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[館の正面扉を抜けた真向かいには、大人の身長ほどもあろうかという振り子時計が据えられていた。恐らくは、先刻、晩餐の始まりを――結局其れは行われなかったとは云え――告げた物と同じ職人の手による品のであろう。飴色の木材に刻まれた彫刻は幾人もの人間が絡み合いながら救いを求める姿を描き、文字盤は天界の曙光を模して光背の意匠が施されていた]
――数刻前・エントランスホール――
文字盤は読めるわね?
あれから、小一時間と経ってはいないように思うのだけれど。
いえ、仮にそうでなくても、あのような針の指し方は有り得ない。
短針が正午、長針が真下だなど――
[そう口にしたさつきの言葉を聞き入れたか、長針がカチリ、と。音を立てて、一つ、動いた]
まったく、騒がせて済まない。
[由良に頭を下げる。しかし、ここまでもう来てしまったのだから、水だけは呑んで部屋に戻ろうと思って翠を待っている。
此方に視線を向けた男(江原)にも詫びながら]
……そちらの御仁は、はじめて、かな?
騒がせて済まない。水だけ呑んだらすぐに退散するよ。
俺は望月というんだ。あんたは?
[沸かしたての湯で茶器を温める。
湯の中で紅茶の葉が踊った。
蒸らしている間に、同僚の青年が声を掛けてきた。]
「翠さん、空見た?」
え―――え、ええ。
「なんだか気持ち悪いな、あんな色の月」
そう、ね。
[翠は曖昧に返事をし、
由良の下へと紅茶と林檎ジャムを運んでいった。
藤峰も望月の方へ水を持って行った様だ。]
どうぞ。
[一言声を掛けて由良の傍に茶器を置く。
翠はやはり刀が気になる様子だった。
サムライ。
江原の言葉を唇で反芻する。]
……江原だ。肩書きはどうでもいいが、
一応今は思想家ということになっている。
[久々に、体に走る戦慄。捨てたものではない。]
[碧子はスキャンダルを気にした事はなかった。常に刺激を与えてくれる人間を知己に選んでいたが、天賀谷はその点でも非凡だった。
黒田の経営するK…という店もそうであるし、ジャズで溢れかえった秘密クラブに出入りするのも面白かった。
あの頃の天賀谷がこうなると一体誰が予想できただろう。]
や、ありがとうございます。
[紅茶とりんごジャムを前にし]
……美容と健康のために、食後に一杯の紅茶
[などと呟いた。翠が怪訝そうな顔を一瞬したのはきっと気のせいだろう。
江原の望月に興味を持った様子に気づき、]
『さて、どういう組み合わせだ?この二人は』
……江原さん、か。よろしく。
俺は刀剣の鑑定と試刀をやっているだけだ。……サムライはおろか、士族だっていなくなって久しいぜ。
[そう言いつつも、微かに緊張している。素振りを行った後の精神状態もあるのだろう。背筋が凛と伸びて、視線が常より鋭い]
── 一階階段裏→外へ ──
[戦争が終結した辺りから──]
[日本という地に、中国より屍鬼の噂は伝わってきた。]
[否] [屍鬼が渡ってきたのだった]
[──あれは東京。
桜が、はらはらと舞い落ちる。
田舎より出てきた女と、夜桜は出会った。
女の名は、西堂伊織──。
四国を郷とする、奥ゆかしい女であった。]
[赫い異形の月。
因習深い麓の村に続く道が、延びている。
むした苔石すら、このあかりの下では奇怪なものとして目に映る。]
『何時の頃からかしら、天賀谷様が私に大陸に存在したと云う不死の話をし始めたのは。』
[最初は全く取り合わなかった碧子も、終いには止めた方が良いと忠告するまでとなった。]
ふむ………。
[望月をしげしげと見つめる。]
君は、なかなか興味深いね。
日本人かくあるべしといったところか。
[銃剣が突き刺さり、名誉戦傷章の決め手となった
左腕の感覚よりも、戦地において日本刀で切りつけられた
感覚が蘇ってくる。期待が持てる。]
まあ、内面はどうかはわからんがね。
[翠に。]
ああ君。別の使用人に、私の部屋に釘が出ていると
思われる箇所があり、気になるから直してくれと頼んだのだが。
[眉間に皺を寄せて。]
どうやら手前たちのことで精一杯なのだろうか。
飲み物は後で何か用意してくれればいいから、
そちらを何とかしてくれるとありがたいのだが。
……刀を持っていりゃサムライだなんて、おのぼりの米国人みたいなことを言うんだね。
[悪意なく言う。由良や江原が日系人であり日本人ではないということを望月は知らない]
シソウカってのは、そういう言い回しをするもんなのかい?
[本人に馬鹿にするつもりはまるっきり無いのだが、傍からはどう聞こえるかは分からない]
………まあ、見てわからんのかな。
[胸の印綬を少しばかり誇示するようにする。]
少なくとも、今の日本人の中では好感を持てる部類の人間のようだ。
[江原に謂われ、翠は頭を下げた。]
申し訳ありません、江原様。
此方の不手際です。
今すぐに御部屋に伺います。時間はかからないと思いますので、終わりましたらお知らせいたします。
それでは、皆様ごゆっくりお寛ぎください。
[謂うと、背筋をしゃんと伸ばし歩いていった。
心得のある者と共に直ぐに作業に移るのだろう。]
――数刻前・エントランスホール――
[語り終えたさつきは振り向き、両階段の間に置かれた柱時計を見つめた。振り子は確かに時を刻んでいる。だが、其れが示す刻限は――嗚呼、何故であったろう。有り得ぬ時刻を其れは指して居た。
短針がぴたり正午を指し乍ら、長針が真反対である六の数字、即ち三十分を指して居るではないか。しかし、二人の娘が見つめる間に長針はカチリカチリと歩みを進め、代って短針は垂直に座したまま、やがて二本の針は正午で重なった。
ボオンボオンという十二回の鐘の音は確かに鳴り響いたものの、其れが実際に空気を揺るがせたものなのか、或いは錯覚として感ぜられたものなのか、俄かに満ちた妖しい空気にいずれとも定かではなかった]
ふふ。奇っ怪だこと。
貴女もそう思わない、杏――。
私にはまるで、屍鬼が交わされる言葉を何処かですべて覗いているかのように思えるわ。本当は隠しておきたいことまで、ね。
[振り向いたさつきの射抜くような眼差しが、杏を捉える。危険を感じたように杏は一歩後じさって、エントランスを見回した]
あら?
杏。もしかして、私が屍鬼かどうか、疑っているの。
クスクス……でも良いわ。
此の場に免じて、特別に赦して差し上げます。
けれどね、杏――私は、貴女を屍鬼ではない、と。
そう、知っているの。
何故だか、わかる?
不思議でも、何でもないこと。
彼の水盤は、想った者の影を映し出す。
あの時――私が水盤を波立てたとき。
さざめく水面にぼやけることなく浮かび上がったのは、貴女の姿だったのよ。紛れもない人の姿をした。
[そう口にしたさつきの瞳には、疑いない何かを確信したような光が宿っていた]
―二階/食堂―
[それまで自室に篭っていたのだろうか。
疲れた様子もなく入ってくる。
翠の姿を認めて声をかけた。]
お早う。
施波さんは、何処かな?
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