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次の日の朝、自警団長 アーヴァイン が無残な姿で発見された。
……そして、その日、村には新たなルールが付け加えられた。
見分けの付かない人狼を排するため、1日1人ずつ疑わしい者を処刑する。誰を処刑するかは全員の投票によって決める……
無辜の者も犠牲になるが、やむを得ない……
そして、人間と人狼の暗く静かな戦いが始まった。
現在の生存者は、書生 ハーヴェイ、冒険家 ナサニエル、学生 メイ、双子 ウェンディ、学生 ラッセル、村長の娘 シャーロット、見習い看護婦 ニーナの7名。
投票を委任します。
見習い看護婦 ニーナは、学生 メイ に投票を委任しました。
フゥッ…フゥッ…!
[個室の中。カーテンは閉め切り、ドアにも鍵を閉めてある。
暗闇の中で金色の双眸だけが浮かび上がっていた]
グゥゥゥ…
[ギリリッ…
不快な歯ぎしりの音が漏れる。
そして、継続的に聞こえる荒い呼吸音。
少女の部屋だったはずの空間は、今では檻と化していた。
双眸が消える。
瞼を閉じたらしく、その光は見えなくなり…
もう一度その瞳に光を灯した時、幾度もの風斬り音が闇の中を支配した]
[…風斬り音が聞こえなくなる。
ソレと共に漏れる吐息]
ハァ…ハァ…
[ジャッ。
カーテンは開き、外の光は部屋の中を照らす。
その中に居たのは、青髪の少女の姿だった]
…はぁ…
[窓を開き、その縁に肘をつく。
頬杖を付きながら外の様子をぼんやりと見つめる]
薬にも…魔力、にも…問題は無い、かな。
…すぐに、戦うって事が…無ければ、良いけど…
[中に籠もっていた空気が外気によって冷やされるのを感じ、目を細めた。
…実戦まで、薬を使わずに…また、魔力を使わずにいるのは不安があったらしい。
昨晩、鍛練を積んできたと思われるウェンディに触発された、と言っても過言ではないだろう]
見習い看護婦 ニーナが「時間を進める」を選択しました
――街外れ――
[オープンカフェになっている一軒のカフェ&バーに、一人の精悍そうな男性が氷を鳴らしながら、心地よい酔いを楽しんでいる。
周囲には、同じように一日という時間を楽しむように、様々な人々の楽しげな談笑が響きあっていた。
その隙間を縫うように、気配のない不気味な男が店内に入ってきた。だが誰も客は彼に気付かない。
男は、男性を見つけるや、大股に歩いて男性の体面に腰を下ろした]
「あん? ああ……お前さんか。何か用か?」
「……私は、貴様に招待状を出したのだがな。それなのに、何故あのような、まだ雛にすらなり切れぬ若造を寄こした?」
「若造? ああ、ナサニエルか? 何、ああ見えて俺が一発武器を造ってやるくらいの才能はあるさ」
「才能など必要ない。今必要なのは……確実に実行しうる実力のみ。その点でいけば、貴様の実力はいますぐに欲しい」
「か。男に欲しいなんて言われてもうれしくね〜な〜。おい」
「だが事実だ。これからを考えると、強者はいればいるだけ良い」
「で、いらなくなったら殺すか? どうせ今回の大会自体、それに基づいた選別だろ? 目の細かい篩で、小麦粉を落とすように」
[男の一言に、男性が醸し出していたそれまでの雰囲気を一変させ、ぎろりと男を睨みつける。だが、男もそれをわかってて口にしていた]
「必要で、そして命令であらば」
「……はぁ。相変わらず嬢ちゃんの尻拭いばっかか? そういえば前にいたのは……」
「八年前だ」
「そうそう。あの頃から、育ったか? 胸とか尻とか! 触り心地よくなったか?」
「貴様、それ以上愚弄すると、この場で逝ってもらうぞ?」
[今度は、男の雰囲気が変わり、隠すことのない殺気を噴出させる。
さすがに気付いたのか、周囲の客が談笑を止めて二人に視線を集めた。
男性は、相好を崩すと、何度か頭を下げながら、ちょっとケンカしちまった。と、場を取り成した]
「……お前、もう少し考えて殺気ばら撒けよ」
「愚弄する事さえなければ、私はそのような事などしない」
「ああ、そうかい。しっかし、あの嬢ちゃんがこんな事しでかす年になったのは、間違いないか」
「そうだ。そして力が要る。ここにいるのは、そのためであろ?」
「馬鹿抜かすな。不肖で甘っちょろい弟子にはちょうどいいが、俺には不要だよ」
「ならば?」
「俺が来たのはただの見学さ。弟子の最終試験の第一関門をどういう結論で切り抜けるかってな」
[そこで男性は残っていた酒を飲み干すと、椅子を大きく鳴らして席を立った]
「アーヴァイン」
[男性は、男――アーヴァインを初めて名前で呼んだ]
「余計な事はするな。変な事しやがったら……」
[それ以上言葉はなく、男性は酒場を去っていった。
残されたアーヴァインは、ウェイトレスにジンを頼むと、小さく息をついた]
「アーノルド、私は姫様に全てを捧げているのだよ。その忠告は聞けぬな。あの時のように」
[己の脇腹に一生消えぬ傷を付けたアーノルド、心の中で小さく微笑みながら、テーブルに置かれたジンをコップに注いだ]
冒険家 ナサニエルが「時間を進める」を選択しました
投票を委任します。
冒険家 ナサニエルは、学生 メイ に投票を委任しました。
――宿屋の一室――
[ウェンは愛用の弓を丁寧に磨いていた。その体には古代の文字が刻まれており、ウェンに読むことは出来なかったが、呪術道具を売っていた老婆が言うには、古代の言葉で『真の勝利を』と読むらしい。]
ユーニス、どうしようか?
私たちの力を見たいって言われたよ。
……力なんて見せたくないけどね。何の駒にされるんだか判ったもんじゃないわ。
[嘆息。手を抜くのは簡単だ。しかし、それではきっとシャーロットに失礼になるだろう。あの、昔気質で真面目な少女に。昨日の様子だと、主催者の目的がなんであれ、彼女は正々堂々と向かってくるだろうことは、容易く予想できた]
―市街地―
魔法の弓…か……
[...は思考しながら町を歩く。思考内容は自分の対戦相手…
ウェンディの攻撃方法…いたづらで見せたあの魔法を矢として射出する戦法。]
[酒場が面している大通りを横切り、
大通りから細かく生えている路地を観察するように歩く。]
……ここは…不利だな。
[階段によって高低差がある路地…特に低い方に自分がいたら良い的だろう。
高い所にいても…通常の弓ではなく魔弓。
低所から高所を射っても威力が減るような事はあるまい。
ならば、間合いをつめずらい分こちらの不利だ。]
[路地を抜けて町外れ、森が見える所まで来て溜息をつく。]
1番良いのは、そこそこ木々の乱立する林か…?
[自分の腕ならば、木々の間、長い槍を振りまわしても
つっかえるようなへまはしないし、身を隠し易く間合いをとりやすく。]
[けれど、そんな自分有利、ウェンディ不利な場所を彼女が承諾はしまい。]
それにしても……
[何故こんな武闘会をメイ様は開催されたのか。
試合前に他事を考えていては集中が乱れると言うものだが…
士官を目指す身としては…同じ女として姫将軍の現状の地位は
ある意味良い立身出世物語だ。
憧れは……ある。
だから、ここで何らかのアピールが出来れば、問題解決以上のメリットがあるだろう
……これが”通常の武闘会”ならば。]
[彼女が力をみたいと言った。これは暗に何らかの剪定を兼ねているのだろう。
…けれど、それなら非公開にする必要はなく大体的に武闘会を開いた方が
より多くの力を見ることが出来るだろうし、
そも…彼女の身の回りには自分達よりも腕利きの武官がそれこそ山の様にいるだろうし
非公開にする理由……力を探すことを知られたくない理由。]
[...はもう一度溜息をつくと、対戦相手がいるであろう酒場へと
今来た道を辿りながらも戻るのであった。]
[体に馴染んだ紋章入りの胸当てを装備し、短剣を腰にさす。
そして、ユーニスを両手で持ち、祈りを捧げるように額に当てた]
―――に、真の勝利を。
[呟く。誰のために祈ったのだろうか。声は小さく、傍に誰かがいたとしても聞こえなかっただろう。
ユーニスをいつものように背負うと、部屋を出て、酒場に降りていった。]
村長の娘 シャーロットが「時間を進める」を選択しました
―酒場―
おお、ウェンディ……どうだ準備は?
[酒場に戻った所で、丁度いたウェンディに手を振る...の姿は
手にはいつもの槍。身体は胸当ての部分のみ鉄で出来た柔らかな皮鎧。]
しかし、お互い武器があまりにも違うので、
戦う場所をどこにすべきか迷うな。
[そう言ってケラリと笑い。]
[宿屋の主人に頼み、カウンターで水を口に含んでいると、外からシャーロットが戻ってきた。
戦闘場所に困るといって笑う彼女に、ふふ、と笑い返す]
そうだね。
……シャーロットはちなみに、ここでだけは戦いたくないって場所はあるかな?
さすがに、あまり高低差がある場所…は、私は避けたいのう。
そこの大通りを左に行って3つ目の路地の様なよ所や…屋根の上とかな。
[そう言って肩を竦め。]
逆にウェンディ。
お主はどこで闘うのだけは避けたい?
あはは、そうだろうね。
[シャーロットの言葉に明るく笑う。逆に問われて、少し考え]
うーん、だだっ広いところかな。
盾になってくれる前衛が居るなら平気だけど。今日はそうじゃないから。一気に間合いを詰められたらもう、為す術がないよ。
本来弓兵単独で戦闘…は、な…
[ウェンディの回答に頷く。]
ふぅむ…ではいっそ、人通りのない酒場の裏口からスタート。
お互い戦いながらの駆け引きで
いかに自分有利な環境へ相手を引き摺り込むか
…も含めた戦闘と言うのはどうだろうか?
[...はごみ箱や、裏通りに面した建物から伸びる外部階段等、
若干複雑な地形でもある裏口一体を思い返す。]
/中の人/
中の人の趣味で選んだが、どう考えてもシャロ不利そうな場所ですがな(笑)
でも、裏通りで、少女二人がバトルって絵になるなーとか、とか(阿呆)
なぜこんな事に…
[...は思い出す。
そもそもの始まりは、鍛錬に飽きて休憩がてら街の観光をしようと、メイフォリアがサツキであった時に教えてくれた大学に足を踏み入れたことだったと思う]
部外者立ち入り禁止なんて札がかかってたら…
そりゃあ、そんな秘密の部屋の中で何が起こっているのか、覗いてみたいよね…
[...はだから、大学の壁をよじ登った。軽々と。
...は窓から覗いたのだ。
三階の窓から突然人が顔を出して中の人は大変驚き、手元がお留守に。
薬品を混ぜ合わせる実験中だったらしく、赤い液体が緑の液体の硝子瓶に一気に入り込み、爆発が起こった]
教授の頭も爆発した…
[まぁ男性自身は無事だったようなのだが、銀糸の混じった上品なロマンスグレーは楽しい鳥の巣と化した。
雛が5匹は飼えそう。
七面鳥がお勧めですと言ったら、ブチ切れられた]
手堅く鶏をオススメすれば良かったかなー…
[後悔しながらチラリと振り返る。
物凄い形相の推定教授の男性。
…わかっている。
七面鳥とか鶏とか、そういう問題じゃない。
広大な庭を駆けるラッセルとその追跡者の怒涛の勢いに、品の良い学生達も慌てて道を空ける。
「爆弾魔か」とか何とか言っているのが聞こえる。
そして当の本人は、その爆弾的に男性の頭を爆発させた何かの被害に遭ったわけでもなく、走りながら溜息をつく]
[高い木を見つけたラッセルは目にするなり、飛びつくように登り始めた]
謝ったって聞き入れてくれないんだものー。
ごめんよ、ぼくはこんな不慮の事故で捕まってる場合じゃないんだ!
一番上まで登ったら、近くの建物の屋根に飛び移って…
屋根から屋根に飛び移って逃げよう。
[思惑通り木の一番上まで登ると、登れない教授と思しき男性は木を揺すってラッセルを落とそうとして、幹に抱きついている]
あ、上から見ると頭頂部が薄い…
[もちろんこれほどの大木が簡単に揺すれるはずもなく、ラッセルは難なく屋根に飛び移る]
うむ、その暫しの間合いに関しては、メイ様に判断を仰ぎ、
彼女が出すタイミングでそれぞれ動くのが公平かもしれぬの。
[そう言って、...はメイの方を見る。]
[メイは承知したと頷く。]
[大学内建物屋根の上――
下から何やら喚いている教授的存在。
こうして見ると、毛に執着した悲しいおっさんだ。
彼は叫ぶ。
『下りて来ォオオい!!』
...は答える]
…ごめんなさい。
[息を大きく吸って、屋根の上から]
いっそ丸刈りにしてしまうのもおー、
ある意味男らしくてえー、
カッコイイと思いまーす!!
[薬もないのに何かまた爆発している鳥の巣頭のオッサンを尻目に、ラッセルは屋根から屋根へと飛び移ってその場を離れる]
ふぅ…これくらい離れれば、もう平気だよね。
[いつの間にかもう街中だ。
立ち並ぶ建物の屋根からはするりと壁を伝って下り、ぶらぶら歩きをしながらラッセルは考え事をそのまま口に出して呟く]
うん…
やっぱり木は、良いぼくの味方になってくれる。
ナサニエルさんがどういう闘い方をするのかわからないけど…木のたくさんある森なら、どういう闘いになるにしろ、ぼくだって結構やれるんじゃないかな。
でなかったら、ぼくは身のこなしには自信あるんだし、足場の悪い教会堂の斜面の急な丸屋根の上とか…
今度会ったら打診してみようか…
[目的のないぶらぶら歩きを続けている]
投票を委任します。
学生 ラッセルは、学生 メイ に投票を委任しました。
学生 ラッセルが「時間を進める」を選択しました
んじゃ、……始めようか。
[いつもと変わらない、朗らかな笑みを浮かべて、メイをあくまで眼中に入れず、シャーロットに酒場の裏口を指差して言った。
それから、ユーニスを手に、すたすたと裏口を目指して歩いていく]
うむ、決まったのなら善は急げだな
…もっとも、コレが善かどうかわからんがの?
[頷き、軽口を叩いてケラリと笑う…が、次の瞬間には表情を引き締め…]
では…いざ尋常に勝負。
[と、言い、酒場の裏口を開ける]
[酒場の裏口から外に出て、さほど広くない裏通りの中央まで歩いていく。そこで一度立ち止まり、ぐるりとあたりを見渡した。
窓から対面の窓に渡した洗濯紐には、色とりどりの洗濯物が翻っている。
足場の悪そうな木の階段や、大きなゴミ箱には、野良猫が陣取っている。
地面は完全に舗装はされておらず地面がむき出しのところがほとんどで、水溜りさえあった]
[ユーニスを手に、てくてく歩いてシャーロットとの間合いを広げていく。
やがて、止まれ、とメイから制止の声がかかり立ち止まった。距離にして20mほどだろうか。]
[メイの声。ウェンディの足が止まる。
...は、その声に合わせ槍をすっと構える。]
では…ゆくぞ!
[まずは、開いた距離を縮める為前方警戒を取りつつも走る。]
[ウェンはユーニスを構えた。狙いは駆け出してくるシャーロットではなく、頭上。やや自分寄りの位置に翻っている、洗濯紐]
ブレイドスピリッツ
【速射連撃・風錐矢】
[まず二射、一瞬間をおいて更に二射。4枚のカマイタチがロープを目指し、2本が見事に切断され路上に垂れ、干されていた洗濯物が、シャーロットの邪魔をする
外れた2枚の刃はそれぞれ壁と地面に直撃し、レンガ片と土片を跳ね上げた。
それを見届けるとすぐさま身を翻し、全速力で背後の階段を昇っていく]
20mしか間合いないんで……、さすがに連射は時間がかかるんで、槍持って走ってたとしても、大分縮められてると思うんだけど……。
あと、コンパス違うし(爆
あ…嫌だな、考え事なんてしてたから?
迷っちゃったよ…
[考え事などしていなくとも迷ってしまうのがラッセルだが、およそ見覚えの無い暗くて細い路地は石畳で完璧に舗装された表通りとは違い、むき出しの地面で溜まった水が、靴の下で音をたてた]
ふふ…でも、嫌いじゃないな。
こういう雰囲気だってさ。
[覗いた水溜りの中で、色とりどりの洗濯物が踊っている。
水に映る建物に挟まれた空は狭いし、すぐ傍のゴミ箱もきれいに使用されているとは言えないけれど、流れる雲も痩せた野良猫も、故郷の村のものと同じ色をして見えた]
都会にもあるんだね、こういう貧乏そうなところ…
きっとここの通りも、誰からも顧みられない場所だ。
[ふっと息を吐いて天を仰ぐと、目の端に洗濯物が落ちていくを捉える]
[ウェンディの声が響く。直後視界を覆う色とりどりの布。]
[ここで足を休め距離を開けるわけにはいかない。]
Hora fugit.
[短い詠唱。足元から一陣の風。
視界を追おう破片と土煙と布が舞いあがり視界がクリア−になる。]
[クリアーになった視界に移るのは階段を駆け上がるウェンディ。]
え?
[目を凝らせば通りの遠く、洗濯紐を切ったのはどうやらウェンディだ。
シャーロットも見える]
そうか…
闘いがもう、始まってる?
[急ぎ建物と建物の狭い隙間に身を入れる。
巻き込まれるわけにも、邪魔をするわけにもいかないが]
でも、二人がどんな闘いするか…見たい!
