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[キャロルの言葉に、顔を上げて]
…………。そうだな。僕はまだ、生きている。
僕は君に、二度守られることになるんだな…。
無駄にはしないよ、この命。
精一杯、生きてみせる。
[願わくば、次でこの惨劇を止められますよう]
……だから、見守っていてくれ。
ありがとう、守ってくれて。
…ありがとう。
[そう言って、...は漸く*笑顔を見せた*]
[店の中に視線を戻す。
キャロルは…守護者であることを告白してしまったキャロルは…。
胸が詰まる思いでキャロルを見やると、彼女の肩に手を置くハーヴェイの姿。]
………………。
[...は、そのまま静かに、二人の姿を*見つめていた*。]
[カウンターに置かれたナイフを掴み、キャロルに手渡す。]
こレ、キャロちゃんが持っているといいヨ。
今日、役に立つかも知れないかラ。
[無駄、なのだろう。それは何故か感じている。(…何故?)]
[バートが守りたかった存在。
キャロちゃんが守りたかった存在。
自分の守りたい、守りたかった存在。
それらを守る手段を持たない無力な自分。
今は、ただただキャロルの無事を*祈るのみ。*]
[誰も口には出さない。
それでも皆、知っていること。
きっと、私はもうこの人たちと会えはしないのだろう。]
守りたいヒト、居る。
同じよ、 人も、オオカミも。
ヒューが命をかけて仲間を守った、それだけよ。
[出来たら、もうちょっと生きて居たかったな。]
私順番来る、それだけ。
[皆でおいしいもの食べたり、いっぱい笑ったり、悩んだりしてさ、一緒に生きたかったな。
まぁ、それでも ]
私の生きた時間、きっとそんなに、悪くはないね。
[そして、泣いているような顔をして笑うハーヴェイに、笑顔で一つだけ頷いた。]
ま、黙ってやられるつもりはないから心配しないよっ!
[疲れからか、酒場のカウンターに突っ伏して大きな溜息をつく。どこからこうなったのだろう。キャロルとヒューバート。あまりに明らかな証拠は、キャロルを信じさせるに充分なものだった。後はばたばたと……役人がやってきて、ヒューバートを連れていった。大げさな、まるで一幕の舞台だと言わんばかりの彼――憎悪を消化させることもなく。むしろ煽るだけ煽って……]
ああ、役人たちは生死問わず引き渡せばいいって言ってなかったっけ…。
どうせだったら、僕の手で
[殺したかったな――]
[呟くところまではいかなかった。自分の思考に気付いて愕然とする。殺したい。そう、思わなかったか。昨日までは人として、接してきていたはずの人を、こうも簡単に憎めるのか…]
[私は自分を守れない。
守護者は自身の写し身だから。
けろっと笑ってその場を離れる。
ハーヴェイに、嘘がばれないうちに。]
ありがとうボビー。
美女は金と力はなかりけり言うの、知ってるか?
だが私力はちょとあるよ。なんとかなる。
でもやっぱりお金ない。美女だから。
だからそのうちおいしいものおごるですよ?覚悟しとくです。
ハラキリね〜。あれ?ハラはくくるんだっけ?
[まくし立ててながらコートを羽織る。
ひらりふわりと、それはやっぱり舞うように。
そしてすれ違いざま]
ボビーはいっぱい人を助ける。
これからも、あなたの周りと、あなた自身にいっぱい笑顔、いいね?
[それだけ言って、ぽんと肩を叩いた。]
それじゃ皆お休みですよ。
必ず、・・・必ず、 皆無事で!
[何かを話そうとすれば、時間はとても足りないと判っている。
だから、誰かの声が自分を追った気がしたが、振り返らないで道を駆けた。
ヒューを守りたかった者は、私のところに来るだろう。
私は誰のそばにも、居てはいけない。
ばいばい、みんな。
いっぱい、いっぱいありがとう。]
[脳裏に浮かぶのは。妹のように可愛がっていたウェンディ。草原渡る血の匂い。肺が痛くなるほどの、慟哭――]
[グレンさん。自分たちを庇って逝った人。言葉こそ多くなかったが、あの瞳は多くを語っていた。目の前で連れて行かれた時の衝撃]
[狂気を宿して逝ったリック。今でも、妹を奪われたショックが彼を狂わせたのだと信じてやまない――]
[笑って、泣いて、怒って――色々な表情を見せていた彼らはもう、ここにはいない。今でも、ここにこうしていれば、笑って現れそうなのに]
[正視できない――彼女の笑顔は、それほどに眩くて。なんだか、泣きそうになって、目を逸らした。なんでだろう]
お休みなさい、キャロルさん。
また、明日――ここで。
[丘の上で舞っている。
欠けない月に照らされて。
今宵踊るは精霊のため。
これが最後の奉げになるから。
どうか村に安寧を。
どうか平和が戻るよう。
なくした絆を結べるよう。
明日で全てが終わるよう。
村に平和が戻るよう。
そして、先に往った人たちが安心して微笑むことが出来るようにと。
ほのかな光を身に纏い、巫者は一人で舞い続ける。]
[その時、依巫であった…には、すぐそばに迫っていた殺意に気付くことができなかった。
突然がぼりと黒い液体が胸元にあふれる。
服が汚れると思ったのか、反射的に手で受け止めようとした。
だが次々に溢れてきて、拾おうとするそばからそばから零れてゆく。
それは、温かな、 ]
――
きっと誰も敵ではない。
交わる形を間違えただけ。
真実なんてわからない。
だけど世界は人の数だけあるものだから。
たった一つの私の世界、望みの形で持って行くよ。
リック、君はやっぱり嗤うかい?
どうやらこれからそっちに行くみたいだ。
グレン、これで良かったかしら?
あなたの代わりに誰かを守れたかしら?
ウェン、あなたのことも守りたかった。
おばあちゃん、今夜も一人で待ってるだろうか。
もどれなくてごめんなさい。
どうか、どうか元気でね。
ああ、ハーヴェイ、あなたに・・・ ――
[酒場のカウンターに突っ伏したまま]
ああ……殺したかった。殺したかった。
あんな、人間どもの手にかかるくらいなら、ボクが、黒曜を。せめて、ボクが送ってあげたかった……この手で!その喉を切り裂いて!
[あげた顔には悲しみの涙。それは追悼の涙だと思われただろう]
黒曜――黒曜――黒曜――。
返事をしてよ黒曜――。
[すがるように、何度でも。愛しい仲間のその名を呼び続ける。]
置いていかないで。
ボクを置いていかないで…。
ボクを一人にして、逝かないで……!
……黒曜は、ボクが生き残ることが望みなんだね――。ボクは……それなら……。
きっと、守護者を殺すよ。
そして、生き延びてみせる。
黒曜……っ
黒曜、黒曜、黒曜……!!
[呼べば呼ぶほど、虚空に響くだけのコエが切なさを増した。幼子が母を求めるように、無心に呼ぶ]
黒曜――黄玉がいなくなって、黒曜まで。
ボクは踏み石なんていらない……!
黒曜にいてほしかったんだ……!
[夜は明ける。白々と空が明ける、その前に]
行かなくちゃ。ボクは、独りでも一人じゃない。黒曜、黄玉が生かしてくれたんだから……。
[キャロルに肩を叩かれ、かけられた言葉に]
間違いだらけだヨ…キャロちゃん。
ハハッ……
[その言葉はキャロルに届いただろうか。
そして思わず出てしまった封じていたはずの笑顔は見えていただろうか。]
バイバイ、キャロちゃん。また、ね。
[またね、の言葉は寒々しく虚空に消え、...は*家路に着いた。*]
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