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[魔力を振り絞り、薄く光る針と糸を生成する。
それを右手に握ると、左肩の傷口から、縫合を開始する。]
くぅ…いたたた。
うーん、ひどいなぁ。
まぁ、そう見えるのも仕方ないかもしれないけど。
僕は、はじめましてなんだよ、マイマスター。
有体に言えば、二重人格ってことになるんだよね、僕達は。
はじめまして、マイマスター。
僕の事は、リチャードと呼んでほしい。
さっきまでここにいた奴の、名前はない。
強いて言えば、「彼」は、「ガトリング」…だ。
あなたの名前は? マイマスター。
― 回想・樹那森林公園南部からの脱出―
[久子が指し示す通りの「道」を一歩一歩辿りながら続く。
月は空を支配し、公園内は不気味な沈黙があった。
先程の、ランサーとセイバーの激突(近くに居たサーヴァント達が気づかぬ筈はない)
そして今、二騎のサーヴァントが話し合う中で披露される「魔法」――今の世の理の力ではないもの。それらが動植物の聲を静めさせる結果となっているのか。
久子の仕掛けた罠は、起動しなければそうとは分からないもの。致命的な傷こそ勿論「サーヴァントには」与えられないものの、隙を作れるだろうものは仕掛けられているようだった。]
よくこれほど仕掛けられたものですね。
[感嘆の声を上げた。罠の多さは、久子の逃げ足の速さに繋がるものなのだろう。]
あなたがリチャード……
彼、がガトリング……。
[座り込んだまま一応頷く。
疲れのせいか頭に霞がかかったようで
理解できているかは疑わしかった。]
わたしは露葉。香野露葉。
ところで。
がとりんぐ、ってなに?
てっぽうの名前?
ありゃ、知らないか。
まぁ、大して広まった兵器ってわけでもないしなぁ。
そうだよ。「彼」が最後に出した…虐殺機構。
いてて。
[手際よく、するすると傷口を縫合していく。
…まぁ、自分を処置するのは、得意とは言えないが。]
こうのつゆは、か…。
つゆは、って言うのが名前?
不思議な響きの名前だね。
- オフィス街 ビジネスホテル 508号室 -
[ランサーに服を着がえるように指示して自分はバスルームを使う。
さすがにシャワーの最中は眼鏡を外している。
普段は眼鏡と目にかかる髪のためその目は目尻がつりあがっていて大きい。鋭くはないが勝気そうである。
湯気でよく見えないがその体のシルエットは本任曰く大気晩成型…]
はあ、これで町を普通に歩けるよ。
[大分リラックスして今後の行動を考える余裕が生まれる。]
「教会」の登録って必要なのかなー。
[彼女にとって教会は、あまりお近づきなりたくない組織である。
教会に限らず組織に類するものには似たような感情を持っているのだあるが、母の死に関連した組織ということで教会は別格である。]
…聖杯って教会にあるのよね。
うまくいけば盗み出せるかも。
…もうすぐ応急処置が終わる。
そうしたら、魔力の消費も、もっと落ち着くよ。
と言うか、それ以上のことができる魔力はないようだしね…。
そうしたらさ、今日のところは、もう帰らない?
教会に行くのは、明日にしてさ。
僕はあの部屋、気に入ってるんだよ。
いい部屋を用意してくれてありがとう。
[微笑む。]
― 回想・樹那森林公園→オフィス街 ビジネスホテル ―
[久子の荷物を背負っているのはランサーだったが、着替える事についての会話が何故か出なかったために、ランサーはそのままの格好で商店街などを歩く事になる。
パっと見のランサーは、その歩き方も整ったものであり、中性的で綺麗な顔立ちゆえか(というよりは日本では決して見られない格好から)老若男女、自然に人々の注目を集める事になる。
にこりと微笑んでみると、微笑み返され、この国の人々も良き心を持っているとランサーは思った。
ビジネスホテルに辿りつき、マスターが様々な手続きを行っている間に、ロビーの様子を物珍しそうにしている。]
ヒサコ?
