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――聖堂――
[人気のない聖堂の中は虚ろで、想像よりもずっと広く思えた。
といっても、村人が礼拝に集まれば、手狭に感じられるだろう、簡素な造りだ。奥の祭壇に灯がついたままなるのを目当てに、壁沿いを進む間も、これといって目当ての品物らしき装飾は見当たらなかった。
その場にあった蝋燭の一つに火を移し、周囲を見回す。蝋燭は火を消してそれほど経っていないらしく、まだ温かかった。]
神父?
[ほとんどささやく位の声で呼びかけながら、側面の壁に見つけた扉を開いた。]
____________
[激烈を極めた弾劾。]
[町ひとつを巻き込んだ──あの業火。]
[崩壊した壁の隙間に、焼け爛れ崩れかけた躯を挟み込む様にして、]
[灼熱に揺れる石畳の向う側に──埋もれる様に消えて行く背中を、息を詰めて見送るしかなかった。]
(本来の盟約には、我が倒れし時は──死したるその血肉を彼に与える事が含まれている。従僕は喰らうことで、主の魔力を得る事になる。
主としての盟約が果たせないまま、私は──、)
[絶望とは己の無力さでは無かったのか。]
[従僕が名乗ると言った事で、カミーラに「予言者や占い師の様な方法で」告発される事への興味は失われたもの、『彼女』のカミーラの持つ袋の中身への関心は失われては居ない。]
人狼の血──無実の人間の血。
聖銀に血の呪いが染み付いているならば、それはまた別の魔力を持つだろう。
(──突き刺されてみたい。)
[カミーラは力を持たぬ村人を装うにせよ、過去を理由に刃をセシリアに向けるべきであろう。]
[まずは、彼女が自分自身の真の姿を知らず、復讐者として振る舞う事。
そして、尋問者が出そろった後に──。
村人達が殺気立ち「お互いを“処刑”し始める少し前の頃合い」を見計らって──死者の事が分かる力があるとでも言えばいいのだ。
何故なら、カミーラは余所者ゆえに早期に村の処刑対象にあがるであろう事が予想されるから。
カミーラが自分自身が狼に憑かれていると気付くにせよ、気付かぬにせよ、彼女自身の境遇を考えると何かしらの名乗りは必要に思えた。]
…どう思う?
[無自覚なカミーラの無意識は、何をどうしたいと望んでいるのかにも、興味をそそられる。
『彼女』は、彼にともカミーラにとも無く*問うた*。]
[そこは聖具室で、やはり無人だった。といっても町の大きな教会のような、聖遺物が飾り立てられて奉安されている場所ではない。やはり銀製の振り子のような物は目につかなかった。
整頓された部屋の中で、そんな品物があるとしたら、櫃の中くらいだろう。そっとひとつの蓋を持ち上げると、きしみもせずに開いた。中には、几帳面に畳まれた祭服が詰められていた。
失望しながら、もうひとつ、より小さな櫃の蓋を試す。こちらには錠前がついていた。といっても、見るからにしっかりした造りではない。何か、薄くて堅い物を鍵穴に差し込めば、容易に開きそうだ。とはいえ、それはさすがにためらわれた。
鍵穴を見下ろして、どの位考えただろうか。迷った末に、もう一度他の場所を検めることにした。]
[祭壇の奥を検めるのも後に回した。信心に凝り固まっているつもりはない彼だが、やはりそれもためらわれたのだ。
聖堂の一隅には、灯りを持たずに歩いていた時は気づかなかったものがあった。棺である。まだ覆われていないその中には、昨日少しばかり話をした村長の遺骸が安置されていた。
一応その遺骸は整えられているものの、顔に至るまで引き裂かれた様子は、実に無残だった。蝋燭をかかげで傷を観察するヴィンセントの表情が、はっと変わった。]
これは……。
[蝋燭をその場に立てると、遺骸から服を脱がせるという、困難な作業に取り掛かった。]
[教会の聖堂内にヴィンセントが入った頃。
宿坊を出たところでルーサーと行き会ったクインジーは、ジェーンの容態とそこで聴いた話について掻い摘んで話した。
そして、やや迷いはあったが、セシリアからの聴取の証人としてジェーンの立ち会いの許可を求めた。
クインジーは再びジェーンの元を訪れ、出席を乞うた。
檻の隣に幄舎が張られ、簡易寝台が設置される。
ジェーンの許しが得られるなら、その場所に担架で運ばれることだろう。]
―檻―
[宙づりになった状態そのものが拷問そのものだっただろう。
クインジーは四肢を檻に固定していた鎖を外し、セシリアを椅子に座らせた。
足枷の鎖を椅子に巻き付け、勝手に移動できない程度には拘束する。両腕の枷はそれ以上の拘束は行わず、卓の上に載せられている。
アーヴァインの聴取の内容と副団長の記録を元に、セシリアから確認をとりながら正式な告訴状を書きはじめた。]
彼は……狼に襲われたように見せかけて、殺されたんだ。
重い物で頭蓋骨が陥没する程殴られているし、傷の位置もおかしい。
人狼騒動は何者かの陰謀なのか……?
