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[人数を頼みとしたかったのか、檻の中には思っていた以上に付添人があった。
昨晩の騒動を思えば、無理のないことではあっただろうが……。
クインジーはやや重い息を吐く。
誇らしげなノーマンの声と共に、兵士たちの喚声が上がった]
[──手枷の為に力が出ない。
枷さえ無ければ、ノーマンを振り払う事は容易であったのに。]
……………ノーマンさん。
鎖が無かったら、触れないんじゃないですか?
[挑発的な言葉を、わざわざ言う必要があったのかは分からない。]
これァ、化けモンだァ……
オレとァ違う、化けモンだァ……
だから、人前で服脱がすンも平気だァ……
だけンど……
化けモンと一緒に石ィぶつけられたオレは、何なンだろうなァ………
ああ、後ろのおまえ。おまえだよおまえ。
後ろのっておまえしかいねえだろ。
ちょっとどけや。
[顰め面で、セシリアを見下ろし延髄の辺りに踵を落とす。
ざわつく兵士たち。拍手をする者も。]
立場ぁわきまえな。おまえさんの手綱ぁ
俺たちが握ってること忘れなさんな。
[そう言い放つと、もとの形に戻るよう自警団に指示。]
[複数人の兵士でよもやということもあるまい。クインジーはそこに自分が居る理由がないことに気がついた。
檻から離れると、椅子の修繕に戻る。
その耳に、少し離れた檻からまた拍手と歓声が届いた。]
[延髄を蹴られた衝撃と共に、首の鎖が締め付けられ、口を開いてケホッと咳き込む。蹴られて、よろめいてもセシリアが倒れないのは、相変わらず手足を押さえられているからだ。
蹴られて痛みのある箇所は、すぐさま擦り傷よりも派手な痣になった。
咳き込んだ拍子にセシリアの口元が唾液で濡れたが、それを拭う者など、当然の様にいないのだろう。]
──…ッ。
村長さんと違って、殴るとか蹴るとか──それしか出来ない癖に。
そんなの、別に私……怖く無い。
[聖銀に囲まれているとは言え、この程度の打撲傷はすぐに消えるだろう──。
手枷の痣の位置にめざとくアーヴァインが気が付いた事を苦々しく思い出しながら、セシリアはそう思った。]
[「セシリア」を踵で蹴り下ろすノーマンにビクリと驚き、硬直する。]
……………ッ!
[「セシリア」の声を聞くか聞かずか――なるべく平然を装うように、歯を食いしばり、唇を噛み締め、無言で――慎重に「セシリア」の身体に服を着せてゆく。]
[「セシリア」に服を着せ終えると、その場から尻もちをついたように後退りし――ネリーはひどくひきつった表情で*檻を出た*]
兄貴と違って……なんだって?
[彼の声には、明らかな怒りが読み取れる。
兄と比べられたこと。それが怒りの
焦点であることは明確であった。]
そんなザマでも、大口叩けるのは褒めてやる。
ご褒美だ……後で母親に会わせてやるよ。
それまでは、これでもしゃぶってな。
[例の取り巻きの1人に命じて、どこかへ走らせる。
彼が戻ってきて、手渡したものをセシリアに投げる。]
母ちゃんの匂いがするだろ。
それでもしゃぶって懐かしい気分にでも浸ってな。
[投げ付けられたのは、女の小指だった。]
俺ぁ優しいからな。今はこれ以上痛めつけようとは思わんね。
[着替えが終わると、投げ捨てるように腕を放す。]
それにしても、今はこの怒りを受けてくれる
親切なヤツが必要だなあ。
それが、たとえば。たとえばの話だが、
おまえさんの母親だったとしても、それは偶然ってもんよ。
ハーハッハッハッハッハッハッハ!!
[邪悪な笑い声とともに、立ち去る。
去り際に、先ほどの少年を介抱していた
少女の顔面に蹴りを*見舞う*。
頬骨が折れる嫌な音が響いた。]
後で母ちゃんに会えるのを楽しみにしてな。
[頬に何かが当たる。
「それ」を見てセシリアは息をのんだ。]
……お、お母さん。
わ、私のお母さんに何をする気なの…?