同じ部屋の方が貴方に危険が少ないと思います。
[急に視線を向けられ、不思議そうに問う。ランサーの観念からは、久子が心配したような事は起こらないだろう。そして、]
[部屋で寛ぐ事が出来たのは、やっと先程の事。
今、ランサーは、久子が出した衣服を身にあわせている。腕輪類は外す事はしなかったが、首飾りは外してベッド脇の机に置いている。
ネルシャツ。カーゴパンツの組み合わせ。ネルシャツのサイズはややきつかった。]
ふぅん。
それなら知名度はあまりなさそうね……。
[ぐらつく身体を支え、立ち上がろうとする。]
ええ、戻りましょう。
もしほかの敵に会ってももう何もできないもの。
あの部屋の物を作ったのはわたしなの。
気に入ってくれて嬉しいわ。
[ようやく立ち上がり、微笑んだ。]
−教会−
[非常に困っている。それはそうだ。
セイバーの問題もさることながら、どうやら先ほどから教会の付近で大規模な戦闘が発生したようだった。
教会の助手を向かわせたが、既に魔力は散っている。後片付けは大変そうだ]
今回の戦争は、とんでもない事になりそうだな・・・・・・
[未だにこの教会に誰一人としてマスターが到着していない。どうやら同タイミングで召喚が発生しすぎたせいで教会前で早速遭遇してしまったようだ]
しかし、ここから外に出て彼らに接触すれば俺がセイバーである事を知られてしまうな。
教会の人間がマスターだなんて、全く。とんだ不祥事だ。
[出来れば知られずにセイバーを失うべきだろう、彼はそう考えていた。いや、正確にはセイバーを失うかどうかという事は既に自分に対しての体裁でしかないのかも知れない]
[シャワーを止めて服を着る。
着替えを終えバスルームから出ると着替えたランサーの姿が目に入る]
やっぱり似合わないなあ…
[きつめのネルシャツは着られてはいるものやはりみっともな見える。
カーゴパンツも落ち着いたランサーの雰囲気とは異質すぎる。
日本人には見えない風貌と合わせると一目を引いてしまう気がする]
やっぱり服買わないとダメだねえ。
[出費を思い溜息をつく。]
[…少し、目を細める。
このマスターは、不思議な人物だった。
はっきり言えば、不審だ。
まず、自分で呼び出しておいて。
まるでサーヴァントに興味を抱いていなかった。
さらに、聖杯を求める、その意思を感じない。
…まぁ、そのあたりは、おいおい探っていけばいいだろう。
部屋が気に入っているのは、本当のことだし…。
…? おっと。
「僕」には、あまり時間はないんだったな。
今は、僕の存在は、酷く弱い…。
「彼」も、もっとマスターに興味を持てばいいものを。]
…言っていなかったよね。
僕は、アーチャーのサーヴァント…。
真名は、リチャード・ジョーダン・ガトリング。
これから、よろしく。
― ビジネスホテル 508号室 ―
体格が違う事はどうしようもない事です。ヒサコの手を煩わせてしまっているようですね。
[久子の溜息に]
ヒサコ。何か悩み事があるのですか?
ちょっと待て、まさか戦闘はセイバーが起こしたのか?
[まだセイバーは戻ってきていない。彼に何が起きているのか。ただ一つ言える事は健在なのだろう。魔力が彼に向かって流れているのははっきりと感じる]
はあ・・・・・・ ほんと、参ったなあ。
[苦悩の時間が続きそうだ、そう覚悟した]
あなた……アーチャーだったの……。
[銃を使うところを何度も見ていたが
全くその考えに至らなかった。
いまさらながら納得していた。
だが、真名を聞いても全く思い当たるものがない。
やはり知名度がないのだろうと思った。]
えぇ、よろしく……。
……ごめん、もぅ、限界……。
[すぅっと音を立てて血の気が引く。
視界が黒く塗りつぶされていく。
目を開けていられず、体から力が抜けていく。
そのままリチャードのほうへゆっくり倒れこみ、*気を失った。*]
― 自室 ―
ああもう、何が「あんたも色々大変だな」だよ、せっかくのチャンスをアホじゃねぇか俺はよぉぉー!
