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[白目を剥いて倒れた天賀谷を枚板達が介抱する様子を、口元に手を遣りながら不安そうに眺める。
不吉な預言者じみた天賀谷の言葉に、この場の雰囲気が一気に不穏なものに変わってしまった。
皆何処となく恐れを漂わせ、ピリピリした空気を纏っている。男達の中には既にその目に剣呑な色を滲ませている者さえ居る。
やがて、天賀谷が担架で運ばれて行くのを見送ると、もう一度深く長い溜息をついた。]
[白く整った貌が今では幾分か強張っていた。]
気分が優れませんから部屋に戻らせて戴きますわ。
御機嫌よう。
[そう言って浮かべる笑みも、そこはかとなくぎこちない。
それでも優雅に膝を曲げる会釈をして、流れる様な足取りで宛がわれた客室へと*戻って行く。*]
[動きのぎこちない左腕を補うかのように、
右手を器用に扱って食事を終える。
表情は、まるで神経が抜かれたよう。]
………君。
[その場にいた使用人の1人に声をかける。]
私の部屋に、釘が飛び出していると見受けられる
箇所があるのだ。気になるので、何とかしてもらえるか?
[それだけ言うと、自室へと移動する。]
あれは、確かジェイク君だったか。
[思いがけず、この屋敷の中で見知った顔に出会った。
まだ会話は交わしていないが、自分の信念とはいえ
かつての”英雄”が、その思想を転向した姿を
見せるのは、やや複雑な胸中である。]
…………。
[眉間に皺を寄せたまま、*自室へ戻る*。]
―天賀谷自室―
[枚坂は手際よく処置を済ませた。知識のない翠でさえも素晴らしい腕だと分かる程だ。
「大丈夫」
穏やかにそう謂われて翠の表情が幾分和らいだ。]
……ありがとうございます。
枚坂様が居てくださって良かった。
[深々と頭を下げる。
部屋を出る枚坂を見送ると、翠は息を吐いた。]
『屍鬼……首……
旦那様はどうして……』
[部屋の奥、微動だにしない天賀谷が居る。晩餐会でのあの様子を思い起こすと空寒い心地がした]
……後片付け、しないと。
[呟くと、翠は部屋を後にした。]
――一階・炊事施設――
[...は朝食の準備をすすめる厨房の者達に、大抵いつもこの位の時間には、裏口をくぐっているはずの子供の姿が見当たらない事を尋ねた]
……鳶口くんが、まだ来ていないって?
[朝刊太郎こと鳶口は、あの長い長い山道を越えてこの別荘に毎朝、新聞と共に牛乳を運ぶ少年の名だ。
万次郎は配達された新聞にアイロンをかけ、施波の手で天賀谷へと渡してもらうために、いつも少年を迎えているのだった。
時に道中で花を摘み添えて、その代金も得ようとする少年の強かさも、厨房に響き渡るほどの大きさで礼を言う彼の元気の良い声も、万次郎は嫌いではない。
しかし今日の朝、雨の酷い日だろうが欠かさず通ってきていたその勤勉な少年の姿が見えないことへの感想も、どこかぼんやりと零した]
珍しいですね…。
[――昨夜の騒ぎが嘘であったかのような、静かなこの朝。
ああ、今思えば。
油を売っている所をからかわれて、自分が水鏡に瑕など付けるはずもないと枚坂に必死で否定したあの時も。
望月を案内して現れた夜桜からの伝言で、慌てて晩餐会の段取りを聞きに施波の元へ駆けて行き、叱責される間中目を瞑ってやり過ごしたあの時間さえも。
