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いいだろう。
無闇に人間を拷問して回るよりは、ずっと良い方法のように思えるしね。
そうだ。
私も、その証拠探しに、立ち合わせてもらえるだろうね?
[その品物の使用法に、興味を隠しきれない。]
ああいいぜ。証拠さえ出ちまえば、
後は犬ッころの体に聞きゃあいいって寸法よ。
だが、悪いがコツまでは教えらんねえけどな。
[ヴィンセントの気持ちを引き付けたようで、
ご満悦そうにしている。]
よっしゃ、取引成立ってわけだ。
俺ぁ部屋で待ってるから、持ってきたら
誰でもいいから、俺んちのヤツに言ってくれ。
[ヴィンセントを抱きしめた後、宅へ向かう。]
じゃあ、待ってるぜ。
―広場にて―
[スープらしきものを手にしたネリーが、広場に現れた。先ほどまでよりはざわめきも人の数も減ったとはいえ、先ほどの悪い知らせの余韻は消えず――]
……………?
[人々の噂が、ネリーの耳に入る。中には、ネリーが村長一家の屋敷で働いていることを知る者が、さも憐れそうにネリーをチラチラと見ているのも分かる。]
………え………っ!?
村長さまァが……死んじまったァ……だと?
化けモンの仕業かァ!?化けモンの………!
[ネリーの全身がガタガタと震え、あやうく鍋を取り落としそうになる。]
……ど、どうして……?
化けモンのせいかェ!?
村長さまァがおっ死んじまったのは、あン化けモンのせいかェ!?
…………………
オレぁこれから、どォしたらいいんだよォ………!
[ひどく困惑した様子で、ネリーはキョロキョロとあたりを見回している。]
オレのお給金は……!?
オレの働き場所は……!?
オレ、村長さまァん家からおん出されちまったらよォ、働くとこ無くて、死んじまうよォ………!
……………ッ!!
[続いて、ネリーの耳に「セシリア」の母親が檻の前に引き摺り出された顛末を耳にするも――その言葉は、ネリーの頭の中でもはや大きな地位を占めるものとはなり得なかった。]
化けモン、おめさんかェ!?
おめさんが、村長さまァ食らって殺したんかェ……!?
[歯を食いしばり、檻の中を睨んだ。]
―広場―
[セシリアから聴取しようと考えていたクインジーは、檻の中へ椅子を二脚運び、卓を組み立てていた。
広場との間を往復していると、おろおろしているネリーの様子が目に入る。]
おう、ネリー。
一体どうした?
額の怪我は大丈夫か?
[ネリーはというと、檻の近くまで寄り、険悪な表情を浮かべている。]
――村長が…?
[彼女の言葉が耳に入った。
死んだ、というのは狼に喰らわれたということだったのか――と先程の騒ぎが思いおこされる。]
[額の怪我を気遣う声が聞こえ、はっと我に返り赤毛の聖職者の方を見た。]
……いいえェ。怪我は唾ァつけとけば、大丈夫でござェます……
[ふるふると小さく首を横に振る。彼女の頭の両側のお下げが、静かに揺れた。]
それより……村長さまァが亡くなったっていう話を聞いたンですが……旅ン方は何かお知りでござェますかぇ?
私は手にかけておりません。
妙だ……
[私は、同族のみの耳に届く音域の声を発した。
それは異国の響きを帯びていた。]
唾つけときゃ治るってなァ……
[クインジーは苦笑する。]
年頃の娘がそれじゃいかんだろう。
膿んで痕になったら困るぞ。ちゃんと見てもらっとけ。
[だが、村長の話に表情を曇らせた。]
「旅」のってェと……あの、カミーラという女のことか?
俺もまだ、村長のことはハッキリとした話は聴いていないんだが……
ワタクシにァ、年頃もなァンも関係ござェません……ただ生きるために、死ぬまで働いて、働いて、働くだけでござェます……。肥桶担いで、家畜の世話して、鶏締め殺して食肉にして……そうやって生きるンが、ワタクシの生きる道でござェまさァ……。嫁にいくなんてェ、甘ァい夢は見えやしませんェ。
[ふぅ……とひとつ、溜め息をつく。]
おンや、旅のお方っていうのは、あんたさまァのことだったんですがァ。……あんたさまァの名ァ知らんから、つい。
すんませんのぅ……
[ネリーのように奉公に出された娘は、労働の対価に奉公先がいずれ結婚相手を見つけ、持参金を用立ててくれるのが世の常だった。
だが、ネリーの言葉を聞くと、そのような先行きの幸福を思い描くのが難しい。村長の屋敷での扱いが酷薄なものであることが察せられた。
とはいえ、ネリーにとっては、父親を喪ったようなものであろうか、とクインジーは考えた。
痩せこけた彼女を見ていると行く末に幸あれかしと願わずにはいられない。
手に持った鍋に目が留まる。]
ネリーはもう食べたのか?
もうちょっといい物喰わせてもらえ。多少図々しいくらいでちょうどいいんだぜ。
[飢饉の頻発していたこの時代にあっては、難しいことではあっただろうが。]
ああ、そうか。
村長の家は結構離れているし、水車小屋は教会から森の中に入ったところにあるからなあ……
[クインジーは頭を掻いた。数年前よりこの村に居を構えているとはいえ、ネリーの姿をこちらから見ることはあっても直接話した機会は皆無だったことを思いだした。]
俺は、クインジーという。
この近くの森を荘園とする修道会に身を置いている……用心棒だ。
もう、こうして生きているだけでオレは十分図太いわァ。若ェ娘がやるにゃァ酷だの何だのと言われて死なねェ仕事やっててもなお生きてンだ。平気さァ……。
きっと嫁にいくとしてもよォ、どうせオレはただの働き手よォ。夢も希望もありゃァしねェ。
[ふっ、と小さく笑う。]
そうかェ。あんたさまァは、水車小屋の人かァ……。そいつァ失礼したのぅ……。なにせ、ワタクシはァ、朝の仕事以外はマトモに屋敷の外には出られねぇモンでなァ……
ワタクシん名はァ、……もう知ってるかもしンないけれどもよォ、ネリーって言うンでござェます。
今さら言うのもなんだが、よろしくのぅ。
[小柄で痩せた彼女はクインジーの前では一際小さく見える。クインジーは漸く鳩尾のあたりの身長の彼女と話すのに、やや身を屈めて話していた。]
こちらこそ、よろしく。
[そうして、ネリーがセシリアに食事を与える仕事の様子を見守った。]
―檻の中―
[警備の者に頼み、檻の扉を開けてもらう。ぺこりと一礼し、ネリーは中に入った。]
なァ……化けモンさんよォ……
[鍋の中にあるスープをスプーンで掬い、そっとセシリアの口許に運ぶ。後ろに控えているウェンディには、「あまり近付きすぎねェでな」と気遣いつつ、ネリーは己の仕事を遂行する。]
こんメシぁマズイかもしンねェけどよ、我慢して食らってくれよォ……
[セシリアの目をじいっと見つめ、一定の動きでスープを食べさせている――]
─森から教会への道すがら─
[村長の亡骸を運ぶべく、教会に向けて先導をするその表情は、彼の庇護を求める迷える羊達にはすっかり落ち着いて見えただろう。
だが、]
私の見立てが間違っていないとすれば……。
いや、確証はないのだ。
後で亡骸を十分に調べねばなるまい。そう、夜にでも……。
[思わず洩れた独り言は、周囲の耳に届くことこそなかったが、苦渋に満ちていた。]
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