[自分の闘いの参考になるという以上に、興味があった。
隙間からそっと顔だけ出して、真剣な表情で目を細める。
案外良く見えるものだ]
ん…ウェンディさんが階段を登って…そうか、距離取ってるんだね。
弓も槍もずいぶん間合いが取れる羨ましい武器だけど、うんと至近距離に来られちゃ弓は困るか、そりゃ…
始まりましたね…本当のことを言えば、このような方法は取りたくなかった…
(ショウジキニナレヨ…)
許してくれとは言いません。
ただ、私は絶対に忘れません…
―――…始まった、か。
[ふわり、と。
夜に冷えた風が頬を撫ぜ、髪を攫う横顔に
口元へと柔く弧を浮かべる。
教会堂の鐘塔の縁へと腰掛ける一つの陰は、
街を駆け抜ける両者を、静かに見下ろしていた。]
―――…。
[立てた片膝へと右腕を掛け、
僅か細めたその視線は―――何を捕らえているのか。
微かに呟いた言葉は、*風へ溶けて*]
/中の人/
ついでにさっき使った魔法。
【単に風を起こすだけ】(あ)
持続時間は一瞬。
シャロの魔法は全部こんな感じ。闇と光りを上手く使いたい。
【本決定】
メイの目的は、長引く戦争で疲弊し、表向きはともかく内側は破綻しかけているこの国を救うことです。
そのため、クーデターを起こし王族をおよび貴族を抹殺しようと考えています。
自らは、国王に忠誠を誓う将軍が指揮する、第一軍および、第三、第四軍を鎮圧しなければなりません。
ゆえに、王族抹殺を託せる刺客が必要なのです。
そして国を救うためならば、どこまででも冷酷になれます。
人の命も要不要で、取捨選択することにためらいはありません。
[後ろを振り向いている余裕はない。
一足飛びで階段を駆け上がり最上段へ。扉があったが、さすがに中に入るのは住人に迷惑だろうというもの。
ユーニスを片手に持ったまま、階段の縁、続いて扉の上の雨避けに身軽に飛び乗り、目指すは屋根の上。
雨避けの上で危うく足を踏み外しそうになるが、あいている左手で、やねの縁を掴むことが出来て難を逃れる。
別名森林衛士と呼ばれる西の国境警備兵というのは、伊達ではないといわんばかりの身軽さだ。
そこで漸く、ちらりと一瞬シャーロットを振り返った]
(勝負を長引かせたら、こっちが不利―――!)
しかしその実、メイはこの国を、そしてこの世界すべてを憎んでいます。
市井で育ち、普通の少女として生きていた。
それがある日、王族だといわれ、養父母とも引き離されました。
その後養父母は、面倒を避けるためとして殺されています。
血のつながっている兄弟姉妹からは、疎まれました。
そして自らが望まぬ戦争に駆り出され、その手を血に染めました。
その心には、もはや消すことの出来ない大きな傷があります。
今までは、その傷が発する声を理性が押さえ込んでいました。
しかし、その声は理性が強引な手段を選ぶことにより、どんどん大きくなっています。
もはや、抑えきれなくなるほどに。
その声は、すべての破滅を望んでいます。
しかし、まだ自らの内なる声に気がついていません。
いずれ、その声に飲み込まれてしまうとしても…
というわけで、赤では徐々に内なる声が聞こえ始めます。
表の言動も、少しづつおかしくなっていきます。
でも、本来のメイも消えません。
自らが壊れていくのを自覚しながら、もはや立ち止まることも出来ない。
そういうロールを目指します。
[ストライドの差も有り距離は縮まるが、身軽さでは彼女が上。]
……ならば…
すまぬ!失礼するぞ!
[ウェンディが登った階段を持つ住居向いの戸を蹴破る。
呆然とする家人の横を通りぬけ、一気に階段を駆けあがり、
目指すはベランダがある窓の傍ら。
窓から屋根に上がろうとするウェンディの姿を確認する。]
/中の人/
向いでこっから攻撃も出来ないけど、ウェンも出来ないかな?
多分。そこからどう動くか。
魔法の可能性を向こうは考えるだろうけど…
こっちに飛ぶようなら、魔法でフラッシュか闇のどっちか…
フラッシュかなぁ?
…何今の風?
自然の風が地面から上に向かって吹くわけ…ない、よなぁ。
[自然に起こった風でないのなら、人が起こしたのだ。
そして視界の邪魔になっていた破片やら土煙やら布やらを舞い上げた風は、シャーロットを中心として起こっていた]
槍だけじゃなくて…
シャーロットさんは魔法使い…だったのかな。
[思わず胸がときめく。
自分にはさっぱり縁の無かった神秘の力はやはり、憧れの対象だ]
だいたい弓矢でレンガだの土片だのまで跳ね上がるのも変な話だし、もしかしてウェンディさんもそうだったりして…
[どきどきと見守る二人の姿、小さなウェンディの姿は先ほどまでの位置からは見えなくなっており、視線を彷徨わせると雨避けの上に飛び乗っていた。
難しい足場も、屋根の縁を掴んで難を逃れている]
うわっ危な――…おお。
へぇ…凄い身軽だ。やるなぁウェンディさん。
[一方シャーロットは、その向かいの住居の戸を蹴破った]
…ををを意外と豪快ッ!
[だけどもこんな時にまで、ちゃんと住人に謝っているらしい声が外まで聞こえてくる。
さすがの礼儀正しさだ]
あ。
いや…謝るんだ。
うん。シャーロットさんらしい…
/中の人/
つーか、身軽さに対する賭けだよな―どこまで身軽か…
こっちに来ることが出来るくらい身軽で有りますように―(-人-)
[居るだろうと思った視線の先にシャーロットは居なかったが、代わりに激しく扉を開ける音と、向かいの家から住人の驚愕する声が聞こえ、そこに行ったのだと知る。
ひらり、と屋根に飛び乗り、身をかがめて様子を窺う。
シャーロットはベランダのある窓の傍に身を潜めているようだ。ウェンは屋根の上に立ち上がらず、膝を突いたまま弓を構える。
弦のない弓が撓り、ウェンの右手に光りが集まりだす。]
シュートロック
【飛礫矢】
[小石が弓から放たれ、シャーロットの居る窓のガラスを打ち抜き、砕いた。キラキラとガラスの破片が舞い散る]
[ベランダの傍に駆け寄った所で、ウェンディの手に光りが集まる。
直後打ち込まれる石礫によって窓ガラスが破壊され破片が舞う。
全力疾走直後で次の行動に動く間もなく、
ガラスの破片が...の頬を先そこから血が流れる。]
[熱を持ち痛む頬を抑えつつ、窓際の壁に身を隠し相手の動きをみる。]
あ。屋根に行かれちゃ見えないな。
うっし。よじ登って上から見ちゃえ…
[比較的高めな、離れた建物の屋根の上から観てやろうと、例によって煉瓦と煉瓦の隙間だの、窓枠だのに足をかけ、よじ登っていく]
…うっ?
[ガラスの割れる音に身を竦ませて、それでも思わず雨どいにしがみ付いたまま振り向くと何故か窓が割れていて、僅かだがいくつかの破片が通りへも降っている。
キラキラと太陽の光を反射して美しい]
きれいだな…でも…
[...はぎゅっと落ちないよう雨どいを掴んでいる手を、より強く握って]
危ないな…ガラスの破片って危ないよね。
何で割れたんだろ?上から降ってきたのが刺さろうものなら、下手したら死んじゃうよなぁ…。
[下に人がいなくて良かったと、大きく息を吐く。
すぐさま室内の壁に身を隠したらしいシャーロットが、破片で傷を負っていたことには気付く暇は無かった]
(さて如何しよう)
[魔力的には問題はない。あと1回くらい速射連撃を使ってもまったく大丈夫だろう。問題は体力だ。子供のなりをしているとはいえ一介の警備兵だ。それなりに鍛えてはいるが、所詮大人の体格で槍をつかうロッテには適わない。
窓の端にロッテの姿が見え隠れする。]
(―――よし)
スウォームフロスト
【速射連撃・雪結矢】
[4本の氷の矢が激しい吹雪の如く、シャーロットに襲い掛かる。勿論狙いは足元と肩。避けられなければ、射られた箇所が凍りついてしまうだろう。]
[ここで先行切っても良い的、むしろ静かに潜み相手の魔力無駄打ちを誘う。
壁に潜み要素を伺う…視界に新たな光源を認識
何度か見た呪文射出の動作。瞬時に窓から距離を取る。]
[が、そこで瞬時思考…左足が氷の矢に縫い止められる]
[住人の嘆き声。完全に破壊された窓枠と凍てつく窓際と、床に刺さる氷の矢。]
[走る激痛に眉を顰めながら呪文詠唱を開始する]
capta ferum victorem
[4本のうち1本が狙い通りロッテの動きを封じ込めたのを確認するやいなや、次の呪文を詠唱する]
ライトニング
【雷撃矢】
[全身の麻痺を誘う一条の光がシャーロットめがけ飛んでいく。シャーロットの呪文完成が速いか、それとも矢がシャーロットを捉えるのが速いか?]
対象…相手の視界、発生瞬間の闇…
[相手がこちらの動きを封じたのを確認し追撃を仕掛ける。
それにもかまわず、相手の視界を瞬時闇で封じ出来る隙に……
……...は全力を込め槍をウェンディへ投げつけた]
あっ、やっぱりそうだった!
ウェンディさんまで魔法使…何ていうのか分からないけど、とにかくあれぞ正しく神秘の力ッ
[登りきった建物、屋根の上で腹ばいになって闘いを覗き見るラッセルの目に、今度こそはっきりとそれが映った。
ウェンディの手に光が集まり出したかと思うと、どうやら未だに弦の張られていない弓が撓り、そして生まれて放たれたのは4本の氷の矢だ]
カッコイイ……!
[自分に向けられたなら到底そんな感想は抱けないだろう攻撃だが、素早く連射される氷の矢が吹雪のようにシャーロットへと向かっていくのを目で追った]
え、あのまま避ければ良かったのにどうして?
うあ…冷たそう…
[迫る氷の矢を軽やかに避けると予想されたシャーロットの動きが途中で止まって、縫い止められた左足が床ごと氷に覆われている。
自分の足が攻撃を食らったような気持ちになって、ラッセルは顔を顰めた。
彼女が動きを止めたのは理由があるはずだ。
注視していると、詠唱する声までもは聞こえないまでも、何かのために集中していることだけは見て取れる]
あの様子だとシャーロットさんも何か…
呪文を唱えるのかな?
今度は何が起きるんだろう…
[覗き見るラッセルの瞳が期待に輝き、シャーロットに注目する中、更なる光矢がウェンディから発せられて向かっていく。
強く握りしめられた手の中でどっと*汗が噴き出た*]
[雷撃が弓から放たれた瞬間、視界を覆う黒い闇]
―――!?
(横に逃げて!)
[驚愕に一瞬混乱を起こすが、いつもの、ウェンの身に危険が迫ると聞こえる声が聞こえたと同時に、反射的に横へ転がった]
きゃぁ!
[――が、混乱を起こしていたため動作が遅れ、槍先がウェンの左腕を裂き、赤い血が流れる]
Divide et impera.
[左足に対し発火呪文を唱え、火傷覚悟で一気に解凍しベランダへ駆け出る。]
[ベランダから伸びる洗濯物を乾すロープを外しウェンディの方を向く]
[槍が手を離れ向こうに到達する直前辺りか。
足を縫い止められ、かつ回避行動をとれなかった...に雷撃が直撃する]
……っ!!
[全身に走る痺れに、...は膝に手をつき行動が止まる。]
[二人の戦いを何の感情も無く、ただ見続ける。その姿は武闘会を観戦というよりも、学者が実験のデータを取っているのに似ていた]
間合い…詠唱………
[膝立ちでユーニスを構える。裂けた腕から血がユーニスに伝わり、そのままぼたぼたと屋根に流れ落ちる。
膝をつき、行動が止まったシャーロットに次の矢を番える仕草をするが、ウェンにもさすがに体力的な疲労が見えた]
―――で。
[どっちが勝ちなの、とメイに視線を送る]
双方ともに踏み込みの甘さが見られますね…
やはり短い間とはいえ、ともに過ごした故の情ですか?
そのようなものは私には不要です。
(ソウダソノトオリダ)
この二人では、厳しいのかもしれませんね…
(ワタシニハフヒツヨウナソンザイ)
心に留めておきましょう。
(コワシテシマエ)
[魔力的な余裕はあっても、ユーニスを構える左腕を負傷しているため、構える手に力が入らない。集中して射れたとしても、せいぜいあと1回。それも中るかどうか。]
[ウェンディがこちらを見たのに気づき、吐き捨てるように呟く]
甘い…なぜすぐに止めに行かないのですか…
それともアレでしとめたと?
麻痺など一時的なもの、戦意は失われていないではないですか…
[視線をロッテに戻し、ふん、と気にした様子もなくメイに答える]
一時的でも、致命的よ。
私がユーニス構えてるのが見えない? 後1回くらい速射連撃したって平気。
しかも、ロッテは最大の武器を失ってる。
……甘い? たかだか”武闘会”で? 止め? 戦場じゃない。命をとる必要はないと考える。
[ウェンは、相当やる気をなくしたようだ。もともとそれほどこの武闘会に意欲的でもなかったが。]
………。
帰る。
シャーロットの勝ちにでもすればいいわ。
[構えを解きユーニスを背負うと、左腕の傷も構わず、たんっと屋根から階段へ飛び降り、そのまま酒場へともどっていく]
とは言うものの、武闘会なのに…?
私は片腕と両足を失い、それでも残された腕で這いずって敵の喉笛を食いちぎった戦士を知っています。
本当に勇敢な部下でした…
戦士とはそうあるものです…
そうでなければ………
[言葉は吹き付けた風にまぎれて途切れる]
[まだ麻痺が残るシャーロットをちらりと見やる]
まもなく解けますね。
宿に戻ってください。
その位は自力で出来るだけの余力、まだまだ残しているはずです。
[そして二人が戦った跡を仔細に検分していく]
この二人は、私の望みにかなわないでしょう。
優しすぎる、甘すぎる…十分な力があるだけに、惜しいのですが…
(ツカエナイヤツラダ)
[二人の壊した跡、それぞれの位置取り、さまざま情報を統合し、二人が出し切っていないであろう実力を推定する]
全てを見れなかったのは残念ですが、まあこれだけでも、十分に有用です。
良しとしましょう…
[アーヴァインの部下を呼び、あとの処理を指示する]
では任せましたよ。
[少し考え事をしている雰囲気のまま、*立ち去った*]
――宿屋の一室――
[ずいぶん血が流れたので深く切ってしまったかと思ったが、それ程ではなかったようだ。患部を洗って傷薬を塗り、清潔な布を患部に巻いた。
腕を伸ばしたり曲げたりし、多少痛みは走るものの、弓を使うのには影響なさそうだと判り、小さく安堵のため息をついた]
………。
[姫将軍と字される主催者は、ウェンが止めを刺さなかったことが不満だったようだが]
……あの人、ほんとに“将軍”なのね。
[彼女の言わんとすることは判る。戦場においては情けはかけるべきではないだろうし、もし対峙していたのが国境を破ろうとする極悪人なら容赦しない。
が、シャーロットは違うし、しかも彼女に戦意が残っていようがいまいが、あのとき勝負は決まっていたではないか。
力が見たいというなら尚更、止めを刺す必要が何処にある]
所詮は“駒”か。
[彼女の基準なら、ウェンが言わなくてもシャーロットを勝者とするだろうが、勝敗などもうどうでも良かった。
情報はたしかに欲しいが、今まで通り、自力で集めればいいのだし。
それよりも、あの姫将軍が気に食わない。おとなしく従う気になど全くならない。]
あー、しんどいなー、もう。
[体がではなく、精神的に。]
……無視しちゃえば良かった、あんな招待状。
[ここに来て良かったことは、ナサニエルに再会したことだけだとひとりごちる。
ウェンはベッドに体を投げ出すと、そのまま*目を閉じた。*]
[執務室で昨夜の二人の戦闘を組み立てなおす]
やはり双子ですね…同じような力を持っていたということでしょう。
アーヴァインが目をつけたのも納得できます…
[2年前戦場で出会った異形の狂戦士を思い出す]
戦場に現れた異形の戦士。
その戦士の強さは異常であり、たった一人に全軍の運用が影響を受けるほどであった。
一人で数百人の兵をなぎ払い、軍の士気は目に見えるほどに低下していった。
士気を取り戻すため、一計を案じ、罠に陥れる。
しかしその罠さえも食い破り、深く傷つきながらも本陣まで乗り込んできた狂戦士。
[狂戦士との最後の会話を思い出す]
彼は暴れ狂いながら泣いていました。
「もう人は殺したくない。誰か止めてくれ、自分を殺してくれ」と…
彼は気づいていなかったのでしょうか、自らを止めるものもまた、人を殺める事になるということを…
私が彼の頚骨を砕き、心臓を破壊した時、彼はウェンディに詫びていました、一人にしてすまないと、幸せになってほしいと…
そのウェンディを、今度は私が利用しようとした…皮肉なものですね…
[一人嘆息する]
(チガウダロウ リヨウデキルモノハゼンブリヨウスル ソウダロウ?)
(リヨウデキナイナラ ホカニヨヨウサレルマエニ ショブンスル ソウダロウ?)
[ウェンディの双子の兄であるリックのことを思い出し、そしてウェンディの調査報告に目を落とす]
おそらく、彼女の成長が止まったのは、兄のせいでしょう。
双子ゆえの共鳴が、リックが調整を受けた際に悪影響として出たのでしょうね。
私にとっては、さしたる意味もないことですが…
[新たな調査書に*目を落とす*]
(ソウダ カンケイナイコトダ イマヤクニアツカドウカ ヒツヨウナノハソレダケ)
(ヤクニタタナイナラ ソンザイスルイミハナイ ショブンシロ)
(コワセコワセコワセコワセ)
[メイに命令され、アーヴァインはウェンディとシャーロットの戦闘跡の処理を行っていた。
特に方法の指定はなかったので、金、脅迫を中心としながら、手際よくこなして行く。
その過程で、ふと遠目からもわかるくらいににやにやと口元を歪ませている一人の男性に気がついた。
いつからいたのかわからないが、昨夜のやりとりから、少なくとも戦闘は全て観戦していたのだろう。
アーヴァインは、残りを部下に任せると、すばやく男性の傍に走った]
「アーノルド、何をしている?」
「昨日も言ったぜ? 弟子を見に来たと」
「昨夜の闘いは貴様の弟子ではない」
「暇つぶしだよ。別に見てても、俺なら問題ないだろ?