…その後の出来事を思えば、和やかな時間と呼べるものだったのだ]
心配ない、お客様の中にはお医者様がいらっしゃるんです。
[一部を別にすれば、その場に居合わせた客までも丁寧な態度で天賀谷を助けようとしてくれて、おろおろとし、ほとんど何もできなかった自分は心強さを感じてほっとしたのを覚えている]
診て頂けているのだから、あなた方はどうか精のつく朝食をなるべく早くお願いします。
倒れられたのは旦那様だけではないしね…私にもお客様に朝食をお運びする位できますから。
[...は心配無いと言って聞かせるものの、果たして説得力があったかどうか。
昨夜自分も感じた眩暈は今はもう無かったが、開け放たれた戸からの風に流れる結った黒髪の先に触れ、何度目かわからぬ溜息をついた]
[――…「鴉の濡れ羽だな」
天賀谷の別荘から本宅への道中にあった小さく貧しい農村が確か、自分の生まれた村だったはずだ。
奉公が適わなければ、もう顔も覚えていない母は口減らしで、自分を川に沈めていたかもしれない。
言わば命の恩人とも言えるこの男に、たとえ何をされようが文句は言えないのだろうと、部屋にまで呼ばれて幼心に覚悟したものだ。
長く言葉も無くこちらを見ていた天賀谷を、遠慮も知らずにただただ真直ぐ見返した。
あの時の天賀谷の目はしっかりとこの世を見据えたものに見えたし、自分にとってはそれまで見てきた中で最も知性溢れる男の目だった。
その天賀谷が、汚れに塗れ汚いと罵られていたはずの自分の頭に短い間だけ手を置いて、零した一言がそれだった。
意味は分からなかったが、それを口にした時の男の瞳の色で褒められていると分かったのだ]
あの頃はあんなに…
落ち窪んだ顔はしてなかった…よな。
[それに、人に妄言とも感じられてしまいそうな、いかにもうわ言じみた発言をする者らしい調子の声質でも無かったはずだ。
...は放せば背に流れていく低く結った毛先から手を離さずに、昨夜見たそれではない主人の健康的な顔色を思い出そうとしている。
…だが、上手く思い出せなかった。
あまり髪を切るまいと思ったそんなきっかけも、もうずっと長く忘れてしまっていた。
あの一言が自分が天賀谷に今まででも最も近しく顔を合わせた際に下された最初の言葉で、今日に至るまでそれが唯一の機会だったようにまで思えてくる。
あまりに長い時間、直に言葉を交わす機会も、主人に対し失礼にあたらないよう伏せぬ目で近く姿を見る機会も少な過ぎた。
だから悲鳴のように天賀谷の名を呼んで、不安に思う気持ちが痛いほど感じられた翠ほどに自分はもう、もしかしたら天賀谷に恩を感じてもいなかったのだ。
主人がというよりも、屋敷での、別荘での食べるに困らない生活こそが――自分には、ありがたく感じられているものなのだと、今この瞬間にだって思っている]
人々が噂していたように、お亡くなりになるんだろうか。
――本当に?
[だがそれを想像してみる万次郎の顔に、まるで表情らしい表情は浮かばない。
自身では気付かずともそれは万次郎が、今から自分が家から捨てられると知った時、それ以上胸が痛むことの無いように、無意識で感情を閉ざそうと努めた日の顔にも似ていた。
大病とやらが本当に天賀谷の身を蝕んでいて、彼の命を奪うだろうか。
あるいは、身を憔悴させるほど天賀谷の心を苛む何かが?
それとも――…]
屍鬼、が……?
