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―天賀谷死亡直後
[行けども行けども別荘の敷地から抜け出すことができなかったという事実を皆にどう説明したものか。
この別荘に起きていることについて一度、そこに居る者たちが集まって意見を交換することが必要なようにも思われた。
だが、さしあたっては天賀谷の処置が私が為さねばならない最優先のことだった。]
搬出入用の昇降機を利用させてもらえないだろうか。
[こうした大きな建物、とりわけ厨房と食堂が離れた豪華な建物では食材の搬出入やワゴンの移動のために設置されてあっても不思議はない設備だ。執事の施波に頼んでみると、果たしてそれは屋敷の裏手側にあった。
台車を用いての医療用ポンプや発電機、電気的除細動器に心電図計といった医療機器の移動は使用人の手伝いもあって比較的迅速に行われた。]
―天賀谷自室
[天賀谷の居室に向かう私の耳に、『葬送行進曲』の音色が届いた。あの楽師の青年が演奏しているのだろう。
誰かが彼にその演奏を要望したものか、それとも彼自身の内なる動機によって演奏されたものであったか。私はそれを知るよしもなかった。ただ――]
人はこうして彼岸へ送り届けられるのか――
[天賀谷は過去と現在の狭間から、過去の領域に属する人へと移り変わりつつある。そのことに一つの感慨があった。]
天賀谷さん。
安心してください。
すぐに元の姿に戻して差し上げますよ。
[私は縫合用の針と糸を手にとって、横たわる彼に向き直った。]
―自室―
[身支度を始めた。刀も仔細に改めるが何処も異常はない。……あれほど鍔鳴りしたというのに鍔に少しのゆるみもないのが異常と言えば異常なのかも知れなかったが]
……よし。
[刀を手に、廊下へ出る]
水垢離をするべきだろうな。
―部屋→廊下(→井戸)
[血管を切開し、医療用ポンプに接合する。ドッドッドッという規則正しい発動音と共に、ポンプは作動を始めた。
天賀谷の躰から血液が吸い出されていくかに見えた。
だが、おかしなことに、体内に血液はほとんど残されてはいなかった。]
――妙だな?
手間が省けるといえばその通りだが……
[失血死であっても常識的には考えられないことだ。首をかしげながら、視線を落とした先に、異様に広がった血の海が横たわっていた。]
これは一体……
―井戸―
ざばり。
『冷たい』
ざばり。
『痛いくらい』
ざばり。
『けれど、今の己は穢れてはいけない』
ざばり。
『澄んだ刀身のごとく在りたい』
*ざばり*
[来海は歩いていた。夜の道を。
月明かりの下。いや月は出ていなかった。
それどころか、夜ですらない?
しかし、道は暗かった。
どれくらい歩いたのか、時間の感覚がない。
あるいはほんの一瞬の出来事だったのかもしれない。
来海は櫻の樹の下に人が横たわっているのを見た。]
女、か……? おい、お前、そこで何をしている……
おい、おいッ、オイッ!!
[返事はない、来海の声が空しく響く]
「黄泉に逝ったものは現世へ戻ってはこれぬ――」
[私の耳に、夜桜の声が届いた。]
それはどうかな?
夜桜さん。
[ずたずたになった臓腑ばかりでなく、天賀谷の肉体の損傷は思った以上だった。容易に元通りというわけにはいかない。
だが、欠損していない部位だけはどうにか縫合し終える。冷媒を頭部や躰の周囲に敷き詰め、体内には特殊な溶液を流し込んでいく。
時間のかかる処置を終え、私は一息ついた。]
―天賀谷私室へと向かう廊下、窓の前―
……まるで道化だ。
[...は窓に薄く映る己の姿に独白した。
客達よりも華やかにならぬように。
それでいて主人がその財力や、品の良さを誇示できるように。
そのような目的を以て、男性室内使用人へ宛がわれるお仕着せ。
しかし客をもてなすべき義務も、天賀谷が完全に健在であった時ほどには自分にとって重要と、もはや感じていない。
そんな万次郎には、ぱりぱりに糊の効いた白シャツも、沢山付いているのに実際に役割を果たすのはただ一つのボタンに過ぎない上着も、ただ窮屈なだけのものだった]
[にも関わらず、それを完璧に着こなしていることを確認するかのように、窓へと自分の姿を映してしまった自分への評価がそれだ]
動きやすいことが、今は一番に決まっているじゃないか。
旦那様を手にかけた者がいるとして、この屋敷内に存在するなら、警察へ……。
[――いや。
...は今この瞬間も屋敷が異界に閉ざされているのだろう事を、窓越しの紅月を見止め何となく察する]
……それが適わないなら。
殺人者に相応の報復を…、今ここに居る者達だけですることになるのかもしれないんだ。
[...は首のタイをむしり、上着を前で留める金ボタンをも外し、楽に襟元をくつろげた。
副執事から藤峰万次郎へと戻ろうとしていることへの気持ちの表れかもしれなかった]
[来海は近付くのを躊躇った。
頭の後ろで声がする。『ニゲロ』
それは理性の叫びだったのかもしれない。
それでも何かが彼の背を押した。
そして来海は見た。
女、かつて女であったもの、人間であったものが、そこに横たわっていた。もはやそれは物体だった。醜悪な物体でしかなかった。
その手には手紙のようなものが握り締められている。
もはや来海の神経は完全に麻痺していた。来海は女の手に握られている紙片を手に取ろうとした……]
[演奏の手を止め、怪訝そうにドアの外を見やる]
……随分と遅いな。しかも騒がしい。
全く、何をグダグダとやっているのだろうね?
まあ、死に顔くらいは見に行かねばなるまい。
『一応』賓客扱いはされているようだからな。
[鍵盤の蓋を閉めると、普段のそれと変わらぬ調子でゆったりと歩き出した。
この先に、どんな悪夢、どんな魔境が待っているかも*知らずに。*]
―天賀谷私室への扉前―
……。
[それでも天賀谷の部屋へ足を踏み入れようとする時、万次郎はその扉を使用人としての手付きで叩いた。
――入って良いと、旦那様の声がすれば良いのに。
適わぬ夢と知りつつ、万次郎は顔を伏せて返事を待ってしまう]
──二階/書斎前──
主人の、天賀谷さまより出でた血が、こちらの部屋へ。
私室の階段より流れて行ったのです。
[雲井を僅か見上げる形で、夜桜は答えた]
たくたくと、血池が出来得るほどの血がこの部屋へと。
雲井様……?
[夜桜が尋ねる。
其の名を復唱するように呟いた。]
……何が、……
[どう謂おう、翠は謂い澱む。
迷う間にも血は尚もその領域を広げていった。]
―自室→書斎
[処置を終えると手を洗い、服を着替えに自室に戻った。
手早く着替えを済ませ、天賀谷に渡す予定だったロセッティの素描を手にとる。]
――こんなことになってしまったが。
[そのことには、書斎に足を踏み入れる口実を得たい気持ちも僅かに含まれていたかもしれない。血溜まりは書斎に向けて不気味な影を形作っていた。]
天賀谷さんは云っていたな。
「完成させなければ」――と。
一体何を……?
[私は書斎へと向かった。]
―書斎―
[血の流れは、途中で捻じ曲げるようにして、床の上で向かう方向を変えていた。
そう。雲井がその流れから離して移した、あの巻物に向かって壁際の椅子へと。
その流れは椅子の脚を這い上がり、巻物を赤黒く浸し、そして猶も壁を上へと流れていた。
物理現象に反する流れは、ずるり、ずるり、と音を立てつつ、既に椅子とその後方の壁を覆い尽くしていく。]
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