お母さんは、関係…関係無いのに……。
[先刻、クインジーがこの服は母親が運んで来たものだ、と言った時に感じたえも言われぬ不安が、実体となる。
蹴られた時よりも痛みを感じた様な表情で、ノーマンを見上げた。]
[着替えが終わり、ネリーに続いてノーマンが出て行くと兵士達も素早く去って行く。
布が取られた檻の向う側、ノーマンが少女の顔面を殴る様子がセシリアにも見えた。]
(…お母さん。
お母さんは、私と違ってただの人間なのに。
あの子たちみたいに──されたら………。)
[もしも怪我によって不具者になれば、寡婦の一人暮らしは厳しいだろう。そもそも、それ以前にセシリアが人狼として捕まってしまった今、母親がこの村で生きて行く事が出来るのか──。
村八分。追放。
否、セシリアよりも先に母親が殺されてしまうのでは無いか。]
[絞首刑ならまだ死に際が楽だから良い。
けれども、ノーマンの口ぶりでは………。]
……………。
ごめんなさい、お母さん。
[檻の格子の外。詰め所の塀の向う側にある森の向うの、自分達の家の事を思い浮かべる。そして、少し太った優しい母親の顔を。]
[着替えが終わったようだった。ネリーが転がるように檻から出、哄笑と共にノーマンが姿を現した。ぞろぞろと兵士たちを連れ肩で風を切って歩み去ってゆく。
クインジーはシーツに手をかけ取り去ろうとした刹那――わずかに眼鏡の奥の少女の瞳に視線が吸い寄せられた。
どこか茫洋とした眼差しは哀しみの色を帯び、微かに揺れていた。]
なにか……されたのか?
[答えを期待できるはずもない問いがふと口をついて出ていた]
[クインジーの顔を凝視したまま、]
(お母さんの事を──彼に頼めるだろうか。
頼むとすれば、彼か神父様しか居ない…。
……でも。)
[そもそも。本来の娘「セシリア」を殺したのは、他でも無い自分だった。セシリアは感情の読めない淡い微笑を浮かべるとクインジーから*視線を逸らした*。]
[謎めいた微笑だった。
クインジーは一瞬虚を突かれたような表情になる。
言葉を発せぬまま視線を逸らした目の前の少女に、どのような言葉をかけたらよいものか判らぬまま、ただ顔を蹙めた。
手持ちぶさたに蒼穹を仰ぐ。ほんの一時、無言のまま静かに佇んでいた。]
――――――
衣服なるものを身に纏う人という生き物は実に面倒なものだ……と予は半ば厭きれ、半ば好奇に心騒がせながらその様子を子細に眺めていた。
眼下の檻の隣には、石垣が防壁として厳めしく立ちふさがっている。
その石垣の上に、蟾蜍の如くへばりつく黒い影があった。
予は何故にこそ斯様な場所に人が居るのであろうかと訝しんだ。いつの間にやら、石垣の隅、剪定されぬままに延び放題となった樹木の影に隠れるように、一挺の梯子がかけられていたのだった。
男は脂肪の纏い付いた重々しい巨躯を引きずり、蝸牛が這うような速度で石組の上を檻の方へと躙り寄ってゆく。
「ハッ ハッ せ、せすぃりぁ……」
押しつぶされた粘っこい声が男の口から零れ出ていた。
その男が村の中でうすのろとかごくつぶしと呼ばれているミッキーという名の男であることを漸く思いだした。彼はアーチボルド家の二軒隣の粉屋の息子だっただろうか。
程なくして梯子が見つけられ、男は兵士にこってりと油を絞られることになるのだが、その時には彼の思い描く至福の中にあったことだろう。檻の中を覗き込む彼の眼差しは恍惚とし、口元からはねっとりとした唾液が零れ落ちていた。
その様子はクインジーの目にも入ったのか、眉間の皺が一際濃くなった。
今はクインジーは家具の修繕を終えたばかりで男を気にする様子もなく檻へと向かう。
檻からシーツを取り去った彼の表情はひたすら不機嫌で、兇悪な容貌を際だたせていた。
――――――
[鐘楼の鐘が響き、時の変化を知らせた。
クインジーは神父の手を煩わせたことを知り、少々バツが悪そうに頬を掻く。しかし、少々時間にだらしのないところのあるこの男がその役目を失念することは度々あることだった。]
『取りに行かなきゃならねえ物もあったなあ……』
[元のように檻の鍵を閉める衛士を尻目に教会に向かいかけた足取りがふと止まる。人波の中から怨色を帯びた視線が刺すように感じられた。敵意を剥き出しにしたその面構えは、粉屋の若女将のものだった。]
「神様ァ信じてたって、このザマだよ! 一体教会はなにしてンだい」
[女将の教会とその番犬であるクインジーへの怒りは故ないことではなかった。]
[セシリアを弾劾したのはこの若女将であった。
彼女が何故にセシリアを訴えたのか、クインジーには確証のある真相を知り得ないことだった。
だが、そこに至る裏の事情としていくつか思い至ることがあった。
元々、粉屋という生業は村民の妬みを買うほどに豊かなもので、かくいう女将の家も少し前までは随分羽振りがよかったという。
それが変わったのは、この近辺の教会と信徒を管轄する修道会が村近くを流れる河川の水利権を得て大型の水車を建設してからだ。水路と遊水池の造成や水車の建設に関わるような技術は、聖職者たちによって研究され継承されてきた。領主は自領の発展のため、教会の設置と技術の移転に前向きだった。
だが、このことは粉屋のそれまでの寡占を脅かした。ここ最近では飢饉の影響もあり、生活に窮するほどに経営が傾いていたという。]
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