[忙しく働く者の邪魔にならぬよう、万次郎は裏口の戸枠に凭れて外を見ている。
昨夜の天賀谷の言葉を呟く万次郎の目もまた、この世ではないどこかを見据えようとしているかのように人から見えるかもしれなかった]
「屍鬼が現れた場所は異界に落ちる」……か。
[――鳶口少年はまだ*姿を現さない*]
異国人 マンジローが「時間を進める」を選択しました
─早朝・天賀谷邸の庭─
[和洋折衷のこの庭園を逍遙する。
昨夜の妖艶とも云える黒の装いと打って変わって、シンプルな白いブラウスに萌黄のカーディガン、濃紺のスカートと云う至って質素な服装である。
まだ山間部特有の朝靄は其処此処に名残を留めていたけれど、上々の晴天に恵まれそうな空の下にあって、その白い貌は俯きがちに曇っていた。]
──昨晩の回想──
──いいえ、あたしの事は気になさらず。
本当に博識であられますね。
そのような伝承、もっと聞きとうございます。
[夜桜は枚坂に笑みかける。さつきを支える雲井の二人を視界にとどめ、枚坂の耳に唇を近づけて囁いた]
あたしも、中国に居た事がありますの──。
旧き国には、実に様々な怪が潜んでおられたのでしょうね。
枚坂さまの昔のお話を聞きたいですわ。
[やがて、幼子のようにあやしげに水に手をつける、さつき。]
[其れは真実の朝だったのだろうか。
晴天になりそうな空で有るにも関わらず、時間が経過しても一向に霧は消えず──。よくよくもう一度空を見上げてみれば、不可解な事。太陽とはまた別に、森の樹木に隠れて薄気味の悪い赤い血の様な満月が西の空に浮かんだままで有る事が見て取れただろう…。]
──昨晩の回想──
[──やがて場面は移る。
天賀谷十三の姿は過去見た時に比べ、萎びた枯れ木を思わせた。従順なる召使いのさま、夜桜は周囲の動揺などに心煩わせているようには見えない。あくまでも、職務として、そこに佇んでいるように見えるが、見方によっては(軍人はそう感じるかもしれないだろう)、親が子が死んでも涙一つ流さないのではないかという雰囲気もあった。]
屍鬼──。
[ぽつり呟いた言の葉は、ひらりと散る]
[天賀谷が倒れ、辺りが騒然とし──
傍らの望月が、内なる狂気に(少なくとも夜桜にはそう感じられた事であろう)身を焦がされるのを拒否するように、「──うるさい」と連呼している間も、冷静である。]
[枚坂が動かす車のエンジン音を聞いて、放心した様だった仁科も、漸く自らの車を動かして確認してみれば良いのだと思い至った。運転手が車の事を思い出さないとは余程どうかしている。
そして結果は…──。]
[黒塗りの高級車の運転席で、ハンドルに凭れたまま]
…アァ、駄目だ。やはり駄目だ。
あのリンカーンのお客人は、枚坂様とおっしゃられたか…十三様をみてくださったと言うお医者様。
あの方は、無事、此処から出られたのだろうか……。
──昨晩の回想──
[夜桜は炊事場にとって返し、グラスに水を汲んできた。
なみなみと入れたために気泡は多い。
歩く間に、気泡は消え──
そっと差し出すと、望月は一息に飲み、落ち着いたようだった。その望月に問う。]
申し訳ありません。
先程、耳に入ってしまったのですが──どちらかの剣豪さまの血を引いておられるのですか?山田──何某と
[聞こえてしまいました]
[語尾は尻すぼみと化した。何故ならば、夜桜の元へ仁科が来たからである。
仁科の話は、屍鬼が現れた事を明確に示す。一月とは言え、仁科が酒を飲んでも酔わないという事は同僚からの話や噂話に聞いている。(同僚の失敗談から始まった話だったのだが) これは遂に──]
仁科さん、これは主人に伝えてしまいましょう。
あたし達に出来る事は
[と言いかけ、口を噤む]
──昨晩の回想──
[首を斬る感触が、掌に甦った]
屍鬼が混じっているなら、
首を斬るか心臓を潰さないとなりません。
[本来であれば、水鏡はもう直ぐ、ここより運び出される筈であった。この水鏡は本来は、このような男が持つものではないのだ。]
あたしも、外へ確認に行きます。
[仁科に頷きかけた後だった。
由良に食事の用意を頼まれる。召使いに身を窶している限り、斯様な雑務からは解放され得ないのであろう。が、──]
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