[確かに、アーノルドは口が堅い上に、彼が見学というなら、本当に見学なのだろう。そこは幾度も戦場や夜の闇の中で渡り歩いたアーヴァインが一番理解している。
そんな事を思いながら静かに処理を見ていた沈黙を、アーヴァインが破った]
「先の二人、どう見る?」
「あん? 俺に聞くのか?」
「私の目だけでなく、第三者の視点も欲しい」
「そうですカ。まぁ、そうだな……。現状、使えるのはちっこい嬢ちゃんだろうな。だが、エバンスのお転婆娘、あれは将来性が楽しみだ。普通、あの土煙の中で槍を投げるなんて、百害あって一利しかない。記憶力とその後の推察力が優れているんだろうな」
「ああ、それは私も感じた」
「場数を踏ませれば、本気で有名な英雄様の出来あっがり〜。なんて事になるぞ」
「だが、勝者はウェンディ=レーニだ」
「あっちもあっちで、まだまだ伸びるが、ま、魔術師に師事した方がよくね?」
「ふ……」
「んだよ?」
「いや、貴様が育てたいとのたまうのか思ってな」
「やりたいけどな〜。いい体に育ちそうだし。東洋風に言えば光源氏計画っての? 育てて自分好みにしちまうか。ってとこか。でも、俺は魔法に関してそんなに使えるわけじゃないし、育てるならシャーロットだろ」
[すでに、早熟な実がいいしな。と涎を垂らしそうなアーノルドに、小さく嘆息する]
「と、早熟で思い出した。用事があったんだ」
「……貴様」
「あ〜、いや、お前さんが思ってるようなもんじゃなくてな、所謂お風呂遊びってもんだ」
[その回答に、仰々しく溜息をついて、手を振るのを見ると、いやらしい笑い声を残しながら、その場を去っていった]
(『完全なる処断者』……。あんな風貌と性格では、誰も超一流の殺し屋とは思うまいな……)
――出会い宿――
[どんなに寂れた街といえど、出会い宿は存在する。長い旅の過程で、恋人を思い起こすもの、逃亡の果てに疲れ果てたものなど、様々な人々かそこを利用した。
その一室の中で、腰にタオルを乗せた姿のアーノルドがいた。
頭の下には程よく赤く染まった女性の太股があり、所謂膝枕の体勢をしてもらっている。
蜂蜜を落としたような滑らかな金髪が、隠される事のない肢体に流れて、見事なコントラストになっている]
「あ〜いい気分だ」
「ふふ。そうですか? 私も良い気分ですよ」
[そう言いながら、アーノルドの髪を梳る仕種に、女性は口元を綻ばせる]
「それで……如何でしたか? あの子の武闘会は?」
「そうだな。将来性を見れば、いいメンツを揃えたよ。ちゃんとした人間につけば、最低でも一角の将軍様だろうさ」
「あらあら。さすがですね。私より人の見る目があります」
「な〜に言ってやがる。俺様を見つけたんだ。お前にも目利きはあるさ」
「そうですね。うふふ」
[コロコロと笑う女性は、それは美しい。
よくある絵本に出てくるお姫様など、こんな笑顔なのだろうと思わせる可憐さだ]
「いや、実際にそうなんだけどな」
「はい?」
「なんでもね。顔を汚して、娼婦紛いして、こんなところにいるなんざ、誰も気がつけねぇもんだろうなってな。まだまだ己を、『こっち方面で汚す』という発想のない嬢ちゃんには想像もつかないだろう」
「あの子は……あのままでいて欲しいのです。そのために、私はいつかあの子に殺されるかもしれませんが、それまでは良き姉でいたいのです」
「普通はいらん決意だわな」
「体が弱く、あの子を助けて上げられなかった、私の宿命ですよ。ああ、そういう意味であれば、貴方にも辛い選択をお願いしてしまいましたね」
[それが何を意味するか思案して、思い当たった先に苦笑した]
「バッカ。別にいいさ。あいつにはシャーロットがいる。わかってくれるさ」
「アーノルド……。いえ、アルトカイゼル=エバンス伯爵……」
「よせって。俺は殺し屋のアーノルドだ。それ以上でもそれ以下でもない」
[その決意は女性にはありがたく、それでいて自分の罪を見せ付けられる結果になる。だから最後に目元を引き締めると、凛とした誓言を口にした]
「全てが終わるその日まで、私の傍にいてください。そしてあの子がどんな道を歩もうとも、今は静観してください」
「……イエス、マイマスター」
[アーノルドと女性は、そのまま何もせず、何処か遠くを見つめていた]
ポイントが凄い事になるなぁ…喋らないと。
ともあれ、お二人はとりあえずはお疲れ様!です。
やっぱり、魔法があると幅が広がりますね!
今日はなさにーとラッセル…なのかな?
今度はどっちも魔法は使いそうにないですが…どういう所で戦うんでしょうねぇ…
自分は障害物の少ない広場とか道とか選びそうな感じですが…
[…第一回戦…が、あったらしい。
あったらしい。ソレは、実際に見たわけではないからである。
その時、少女は部屋の中にいた。
しかし、何か、微弱な魔力…を感じ取っており、更に、耳をすませば何か非日常的な音が聞こえたのは覚えている。
…そして、確信を持ったのは。
酒場で食事を取っていると、騒がしい客達の中から、断片的に聞こえたからである]
「…酒場の裏の…」
「魔法…」
「…家の中にまで…」
…
[一体、あの四人の中で、誰が戦い…魔力を使ったのか。
外に見に行けなかったのは、少し不味かったかな…
過ぎた事を思いながら、フォークを口へと運んだ]
[…パンを千切ると、口の中へと放り込む。
…と言う事は、第二回戦があるのだろうか?
そうなると、次は自分とハーヴェイ…それとも、もう一組の対戦者…なのか]
あの、マスター…伝言は、ありますでしょうか…?
ぁ…そう、ですか…
…それと、何か…ノンアルコールのドリンクを…
[カウンターに戻ってきたマスターに声をかける。
問いかけには横に首を振るマスターに、少女は軽く視線を落とす…一つ、注文をして。
出されたレモンとハーブが少量入った水を受けとると、軽くグラスを傾けた]
[酒場から裏路地に向けて激しい戦闘音がした事から、誰かが闘ったのだろう。
そして誰かが勝ち残った。
ただ、参加者的に、自分以外は武闘会という言葉にによって死を意識していないように思える。だから、誰も死にはしないだろう。
そう考えると、自分の相手であるラッセルは可哀想なのかもしれない。
何故なら――]
俺は、目的のためには一切の手を抜かないからな。
[殺し屋として、様々な戦闘術を押し込まれた彼にとって、おそらく正面対決になるだろうラッセルとは、相性がいい。
気になるのは片手剣以外に持ち合わせている能力だ。
類まれなる腕力?
神速を生む脚力?
繊細な策の知力?
それによって条件は変わるが、それでも依頼遂行を目的とする殺し屋稼業には、一つのポイントでしかない。
まだ誰にも見せない、武器名が有名なチェイン=ファングを戦闘用の黒い上下の服に備えると、隠すように黒いマントを着込んで、酒場でラッセルの登場を待つ]
[…パンを千切る。
と言う事は、武器の扱いを主としているのに、魔法を扱うだけの技量を持つ事になる。
そういう者達が集められているとするならば…
武器を見せていないハーヴェイは、タダでさえ予測出来ないのに、ソレにくわえ何をしてくるかも分からない。
魔法?武器?格闘?投擲?射出?隠し武器?
また…自分と同じように?
…パンを口に含み、咀嚼する]
…
[マスターが少女の後ろの席に座る男に目を丸くするが、注文はあるのかどうかを問いに行く。
ようやく、その時点で少女は後ろの席に見知った顔が居る事に気がついた]
[軽い音をたてて、ウェンが階上から降りてきた。出で立ちも、元気そうなのもいつもと変わらないが、一箇所、左の二の腕に布を巻いている。]
おはよう〜
[寝起きなのか、目をこしこしと擦りながら、酒場にナサニエルとニーナの姿を見つけると挨拶した]
―裏路地―
[...は剣一本を腰に下げて、兜もなく、他に身を守る胸当てといった装備を身に着けるでもなく、道で昨日闘いのあった場所を眺めていた]
ウェンディさんもシャーロットさんも、痛そうだった…
でもお互い一歩も引かなくて…
殺そうって気はなくても、倒そうって気持ちは伝わってきた。
お互いにお互いを…今まで仲良く話して、一緒にご飯なんか食べてた人を。
…あんな風に、ぼくも闘うんだ。
[...はナサニエルと初めて会った時の呆れたような声を思い出し、必要以外は簡単にやっつけないという矜持を口にした時の笑顔を思い出し、更けていると言われて突っ伏した時の姿を思い出して少し笑った。
だけども心からの笑みでは無い証拠に、それはすぐに消える]
敵だって最初から分かってれば…
[―――……一言も話さなかったもしれない。
そしてその方が、ずっと楽だったに違いない]
[...はそれから、二度見たナサニエルに瞳の奥に宿る黒い炎の色を思い出して僅かに身震いする]
優しい人かと思えば、あんな目もできる…そんな人に勝てるかな?
[口をついて出た気弱な発言にハッと手で押さえ、強く頭を横に振る]
駄目だ駄目だ…ぼくは勝たなきゃ。勝つんだ…!
[鞘に収められたままの剣の柄を握って、集中力を高めようとする。
恐らくこれだけが自分に、金や名誉を与える唯一のもの]
投票を委任します。
双子 ウェンディは、学生 メイ に投票を委任しました。
双子 ウェンディが「時間を進める」を選択しました
ぼくは欲しい…お金も、名誉も、地位だって。
ラッセル・ハドリーの名前を少しでも世に知らしめたい。
そしてラッセル・ハドリーの生まれ故郷、チサ村の名前を。
[...は子供の頃の、グレイ伯爵領一帯で起きた不作の年を思い出す。
妙な天気ばかりが続いた。
田の作物も畑の作物も育たず餌が足りずに家畜が死に、それでいて害虫は異常に発生した。
それほど珍しい話ではない。
ただ自分達の身に起こればそれは、この世で最も辛い悲劇になる。
食べるに困った家の老人は自ら森の深い深いところへ行き、やがて親が子供をそこへ捨てる]
[…一つ目に、彼の気配を感じなかった事に驚いた。
階段を下る音、入り口のドアを開く音…
少女にはどちらも感じ取れなかった為だ。
…二つ目に、彼の格好に驚いた。
全身を黒で覆い、その上に更に黒のマントで身を包む。
…少女は静かに恐怖を抱いていた。
こういう事を徹底するのは…
良くて盗賊《シーフ》。
悪くて暗殺者《アサシン》だったからだ]
あー、つっかれたぁ〜。
[緊張感のまったくない声で大きく伸びをした。]
親父さん、サンドイッチとオレンジジュースください。
[そう言うと、てくてくとナサニエルの座るテーブルに向かう]
[ラッセルの父親はラッセルを森にやる代わり、食べたと偽り己の食事を子に与え続け、そして体を弱らせ死んだ]
そんなことに気付きもせずに、ぼくはただ毎日美味しい足りないもっと欲しいって食べてただけ…
[元より親子二人で暮らしていた自分はそれで一人になり、村に牧師が来ていなければ恐らく死んでいたろう。
やがて町へ出て、領主の城のある城下町では不作の年の死者がチサ村ほどではなかったのだと気付く。
それはどうしてか。
聡くない頭で多分人に呆れられるほど考えて考えて、やっと得た一つの結論がこうだった]
チサ村は土地は痩せてるし、貴重なものが取れるでもないし、産業も興ってない。
他に高く売れる工芸品なんかもない、どうでもいい小さな村…
グレイさまは悪い人じゃないけど、村も町も人の命も価値は平等なんかじゃない。
手を差し伸べるのにも優先順位が付けられる。
お城のある町からたった山一つ越えた程度の距離にあってすら、顧みられなかった。
ぼくの故郷は、その価値もない村ってだけのこと…
牧師様が来て下さってから村はずいぶん良くなったけど…
それでもまた、ああいうことが無いとも言えない。
でも名誉あるラッセル・ハドリー、その人が生まれたのがチサ村だとしたら…
[――二度と誰からも、見捨てられることはない。
見捨てさせもしない。
決意を新たに、震えたりせぬよう柄を強く握って裏口から酒場への扉を開く]
[…しばし、固まっていた所に、階段の方から足音が聞こえ…少女は視線を階段に移せた]
…おはようございます…ウェンディさん…?
その傷…
[軽く頭を下げると、腕に巻き付けた布に視線が行き…
もしかすると、ウェンディとシャーロットが戦ったのだろうか?と小さく思った]
―宿屋自室―
あいたたたたた…
[電撃が瞬間的な痺れと判断ミスし、しばらく痺れた後
戻れば残るのは凍傷と火傷…どちらもたいした傷ではないのだが。]
[いつのまにか届けられたやりは部屋の壁に立てかけられていて。]
[このまま政略結婚まっしぐらなのだろうか?
...は溜息をつきつつ、いっそ火傷の傷跡が原因で破談になりはしないか。
いや、破談になってもそれはそれで立ち行かなくなるのでまずいのだが。]
[寝台に寝転がり、う〜んと思考]
[運ばれてきたサンドイッチに早速ぱくついていると、腕の傷をニーナに指摘され、すこし決まり悪そうに照れ笑いした]
あはは、ちょっとシャーロットの槍を避けそこねたの。
でも、そんなに深くないから大丈夫だよ。
[誰が来ても無反応。
それもそうだろう。今の彼は機械に近い。
ウェンディが近づこうとも、気にしない。ニーナの意識が自分に向こうとも反応は無い。
ただ、それでもウェンディの傷には、瞳の色が揺らいだ]
[照れ笑いを浮かべるウェンディに、やはり、二人が戦ったのだと確信し…]
そんなに深くない、ですか…なら…
[しかし、言葉を切る。
しばし、躊躇ってからウェンディの隣の席に移動する]
傷、見せてください…
軽い傷なら…すぐに、治せるでしょうから。
…重い傷なら…少し、疲れますけど。
[他の誰も目には入れず、ただ真直ぐナサニエルの席の前に向かい、そこに佇む。
ウェンディの傷を思ってか揺れる瞳をチラリと覗いて]
準備は…できてる?
ぼくが使うのはこの剣と…
[柄を握ったまま、腰に下げた物を軽く揺らす]
体だけ。
だからこっちの方は、もういつでも闘える準備はできてるよ。
…ふふ。
そんな真っ黒なマント着込まれてちゃ、ナサニエルさんが使う武器すらわからないや。
あんなナイフだけじゃないんでしょ?
教えてくれる気は無いの?
[ウェンが近づいてもそっけないのは、マイキアから失踪した後、旅人として再会してからの彼にはよくあったことなので、無反応でもとくに気にした様子はない。]
ん?
だいじょぶ、だいじょぶ。
[それでも彼のわずかな変化にはすぐに気づいてにこりと微笑み、手をひらひらと振った]
[…近づいてくる足音。
少しだけ視線を向ければ…ラッセルの姿があり]
…
[ナサニエルとラッセル…つまり、次はこの二人が…]
[看護士の姿をしているニーナだ、自分の大雑把な応急処置より的確な治療をしてくれるだろう。彼女の腕を信用し、こコクリとうなずいて、腕に巻いていた布を外した。
露わになる、赤い一直線に伸びた切り傷]
[自らの武器を教える殺し屋がいるものか?
ラッセルのあまりに無防備な質問に、大きく溜息をつく。
だが馬鹿にはしない。
自分も家族が生きているのであれば、彼のように真っ直ぐな瞳を持ちたいと願っていたから]
準備はOKだ。
戦闘場所も選ばせてやる。好きなところを指定しろ
[マントの裾から見えるのは、初日にラッセルに見せた一本の刃。だがチェイン=ファングはまだ見せない。戦いにおいて自分の有利になる部分は隠すのは道理だと教えられたから]
[ニーナに傷を見せているところへやってきたのは、いつになく真剣な表情のラッセル。
―――ナサニエルと闘うのか。
ウェンは黙って二人を見比べた]
そう…。
[ナサニエルの溜息を返事と聞いて、諦めたように頷く]
そうだね。
わかった。
相手が決闘前に使う武器も見せてくれないおケチさんなら、闘う場所くらい決めさせて貰おうかな。
…森にする。
[二人のやりとりが気になったが…ウェンディが腕の布を解くと、そっちの方に意識を集中させる。
…細い腕に赤い線。
その傷を観察する様にじっと見つめ…]
…少ししみるかも知れませんが…
我慢、して下さいね…?
[そう言って、ウェンディの方を少しだけ見る。
左腕で腰に付けたポーチから一つの小瓶を取り出す。
中身は半透明の…薄い緑色の液体が入っていた。
栓を抜くと、その傷に液体をかけ…その傷を右手で覆った]
…治癒《ヒーリング》。
[目を細め、小さな声で詠唱。
掌から魔力を放出し、魔法薬を媒介に込められた効力を発動させる。
…手と細い腕の間から微かな光が漏れる。
小さく何かが灼けるような音がし…少女が掌をどけた時、腕には赤い線は残っていなかった]
…はい、終わりましたよ?
[森という場所を聞いて、嘆息した。
何故自ら死の危険の大きい場所を選ぶのか。
殺し屋なのだから、影に隠れて攻撃するのは得意なのだ。ただ、もちろん、自分の正体を知らなければ、そういう選択肢もあるのだろうと結論付ける。
場合によって力加減を間違えるかもしれない。そう思った時、目の前でニーナの治療を受けるウェンディの姿が目に入った]
……ウェンディ、お前は見に来るなよ。
[変に悟られぬよう、小声で呟き、ラッセルに先んじて、酒場を出た]
[ニーナがポーチから取り出しかけた液体が沁みたのか、少し顔を顰めるが、そのあと彼女が起こした奇跡に目を丸くした]
うわぁ、ニーナ、すごいね。
私こういうのは、苦手なんだ。
[跡形もなく癒えた腕を見て、にこりと微笑んだ]
どうもありがとう!
……。
[森へ向かおうと酒場の扉へ向かう途中、機械のように自分に対応したナサニエルの瞳が、ウェンディの傷を見た時だけ揺らいだ事を強く思い出し足が止まる。
そして今、何と言った?]
