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[目の前では、不老不死に関する研究のおぞましい話が現実に有った事として語られ始めた。
しかし、その話が無かったとしても、]
…──藤峰君。
あたしは麓の村で屍鬼の話を聞いたよ。
屍鬼は生きた人間の肉を求めて彷徨うのだと……。戦争ならば、敵兵を殺して其の肉を喰らってくれれば良いが。
[枚坂に、]
アァ、麓の村も──土葬でしたねえ。
…だから、屍鬼が。
俺は、斬らねばならない。
[藤峰に、というより己に向けたかのような言葉]
どこに屍鬼がいようとも、それで少なくとも天賀谷さんは終われるんだ。
[大きな声ではないのに、その声が奇妙に余韻を残す]
[翠が頷いたのを見、こちらも小さく頷き返す。
夜桜は、彼らの話に集中する事にした。]
藤峰さん。
──世の理は。
黄泉還りを否定するのです。
それこそ、神代の世より。
国生みの夫婦神の話は知っていますでしょう。
醜く浅ましい姿と堕ちた天賀谷さまの姿を、藤峰さんは見たいのですか。不死者となろうと、屍鬼は生きた人間の肉を好むと──…
[ちらと、仁科を見て]
天賀谷さまも、屍鬼の話を
………。
[雲井の言葉が耳に届くと、頭をかきむしる手が止まる]
屍鬼は人を襲う……
…そんなことなら、俺だって聞いた事がある。
いいなんて、思っちゃいないんだ。
だってその屍鬼が旦那様を襲って、あんなふうにしたに違いないとわかった。
あんなふうに人を襲う者に…したいだなんて俺は、思ってないです。
でも、だけど、旦那様なら…
天賀谷様なら?
あの方なら、たとえ鬼の力なんぞを借りてこの世に戻ったとして、そんなことしないんじゃないかと…
そう…
[――思っているのではない。
思いたいのだ。
だから万次郎の声は最後に近付くにつれ、小さくなっていった]
……俺は、天賀谷さんの首を落とす。
[小さな呟き。しかし聴こうと思うものの耳には届くだろう。
踵を返すと、血に染まった廊下を歩んで天賀谷の部屋を目指す]
――仁科さん。
天賀谷さんが、どれだけのことを識っていてこの場所を選んだのかは判らない。
でもね――
[「――振り返ってはいけない。振り返ると……」 村人たちの囁きがザワザワと耳の奥を擽る。]
この場所なら、ありえないことではないと――そう天賀谷さんが考えたとしても不思議はないよ。
此処では時々……死んだ人が帰ってくるというからね。
麓の村から…──
あたしが車で連れて来ちまったんだろうか。
何故だか、そんな気がして成らない。
否、旦那様は……。
随分と窶れていらっしゃったが。
……枚坂先生。
[...は力なく悲しい目で、それでも笑んだ]
そういう意味でおっしゃっていたんですね?
つまり死んだと思っていた者が実は、本当には死んでいなかった。
息は止まったが、実は生きる力をまだその身に残していた。
そういう人達が埋葬した土のした、棺の中で息を吹き返すことがあるという、そういう意味で…。
だけど旦那様ははらわただって、血だってあれほど吹き出してしまわれていた…。
それでも…形さえ整えれば戻る可能性があると…
先生はそのように?
…俺は馬鹿だし、人間は陶器の壷でないと分かっちゃいます。
でもすっかり粉々になったものは、もうどう頑張っても元の形には戻せなかった…。
天賀谷様も…あれはまるで粉々のそれでした…よね。
屍鬼を…。
あたしが連れて来ちまったんだろうか。
その所為で、旦那様は殺されて…──。
アァ、こんな事はおそろし過ぎて口にも出来やしない。
[「振り返ると――死人が……」 私は部屋を出ようと踵をかえす望月青年を振り返った。その視線の先には階上の扉。]
天賀谷さんはそこにいる!
眠ってはいるが、以前とは変わらぬ姿で!!
貴方は二度も彼を“殺す”のか――
―廊下―
[枚坂の声が聞こえる。答えながらも歩みは止めない]
……眠らせてやりたいんだよ。
あのまんまじゃ、天賀谷さんはどこへもいけない……。
定めなんてどうでもいいじゃないか!?
少しは想像してみたらいいんだ!
あんたにとってちょっとでも大事な人が、死んでしまった時のことでも!
[望月の優しいまでの響きが逆に悔しいのだ。
叫びにも似た声量で言葉を向けてしまっていることにも、後悔の気持ちが生まれる余裕がない]
いつか死ぬとして…それが今じゃなくたって、良かったじゃないか。
本当に逝けなくなる…どこに。
教えてくれ、どこに?
大事な唯一の全部は、俺達が生きている、ここ…
ここだけじゃあ、ないんですか。
藤峰君、私は医者だ。
医者の努めは、患者をその家族が見放さない限り、元通りになる可能性を追い求めることだと思っているよ。
[私は藤峰青年にできる限りの真摯さで答えた。]
諸行無常、是生滅法、生滅滅已、寂滅為楽
[諸行は無常であってこれは生滅の法であり、生滅の法は苦である」
「この生と滅とを滅しおわって、生なく滅なきを寂滅とす。寂滅は即ち涅槃、是れ楽なり」
――止めてくれと言ってるのに!
[天賀谷の部屋へと向かう望月の背に叫ぶ。
間違っていないと肯定してくれる枚坂の声もその後押しになった。
元通りになる可能性を追い求めることこそ医者の務めと思っていると言う言葉には、いくらか感じ入った目で頭を下げて。
屍鬼は生きた人間の肉を求めて彷徨うのだと…そう言った仁科の声は聞こえないふりをした。
醜く浅ましい姿と堕ちた天賀谷さまの姿を、藤峰さんは見たいのですか…その夜桜の声からは手を使って耳を塞いだ。
止めたいと今はそれだけを願い、万次郎は望月の後を追って部屋を出る]
俺はどこにも行かせたくないし…終わらせたくないんだ…!
―天賀谷私室の前―
[声から離れるに従い、空気は血に澱んでいくが、望月の心は澄んでいく。自分に向けられた声も、すでに遠く感じられた]
『生きるってことは――』
[扉を開けた]
『死んでいくってことなんじゃないのか?』
[仁科の意識が遠のいて行く。
麓の村での記憶を探ろうとして…──何かが上手く繋がらない事に気付く。]
──…自分は…。
あの日、どうやって。
[葬式の終ったばかりの農家] [妹の恋人]
[独りだけの青年] [鉈] [鎌]
[血塗れの…──]
[血塗れの…──]
[血塗れの…──]
[────…記憶が無い。]
[昂ぶった感情のせいで、書斎内の階段を使えば良いと気付けなかった。
足ももつれ、いつもよりも息が乱れる。
追いつくことができるかできないかより、諦めたくないという気持ちがそうさせた]
やめてくれ、止まってくれよ……望月さん!
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