んだ女が自分の顔を見てちょっと意外そうな表情になった。ここで見かけたことはあるものの、ほとんど言葉を交わしたことはない。確か──]
えー、仁科さんでしたか、お名前は。
……また何か起こりましたか?
[かなり慌てている風情の仁科から、それでも聞き出せたのは、壁に浮かんだ血文字の事。しかし仁科は慌ただしく去っていった。]
血文字の中に俺の名前もあった、か。……見てくるべきか。
ああ…望月さん。
天賀谷様が幸せだったかどうかなど、そんなこと…
[かつて主人が過ごした部屋の中。
自分同様涙を零し続ける望月を見ながら、万次郎の瞳は濡れ続けようとも、声は静かに搾り出した]
…きっと俺には、どうでも良いことだったのだ。
[慰めてくれるかのように肩に置かれた枚坂の手は万次郎にとって温かかったが、その言葉はどうやら届かない]
心…?
まともに言葉も交わさなかった天賀谷様の心を…俺はほんの僅かでも知っていたろうか。
”ありがとうございました”と…、あんたはそう言えるのだな、夜桜さん。
[夜桜が自分の頭を抱きしめようとしてくれるのを、万次郎は抗わなかった。
そのまま彼女の言葉を聞く]
「藤峰さんは──ひとりではないのです。」
[――ああそれは何と、甘やかに優しく響いたことか。
しかし万次郎は息を飲むと、その力は弱々しいものではあったが、夜桜の肩に近い胸を押さえ身を引き剥がそうとした]
ひとりではない…それは俺がどうしても、どうしても欲しかった言葉に相違ない。
親にも要らぬと言われた俺は家より捨てられることが決まった日より…、いや本当はきっとそのずっと前から自分はひとりなのだと思ったよ。
だからこそただ一度頭を撫で瞳に俺を映し、優しい言葉をくれた天賀谷様に父を思い、その復活の可能性にこうも執着したのだ。
…天賀谷様のお心の内も人と成りも、実のところ全てどうでも良いままに。
その証拠に、もう二度と動きはせぬ天賀谷様のことなど……。
[...は望月が赤子を扱うがごとくその腕に抱く天賀谷の首を、タオル越しででも目に映して、もう自分の心が何も感じぬのを確かめようとした]
……どうでも、どうでも良い。
もう俺にとってあれは…、何の意味も持たない。
[結局は伏せた顔を、再び夜桜に向き直し]
…だから弔いだって夜桜さん、あんたがやってくれたら良いんだ。
仁科さんでも、翠さんでもいい。
大河原様が良いかもしれない。或いはさつき様か。
古くからのご友人雲井様でだっていい。
いずれにせよ、そう…
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