ウェンディ、お前は見に来るなよ、か…
…目の前の闘いしか今は見えてないと思ってた。
でもそう言えば…違うんだよね。
ナサニエルさん、ウェンディさんがそんなに大事…?
[先んじて酒場を出たナサニエルに、恐らく呟くその声は聞こえない。
...は足を扉へ向かわせる代わりに、ニーナから傷の手当てを受けたばかりのウェンディへと近付く]
[ニーナに治療してもらった腕を、嬉しそうに伸ばしたり曲げたりして具合を見ていたら、ナサニエルが小声で「来るな」と言った]
え、どうして?
[理由がわからずきょとんとして問い返すが、彼は既に酒場を出て行くところだった]
[小瓶をポーチに戻すと、微笑んだウェンディに小さく笑んで]
どう、いたしまして。
元々、治すのが…得意、だったから。
[どうしてあたしが呼ばれたんだろうね、と少し困ったように笑む。
…因みに、コレは本音である。
ふと、ナサニエルが酒場の外に出たようで…しかし、こっちに来るラッセルに視線を向けた]
[ぼんやりとしてすら見える顔で、ラッセルの目はウェンディを映しているようでいて別の物を見ているかのようである。
そうでなければ、今からやろうとしていることなどできない。
ぶつぶつと自分に言い聞かせる]
勝ったと…勝ったという事実だけが必要なんだ。
卑怯だとかそんな誹り、勝者になってしまえば握りつぶせる。
[そして勝つ事が、主催者から金や名誉や地位を賜る事への絶対の条件だとまだラッセルは信じていた。
...はじっとウェンディを見る。
それから掴んで捕え引き寄せて逃がさないために、手をウェンディの腕へと伸ばした]
[いつもと違う様子のラッセルに、ウェンは小首をかしげて彼を見上げた。腕を伸ばしてきたのも、何故だか判らないようで、特に逃げようともしない。]
―――?
ラッセル、どうしたの?
ナサニエル、行っちゃったよ?
[親切にも、治ったばかりの腕を伸ばして入り口を指し示した]
[首を傾げる少女はいつもの小憎たらしさすらなく、それがラッセルには少し辛かった。
だから急ぎ鞘から剣を抜き、ウェンディの腕を掴んで放さないまま細い首に突きつける。
努めて物を見る目で相手を捉えて、結果冷たい感情の宿らぬように見せる目で小さな少女を見る。
声も震えず、静かな調子で言う事に成功したはずだ]
…暴れたり抵抗はしないで。
「助けて」って言って。
ナサニエルさんに。
[…ラッセルはじっとウェンディを見ていた。
ナサニエルと戦う事になる…だから、何か断りを入れるのだろうか?
そう、少女は思っていた]
ラ…ラッセルさ…っ!?
[不意にラッセルのとった行動。
それは、まさか彼がそんな事をするとは…という驚愕。
慌てて手を伸ばそうとするが、ウェンディの首の近くには剣の刃が控えている。
結果、何もする事が出来ず、ただ二人を見守るだけになった]
[一瞬、自分の身に何が起こったのか理解できなかった。
首筋に伝わる、ひんやりとした刃の冷たさに、徐々に事態を飲み込んでいく]
ラッセル。何を、馬鹿なこと………
[抵抗するなと言われても、そもそも抵抗できようがない。腕を振り解こうと下手に動けば、その刃が自分の首を切るだろう。
そして、彼の握力は強く、非力な子供の力では逃れることは不可能だ。]
………わかった。
[彼の指示通りナサニエルに助けを請うかどうかは、今後の状況次第だが、彼の束縛から逃げるには、今は言うとおりにして彼の隙を窺うしかない。]
…来るまで続けて。
[ウェンディが叫んだのを確認すると、そのまま腕を引いて、酒場に手すりを隔てて面している階段の踊り場まで後ろ向きで上がっていく。
誰にも邪魔されぬよう、そしてナサニエルがどちらの入り口から入っても背後にまわれないよう、少し高い位置から酒場の様子がよく見えるようにだ]
[酒場を出て、後ろからラッセルがついてこない事に足を止める。
あの直情型であれば、即座に自分を追い抜いていくものだと思っていたのだが、思ったより冷静なのかもしれない。
そう思い直そうとした時、ウェンディの叫びが店内から聞こえた。
それは応援でも嗜めでもなく、どこか悲壮なものが感じられる叫び]
ウェンディ!?
[即座に踵を返して、店内に飛び込みかけるが、最低限の理性が働いたのか、入り口直前に体に制動がかかる。
一旦入り口から離れると、入り口横に背を付けて、ナイフの刃だけを入り口方面に滑り込ませる。
そのまま角度を調整し、映りこんだ中の様子に、さっと血の気が引いた]
……ラッセル、あなた変よ!?
[容赦なく掴まれる腕が痛い。血が通いにくくなっているのか、じんじんと、徐々に痺れてくる。隙を探すが、今のラッセルは殺気立っていて、逃れられない]
……ナサニエル。
[どうして油断してしまったんだろう?]
[ウェンディが声を上げる。
その間にも、ウェンディとラッセルは少しずつ移動し…]
…
[何も出来ず、奥歯を噛みしめる事しかできない…
彼が何を考えているのか。
ソレを考えたくはない…
ナサニエルが来るかどうか…それだけが今の場を支配している…]
…
[無言でもう一歩、後ろに下がり…壁に接した。
もしかすると、この場で戦闘が起きてもおかしくはない…ナサニエルの格好から、何処から仕掛けてもおかしくはない…と思ったからだった]
[ラッセルの動きから、裏口と正面入り口を警戒しているのは明白だった。
そして階段の踊り場という位置を見ても、即座にこちらを倒すための位置取りとみて間違いないだろう。
ナサニエルは、自分が掌を深く爪で傷つくくらいに怒りを堪えている事に今気付いた。
だが怒りに任せては、勝てる勝負も勝てない。
おそらくラッセルもそうなのだろう。
勝てる勝負に勝つために選んだ方法が、これだった]
やってくれる……。
[言葉にするだけで、怒りがいい具合に体に浸透していくのを確認すると、ナイフをしまって周囲を見回した。この街は、裏路地からわかるように、建物と建物の合間が薄く、成人であれば一跨ぎで隣に移動できる]
それなら、簡単だな。
[ナサニエルは、一切の躊躇無く酒場の隣に飛び込むと、住人の悲鳴を無視して、無言のまま二階へと駆け上がった]
[隣の家と酒場は、二階廊下の窓で接近している。
ナサニエルは一度窓を押してみた。
だが開かない。
そうなれば行うべきは一つしかない。
急いでマントを脱ぐと、左拳に厚めに巻きつけて、布の半ば程度で半分に切る。
そして布切れになった半分を音がなるべくしないように窓の鍵付近に当てると、小さく、それでいて瞬発力に溢れた一撃を加えた]
――カチャン。
[本当に小さな音が廊下に響いた]
書生 ハーヴェイが「時間を進める」を選択しました
変なのはどうやら、ぼくだけじゃない。
[男がウェンディの名を呼びながら姿を現しかけると、今の己の行動に相応しい歪んだ笑みを浮かべる。
笑みはナサニエルに対するものなのか、自分に対してなのか知っているのは自身だけだ。
外からはどう見えるかとは、関わりの無いこと。
その笑みをニーナにも向けておいて、十分過ぎる牽制の更なる上乗せ。
それから言葉を続ける]
…ナサニエルさんらしくないね。
名前を叫びながら一旦中に駆け込みかけておいて今更引っ込んだって、意味あるの?
そこにいるんでしょう!
[酒場の二つの入り口に向かってかける声は、しかし虚しく響く]
入ってこない…。どうして?
[ウェンディを人質に取れば、すぐさま酒場に入ってくる。
入り口はこの二つしか無いのだ。
入り口は――…
[...はハッとする。
馬鹿な。入れない大学の研究室、自分はどこから中を覗いた?]
上から…来る…?
[そしてそのまま攻撃する気だろうか。
ウェンディはこんなにも自分の近く、今だって刃物を首に突きつけているのに。
――彼ならやりかねない。
ぞくりとした悪寒に負けぬよう、ラッセルは声を張り上げる]
ナサニエルさんらしくないね!
闘いの場所は森だってぼく言ったけど…、闘いが始まる場所も森だとまでは言ってないよ!
でも安心して!
このまま「降参しろ」とまで言う気は無いんだ!
あくまでぼくは、あなたに勝たないとね!
闘いは続けるよ!
でも…ハンデは必要だと思う!
ぼくにだってわかる…ナサニエルさん、ただ者じゃないでしょ!?
ぼくに見せてくれないあなたの得物…ぼくにプレゼントしてくれるくらいのこと、してくれていいと思うんだ!
それに対する十分なお礼が、今ぼくの手の中にあるよ!
[剣をウェンディの首に触れさせる。
ナサニエルの位置から見えているかいないかはあまり関係ない。
決意を己の行動で、自分自身に言い聞かせることにこそ意味がある。
いや恐らく彼は何らかの方法で見ているかもしれないし、ウェンディが声でも上げてくれればそれでいい。
最後の声は静かに響かせる]
…意味はわかるよね?
[小さな音はしたが、この後どうするか。
二階廊下に侵入して、即座に近くの入り口に飛び込むと、またナイフの刃に風景を映しこむ。
音に気付いていないのか、ラッセルの姿は確認できない。
最後に見たのが階段の踊り場付近だった。まだ動いていないとすると、今のうちに距離を稼いでいたほうがいいのかもしれない。
そう呼吸を整えると、向かいに並んでいる部屋の三つ分階段側の部屋に、そっと駆け足で忍び込んだ。
その時、ラッセルの言葉が廊下に響いた。
ああ、やはり俺の考えている通りだったのかと、安心した。
そうでなければ、あの純粋なラッセルがこんな方法をとるわけ無いじゃないか]
……ウェンじゃなくて、対戦相手にほっとするなんて、少し毒されたか。
[…ラッセルが声を上げている…
その様子から、ナサニエルは来ていないように感じるが…]
…
[…しかし、メイ…も現れない。
もし、メイが居たならば、この場合の采配はどうなるのだろうか?
そんな事を思いながら、静かに階段の踊り場に目を向けている]
[とは言え、ナサニエルがどこから来るかわからない。
踊り場で佇みウェンディはまだ放さぬまま、油断無い目つきを四方八方に向ける]
たぶん何か隠してるんだ…
ナサニエルさんは、凄い武器を。
ぼくが見たナサニエルさんの得物は、あの小さなナイフだけ。
あれだけ…あれだけなら、まだ勝ち目はあるはず。
剣とナイフだ。
まず間合いからして違うもの。
だから…
[その見せていない武器を捨てろ。
さもなくばウェンディを傷つけると叫んだのだ]
さあ、あの人はどうする…?
[喉元に触れる剣の感触が、さらにはっきりとしたものになる]
ナサニエル。
[名前しか言わないのは、そのあとなんて言えば良いのか判らないから。]
[助けて、と言えばたぶん助けてくれるくらいには、まだ気安くは思ってくれているだろう。
でも、足手まといになりたくはなかったのに。
だからといって、来ないでほうっておいていいと言ったら、困らせるだけかもしれない。
困惑、途方に暮れた顔をして、視線を彷徨わせる]
書生 ハーヴェイは、鳩の非常食すら尽きた。
[ラッセルの姿は見えない。
だからナサニエルは一気に踊り場の真横にある空き部屋まで移動した。
そこでもう一度ナイフを使って様子を伺うと、かなり神経質になっているラッセルの姿が見えた。
おそらくこれだけ時間が経っているのだから、上にも気配を探っているだろう。
だが、それでいい。
何処からくるか疑心暗鬼になっているからこそ、
. . . . . . . . . . . . . .
ナサニエルには都合が良かった]
[...はこれほど自分に有利なはずの状況を作り上げても、尚神経をすり減らす緊張感にしきりに生唾を飲み込む]
返事が無い…
一体、ナサニエルさんはどうする気だ…くそ、
聞こえなかったのか!
早く武器を捨てるなり、姿を現すなりしろ!
[気持ちの悪い汗が髪の間から流れ頬を伝っても、両腕は塞がっていて拭うこともできない。
困惑するニーナの目付きも、努めてその姿をウェンディとして目に入れないようにしている手の中の人質の途方に暮れた顔も、警戒以上に気にする余裕が無いことはむしろ幸いだ。
こんな時に、迷いまで生まれていてはたまらない]
…あまりキョロキョロ動かないで。
[実はナサニエルにも魔力はある。
だが、それはオイルがあるのに、火がないので使えないのと同じで、体内に蓄積されていくだけのもだ。
アーノルドはそこに目をつけ、発射するための武器製作を知り合いの錬金術師に依頼し、完成したのがチェイン=ファングだ。
グリップに魔力を込めていくと、無尽蔵に吸収し、それを破壊力に還元していく。
だから、壁越しに二人の姿を思い浮かべ、魔力の最大出力を込めていく時間をとるには、ラッセルは動いてはいけなかった。
精神が衰弱していく。
魔力が枯渇していく。
体力すら失われていく。
その中で必死に壁を凝視し、顔から血の気が引いた瞬間、大声をあげて、
――発射した]
ウェンディィィィィ! 伏せていろぉ!
[チェイン=ファングから発射された魔力光弾は、一瞬で壁を飲み込み、突き破り、そのままラッセルの足元である踊り場に向けて突き進む]
[不気味なくらいずっと静かで、そして返事すら無かった。
それなのに突如として、背後から声が聞こえた。
ナサニエルの声が]
……―――!
[息を飲んで振り向く。
そこには壁しかない。
染み一つないヒビ一つない、真っ白で頑丈な壁だ]
ふ…“伏せてろ”?
[一体壁の向こうから何ができると言うのか。
思わずウェンディから手を離し、想像上の壁から出てくるナサニエルと対峙するような格好で、両腕で剣を持って構える]
[ナサニエルの名前を呼ぶ声が聞こえ、反射的に身体が動いた。背後から聞こえた気がしたが、深く考えている暇はない。
ラッセルに掴まれていない左手を無理矢理、自分の喉と剣の間に滑り込ませると、そのまま渾身の力で刃を押し、刀身を喉から離そうと試み、なんとかしゃがみこもうと]
[人が壁を越えて、こちらに向かってくるともで言うのだろうか?
――思わず構えてみたものの、何も起ころうはずが]
…ぁああああ!?
[起こってしまった。
わけのわからない眩しい何かが壁を飲み込み、突き破り――]
(あれがぼくを狙ってる…!?)
[ゾッとして身を翻す足元、ラッセルそのものと言うよりは踊り場目がけてそれが突き進んでくる]
[...は事を初めから見続けていた。誰にもそれを気づかれないように]
こうでもしないと、手の内を隠しかねませんからね、二人とも…
[部下の一人がこっそりと耳打ちする。「このような事態、かまわないのか」と。]
一向に構いません。
むしろ感心していますよ。
あの勝負にかける執着、見事なものです。
詰めが甘いのはどうしようもありませんがね…
[そしてまた、気配を完全に隠し監視を続ける]
[そうして刀身から逃れようとしたとき、ラッセルもナサニエルの背後からの声に驚いたのか、戒めを解いて、剣を構えた。
拘束から解かれ自由になった身を、すぐさま床に伏せさせる]
(ミゴトナモノダ シュダンヲエラバナイ スバラシイ)
(シカシ ナゼモットテッテイシテヤラヌ?)
(テヌルスギル!!)
[全力を混入しきった意識が、一気に白濁する。
眼球に流れていた血流が消え、視界もブラックアウトする。
だが、ここで膝を折るわけにはいかなかった。
勝ち残らなければならない。
そしてウェンディを助けなければならない。
何故――?
彼女は知り合いだから
どうして――?
彼女は自分を親身になって慰めてくれたから
今は足手まといなのに――?
今はそうかもしれない。けれど、今見捨てれば後悔してしまう!
彼女は大切な――!
[一瞬、視界が戻る。
その中で、まだ壁を抜けたばかりの魔力弾が目の前にあった。
殆ど触れそうな距離を追って、ナサニエルはウェンディを庇うために、一緒になって踊り場に飛び込んだ]
[頭を抑え、踊り場に身を伏せている。何か大きな魔力の塊が、こちらへ襲い掛かろうとしているのを感じ、身を竦めたが、不思議と恐怖は感じなかった]
[果たして壁をあっさりと破壊したような光弾を、防げるものだろうか。
あるいは、受けて無事でいられるものだろうか]
あ…ああ…避けなきゃ…
避けなきゃ死ぬ!
[Uの字型に曲がった踊り場と酒場を分ける手すりの部分を引っ掴むと、そのままひらりと身を翻し、階段から飛び降りることで回避しようとする。
…だが当の、ナサニエル本人はどうだろう?
己の技の強大さくらい、自身が一番わかっているだろう。
あんな光の弾にぶちあたっては、きっとただでは済まない]
[それでもナサニエルは迷い無く、踊り場に飛び込む。
ウェンディを庇うためにだ。
自分が勝負を有利に運ぶために人質にとったウェンディを、彼は自身の体がどうなるかもまるで顧みずに、庇うため自ら光の弾に触れそうなほどの勢いで、無防備に飛び込んできたのだ。
――その事実が僅かにラッセルの動きを鈍らせる。
そして光弾の速さは、その僅かな鈍りを捉えるのに十分なものだった]
―――……っ!!
[避けきれず、それでも少し掠っただけの光弾の威力がラッセルの軽い体を簡単に吹き飛ばす]
[その時身を支えていたのが、飛び越えようと手すりを掴んでいた片手だけで、足で踏ん張ることすらできない空中に体自体もあったということがますますまずかった。
受身を取る間もなく体は踊り場から向こう端に位置する壁にまで飛んでいき、背も腰も足も頭までも強くそこに叩きつけられる]
ぐっ…
[息ができず、すぐに恐ろしい痛みが全身を襲っていっそ気を失ってしまいたかった。
ずるずる床に崩れ落ち、それでも必死でもう汗ではなく血の流れ落ちてくる頭を振ってどうにか意識を保ち、気になるのがライバル達の姿。
かすむ目を、今は距離の離れた踊り場に向けて凝らしている]
…!?