[手についた宗冬の血を水道で洗い流しながら、ケネスはそう叫ぶ。]
全く、やり難いったらありゃしねぇぜ。
……まあ、だが力を失っていたとは言え、向こうのサーバントはいつ復活するか解らなかった訳だし、撤退するタイミングとしちゃ間違ってないはすだよな。
うん、たぶん間違ってないはずだ。
[そう思い込む事にする。]
しかし、このバーサーカーって奴は思ったよりやっかいだな。
戦い出したら止まらねぇし、魔力消費は激しいし、おまけにそれほど強くも無いと来ている。
バーサーカーを使って聖杯を手にした奴なんているのかね?
いるなら是非ご教授願いたいぜ。
[そんな悪態をついた。]
[そう、今の今まで、僕…いや、「彼」も、この露葉という人も、名前を名乗ることも、どのクラスのサーヴァントであると確認することすら、してこなかったのだ。
どういう人なのだろう。
肩をすくめようとして、またも痛みを感じた。
…全く、懲りないな、自分も。]
…おっと。
うっ…重い、痛い…。
[倒れこんだ露葉をとっさに受け止めたが、ずるずると、一度地面に降ろす。]
はぁはぁ。 僕、非力なんだよなー。
[苦労して、背中に背負うようにして、持ち上げる。]
ふんぬっ…。
い、痛い…。
[涙目で息をつき、足を引きずりながら家に向かう。
*背中には、哀愁…。*]
[ランサーの心配げな瞳に少し戸惑う。]
服を買うのにもお金かかるんだけど、だいじょぶだいじょぶ、そんなに高い買い物じゃないから。
[言いながらランサーの外した首飾りが目に入る]
(あれが売れれば服なんて何何着でも手に入りそうだなあ。)
[隙をついて勝手に売りとばすことも考えたが、ランサーの瞳が悲しそうに曇ることを考えるとなぜか胸が痛む。
首飾りと腕輪を指差し尋ねてみる。]
ちょっと気になったんだけど。その首飾りと腕輪って大事なものなの?
−中央ブロック・噴水前−
[何故か彼は現在噴水の近くのベンチで”エビチュビール”なる表記があるものを口に含みながら休憩している]
くっ、人間というものはこんな泡だらけで苦いだけの拷問具のような飲料を好んで口に入れるのか。なんと野蛮な。
[付近の自動販売機に一部綺麗な斬跡があり、その中から入手したもののようだ。ちなみに実は彼が沖田総司である以上その隣に配置されていた”ワンカップ小錦”を手にしていたらこの結果は違うものであっただろう]
[手の中には球根が眠っている。既に戦闘から離脱した時点でその姿を戻していた。地面は侵食されたままだったが。
敵を断つために大地を犯す。皮肉なことにその剣は人類の在り方そのものとも言えるようだった]
しかし、まさかこんな状況とは。やはり体慣らしをして正解だったな。
[本来の魔力は影を潜め、その戦闘力は沖田という存在にごく近くなっていた。よく考えてみれば宝具も反応が悪く本来の力ほどは発揮できていない。他の力も試してみるべきだとは思ったが、雑魚同然のほかのサーヴァント相手に剥きになるのは見苦しいと考えての撤退であった]
早々にガーベラを真名発動すれば結果は出たかも知れんが。
[少しだけ。ランサーという魔力の色が好ましかったのもあった。もう少しだけ楽しませてくれる存在だろうと、人気の少ない噴水の前でグビっとエビチュを口に含む]
・・・・・・ ええい、苦い!!苦すぎる!!
[噴水の中に放り込んだ]
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