情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
[廊下に現れた天賀谷に、苦々しげな視線を向けた。]
天賀谷さん。
あんたまで、そんな事を謂うようでどうする。
もしこれが噂通りの代物なら、妖怪退治の道具じゃない。
怪異を招き寄せる代物だ。
そうですわね。食堂へと――あら?
叔父様には先客がいらっしゃるのかしら。
[雲井に答えて開かれた扉の向こうを見遣ったさつきの瞳は、麗々しく着飾った女性の姿を認めた。遠目ではそうまで詳しくは判らなかったとはいえ、さつきの纏ったデビュタント・ドレス――初めて社交界に初めて出る年頃の娘を飾るような、清楚なものだ――とは明らかに異なる、目にもあでやかな装いであった]
[人だかりは水盆の周りに出来ているようだ。
翠はあの水盆が何時になく奇妙な空気を纏っているような気がしてならなかった。]
……気のせい。
[言い聞かせる様に呟いた。]
[天賀谷は雲井にニタリと嗤う。何かに既に取り憑かれたかの様な貌だ──。]
──…遂に。
麓の村に──遂に屍鬼が出たのだ。
此の日を待っておった。
此の村ならと──待っておった。
[天賀谷と大河原未亡人が話しているのを見かけると来海はずかずかと近寄っていった]
ヤアヤア、大河原様、はじめまして来海と申します。あなたのお噂はお伺いしております。噂以上にお美しい方ですな。いや、ハハハ。
おや、もうお部屋に帰られるのですかな? それは残念です。また、お会いすることもあるでしょう。どうぞお見知りおきを。
[一方的にまくし立てた後、来海は天賀谷のほうに向き直った]
オイ、天賀谷聞け、今度選挙がある。石神井先生からお話があってな。復党すれば、通産大臣にご推挙いただく手筈になってる。
ついては、お前の助けが必要だ。力を貸せ。
[興味無さそうに閉口する天賀谷は水鏡を見つめながらぶつぶつとつぶやいたかたと思うと来海を置いて歩き出した]
お、オイ、聞いているのか、天賀谷、おい
[天賀谷につきそう使用人たちがさえぎるように壁になる。来海の呼びかけに天賀谷は反応を示さなかった。]
[これだけ人だかりが出来ては、私が自ら何かすることもあるまい……
そう判断して天賀谷氏に挨拶しようとした刹那、何気ない言葉が神経に刺さった]
……私は音楽家です。教師は、副業のようなものですね……ええ、副業に過ぎませんよ、「お医者様」でしたっけ?
[笑いを少しだけ強張らせて、自らに言い聞かせるように告げた。
歳不相応に白んだ髪を風に靡かせ、踵を返そうとした、が]
……どうにか、か。
そうですね、確かに「何かが」「どうにか」したような……何だったのでしょうね。
[青年の問いかけに、ふと視線を中空に泳がせる。その先には幽鬼の如き老人。]
ああ、そうみたいだよ。
[奇妙なかたちの帽子を被った青年と言葉を交わした。日本語のイントネーションにやや癖を感じたのは気のせいだっただろうか。]
[さつきの容態は案ずるほどのことではないようだった。私は食堂の方に視線を移し、人波の向こうに館の主の姿を認めた。
以前会った時に比べ、覇気が減じているように思える。
体調が思わしくないという噂は真実だったのだろうか。
突然、その体が傾ぎ、私は慌てて駈け寄った。]
天賀谷さん!
御久しぶりで御座います、十三叔父様。
……叔父様は、この日が来る事を望んでいらしたのですか。
……それとも、この日が来る事を恐れていらしたのですか。
[さつきの呟きは問いかけとも独白ともつかない、平板な口調で発せられた。或いは彼女自身にも、どちらかは判然としなかったのであろう。水盤に引き寄せられたように視線を向けたままの十三が、聞きとったとも思えなかった。しかし、其の答えは直ぐに齎された]
[待っていたとの天賀谷の謂いに肌が粟立つのを覚えた。]
『……屍鬼を、待っていただぁ?
正気なのか、天賀谷氏は』
[が、その身体がよろめくのを見て、思わず手を伸ばし、支える。]
『……想像以上にとんでもないものらしいな、この水鏡は。』
[淑女らしいさつきの姿に満足した様に頷く。
それは親しみの有る姪に向けたものなのか、さつきが水盆に無造作に触れていた事に関係があるのか──天賀谷の血走った目を見るにどうにも定かでは無い。翠に支えられて居る事にも気付いているのかどうか。]
屍鬼が現れた場所は異界に落ちる──。
屍鬼は、首を切らねばならんのだ。
──…わしはその為に刀剣を集めておった。
西洋の剣は、骨を砕く野蛮な物。
日本刀で無くてはの…──。
[一瞬、望月の方へ視線を走らせ、また焦点の合わなくなった目で嗤う。]
[「ああ、失礼した――」とコルネールに詫びるのもつかの間のことだった。
この場に訪れた不穏な気配に、細やかな気遣いをするゆとりもなく、私は天賀谷氏の様子に気を配る。]
天賀谷さん、やはり容態がよくないんじゃないですか?
[長い白銀とも見える髪を靡かせて、コーネルは視線を宙に泳がせる。その様を怪訝そうに見ていた]
「──…遂に。…」
[その声を聞いて振り返る。その幽鬼のような様に目を見張りつつも、天賀谷と認識する]
―――旦那様?
屍鬼だなんて……
[捲し立てる男が天賀谷の背後に居る。
あれが来海――だろう。
使用人の間ではもう既に話が伝わっていた。]
おやめください、
旦那様はまだお体が本調子ではないのです。
[来海を真っ直ぐ見た後、そう謂う。
仁科を呼ぶことになるだろうか、
そんな事を思いながら。]
[さつきの様子や、雲井の言葉が耳に入っているのかもあやしい。十三の身体を支えた枚坂に、]
──…君は屍鬼を知っているか。
[掠れた声で囁く。
そしてまた吠える様に嗤い始め…──そのまま白目を剥いて*その場に倒れた*。]
[天賀谷の弁は続く。
それは不吉で、重く、ゆらゆらと、場を覆いつくすような錯覚さえ覚えるような昏さを帯びる。]
……首を。
[翠は思い出す。
見事な刀剣の数々を。
見惚れたことも一度や二度ではない。
翠にとっての憧れ。
だが、それがそのような目的をもって集められていたなど。]
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新