[不意に聞こえた声。
しかし、様子はおかしく…]
…ぇ…?
[光が階段を飲み込んだ。
轟音と共に、階段では何かが起こっている…?]
だ、大丈夫…なの…?
[見に行こうにも、まだ戦いは終わってないのでは無いのだろうか?
しかし、早くしないと危ないかも…
その狭間で、少女は足を固まらせていた]
[横を抜けた光弾が、ナサニエルの頬を焼く。
だが痛みよりも体は、まだ先を走っていた。
その瞬間が光弾の着弾より早く、ウェンディにその身を届かせる。
腕のうちに全てを抱きかかえられるくらい小さな彼女の体を抱き、踊り場に体ごと落ちる。
瞬間、光弾は踊り場を打ち抜き、続いて場を支えていた柱すら砕く。
踊り場は二人を飲み込んで、そのまま崩壊した――]
[誰かが自分を庇うように抱きしめたと思うと同時に、激しい衝撃に見舞われ、身体が宙に浮いた。
物が崩れ落ちる轟音とともに、抱きしめられたまま落下していく]
ナサニエルさん!ウェンディさっ…
[光弾が命中して踊り場が崩壊すると、思わず叫びかけるのを慌てて飲み込んだ。
どうやら二人は光弾自体の直撃を受けたわけではなく、踊り場の崩壊に巻き込まれただけのようだ。
そして今はまだ、闘いの途中]
参ったな…ナサニエルさんったら…
不当な要求にも応じない…
脅してる方を逆に怖がらせちゃう…
どえらい技を放つのを、人質の存在があっても、悪人を懲らしめるためなら躊躇しない…それでいて…
[...はどこか泣きそうな目で、口元を笑みの形に持ち上げる]
自分の身を顧みずに、その人質のこと庇っちゃう…
そんなのって、本当のところぼくがこうありたいって憧れる名誉ある武人の姿そのものじゃないか…
[よろりと抜き身の剣を支えに立ち上がると、ふらふらと覚束ない足で、剣を交えるべき相手の元へとゆっくり近付いていく]
背中側の傷だけ受けて倒れたりしたら、そんなのって最低だ…
ナサニエルさん、あなたみたいになれなくても…
同じ倒れるならせめて――
[――…同じ倒れるならせめて、身の前面の傷で。
剣の切っ先を崩れた木片の中のどこかにいるはずのナサニエルに向けながら、崩壊した踊り場の前に佇んだ。
彼が起き上がってくるだろう時を待っている]
ああ、全く最低だ。
[胸の中にウェンディがいることなど気にせず、そうごちる。そして呟きは続く]
俺だって、それなりに修行してきた。
もちろん、家族を殺した奴を殺すために、色々と……。でも結局はこれか?
目的よりも今生きている大切な『家族』を守るのか。昔を忘れてしまうのか?
ああ、俺って最低だ。
こんな無意味な天秤をかけて、結局はこんなになっている。
[がらりと体の上にのった瓦礫を払い落とすと、腰元に刺さった一本の破片を抜く。
途端、血管から飛び出た血液が、瓦礫の上に水玉を作る。
元々全力以上を生み出した光弾に、すでにナサニエルの体は限界にきていた。
それでも体は勝負を捨てていない。
手に持った、最近名が一般にも知られだした、二挺の特殊な魔法銃を持った殺し屋として、大きく息をつきながらラッセルを見据えた]
[じゃらりと銃を繋ぐ鎖が音を立てた。
足はまだふんばれる。
手はまだ少し動く。
頭は朦朧としているが、それでも後少しなら問題ないだろう]
ラッセル、俺が動けるのはあと少しだ。
だから、このままタイムアウトを待てば、お前の勝ちだ。
そう、お前の勝ちだ。
意味の無い、ただ結果だけしかなく、心すら裏切ったすえの、な。
[最後の挑発。
それは、ただ自分が立っているだけの力はあるが、動く力が残っていない彼なりの意地だ]
[瓦礫とともに床に落ちる衝撃を感じたが、不思議と痛みは感じなかった。そっと目を開けると、疲労と苦痛に歪むナサニエルの顔がそこにあった。おかげで、自分は傷一つない。
最低だ、と彼は呟き立ち上がる。
昔と今を比べた挙句こんなになってしまったと、血を流しながら彼が愚痴る。
ウェンは、彼に心の中で詫びると同時に、心底良かったと思った―――。]
[じゃらりと見たことも無い銃を繋ぐ鎖が鳴って、腰元から血を流し、それ以上に恐らくは放った大技によって疲弊しきった男が目の前にいた。
それでも牙はまだ抜けてない。
自分と同じように足元をふらつかせながら、闘う意志の残る強い目でこちらを見ている。
挑発を受け、ラッセルもまた笑って見せた]
…ぼくを誰だと思ってるの?
ラッセル・ハドリー、そのうちライチュークの町、グレイさまの領地からその名を世界に轟かせる予定の、誇りある男だよ。
そんな勝ち方――…望むわけないじゃない!
[情けないことにもう片手では剣も持てない。
自分の頭の上ほどに高く上段に剣を振り上げると、ぽつぽつと濡れて束になった髪から血が落ち、たたらをを踏む踏ん張りの利かない足の上に落ちていく。
だけども狙いはただ真直ぐに――当てられれば敵を一刀両断にできる、ナサニエルの頭の上]
来い、ラッセル=ハドリー。
『チェイン=ファング』ナサニエル=ラックフィールドが、殺シテヤルヨ。
[本気で言っているのか?
目がまた闇の炎を宿す。そして二挺の銃がラッセルに向けられた]
[――殺シテヤル。
彼がそう言ったから、思わず満身創痍の彼の背中に向かって訴えていた]
駄目!
ナサニエル、駄目!
ラッセルはあなたの仇じゃない!
―――!
[見る者を竦ませる闇の炎。
向けられた者の闘志をくじく二挺の銃]
くらえ……ナサニエル!
[体が強張ってしまう前に、闘志が燃え尽きてしまう前に。
ラッセルは最後の力で、両手で握り振り上げたそれをほとんど重力に任せて振り下ろす]
[おそらく、ラッセルの注意はチェイン=ファングに向いている。
だが彼は知らない。
すでにナサニエルの魔力は限界なのだと。だからそれを逆手に取る。
振り下ろされた剣が、純粋な色をした剣閃が、頭に向けて振り下ろされる]
ラッセル、一番最初に言ったじゃないか。
『これで怪我を負わせて逃げればいいだろう?』
って。
[鎖が手首の振りだけで大きくうねると、頭上に落ちてきた剣に絡みついた。
そのまま反動を利用して、チェイン=ファングごと大きく天井に放り投げる。
そして開いた首元に向けて、最初に見せたナイフが煌いて――。
ウェンディの声に、薄皮一枚を裂いたところで、刃は静止していた]
パンパンパンパン
[乾いた音を立て手を打ちながら唐突に現れる]
そこまでですね。
見事なものでした。
たっぷりと堪能させていただきました。
これで……終わりだ。
しばしの間、そのままの体制で静止した二人だったが、ナサニエルはそう言い放つと、すっと喉からナイフを離した。
本当はそのまま切り抜くつもりだったが、ウェンディの声に体が反応していた]
(まぁ、今日はこれでいい。このままで……)
[そう心の中で呟くと、ナサニエルはラッセルの横を抜けて倒れた]
え…?
[――ダメージ覚悟の剣閃。
たとえ相手からの銃弾を受けたとして、この剣の攻撃が当たればそれでいい。
そんな気で放った一閃だった。
だが銃は弾を放たない。
二つの銃を繋ぐ鎖をナサニエルの手はうねらせ、剣に絡みつかせる]
そんな使い方っ…
[想像だにしなかった鎖の駆使。
強く腕を引き、剣を鎖から逃れようとしたのは上手くいかなかった]
[ナサニエルはあれほどの威力を誇った銃を易々と手放し、天井へと放り投げる――ラッセルの剣ごと]
……っ
[敵の手の中でほんの頼りなく煌いてるだけだったはずのナイフが今は、自分の命を脅かして首へと――
もはや抵抗の力も残されていない。
ただ息を詰め強く目を瞑る。
だが大した痛みは来ない。
首元が噴き出す血に濡れる感触もない。
恐る恐る目を開けると、刃はもう止まっていた。
緊張の糸が切れ、刃と逆側に崩れ落ちる。
膝をついた床から力ない瞳で二人を見上げて]
人質にとったウェンディさんに助けられるなんて…
ほんっと完全に…ぼくの負けだね…
[全く気配を感じさせないうちに突如として表れ、響かせたメイフォリアの拍手の音に、ビクッと相当驚いた顔を向ける]
え…い…いつの間に…?
[胸を押さえていると、すぐ横で人が倒れる音。
目を向ければ倒れているのは他ならぬ、ナサニエル]
あっ…!
[崩れ落ちた二人を感情を感じさせない目で見下ろす]
勝敗に関しては、言うまでもないでしょう?
ナサニエルさん、あなたの”力”確かに見させていただきました。
ラッセルさん、あなたの取ろうとした策、すばらしいものです。
惜しむらくは、詰めが甘かったことですが…
[右手を上げると幾人もの男が現れる]
現場の処理、および二人の回収、手当てをよろしくお願いします。
投票を委任します。
書生 ハーヴェイは、学生 メイ に投票を委任しました。
[制止の声はナサニエルに届いたらしい。
首元を狙った攻撃は、薄皮一枚にすじを残したのみだった。それを見て、ウェンは安堵のため息をついたが]
―――ナサニエル!!
[ナイフをラッセルから離すや崩れ落ちる彼に、ほとんど悲鳴に近い声をあげて駆け寄った]
ごめんねごめんね、ありがとう
[気を失っているナサニエルを、抱き起こそうとした]
[ウェンディをちらりと見る]
憶えておいてください。
これが戦士たるものの戦いです。
そして昨日のあなたは、戦士であるシャーロット殿を侮辱したのです。
[しかし、つのまにか現れていたメイが召集したらしい男達に寄って回収されていく。
心配そうにそれを見、思わずついて行こうとしたが、床にそのままになっているチェイン=ファングに気づき、これだけは誰にも渡すまいと、拾い上げしっかり腕に抱きしめた]
もっと早く…倒れてくれていれば…
[倒れたナサニエルに対して心配そうな目をしながらも、口からは思わず本音が。
メイフォリアの口から、取ろうとしていた策への褒め言葉が零れると]
素晴しい…?
はは…
…ぼくは後悔してますけどね。
[ウェンディを人質に取ろうと決めた時、もしかして自分もあんな目をしていたろうか?
感情を感じさせないメイフォリアの目を避けるように、項垂れて言った。
そしてナサニエルと、彼を抱き起こそうとしているウェンディを見ながら、どこからともなく現れた幾人もの男達に手を挙げる]
ぼくは後回しでいいし、現場の処理だって後でもできるでしょ。
早くナサニエルさんを…
[メイの言葉に、チェイン=ファングを抱きしめたままそれが何か?と首を傾げる]
それはあなたの価値観にしか過ぎないわ。
シャーロットが侮辱したと怒るなら、謝るけれど、私は、たんに無駄に命をとりたくないだけよ。
殺すだけが戦士じゃないと思うのが私の価値観。
少なくとも、昨日の闘い自体は私は全力を尽くしたし、止めを刺す寸前まではやったわよ。
それは、シャーロットも判ってると思うけど。
[淡々と返答する。]
[そして自分も。
物のような運ばれ方が少し不快で、身を捩る]
ちょ、ちょっと…
もうちょっと…運び方ってものがあるんじゃ…
[回収されていく途中、ウェンディの戦い方を非難するメイフォリアの声が聞こえて思わず声を荒げる]
…どうしてそんな事、メイフォリア様が決めるの!
侮辱されたとかされてないとかそういう事は戦った本人達…ウェンディさんとシャーロットさんが決めるよ。
あなたじゃなくて……っツツツ
[大きな声は自分の割れた頭に響き、同時にメイフォリアへの噛み付く態度と見てか回収男の運び方がより荒くなってきて、ラッセルはぐったりと*黙った*]
[そして少し小首をかしげ]
それとも、無抵抗の人間を叩きのめすまでやるのが、戦士というものなの?
だったら、私はそんなものにはなりたくないから、戦士と呼ばれなくて結構だわ。
[ウェンディの言葉を聴き、我慢しきれなくなったかのように笑い出す]
無駄に命をとりたくない?
面白い冗談を…
あなたの大切なナサニエルさんは、アサシンですよ?
文字通り無駄に命を刈り取る存在。
私に不満をぶつけるよりも、彼を先にどうにかしなさい。
彼は仕事で、誰かにとって”必要”だから命を刈り取る、というのならそれこそ昨日止めを刺すべきだった。
主催者である私にとって、あなたが止めを刺しにいくことは”必要”だったのだから。
[そばに控えていた男に声をかける]
あの二人の処置は、軍営で行いなさい。
あそこならば、あなたたちとあの二人以外は入ることが出来ません。
無理に進入しようとするものがあれば、処分しなさい。
第二軍の中枢です、問題になることなど有りません。
[指示を受けた男は即座に姿を消す]
[後ろから笑い声が聞こえ、立ち止まり不愉快そうに振り向く]
論点を摩り替えないでくれる?
私 は 、 や り た く な い か ら や ら な い。
ナサニエルにはナサニエルの事情と考えがあってアサシンになった。そして私は私の考えで行動している。
それだけのことよ。
[そして、もうあなたと話すことは何もないと踵を返すと、*駆け出した*]
(アノムスメハツカエナイナ シカシ ナサニエルヲリヨウスレバ…)
(センザイノウリョクハ タイシタモノダカラナ)
(マダテヲウッテシマウニハハヤイ)
(イマシバラクイマシバラク ガマンダ)
[誰もいなくなった場で、一人呟く]
こちらはまあ順調といってもいいでしょう…
もう日が残っていません。
軍のほうにも、今一度の引き締めと情報統制を行う必要がありますね…
[そのまましばらく*考え込む*]
(ソウダ スベテヲホロボスタメニ ミスハユルサレナイ)
(カンゼンナケイカクガヒツヨウダ カンゼンナジュンビガヒツヨウダ)
(シンチョウニ シカシ イソイデヤラナクテハ)
(スベテヲホロボスタメニ…)
[…気が付けば、メイがいた。
まただ…
ナサニエルの時と同じく、気配を感じとれていなかった]
…
[メイが右手を上げれば、男達が仕事を始め]
…
[運ばれていく二人、追いかけるウェンディ。
その姿に少しだけ安心し…
そして、試合を止めなかった事に少なからず不安を覚えた]
…こんな戦い方でも…許されるの…?
[そして、メイとウェンディのやりとりが耳に入れば、先ほどの男達の運び方と共に、不快感を覚えた]
…戦士…
なら、なんであたしを呼んだの…?
あたしは…戦士じゃ、ない…
ましてや…
殺す事をいとわないなんて…
[少なからず応急手当をするものだと考えていたが、それすらした様子もない]
…本当に…なんか嫌だな…
[恐らく、次は自分の番。
憂鬱な瞳を伏せ、*小さく溜め息をついた*]
[後かたづけに追われる酒場。
しかし、流石に時間が経った今では落ち着いてきている…
幸いと言うべきか、踊り場だけに被害が被ったので一階の酒場はいつも通り賑やかになっていた。
元々、宿屋の方は武闘会で貸し切り状態だったのだ。
騒ぎ立てる客など居ない]
…
[…少女は、かちゃかちゃと食器を鳴らしながらサラダを食べていた。
その目が伏し目がちなのは、サラダに目を向けているから、だけではなかっただろう]
はぁ…
[時々こぼれる溜め息。
憂鬱な気分を少しでも吐き出してる気分にでもなるのか、それは結構な頻度で行われる。
マスターが視線を向けるも、少女は伏し目がちに食器を鳴らすだけ]
…
[…マスターにも移ったのだろうか。
小さく息をつくと、客の注文を取りに行った]
やんまーにやんまーにやんまーにいぇーいぇ
やんまーにやんまーにやんまーにいぇーいぇ
やんまーにやんまーにやんまーにいぇーいぇ
やんまーにやんまーにやんまーにいぇーいぇ
…ふむぅ。発言回数が結構少ない。
ポイント余りまくりだぁなー。
どうしましょ。
バトルで稼げるといいなー。
[マスターが少女の側から離れると、少女は何かを呟き始めた。
その声は、酒場の喧騒にかき消されるほど、か細く。
そして、小さい]
薬は揃ってる?
…ベネ。
魔力は溜まってる?
…ベネ。
ハーヴェイさんが魔法を使ってきたら?
…ベネ。
不意に隠し武器を使ってきたら?
…ベネ。
実力に、差が有りすぎたら?
…ベネ。
[マスターが戻ってくると、顔を伏せ、フォークを持つ手が止まり…何かを呟いている少女に訝しげな表情を浮かべる。
しかし、おかまいなしに少女は続ける]
…ベネ。
…最後に…
死なない、覚悟は…出来た?
[小さく。
しかし、マスターは固唾を飲み込む。
その声だけは綺麗に透き通り…喧騒があるにも関わらず聞こえたからだった。
ようやく、少女は顔を上げる。
その表情は、何処か疲れたような顔をして…マスターに気が付けば、力無く笑んだ]
…ベネ。
――裏路地――
[ナサニエルとラッセルを連れて行った男達を追って軍営まで来たが、当然中には入れてもらえず、追い返されてしまった。
チェイン=ファングを抱きしめながら、とぼとぼと酒場へ向かって歩く。
すると、不意にしわがれた笑い声し、驚いて振り返ると、呪術師風の老婆が――デボラと名乗った――こちらを見て笑っていた]
『おやおや、珍しい双子だねぇ。随分仲がよかったんだねぇ、あんた達は』
[ウェンが怪訝な顔で見つめかえすのも構わず、デボラは目を細め、何かを視ている]
『仲が良いのは結構なことだけど、あんたはそろそろ兄さんを天に昇らせてやるべきだよ。そしてあんたはちゃんと前へ歩き出すべきだ。兄さんがいなくても、あんたはもう大丈夫なはずさ。
……そうしないと、あんたもうすぐ死んでしまうよ』
な………、何、言って…るの??