いや……他の兵士たちの傷は?
これとは全く違っていたぞ?
やはりとにかく、アーヴァインに会わなければ。
[独り興奮したヴィンセントは、村長の遺骸に再び服を着せ、姿勢を整えるももどかしい作業を終えると、急いで聖具室へ向かった。発見した新事実、それがアーチボルト親子を救う手がかりになるかもしれないという思いが、逡巡を吹き飛ばしていた。]
お許しを賜り――幸甚です。
[僅かなりの贖罪にもなりはしないだろうが、私はそうせずにはいられなかった。主の許し(>>*36)が得られたことを忻ぶ。
セシリアの足の鎖を直す時、僅かに跪いた]
do ich vor ir kniete da si saz
かの人の坐りいる前に我、跪きし時、
und ir sorgen gar vergaz.
憂いはすべて消え失せぬ。
-村長宅/ノーマンの部屋-
[部屋から、屈強そうな集団が出ていく。
1人は麻袋に何やら道具を抱えているようだ。]
………。
[村長の遺体を調べられ、万一のことを考えたのだろう。
相手はあのルーサーだ。対応を見る限りは、
どうも自分を疑っている節があると思っている。]
…念の為ってえヤツだな。
[その最悪の事態を想定して、頭の中にも
筋肉が詰まっているような連中と話し合いの
場を設けたのだろう。実際は、見た目通りの連中で、
実質、ノーマン1人で考え指示を出したに過ぎないが。]
――村の中心へ続く道――
[ウェンディは一度セシリアに会って、本当に人を殺した等を尋ねようと思った。
またセシリアの友人知人、家族にも会えないかとも考えていた。]
もしセシリアお姉ちゃんが本当に人狼なら、罰は受けないかも知れない。でもどんな罰が正しいのかしら?
[古い詩の文句が胸に満ちた。
郷愁に心誘われる己を叱咤するように顔を振り、今は人であり異端審問官であると――そう自分自身に言い聞かせる。
立ち上がった時には、その表情からは迷妄は消え失せていた。]
[彼女の両手がある程度自由に動かせるようにしてあるのは、彼女自身による署名が必要な箇所があるからだ。法的な手続きに則るなら、自供とそれに対する署名がなければ処刑は行えない。
訴状が書き上がると、クインジーは広場の檻が見える場所に村人たちを集め話を始めた。]
―広場/檻の前―
[人々を集め、話を始めたクインジーは、無頼の用心棒の顔ではなかった。
言葉は聖職者のものではあったが、ルーサーのような人々を説き導く神父とはまた違った厳格さを帯びていた。それは或いは判事のようであった。]
人狼や悪魔の恐ろしさは皆も噂では聞いていることだろう。
[そのような言葉で話を始める。
何かが起きる予感に、そこに居合わせた人々は水を打ったように静まりかえっていた。]
悪魔は時に天変地異を引き起こす。地震や雷、飢饉は彼らの手によって引き起こされるものだ。
シトー会士ハイステルバッハのカエサリウス師は『奇蹟についての対話』で、ある村の教会に雷が落ちた際、聖職者がその教会で悪魔をみたと書いている。
また、ドミニコ会士、トマス師は『蜜蜂の普遍的善』にて、一二五六年のトリーアで、雷で葡萄畑がほぼ完全に壊滅した時の模様について述べている。この時、獣のような姿をした悪魔がその場所に現れた。
[一二二二年キプロス、一二二三年ケルンの地震。十三世紀のドミニコ会士ブルボンのエチエンヌの説教範例集にも話が及んだ。]
同じ様な事例は枚挙に暇がない。
凶事ある時、そこには必ず悪魔や悪しき“獣”の力が働いていることを、忘れてはならない。
さて、この村で何が起きたか――
[村人たちがざわめく。
クインジーは皆の顔を一度ゆっくりと見渡した。
そして、訴状を読み始めた。]
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