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[ちらりと仁科の右目を見ただけで、
夜桜は余計な事は何も言わない。]
興奮して倒れてしまった──というところかしら。
[帽子を傍らに置き、仁科の上着の釦を外し始めた。]
因習が強い場所。
[ぽつり、言葉が散る]
もう、旦那様はあちら側のお人なのかねえ。
[あちら側と言うのは、直接的に屍鬼ではなく寧ろ狂気と言いたいらしい。
脱がされて行く事に抵抗はしない。目の前の熱い湯が、この状況で酷くまともで良い物に思えた。]
此の土地を選ばれた事も。
水鏡も。
招待状も。
全て何かの確信犯なのですかねえ……。
[捩れているのだ。途切れているのだ。
“こちら”も“あちら”も。]
[いや、“あちら”に在る天賀谷の屋敷全部が“こちら”の世界へと近付いて、中途半端に二つの世界の狭間に落ち込んでいる。
その所為で、“あちら”に置いた彼女の身体は閉じ込められて、“あちら”との接点を失ってしまった。]
……許さぬ、許さぬぞ。
[めろめろと、闇の中で白炎が散った。]
[目を閉じても心は穏やかにならない。窓の向うの赤い月が目蓋の裏に焼き付いた様に離れず、仁科の眼球を圧迫する。
襟元を締め付ける物も無いのに、未だ息苦しい。]
…………──。
人は簡単に彼岸へ逝けます。
[仁科の眞つ白い肌が露になる。]
ここに留まるは、人の絆と知性と──けれど、正気や常識なんて誰が保証してくれるのでしょうね。
[独り言のように言いながら、仁科の衣類をたたみ、籠に置いた。
既に湯は充分な温かさと水量だった。]
[あのような人間により引き起こされた惨事は多いであろう]
[夜桜は、仁科を残し浴室から出ようとする]
仁科さんは、どう思われます?
[問うた]
─天賀谷邸の庭─
[気が付けば、へたりと地面に座り込んでいた。
動揺がありありと残る顔で、後れ毛を直しつつ立ち上がる。
スカートの埃を払って、また空を仰ぎ見る。驚きからはまだ回復し切っていないものの、その瞳は十分に毅然としていた。]
…矢張り幻ではないのね。
[果たして空の様子は、彼女が先程見ていたのと寸毫の違いも無かった。]
―屋敷の庭・勝手口―
[髪をおろし、外へと出る。
何処か生温さを孕んだ風が頬を撫ぜる。
既に朝日が射していた、けれど。]
……月?
[煌々と紅く、満月。
血濡れの水晶玉のようだ。
望月という名の御客様だったな、とふとあの刀の煌きを思い出した。
空へと手を伸ばす。]
どうして……。
[翠は紅い月を追うように歩み出し―――
だがそれは叶わなかった。
浮遊感。
戻される。
届かない。]
天賀谷様にお会いしなければ。あの方はきっとこの原因をご存知の筈。
『それから、』
[と付け加えた。脳裏に浮かぶは昨夜“屍鬼”を知っている様な雲井の言葉。]
『雲井さんにも。もしも天賀谷様の意識がまだ戻っていなくてお話できなくても、あの方ならばきっと何か教えて下さるわ。』
[くたりと力を抜き、猫の様な仕草で一瞬、夜桜にもたれ掛かる。そして何事も無かったかの様に湯に浸かった。
浴室を去ろうとする夜桜に、]
アァ、此処に留まらず、彼岸にでも何処にでも逃げちまいたいのが本音で。
──…ロクでも無いモンを呼び込みたがって成功した旦那様を恨みたい気持ちも多々。
しかし、旦那様にはご恩があるんでさ。
簡単には忘れられん事で。
[首を傾け、]
アァ、出来るのならば。
翠は守ってやりたい気がするがね…。
夜桜さん、湯を有り難う。
…恩に着るよ。
[屍鬼を滅ぼすにはその首を…──。
或いは心の臓を…──。]
アァ、アンタは誰かを躊躇い無く殺せるのかい?
[金色の目も黒色の目も見開いたまま、*問うた*。]
[鼻にかかったような笑い声を洩らす]
[唇が仁科の耳を掠めた]
全く、厄介な主人です。
[湯船の音がぽちゃんと響く]
翠を?
そう謂えば、昨晩は少々体調を崩していたみたいですね。
[去ろうとした背に声がかけられる]
[夜桜は振りかえると、変わらぬ微笑を仁科へ向けた]
ええ──。
[食事をとってきます、
と言いおき、夜桜は一度仁科の部屋を*後にした。*]
─天賀谷邸の庭─
[いつからそこにいたのか、地面にへたり込む、 大河原の姿をただただ見ている。]
……オクだな。そしてオキ。
[それだけを口にする。]
そう云えば、昨日お部屋に来て下さったのに、色々あってまだ雲井さんのお話を伺っていなかったわ……
[動揺を鎮めるように張り出した胸に両手を当て、屋敷に向かって歩き出す。
こんな時にでもその足はダンスのステップを踏むように滑らかに動くのだった。]
[屋敷へと戻る道すがら、昨夜見知らぬ男が近くに立ってこっちを見ているのに気付いた。]
……?
貴方は……
[柳眉をほんの少し顰めて男の顔を見た。]
………江原だ。
[とても不躾に名乗る。]
こんな山村の奥に、海の向こう豚の国から
やってきた化け物―それも屍鬼だとかが
現れるだなんて、オキとオクだな。
貴様も、そうは思わんかね。
[目も合わせずに、ただ淡々と話す。]
江原様。
ひょっとしたら昨日の晩餐会でもお目に掛かりましたかしら。ご挨拶もせずに下がってしまって、大変失礼なことを。
私(わたくし)は大河原碧子と申します。お近づきになれて嬉しゅう存じます。
…私は女ですから、難しい事は良く分かりませんけれど…。
[目の前の気難しそうな男に向かって曖昧な微笑を浮かべて見せた。]
……貴様は日本人なのか?
純粋な日本人ではない私ですら知っているというのに。
[神経質に、胸の略綬を弄る。]
オク…山奥も、オキ…海上も死者の住む世界という話がある。
オキからやってきた屍鬼が、オクに現れる。
何とも傑作な話だ。ここはすでにサト…
生者の世界ではないのかもしれないな。
[口の端を少しばかり歪めただけで、それ以外は平然と。]
まあ、どうでもいいことだが。
[嗚呼、と云う様に目を少し見開いて、]
私の郷(さと)では海から来るものは皆常世の国から来るもの…それ故にお祀りを欠かしてはならぬと云う言い伝えがありましたけれど、それと同じ事でしょうか。
[ほんの少しだけ柔らかい視線を送った。]
生者の世界でない…本当に天賀谷様たちが仰るような“屍鬼”が居るとお思いですの?
どうも、私には俄かには信じられませんわ。
…そんなもんだろうな。
[天を仰ぎ、目を細める。]
古来より、高貴な者が海の向こうより訪れ
文化をもたらした後去っていくという話もある。
[表情を変えず、貴種流離譚というものだ、と。]
私の生まれ故郷にも、似たような理想郷の話があるが。
島国という性格上、海の向こうへの憧れが強いのだろう。
[生まれ故郷―それは自分が戦った地でもある。]
……同じように、屍鬼のようなものですら
人によっては信仰の対象になり得るのかもな。
[ただ淡々と。]
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