[デボラの言葉を理解するのに、かなり時間を要した。それはつまりリックは既に死んでいて、自分の余命もそれほど残っていないということではないか。]
『疲れて疲れて、死んでしまうよ。』
[そうして、覚悟が出来たらまたここにおいで、と言って、老婆は路地裏の闇の中に消えて行った]
どういうこと? 覚悟って……?? ねえ!!
[闇に向かって叫んだが、勿論返答は無い。]
[表現しようの無い不安が襲う。
ぎゅっとチェイン=ファングを抱きしめる腕に力を込めた。]
リック、嘘だよね……?
[暗い表情で、歩き出す]
―宿自室―
[一晩ぐっすり寝れば、元々軽傷なのも有ってけっこう普通に動けそうで。]
う〜む…やはり負け判定であろうからのぅ…
一回実家に戻って次の策を考えるなりなんなりせねばな。
[...はそう言うと、一度溜息をつき。
実家が火の車とかでなければのんびり観戦と洒落こみたいところだが…
残念ながらそんな余裕はなくて。
この手段が断たれたのなら、次の行動を迅速に探すべきで
身なりを整えれば、メイに事情を告げに行くべきか、
それともひっそり脱出するべきかと、考えながら歩き出そうと…]
煤c………!!!
[した、...の、目の前には踊り場が破壊された階段。]
……一体何がおきたのやら…
[昨日休養した間の出来事がすっぽ抜けている為、惨状が何を指し示すかもわからず
もう一度寝台に戻って座込み。まわりの環境が深刻になっていることも知らずに
お腹が空いた等とかも、時折思いつつ...は*思考中*]
投票を委任します。
村長の娘 シャーロットは、学生 メイ に投票を委任しました。
[夢。
夢を見ている。
それは何処か真っ暗な中に自分自身がポツリと存在しているという寂しいものだ。
だから夢だとわかる。
少なくとも、現状は周りに人がいないという状態はありえないのだから]
ここは……?
「どうやら、大丈夫みたいだね――」
お前は……?
「う〜ん、言ってもいいけど、それよりも先にお願いがあるんだ――」
お願い……?
「そう。実はウェンを色々と助けて欲しいなって――」
そんなこと、言われなくても助けるさ……。
「あれ? そうなんだ? いやぁ。それは俺の肩の荷も下りるよ〜。あ、でもそういう悪い意味じゃないよ? やっぱり妹には幸せになってもらいたいじゃない――」
よくわからない……。
でも、確か、この声は昨日の戦いの最中にも聞こえていた……。
「未来の弟候補には、生き残って欲しいじゃない――」
何……?
「あはは! それは冗談だけれどね。とりあえず、頼んだよ? ナサニエル――」
待て、お前は……。
[だが返答は無く、再びナサニエルは混沌とした中に落ちていく]
[…その力無い笑みに何の意味があるのか。
自然と、マスターは視線を逸らし…注文の品を作っていた。
そんなマスターを、別になんとも思っていないのか、少女はサラダを食べ終え]
…
[ただ、静かに。
瞑目すると肘をつき、両手を合わせ…
その姿は何かに祈りを捧げているようにも見えた]
………また、豪快にやったな。
[崩壊した踊り場に、僅かに眼を見開き。
くつくつと小さく笑いを零せば
何の躊躇い無くひらりと、階下へと飛び降りる。
トン、と軽い音を立てながら酒場へと危なげなく着地して。]
………待たせた、かな。
[酒場の席にニーナの姿を認めれば、
小さく肩を竦ませつつ静かに歩み寄る。
その出で立ちと様子に、いつもとさして変化は無い。
―――右太腿へ撒かれたベルトと、
そこに固定された、3本の短い棍棒以外は]
[…声をかけられれば、瞼を開き…ゆっくりと立ち上がった]
…いえ…あたしも、食事をして…食休みを、取れましたから…
お気に、なさらず…
[そういうと、少しだけ入り口の方を見て…また視線を戻す]
…外に出て…どこで、戦うか、考えましょうか…?
……それは良かった。
[ニーナの言葉に小さく笑んで。
外に出るか、との言葉に頷いて同意を示せば、
ゆっくりと扉の方へと歩み寄る。
左手で扉を押し開ければ、
す、と右手で先を促して。]
……どうぞ。
[ハーヴェイの笑みに一つ瞬きをするが、その後の同意には小さく頷いて]
ぇ…?
[…そのまま扉を開け、自分を待っているハーヴェイに、小さく声を漏らしてしまい…
少し躊躇った後]
ありがとう、ございます…
[軽く頭を下げ、外へと出る。
…レディファースト。
その知識は、人にあまり接していなかった少女には無かったようだ]
…
[辺りを見回し…人が少なそうな所探す]
[僅かに戸惑った様子に気にした様子も無く。
ニーナが扉を潜れば、
その後へ続いて後ろでに扉を閉める]
……―――さて。
今の時間に人の居ない近辺なら―――
…教会堂 …辺りしか思い浮かばないんけど。
多少離れれば、郊外に何処かありそう……かな。
[他に候補場所とか知ってる?
口元に手を当てて、短く問いつつ]
…教会堂…ですか…
[少し考える素振りを見せると、顔を上げた]
あたしは…この街を、散策してないので…よくは、分かりません…
ですが、郊外に出ても良いなら…多分、”ココ”に集められる事は無いでしょう…
[そういうと、小さく頷いて]
教会堂…に、致しましょう。
前、歩いて頂けますか…?
―自室―
考えてどうにかなることじゃなさそうだな…
[...は小さく頭を振って…立ち上がり窓辺に近づく]
さて、階段を使うのも難儀そうなわけだが…
[そう呟きながら、窓の止めがねを外し外を見れば
…酒場の入り口辺りに二人の人影…]
―――…了解。
[同意の言葉を得られれば小さく笑んで。
そのまま教会堂へと足を向けつつ、
ニーナの数歩前を歩いていく。
暫し石畳で出来た通りを辿れば、教会堂へと]
―酒場→教会堂―
[…人通りの多い道を歩いていく。
しかし、石畳で出来た通りを歩いていく内に、次第に人は少なくなっていき…
教会堂に着いた時には周りに人影は見えなかった]
…なるほど…ココならば、人の目には触れませんね…
[ハーヴェイが歩いていくのを見ると、数歩後ろに下がり…ポーチから小瓶を取りだした]
では…もうそろそろ、始めましょうか…
でも、その前に。
[小瓶の栓を抜き、中に入った赤色の液体を飲み込む。
飲み込むと、小瓶をポーチの中にしまい込み]
…もう無理、と感じたら、あたしはすぐに降参致します…
ハーヴェイさんも…そうして下さると、助かります。
まぁ、夜に教会堂に来る人は限られてるだろうしね。
……そろそろかな。
[人が居ない、との言葉に小さく笑めば
数歩離れた場所で、ニーナへと振り返って。
棍の節に繋がれたチェーンを、→人差し指へと引っ掛ければ
パチンと軽い音と共に、ベルトの留め金が外れる。
ジャラリ、と音を立てて三節棍が解き放たれた。]
―――覚えておこう。
[続くニーナの言葉に、僅かにそちらを見やれば
同意とも取れないその言葉を返して。
カチリと棍の節同士を合わせ、回す。
2節が連結されれば、一つの棍棒へとそれは変化を遂げて]
…良かった…”分かって”くださる方で…
[少しだけ安堵の表情を浮かべるが、ハーヴェイの獲物を見ると]
それでは、お手柔らかに。
ニーナ=ウェニー…参ります。
[軽くスカートの裾をつまみ、一礼すると、その場から後ろに三歩下がる]
…
[身体の前で腕をバツの字に交差させ、瞑目し…身体に魔力を宿す]
獣化《ビーストチェンジ》。
[小さな声で詠唱。
ぎゅるり。
青かった瞳が金色に変わり、ハーヴェイを睨みつけた]
[コツコツという靴音を響かせて、現場に現れる]
ふむ、間に合ったようですね。
[二人の様子を静かに観察する]
歴戦の傭兵対獣化能力者(シェイプチェンジャー)ですか…
期待していますよ…
[うっすらと笑みを浮かべる]
こちらこそ―――お手柔らかに。
[カラリ、と棍の先を床へと滑らせ僅かな音を立てる。
と、腕が交差されたのを見れば、僅かに眼を細める]
『―――来るか』
[タンッと床を蹴りだせば、一気に間合いを詰める。
ニーナの短い詠唱に気付くことは無かったが、
金の瞳を視界の端に捕らえつつ
右腕を軸に、下から上への一閃を繰り出して]
[金色の瞳はハーヴェイの姿を映し…床を鳴らした棍を凝視する]
…フッ…
[一呼吸と共に後ろに跳躍し、棍の一撃を回避した]
…グゥゥゥ…
[低く唸り声を上げ、両手で握り拳を作り…開く。
シャキンッ!
鋭い音と共に爪が伸びた]
グォォォォォォン!!
[狼の高い声。
天を仰ぎ、一鳴きすると、前のめりに屈み込む]
[メイから与えられた執務室で、アーヴァインは報告書を纏めている。机の上に重ねられた紙の束の中に、ウェンに関するものもあった。アーヴァインはふと手を休め、昔を思い出すように遠くを見つめた――]
――6年前・西の国境付近・辺境の村――
「あはは、これはまた派手な光景だねぇ」
隣で、コーネリアスがからからと笑った。かつていかにも平和そうな農村があったそこは、瓦礫と人の肉片が散乱し、血の臭いが充満、凄惨極まりない光景が広がっていた。
「……お前の仕業だろうが」
「ま、そうだけどねぇ」
宮廷魔術師の末席を暖めるこの男は、裏でネクロマンシーに手を染めており、時折こうやって自ら作り出した魔法生物を辺境に放って楽しむという”趣味”を持っていた。
自分が彼を止めなかったのは、自分もまた、彼のように身分が低いと言うだけで他の貴族に虐げられていた鬱憤を、たまにこうして彼に付き合うことで晴らしていたところがあったからだ。
しかし、後にここで止めなかったことを、自分は後悔することになる。
ばーとるすたーとー。
獣化について。
爪が伸びる。嗅覚、勘が良くなる。
身体的能力が全体的に上昇。
魔力は…まぁ、狩り出来る時間は大丈夫。
つまり、結構長い…が、薬で傷を癒すとその分魔力は減っていくー、と。
[鋭い音に僅かに眼を見開く。
咆哮と、指先から伸びた煌きを認めれば
僅かに口の先を上げて]
―――そういうことかっ!
[…なるほど、少女の出で立ちから戦闘向きに見えないわけだ。
相手の姿勢に気付けば、後ろへと飛び僅かに距離を置く。
左腕を前に構えなおして]
[すぐにでも飛びかかろうとするも、対象が距離を置くのを見ると、そのままハーヴェイを睨みつけている]
…
[左腕を構える様子を見つつ、少女もまた左腕を後ろに回し…ポーチから一つの薬を取り出す。
その薬瓶の中身を自分の両手…主に指先にかける]
…マイル…!
[薬瓶をポーチに戻すと、飛びかかりつつ左腕と共に爪を突き出した]
―――…またか。
[左腕から現れた小瓶に、眼を細めて。
薬と思わしきモノを掛けられた部分を遠目に判別すれば、
何を思ったのか、僅かに舌を鳴らし。]
[左腕――此方から見れば右から繰り出される鋭い突きに、
カキン、と小さな音を立てて棍を解らす。
三節へと分かれた右端で
繰り出された突きを流しつつ左端を逆手で握れば、
身体を相手内側へ滑り込ませ、胸元を狙う突きを]
三節棍ムズイなー。
楽しいけど。
ちなみに、ハーヴはどんな武器でも実は扱える。
傭兵を辞めた時点で、殺傷力の低い武器に切り替えただけで。
「じゃ、僕はこの子もーらった」
コーネリアスは明るく言うと、双子の少年のほうを抱き上げた。……彼は既に死んでいる。
「アーヴにはそっちの女の子のほうあげるよ」
彼が顎で示した先には、狂戦士化した後遺症で抜け殻状態になっている、双子の少女がいた。彼女の周囲には、異形の魔物だったモノが肉塊となって散乱している。
「……別に要らん」
「まあ、そう言わずに。で、彼女から目を離さないでおくんだ。……将来、君の大事なお姫様の役に立つかもよ?」
くすくす笑いながらそう言うと、コーネリアスは値踏みをするような目で少女を見た。
「この双子の兄妹の共鳴率は尋常じゃない。兄は既に死んでいるのに、魂の力のみで妹をこの世につなぎ止めようとしている。妹は妹で、兄を生き返らせるのに必死だ。……魂のレベルまで、この双子は似ているんだよ。これは双子でも珍しいことだよ。それに妹のほう。さっき狂戦士化してたところ見てたなら判ると思うけど、秘めたる魔力の素質は十分だ。……そうだ、それ」
彼はそこまで言うと、私が背負っていた短弓を見て言った。
「その子に与えるといい」
[距離が縮まり、左腕に衝撃…肉を剔った感触とはまた違う…を感じると眉間に皺を寄せた]
クッ…
[自分の身体に迫る突きが見えたのか、小さく息を漏らす。
息を止め、更に一歩前へ…]
グゥ…ルァァァァァ!!
[突きを受けつつハーヴェイを引き裂こうと右腕を振るった]
敢えて当たりに行く。
というか、突きを放たれた時は、刃物などでない限り、自分から受けに行く(前に出る)と、加速し始めの力が乗ってない突きになるのでダメージが低いらしいのです。
少なくとも、ニーナは爪を受け流され、すぐには後ろに跳躍出来ないでしょうしねぇ。
そのまま三節棍のオマケを喰らうでしょう。多分。
[自らの繰り出す突きに気付きつつ、
一歩踏み出した様子に、僅か眉を上げる。
左手に手応えを感じると同時に、僅か耳に入る空気を裂く音。]
―――…っ!
[背中から迫り来る一撃に気付けば、
流した右節を回しながら、素早く身体を反転させる。
ニーナの身体へ、背中で圧す様な姿勢で右腕を往なすも
その爪先は僅かに青年の左頬を掠め]
[入った。小さく息が漏れる。
指先に感じる微かな感触を覚えるも…
…浅い。
右腕をいなされ、後ろに弾かれた。
軽く身体をのけぞらせるも、すぐに姿勢を低くし]
フッ!
[小さな呼吸と共に石畳すれすれを弾かれ大きく振りかぶった右腕で払う]
「何を莫迦な。これは父の形見だ」
「知ってるよ。でも、君には無用の長物だし、しかもぶっちゃけ僕は、弓の名手だった君の父上より彼女の方が使いこなせると思うね。それ、ぼろっちいけど、魔弓だから」
そうして私は、彼の勧めと半ば気まぐれで彼女に弓を与え、―――置き去りにした。彼の言うとおり姫の役に立つなら、自力で生き延びるくらいはしてもらわないと困る。
果たして彼女は森を彷徨っていたところを警備隊に無事保護され、マイセルの教会に預けられることになり―――今に至る。
[後ろへと弾けたのを認めれば、
倦厭を含めるように、一歩距離を後ろへと空けつつ
素早く右腕で棍を払う。
ジャラリと斜め上へ引き上げられた左節を正手で受け握れば、
カシリと両節を回し組んで、素早く棍棒へと変化させ。
左から来る一撃を、右手を下へ、左腕で上を支えるように防ぎ]
[タイミング、距離はちょうど良く…後ろに下がったハーヴェイにも充分届く。
が、鎖の音が耳に入る。
まだ、何かやってくるのか…?]
ッ!
[ガッ…
右腕に衝撃。受け止められた事が分かる]
…
[…しかし、少女の口元は軽くつり上がっていた。
そのまま棍棒の中央を握り、自分の方へと引き寄せる。
そして、右腕を戻す代わりに左腕を突き出した]
受け止められたらソレは逆にチャンスなんですよね。
力がある場合、ソレで引き寄せて、武器を手放させるor引き寄せて追撃が出来るわけですから…
…D−LI●Eとか、A●MSとか読んでると、そういう知識がついて助かる…w
ランペ●ジは再開したのかなー。
あれは長物使うなら良い感じなのに。
[目前の戦いを、淡々と、冷静に分析する]
三節棍は、こういう状況ではやや不利ですね。
本来、武器を持ち鎧を着ている人間を打ち倒すための武器ですから…
ましてや相手は、獣の動きと人の知恵を持つもの…
しかしながら、彼には十分な経験がある。
どう転ぶか、楽しみですね…
[アーヴァインは、ふと戸棚の一角に視線を送った。そこは隠し棚になっており、とあるモノが隠されていた]
………共鳴率は尋常じゃない、か。なるほど。
[コーネリアスが玩具にしていた少年は意識こそ戻らなかったが”生き続けた”。そして配下が時々知らせてくる少女は記憶を無くし、”成長しなかった”。
コーネリアスはこうも言っていた。
『たぶん、彼女は自分の命を分け与えているんだよ。記憶をなくしてるのは、この子が死んだのを受け入れられないからだろうね。この子が完全に消滅するようなことがあれば、再び成長しだすか、彼女も生きるのを止めるか……。ま、それは彼女次第だね』]
―――ッ、な…!
[くん、と棍が引かれるのを感じ僅かにバランスを崩す。
『少女の身体で、この腕力か―――!』
一歩前へとよろめくものの、繰り出される左腕を視界に入れれば
僅かに舌打ちをしつつも、下を握っていた右手を潔く手放した。
そして、衝撃を受け流すように支えるだけに留めていた左腕を
そのまま右内腕へと滑らせ、服の上から留め金を外す。]
っ!
[棍を手放したことで、後ろへと上体を崩しながら。
素早く右手を振り下ろせば、
衣服の中へと隠されていたベルトから
放たれたナイフが、相手の左腕の僅か右側――身体へと目掛け]
そうなのですよねー。
さっきも言ったけど、ハーヴが三節棍を選んでるのは
『殺傷力を持たない武器』だから。
昏倒させるだけで終わらす気だったわけで。
(中の人はただ遣りたいだけだった訳だg(ry
その為の隠し武器(ナイフ×2)です。
左腕にももちろん有ります。
プロで隠し場所のフラグはこっそり置いてました。
うふふ。
…でも、これヤバイ。
武器手元に1本しかねーよ。
[…左腕が空を切る。
武器が離され、力一杯に引き込んでいた少女はバランスを崩していた]
…!?
