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もうさがって下さって結構よ。御支度は私(わたくし)一人でも出来ますから。
…ああ、そうそう。
翠さんに手が空いたら来て下さるように言って下さらない。
少し見せたいものがあるから、と。きっと伝えてね。
[礼をして退室しようとしたメイドに、そう言って艶やかな笑みを向けた。]
―宿の玄関から顔を出して―
うわぁ。
本当に、散り初めの櫻が綺麗ねえ。
良い陽気だし……。
別荘まで……歩いて行ったらどれ位だって言ってたかしら?
車を呼ぶのは止めましょ。
こんなお花見日和に、詰らないもの。
ねえ。女将さん、やっぱり電話はいいわ。
歩いて伺う事にしたから。
そうそう。郵便ポストは何処かしら?
あぁ……。左様なの。
じゃあ、郵便夫が来たら、出して下さいな。
糊、貸して戴けない?
新米記者 ソフィーがいたような気がしたが、気のせいだったようだ……(新米記者 ソフィーは村を出ました)
―朝・屋敷内―
[先程案内した青年――望月の姿を思い出しながら食器や骨董品を磨いて行く。]
刀、立派だったな。
あの方も剣の心得があるのかしら。
いいな。
[翠は嬉しそうな、楽しそうな笑みを口元に浮かべた。
後で話が出来るだろうか。
そんな事を思いながら。
その途中、同僚のメイドと顔を合わせた。]
お疲れ様。
水盆の水、もう取り替えた?
そう、ありがとう。――……え?
[続いた同僚の言葉に、翠はきょとんと首を傾げた。]
大河原様が私を御呼びに?
見せたいもの……なにかしら。
わかったわ、此れが終わったら直ぐに行くわね。
[翠は手にしていた皿を丁寧に磨くと、
そっと元あった場所に戻す。
大河原夫人は映画の中から抜け出してきたような美しい女性だ。
それだけではない、立ち居振る舞いも洗練されている。
万次郎が謂っていた様に、男性は勿論のこと
同じ女性としても、憧れるところであり]
『ちょっと緊張するな』
[大河原夫人の部屋の前に立ち、翠は扉をノックした。]
旦那様が求婚なさるのも無理からぬこと。
大河原様は綺麗な方だもの。
今回のお話はてっきり大河原様への求婚がらみだと思っていたのだけれど、どうもそれだけではないみたい。
さつきお嬢様と其の先生は不思議ではないけど、昨日尋ねてきた元軍人の江原様や
政治家の方、望月様、それから――あの遠くを見るような眼をした男性、とか。
どうしてだろう、
何をなさる御積りなのかしら。
[思案がぐるぐる頭を巡った。]
― 客間の一 ー
[来海は苛立ちを露わにしていた。朝から天賀谷との面談をいくら催促しても屋敷の人間の反応は冷淡だった。]
クソッ、晩餐会が始まるまでは誰も天賀谷のオヤジと会えないだと、ふざけやがって。
しかし、いよいよ危ないというのはどうも本当らしいな。アイツがくばったとき、俺は、どうする…… 今回の逗留、思ったより長くなるかも知れんな……
―回想―
母の記憶は朧、
父に至ってはどうだったかすら分からない。
独りだった少女を拾ったのは、
物好きな男だった。
どうして彼は自分を拾ったのだろうか。
哀れみか。
憐憫か。
単なる興味か。
其の何れとも違う。
屋敷に連れられて、
最初に見た蒐集品の数々。
古今東西の美しいもの。
あらゆるものの融合。
誇らしげな男の顔。
幼子心に、何となくだけれど理解した。
骨董品を集めるように。
美術品を抱くように。
絵画を愛でるように。
自分も其の1つとして拾われたのであろうと。
それでも、
確かに男は恩人だった。
忠義を尽くそうと密かに誓った。
拾われていなければどうなっていたかなど想像に難くない。
―――だから。
―自室・夜
[私は風呂敷包みを解き、額に納められた一枚の絵画を改めていた。
ロセッティが妻エリザベス・シダルを描いた素描。これらの素描は妻が亡き後、代表作『ベアタ・ベアトリクス』の元となったという。]
……入手するのには時間がかかった。
天賀谷さんの希望に叶うものであればいいが。
[呟きながら、手放す前の僅かな時間を惜しむように作品に見入る。深閑とした別荘の室内で、儚い運命を遂げた女性の姿とただ対峙していると料峭と寒気を感じた。
無理もない。高地にある別荘の気温は春先といえど、夜間は冬のように低かった。
寒気を払い落とすように、両腕を抱えると身を揺する。
その時、扉を敲く音がした。]
ああ、ありがとう。
気が利くね。
[折よくもたらされた温かい飲み物に表情が綻ぶ。礼を言いながら茶器を受け取った。
目の前の女性はどこか翳を感じさせながらも艶やかな気配を纏った女性だった。漆黒の髪は短く、軽快でモダンな印象を受ける。]
夜桜さんか……。
よろしく。
[花を冠した名前は私の旧く親しい人の記憶を呼び起こさずにはいられなかった。]
早速「夜桜」を観れて眼福だよ。
[私はつまらない冗談を言った。麓では散りかけた桜も、やや寒冷なこの別荘周辺では今が盛りであろうかと思いながら。
前に別荘を訪れた折にはその姿を見なかった女性だ。ここへやってきたのは最近のことなのかもしれない。]
―自室・深夜
[まんじりとしないまま何度もベッドの上で寝返りをうつ。寝所が変われば眠れないのはいつものことだった。
夜更けにふと響くエンジン音に訝しげに頭をもたげる。敷地を静かに滑り出してゆく燈が目に入った。]
逗留が何日かになりそうなら……いつまでもあの場所に置いておくわけにはいかないな……。
[――いずれ、と思いを巡らしながら、闇の中で目を*閉じた*。]
[―天賀谷邸敷地内―]
――へぇ。これは見事だ。
[感心した彼自身はその名は知らなかったが、咲き誇っていたのは花蘇芳。
誰か見つけて案内してもらおうと思っていたことも忘れ、ただ、立ち尽くす。]
―二階食堂―
ふ…あふ…
[誰も見ていないのを良い事に、万次郎は大口を開けて欠伸した。
客が全員揃った際の恐らくは豪勢に催されるだろう晩餐会のため、使われる食器のうち銀製の皿やら蜀台やらナイフやフォークを、舶来の磨き剤で丹念に磨いているのだ。
しかしこんなことを数時間も続けていればつい、軽口も出る]
…贅沢な奴らだよお前らは。
英吉利からのポリッシュとやらでこんなに丁寧に磨いてやらないと、その大事な銀の体は曇っちまうってのか?
[次なるお清めの対象、手の中の小さなティースプーンをまじまじ見ると、溜息にも似た息をふっと吹きかけ]
こんな小さい子までなぁ。
…水だけでさっぱりできる俺を見習え。
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