[視界に入った煌めく刃。
慌てて左腕を盾にナイフを受け止める]
…グゥッ!
[熱い痛み。腕に刃が刺さり…血が溢れていた。
舌打ちと共に後ろに跳躍…距離を取る]
[右手を振り下ろすと、
同時に後ろへと崩れた重心の勢いを利用して。
そのまま背中から床へと一回転すれば
着地したと同時に僅かに後ろへ滑る身体を左腕で支える。
相手が距離を保ったのを認めれば、僅かに息を吐いて。
姿勢を起こし、上体を正すのと同時に
今度は右手を左内腕へと触れて。
留め金から放たれた2本目を、
静かに左掌へと滑らせながら床を蹴る。
素早く間合いを詰めつつ、少女の右側面へと回り込んで]
ポーチ狙いでも、武器がなきゃ厳しい。
このまま左行っても良かったんだけどなー…。
ナイフだと間合いが余りにも狭いので、危険
…あぁ、けどやっぱりポーチ狙ったほうが…(待て)
冒険家 ナサニエルが「時間を進める」を取り消しました
[そして2年前、コーネリアスは少年の人体実験に失敗し、狂戦士化させてしまう。しかもあろうことかそれは前線で狂戦士化し、戦力を著しく損なわせただけでなく、メイフォリアの身をも危険に晒させてしまう。
なんたることだ。あの時止めていれば。
若かった自分を悔やみ、彼を粛清するべくすぐに行動に移した。王女の命を脅かすものは、例え友でも許さない。残った少年――顔つきは大人のものに近づいていた――の頭部を大事そうに抱え、闇夜に紛れて逃げようとしていた彼を、私は討った。
ともあれこれで、あの少女にも変化がおきるはずだった。しかし配下の報告は。
隠し戸棚の中。
そこには少女の兄の頭部が、まだ腐りもせずにあった。
―――まるで生きているかのように]
[棍棒を持ちつつ、ナイフを抜き取り…溢れた血を舐める。
一息。
じっとハーヴェイを睨みつけている]
クッ…!
[すぐに動き出したハーヴェイに…まだ持っているナイフに身構える。
右手のナイフを左手に持ち替えると、間合いが近づくのを避ける様に左へと跳躍する]
…フンッ!!
[左手にナイフ、右手に棍棒…大きく振りかぶり、振り向き様にハーヴェイに投げつけた]
うーむ?
ウェンのそこら辺の設定は
独り言公開の方がおもろいと思うんだが。が。
とかチラリと思いつつ。
てか、個人の設定はあまり固定させると
RP村は狼に多大な労力を掛けちゃう事になるから
あまり設定固定させたくないんだよなー。
あと、その方が柔軟に動けて楽しい。
ニーナとの勝敗で、ハーヴの過去が決まります。
さぁどうなるハーヴ(の過去!)(…)
………っ、
[重さのあるモノの方が、辿り着くのは早い。
即座に左へと跳躍すれば、右から飛んで来たナイフは
僅かに脇腹を掠めるように、服を切り裂いて石畳の床へと滑る。
そのまま、投げられた棍を右掌へと滑らせ受け止めた。
勢いの着いた棍は摩擦に寄る熱を掌へと伝えたが、
顔色を変えることなく、棍の中ほどより僅かズレて
投げられた勢いを殺せば、そのまま握り締め。]
―――返してもらったぞ。
[ニ、と小さく笑んで。
トン、と軽いそのまま正面から間合いを詰める。
僅か離れた距離から、棍端を握った右腕を横に薙ぎ
相手の左側面を狙って。]
ということで、本格的にポーチ狙い開始です。
でも、左手のナイフをどうしようか本気で悩んでる件。
棍って片手だとかなり動きが制限されるんですががが。
特に三節棍だと……。
…あの技使うしかないのかなぁ…
描写面倒なんだけど、も。(待て)
[投げ終え、その余力でそのまま後ろのポーチに指を滑らせる]
…!
[瓶の栓を外す…
が、棍棒をそのまま受け止めるハーヴェイに目を丸くした]
クッ…!
[左から来る…
身を捩り、右腕で盾の様に使い、押しつけるようにして受け止める。
…その反動で、瓶の中身は左腕の傷にかかっていた]
治癒《ヒーリング》…!
[そのまま掌を傷に当て、呪文を詠唱。
何かが灼けるような音がすると、右足で蹴りをハーヴェイの左腹に放った]
一回目ー。
文章で打ってるから長く感じるけど、実際はあんまり長くはないんだろうなぁ…
どうしたモノやら。
大体、残り魔力、60〜70%の間?
うあー。やっぱり左攻めればよかったー!!orz(笑)
ヒーリング系を避けたかったんだがー。
……そして左… ナイフ?
思い浮かんだ防御法だと、ニーナがやべぇ!(笑)
弱った事に、どちらも有効打がない。
ニーナは爪が当たる→完全に接近…が出来れば。
ハーヴェイはナイフ…または、ニーナのスタミナ切れ、体力切れ、だろうなぁ。
とりあえず、これで、ハーヴェイはニーナが魔法(薬)を使う、と分かったはず。
これでワンステップ進むはず?
………!
[防がれた衝撃のすぐ後に
呪文の詠唱を耳にすれば、微かに舌打ちをして。
と、蹴りが繰り出されるのに気付けば
咄嗟に左腕を横腹へと添える。
しかし、片腕だけでは衝撃を防ぎ切れずに
勢いのまま、僅か右へとよろけた。]
……っは…っ!
[息が一瞬詰まるものの、踏み耐えれば
蹴りを受けた左腕をそのまま振り上げる。
手に収まったナイフを、相手の足へ一閃を繰り出して]
[…完全に入ったわけではないが、よろけるハーヴェイに微かに金色の瞳が細まる。
ゆっくりと足を降ろし、棍棒を左腕で掴む]
…ッ!
[しかし、棍棒に気を取られすぎて視界に煌めく物が入ると、すでに振り下ろされ…]
グァァァァァッ!!
[もう間に合わない…そう、判断したのか。
咄嗟に左手で棍棒を掴んだまま、声を上げながら右手の爪をハーヴェイに突き出した]
[棍を握られれば、僅か其方へと意識が向いた。
と、右からの一閃を視界に捕らえ、何とか避けようとするものの
先ほど繰り出された蹴りによって、左腹に痛みが走る。]
………ッ、…!
[握られたままの棍の端を回し、手前に位置する節を外す。
棍棒の接続を解かれ、僅か身体を逸らす事は出来たものの、
相手の攻撃は、振り上げたままの左肩へと入り]
[ざむっ…
少女の足にナイフが刺さり…そして、今度こそ爪はハーヴェイの肩を剔っていた。
激痛に顔をしかめながら声を漏らす]
グォォォォ…
[棍棒の接続が解かれ、手は離している…
しかし、足に刺さったナイフで跳躍する事が出来ない…
距離が取れなければ、治癒《ヒーリング》している暇はないだろう…
ならば、出来る事は一つ]
グァァァァァ!
[我武者羅に…力任せに両腕の爪を振り下ろす]
…っぐ、……っ!
[相手の手から離された棍を引き寄せ、
ぱし。と片節連結されたままの方へ持ち変えて。
繰り出される双方からの攻撃に気付くものの
僅か左手を上げようとしただけで走る痛みに
肩を削られた左腕は既に使えそうにも無いと瞬時判断する]
―――…っ!
[何とか、僅かに右への跳躍しながら
棍を握った右腕を、右から左へと振り上げる。
僅かにでも、相手の攻撃を逸らす事が出来れば
相手の左側面へと回り込もうと]
っ!
[ハーヴェイが僅かに左へと動く。
…自分が傷ついているのは右足…
ハーヴェイの意図を察したのか、歯を食いしばり]
グォォォォォ!
[左足を軸に、右足を軽く浮かし、ハーヴェイの左側に身体を移動させた。
右足から血が流れる感覚が続き、痛みと共に足を怠くさせ…
この状態は危険だと…勝負に出る事に決めたらしい]
グゥゥゥゥ!!
[両腕で左肩を掴む。
そして自分の方へと引き寄せた]
………っな…!
[僅かに左側面へ回り込みは適うものの
左を軸にはしたものの、行動へと転じた様子に目を見開いた。
……人間ならば、機動力に致命傷とも言える傷で
更に動きを見せるのは、完全に予想外で。
―――獣化に寄る能力差異を読み誤った。
そう青年が気付くのは容易かった。
そしてそれと同時に、この勝負の行方も]
―――…ッ、ぁ……、…!
[肩を掴まれれば、走る激痛に呻く。
そのまま引き寄せられれば、更に苦痛に顔が歪んだ]
――――……っ、…
[抵抗を試みようと身じろぐものの、
金の眼を睨み据えれば、小さく舌打ちして。
一度は上げた棍を握った右腕を、ゆっくりと下ろす。
僅かに弾んだ息のまま、その視線は逸らさずに]
[手にハーヴェイの血が付く…
しかし、その金色の瞳はハーヴェイを見つめる]
…コウサン、シテ…クダサイ…
[呼吸を荒くしながらも、少女は声を出した。
棍を下ろす様子に、視線を向けるもすぐに戻し]
あたしが、爪に塗った薬…
アレは、魔力を込め…詠唱、すれば…
猛毒となって、貴方の、自由を…奪う、でしょう…
そして、体力…命、も…
[すぅ、と金色の瞳は青色に戻り、少女の指先も鋭い爪はなくなっている…
が、その代わりに目に見えて青い光…魔力を帯びていた]
五秒以内に、どうするか…言って…ください。
なければ…降参、と…見なし、ます…
[五秒。プラス今まで説明していた時間、があれば、充分に思考、そして行動に移れるだろう…]
[…5…4…3…2…1…0]
…
[す、とハーヴェイの肩から手を離すと、自分の右足に刺さったナイフを抜き取る]
…っ…あ…っ!
[肩で息をしながらも、後ろに付けたポーチから薬瓶を取りだした]
…治療、します…
if:ハーヴェイを力ずくで降伏させる場合。
[手にハーヴェイの血が付く。
ハーヴェイは苦悶の表情を浮かべ…]
オワリ、デス…
[高い…しかし、くぐもった声で少女は告げると、両の手に魔力を帯びさせ]
猛毒《ヴェノム》。
[…爪が光り出す。
試合を開始する前…指先にかけた薬…ソレはこの魔法の媒介であった。
ハーヴェイの頬に付いた傷、そして、肩を剔った傷…そこから毒は体内に入り込み、全身に蔓延していく]
…降伏、してください…
[いつの間にか、少女の瞳は金色から蒼に戻っている。
先ほどとは違う…しかし、視線に力を込めていた]
[肩から離された手に、は、と短く息を吐く。
右手を負傷した部分へと当てながら、右膝を立てて座り込んで]
―――…先に、そっちを治療した方が良い。
人間に戻れば、筋切ってるだろうから。
……ナイフ。
[端的に述べれば、受け取るために、
掌を向けて左手をす、と目の前へ差し出す。]
[力無く右膝は折れ…その場に座りこむ]
…その、様です…ね…
[大きく呼吸を続けながらも、差し出された手に血塗れたナイフを手渡す。
視線を下ろすと傷口に薬をかけ、手を翳す]
治癒《ヒーリング》…
[じゅぅぅぅ…
何かが灼けるような音とともに、傷口から微弱な光を発していた。
しばらく、何も無いように見えたが、次第に傷はみるみるうちにふさがっていった。
残ったのは血の跡、だけ]
…
[…ゆっくりと立ち上がり…大丈夫な事を確認すると、ポーチから二つの瓶を取りだした]
…肩、見せてください…
[ナイフを受け取れば、右袖に撫で付ける様に
両面に塗れた紅を拭い取って。
刃を確認するように眺めて、軽く服袖を引き上げれば、
下に隠されていたベルトへと再びナイフを収めた。
パチン、と軽い音を立てて留め金を下ろせば
正した服袖の上から一見しただけでは、
その存在を知ることは適わないだろう。
と、治癒が終わったのか、
ニーナの立ち上がった様子を見やれば、
僅かに安堵の息を吐いて。]
―――…。
[もう少々軽傷なら断ることも出来ただろうが、
流石にここまで傷が深ければ、動かすのもまま成らない。
無言のまま、傷口から裂けた服を肩口の辺りから破いて]
[肩の辺りの部分を破くハーヴェイの様子を見ていたが…
距離を詰めるとハーヴェイの肩と頬に、二種類の薬をかけ]
解毒《アンチドーテ》。
[手を翳し、詠唱を行う。
…液体が一瞬だけ白い光を帯び…
続けて少女は詠唱する]
治癒《ヒーリング》…
[灼けるような音。そして、少しの痛み…
しかし、微かな光を発しながら、ゆっくりと傷を塞いでいく]
[沈黙を保ったまま、治療の様子をを見つめていたものの
光が収まると同時に、ニーナの手が離れる。
軽く抑えながら左肩を回すものの
先程まで走っていた激痛も、既に治まっていて]
―――…。ここまで、綺麗に治るモノなのか。
[感謝する、と短く告げれば
棍を手にしてゆっくりと立ち上がる。
カキン、と小さな音を立てて三節に解ければ
右足のホルダーへと慣れた手付きで収めて]
[…光が消えるのを見て…そして、魔力の放出に何も反応が無くなると手を下ろした。
その後の言葉に、力無く微笑んで]
…はい…
あたしの…一番、最初に…出来た、魔法、ですから。
[ゆっくりと立ち上がるが、本当に小さな歩幅で歩き出す]
でも…獣化に、治癒…ちょっと、使いすぎた、様です…
体力的にも…厳しい、かも知れません…
[早く、休まないと…小さく呟いて、その場を後にしようと、小さく一歩を踏み出す]
―――俺は、魔力やらに全く縁が無いからな。
少し治るだけでも、凄いモノだと思うが。
[パチン、と留め金を下ろす音が
教会堂の高い天井へと響く。
元の場所へと歩み戻れば、
その場を後にしようと後ろを向く
ニーナの足取りに僅かに眉を寄せる]
……手を貸そう。
俺が、魔力を使わせた一因でもある訳だし。
[ニーナの右横へと並ぶと、左腕を差し出して]
…私の、家系は…魔法のに関しては、少し…名が、知れてますから…ね。
恐らく…その、せいで…呼ばれたんでしょうね…
[ゆっくり。一歩ずつ歩く…
しかし、ハーヴェイの言葉に反応出来るくらい…それぐらいしか離れていなかった。
すぐに、ハーヴェイにも追いつかれ、腕を差し出されると、少しだけ目を見開くが…軽く頬を染め]
…その…お言葉に、甘え、させて…頂きます…
[ハーヴェイに近づくと少し躊躇ったが、少女はハーヴェイの右肩に手を置いた]
…それでは…帰りましょう…
[ボソボソと小さな声で呟くように言うと、小さな一歩を*踏み出した*]
う……。
[薄らと開いた目蓋の先に、白衣を着た数人の人の姿が見えた。
霞がかった頭を数回細かく振ると、白衣の人間達は彼に気付いたのか、全員が覗き込むように集まってきた]
「大丈夫かい? ここがわかるかい?」
[その中の一人が、目の前で指を振りながら、彼の反応を見ている]
ここは……?
[言葉につられるように視線を動かすが、真っ白い外壁……いや、布地の壁と天井が見えた]
見覚えが無いな……。こんなテントみたいなところ。
[その反応に、白衣の人間達はほっとした様子で顔を見合わせた]
「ここは、メイフォリア様の指揮する隊の医療テントだ。君は思ったより失血が多くてね。街ではなくこちらに運ばれたんだ」
そう……か……。俺は……。
[負けたのか。と呟こうとした彼をみて、白衣の人間は首を振った]
「いや、メイフォリア様の判断により、君の勝ちだ」
そう、か。
「一応、意識が戻ったら、宿にて安静にするよう聞いているけれど、どうだい? 動けるかい?」
[言われて体を起こす。
木片の刺さった部分に痛みは走っているが、それ以外に変な部分は感じられない。
後は失血によるダルさ程度か。
簡易ベッドから体を下ろし、簡単な準備運動を行うと、大体は問題ない状態と確認した]
ああ、とりあえず、宿に戻る。
あまりこういう場所にいるのは、大会上問題があるだろうしな。
「ん……まぁ、ね」
[その一言だけ、妙に切れの悪い呟きをした白衣のメンバーに、少し小首を傾げながら、それでも礼を述べて外に出た。
そこはメイがつれて来たのだろう、自軍が大きな野営を行っていた]
……なんだこれは?
[高々無名のメンバーだけを揃えた大会で、呆然とするだけの軍を率いる……。考えにくい事だ]
あのお姫さん、何を考えている……?
[いや、考えうる内容はある。
あるが……正直、すぐには信じられない仮説でしかない。だから、あえてそれ以上考えずに、その場を後にした]
確証は無い。
……ないからこそ、確実な証拠や証言がでるまでは、どうにでも動けるようしておくべきか……。
[街の近くに来てから、野営に振り返る。
だが、それ以上は、何も語らず、街の近くの路地へと体を滑り込ませる。
目を覚ましたのが昼過ぎだということもあってか、路地は少し薄暗い様相を呈している。
それでも夜目の利くほうであるナサニエルは、日と影のギャップに視界を奪われることもなく、宿へと向かって歩き――]
ウェンディ?
[何処か生気の欠けた眼差しで路地に佇んでいる知り合いの少女を見つけた。
何事かと、駆け寄ろうとした時、ウェンディはびくりと大きく体を震わせると、踵を返して脱兎の如く走り出した]
あ! おい!
[しかし言葉では止められず、そこには、小さな胸から落ちたチェイン=ファングだけが、残されていた]
[...は第二軍の将として、内務省への出頭を命じられていた]
「メイフォリア王女、ここ数日の第二軍における急激な再編成、および武装集積についてお聞きしたい」
[顔をそろえた有力貴族、官僚を相手に平然と答える]
此度の遠征、我が軍の勝利に終わりました。しかし、また即座に次の遠征に出向くことになるのでしょう?
我々は、訓練と準備を怠ることはありません、なればこその常勝なのですから。
ここ数日の動きは、そのための準備です。我々が勝利するため、ひいては我が国が大いなる躍進を遂げるため。
問題は無いと思いますが?
[...の言葉に、居並ぶものは笑みを浮かべる]
「そうでしたか、さすがは我らが姫将軍。無用なお呼び出し、失礼いたしました。我らも王女のご活躍、ますます期待しておりますぞ」
[その言葉をきき、内務省を後にする]
俗物どもが……
[即座に頭を切り替え、ニーナとハーヴェイの戦いの*分析を始める*]
オロカモノドモメ!
オウゾクドモヲカタヅケタアトハ、キサマラノバンダ。
イマシバラクノエイガ、セイゼイキョウジュスルガイイ。
ワタシハ、カナラズキサマラヲホロボス!!
イナ、キサマラダケデハナイ!
コノクニガ、コノセカイスベテガニクイ!!
ホロボシテヤル、ワタシニハソノチカラガアルハズダ、スベテヲホロボシテヤル!!!
[何処をどう歩いたのか覚えていない。
ふと気がつくと薄暗い路地裏にいて、前方から見覚えのある人影がやって来るのに気づいた。顔ははっきり見えなかったが、名前を呼ばれて誰だか知った]
……ナサ…。
[チェイン=ファングを渡さなきゃ、と思うと同時に、しかし駆け寄ってくる彼を見ると、話しかけられると、彼が困りはてるのも構わす泣いてしまいそうで。
――困ったウェンがとった行動は、そこにチェイン=ファングを置いて、逃げるというものだった]
[…個室。ハーヴェイの助けを借り、なんとか酒場まで戻ってくる事が出来…
部屋に入ると、鍵をかけ…その後の記憶がない]
…
[辺りは暗く…そして、視界には天井が見える。
ベッドの近くの机にはポーチが置いてあった]
…そ、っか…
うん…あたし…消耗、しすぎたんだ…
[ゆっくりと身を起こすと、鞄とポーチを取り…
ポーチの中の空き瓶に、カバンの中のストックを移していく]
…体力は、ともかく…魔力は…
まだ、全快…じゃない、か…
[酒場の主人は溜息をついた。
目の前には見事に破壊された踊り場…元々非公開の武闘会…
のために場を請われた以上、多少建物にダメージがあるだろうとは予想していたが。]
[しかし、これは困る。とても困る。]
[いっそ全壊とかならば、自分が泊まる所も含めて保証されるだろう。
けれど破壊規模としては小さいもので、保証はきっとたいしてあてにならない。
が、破壊規模こそ小さいが、そこは宿屋としては重要な所で。]
……とりあえず、通れるようにはせにゃな…
[主人はそう呟くと、何枚かの板と大工用具を持って来て
トンテンカンテン、応急処置を踊り場に施した。
見た目はトホホだが、とりあえず通りぬけくらいは出来るようになったであろう]
「お〜い、そっちはどうだ?」
「あ〜……材料がちと足らんわ。ミッキー! 材木もってこい!」
「へ、ヘイ!」
[そんな復旧作業が急ピッチで進められている酒場から部屋に向かう踊り場付近を見て、さすがにウェンディを助けるためとはいえ、やりすぎたと後ろめたさが大きい。
だが、それよりは体をじっくりと休めたいという欲求と、ウェンディの変化が心の大半を占めているため、まだふらつく足取りで、仮足場の組まれた階段を上っていく。
途中、マスターがナサニエルに気付くが、雰囲気を察知してか、苦情は一言も発しなかった]
[踊り場を抜けて、二階に上がったところで、急にナサニエルのお腹が鳴った]
……そういえば、ラッセルと闘ってから何も食べてないな……。
[そう考えると、最低で半日。最大で二日は何も口にしていない事になる。
それでなくても出血が酷かったのだから、栄養補給は必要だ。
そう考え、踵を返して再び酒場に下りていった。
そこには、上がってすぐに戻ってきたナサニエルを不審そうに見つめるマスターがいたが、簡単な謝罪の言葉を述べて、何時もどおり、軽いカクテルと怪我に触らない程度の食事を頼み、カウンターに腰を下ろした]
[誰とも話したくない気分でも、結局はここに戻ってきてしまったのは、つまりはやはり誰かと話したかったということなのだろうか。
きぃ、と扉の軋む音を立てて、視線を下に落とした少女が酒場に入ってきた。]
……………。
[主人に何か頼むこともせず、無言でナサニエルの隣に座る]
[ドアが開いた気配に、ナサニエルは気配を読もうとして、すぐに止めた。
聞こえてくる足音に聞き覚えがあったからだ。
隣で小さく椅子の軋んだ音がしてちらりと視線をおくると、一瞬口を開きかけたウェンディの姿が目に付いた。
やはり様子がおかしい。
昼間のこともそうだが、いつもなら、元気よく声をかけてくる筈だ。
だから、ナサニエルも声をかけるのが戸惑われた]
[隣で呟かれた名前に、さすがのナサニエルも横にいるウェンディを直視した]
……どうして、そんな自信なさげに言うんだ?
[普段なら、ナサニエルも冗談で笑い飛ばすところだ。だが、リックの名前を聞いたとき、ぼんやりと夢の中に出てきた人物を思い出し、それ以上気の利いた台詞が出てこなかった]
[両手で頭を抱えるようにし、どうしても震えてしまう声を必死で抑えながら]
……どうしてだろ、わかんない。でもすごく不安で堪らないよ……!
[そう言って、昼間、路地裏で出会ったデボラに言われたことを説明した]
[正直、話の内容を聞いて、普段であれば笑い飛ばしているようなものだと感じだ。
だが、今のナサニエルにも、そんな事できなかった。
たかが夢と思うかもしれない。
だが、あまりにタイミングが良すぎる夢に、妙な胸騒ぎを覚えたのも事実だった]
気にしすぎじゃないか? たかだか占いだろう?
[そうは言っても、ナサニエルもまた、断言はできないでいた]
……うん、そうだよね。
占いって外れるものだもんね。
[ナサニエルを見つめ微笑んだが、どこか弱々しい笑みだ]
ごめんね、変なこと言って。
[時を遡ること数時間前、都市南側のスラムで小規模な暴動が起こる]
第四連隊で区画の封鎖を、第三、第五、第六連隊で鎮圧に、首謀者は殺しなさい。
しかし、そのほかの被害は最小限に。
第十一連隊を情報統制にまわします、漏らすなとは言いません、不可能ですから。
コントロールしなさい、それで処理できるはずです。
[矢継ぎ早に指示を出す。暴動そのものは、わずか数時間で鎮圧された。首謀者の死をもって…]
もう限界が近いですね…
抑圧された怒りが、抑えきれなくなり始めています、急がないと…
聡い者なら、この暴動を見て私のやろうとしていることに結びつけるものがいるかもしれない。
王宮の愚か者どもはまだ気づかないでしょうが、それでも気づくものが少なければ少ないほど良い…
[唇を強くかみ締める]
そんな……ことはないさ……。
この大会が終わったら探せばいい。
俺も、人を探している。
一緒に探せばいいさ。
それで、互いに目的の人物を見つけたらぶん殴ってやればいい
[そう言って笑ったが、心の中では少し違うことを考えていた。
生きているなら、殴ってやるが、死んでいるなら、何で死んだと罵ってやろうと]
[ぶん殴ってやればいいというナサニエルの言葉に、やっと明るく笑う]
そうだよね、可愛い妹ほったらかしてどこ行ってたの!ってぶん殴ってやらないとね。
……ナサニエルの探してる人も、はやく見つかるといいね。そしたら、私も一緒にぶん殴ってあげるよ。
[ようやく笑顔を取り戻してくれた彼女に、ナサニエルもほっと胸を撫で下ろす]
いや、大丈夫だ。
いい加減、散々修行で殴り倒した相手だし、今度も一人でやってやるさ。
ああ、でも探すのは手伝ってもらおうかな。
[相変わらず、出会い宿で密談中のアーノルドがくしゃみをしたが、それはこちらとは関係ないかもしれない]
私でよければ、喜んで手伝うよ。
[国境警備隊の情報網は結構侮れないもんだしね?とくすっと笑い]
……ナサニエルもリック一緒に探してくれるの??
そだね、二人で探したら、思ったよりずっと早く見つかるかもしれないね。
(いえない……よな。例え夢でも……)
[ただの夢ならば、全く問題ない。
だけど胸に残ったしこりは、一向に消えてなくならない]
(変なこと……起きなけりゃいいけどな……)
ああ、俺達の情報網も侮れない……
[そこまで言いかけて、そこで初めて思い立つ。チェイン=ファングを堂々と彼女の前で使ったことを]
あ……あの、な、ウェンディ……
[隠せるはずない証拠だ。
明るくなりかかった気持ちが一気に雨雲に覆われる]
その……あの銃見て……怖くなかったか?
冒険家 ナサニエルが「時間を進める」を選択しました
[怖くなかったか?と問われ、きょとんとしてから首をよこに振った]
怖くなかったよ? ラッセルから助けようとしてくれたんだし。それに、ナサニエルは私を殺そうなんて思ってないでしょう?
[そう言ってから、小首をかしげ少し思案する素振りを見せ、言葉を選びながら喋った]
……今のナサニエルが、どういう”生き方”をしているか、何となくだけど判ってる。その銃のこと噂を聞いたこととかあるし……
でも、ナサニエルは無闇に人を殺したい狂気に襲われてとかで、その道を選んだわけじゃないでしょう?
[狂気など常に持ち続けている。
家族を殺した仇をとるという狂気を。
だが、それはウェンディの言うようなものではなく、あくまで、自分自身に必要な技術としてだ]
そっか……。
ありがとう。
[そういってくれる人がいて欲しかった。
どれだけ狂気で塗り固めても、やっていることは卑しい職業でしかないのだから。
だから、ナサニエルは久しぶりに心からの笑顔で、ウェンディに微笑んだ。
そして、そのまま気持ちよく*酒を飲み続けた*]
[思えばとても久しぶりに、ナサニエルの目がちゃんと笑っているのを見た気がした。つられて、ウェンもにこりと心から笑った]
『お互い似たような経験をしてるしね』
[気持ちは痛いほど判るよ。
ふと、そう思って、どうしてそう思ったのか判らず首をかしげた。]
(似たような経験……?)
学生 メイは、双子 ウェンディ を能力(襲う)の対象に選びました。
[何故そう思ったんだろう、と考えようとすると、それ以上思考するのを拒絶するかのように、頭に靄がかかったようになり……]
………。
[また襲いくる不安。ふるふると、頭を振ってそれ以上考えないようにする。]
おやじさん!
ホットミルクと、いつものサンドイッチください!
[努めて明るく注文し、やがて運ばれてきた料理を食べることに*集中した*]
―軍営 医療テントにて―
大丈夫かな…ナサニエルさん。
[ぐるぐると頭の包帯を換えられながら、ラッセルはテントの床に転がって、裏布地をぼんやりと見ていた。
自分の攻撃によるものではなく、彼自身の壁をも壊してしまった大技の疲労で意識を失ったというところが、仮にも武闘会参加者の身としては情無い話だが]
ううん…。
でもこんな風にちゃんと、手当てしてくれる人も居るみたいだし…平気かな?
[自分達を回収していく処理係の男達からの扱いからして、まともな手当てなど期待できないと思っていた。
しかしこんな風に包帯を換えてくれることさえしてくれる人も、ちゃんといたのだった。
お前のことなんぞどうでも良いと言われているが如く、グッタリしたまま床の上で随分と放ったらかしにされていたものだが、それでもゆっくり休んだおかげか体もかなり楽になったのだ。
...は感謝の気持ちを表現して、その手当てをしてくれた一人の親切な白衣に目礼する]
はぁ…。
[しかしついつい口をついて出てきてしまうこれが、何度目の溜息だろうか]
[闘いに負けた事に、後悔はない。
むしろあの策がうまくいって勝ち、それでも喜ぶ気持ちが生まれていたらと考えると、その時こそ後悔していたように思う。
どんな手段を用いても自分は選ばれる一人になろう、それが自分と村の幸せに繋がると、ウェンディを人質にした時には本気だったが…]
神さまと自分の気持ちは裏切れない…
…ほんと、そうだねー。
[白衣は答えてはくれないが、壁に向かって話しているわけでもないと思えば気は楽だ。
...はくるくる表情を変えながら、独り言を喋り続ける]
ウェンディさんを庇ったナサニエルさんを見た時思っちゃったもんね、やっぱり。
ああ…ぼくがなりたいのは、こっちだ。
自分の身を顧みず、ためらいも無く…
守りたいと思う人を守ろうとする側だ、ってさ。
[もう顔を思い出すのも難しい、ラッセルにとっては遠い昔。
それでも自分にしてくれた事だけは忘れられない、本当の父がそうしてくれたようにだ]
…村とぼく自身を幸せにするチャンスは、まだあるはずだもの。
ぼくは自分の力で城の兵士になれたんだ。
そんなふうに、これからも自力でのし上がってやるんだからね。
そんな人が、小さな子を…
あ。
小さいのは体だけだけど。
中身はちゃんと大人だけど…
[近くにウェンディは居ないと知りつつ、思わず言い訳する]
…とにかく。
そんなぼくが、女の子を人質に取って勝とうとしちゃ駄目さ。
だから……うん、ちゃんと謝らなきゃ。
すんごく気は重いけど…
[ぴちんと小さく頬を叩いて己に活を入れる]
…戦場になった酒場がどうなったかも、昨日の勝敗がどうなったかもだって、気になるしね。
じゃ、…ええと。
名前知らないけど、親切なあなた。
白衣さん。
[横になり続けてなまった体を半ばよたつきながら起こし、包帯を巻いてもらった頭を下げる]
手当てしてくれてどうもありがとう。
ぼく、もう行きますんで…
[ちょっとだけ重い足を引き摺って、テントを出ようとするラッセルの腕を強く引き、白衣は引き止める]
イタタタ…あの、ちょっと。
痛いんで、放し…
[振り返って覗いた親切なはずの白衣の瞳に一瞬、自分を物扱いで回収しここまで運んで来た男らと同じ色を見た気がして、生唾を飲み込んだ]
……出ちゃ駄目なんですか?
[言葉少なに要点だけ話す白衣に対して、怪訝な表情になって確認する]
どうして……?
[それはもう随分とやけに長い沈黙の後、虚空を眺めて何か色々口を開きかけては黙るのをくり返していた困り顔の白衣は、やっと口を開く。
『あぁその…打ち所が悪い…から…、今動くと……』
白衣はゆっくりとした動きで、ラッセルの頭を指す]
[さまざまな書類を修理しながら、部下に指示を出す]
第二連隊より、二個小隊を待機させておいて下さい。
後ほど私が出る際に連れて行きます。
処理としては、そうですね…暴動首謀者の拠点強襲とでもしておいてください。
結果、誤情報だったという偽装も含めて。
あと、アーヴァインに用意させておいた例の区画、そちらの準備もよろしくお願いします。
[部下を下がらせ、深くため息をつく]
候補は三名。
ナサニエル、ハーヴェイ、シャーロット、と…
リスクとリターンを考えれば、致し方ないですね…
[残りの処理を済ませた後、二個小隊を引き連れ軍営を出る]
[宿の扉を開けると、ラッセルを除く全員がそろっていた。全員の顔を見回し、用件を告げる]
現在状況は流動的であり、あなた方の内数名には先に場所を移動していただくことになりました。
ウェンディさん、ニーナさんの二人です。
ラッセルさんは、現在も治療のため軍営内のとある施設に収容されていますが、お二人もそちらに移動していただきます。
残る三名は、今しばらくこちらでしていただくことがあり、残っていただきます。
心配しなくとも、数日中には会えることを約束しましょう。
[ウェンディが何かを口にしようとするが、同時に30名を越える兵士が宿に踏み込んでくる]
お二人を案内してください。
私の客人です、失礼の無い様にお願いしますよ。
マズハカクリダ
アソコナラバ、ナニガオコッテモモンダイニナラナイ
ダツラクシャハ、ヤクニタタナイモノハ、イラナイ
ハハハ
イマスグコワシタイ…
イヤ、ガマンダ
マダソノトキデハナイ、ソレハ…モッタイナイ
[二人が兵士に取り囲まれ宿を出て行く、それを見て動こうとする残る三名を見つめる]
落ち着きなさい。
どうこうしようと言うわけではありません。
皆さんもお気づきでしょう?
私の真の目的は、あまりまっとうとはいえないものです。
どうしても情報統制の必要があります。
そのため、一時的な隔離を行うだけです。
それさえも我慢ならないというならば、仕方ありません。
あなた方を含め、全員の口を封じなければならなくなります。
私の率いる第二軍は総数12万6000。
必要とあらば、この区画を焦土にしてもあなた方の口を封じます。
無論あの三人は真っ先に。
しかし、そのようなことはしたくありません。
もう一度言います、落ち着きなさい。
[冷静な、冷酷とも取れる口調で告げた]
マア、サカラッテモカマワナイガナ
ソウナレバ、ミナコワセルノダカラ
シカシ、イママデノジュンビヲムダニハシタクナイ
モウスコシ、オトナシクシテイロ!
スグニホロボシテヤルカラ
[不満と不振の入り混じった三人の視線を受けながら、淡々と告げる]
さて、あなた方にはもう少しだけ、こちらで待機していただきやってもらうことがあります。
まだ試さねばならないことがありますので。
今日はここまでにしておきます。
また後日、詳細は伝えるとしましょう。
くれぐれも、軽挙は慎んでください。
[そう言い残し、宿から出て行った]
[執務室に戻り、一人考え込む]
どうして、こんな方法しか取れなかったんでしょうね。
他に方法だって、きっとあったはずなのに私が選んだ方法は…
……いえ、悩みません。
悩む資格などありません。
[何かを忘れるためのように、*仕事に没頭する*]
チがウな、他に方法はいくラでもあっタ。
そチらを選択シ、実行スル機会も、能力もアった。
わかっテイて、選ばナかっタ。
いヤ、こウナることヲ望んでイた。
すべテガ憎いのダロう?
ダカラこの手段を選んだノダろう?
望みがかなうのはもうすぐダ
私の本当の望みがかなうのは…
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