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[小さく舌打ち、]
早期介入を妨げる為に、保険として衛星を奪っておいたのに。参ったなぁ……本当に。
逃げるも何も、下層民が都市外で暮らせるとでも?
[メイに。]
【Hypnosから解放しても交渉レベルとしては――…】
[Alchemistの補佐AIが告げるアナウンス。
セシリアは、都市の終わりに合わせ──すでにバックアップデータが自動再生されないよう、リスクを負ってでも、衛星軌道へ攻撃を仕掛けるべきである──と。本来ならば、その目的を最優先し、この場を撤退するだろうが。光弾を受けたセシリアは動かない。]
死をもたらす事を止めれば、私を創ったMasterの──意志が消えてしまう。いいえ、何を言っているのでしょう。
私は、ミッキー・J・ローグを殺したと言うのに。
[戸惑ったように、被弾して皮膚表面が淡い電波のベールに包まれるのを、見下ろした。効果は微弱だが、光弾の影響で、何かが狂う──
狂って、寧ろ、自己矛盾の無い言葉を紡いでいるのではないかとおもえるのは何故か。]
元のMasterを愛している、のです。
ただ、それだけ。
下のみんなが、都市外で暮らせるかどうかなんてわからない。暮らせないかもしれないし、暮らせるかもしれない。
人は元々大地に根付いて生きてたんだもん。
やってやれないことはない、と思う。でも。
みんなは多分、下を離れない。
少なくとも、あたしの知ってる人たちは、あそこが気に入って住んでる人ばかりだから。
あたしもだけど。
みんなに知らせても、誰も動かない――。
[セシリアの様子に首を傾げ、その後の言葉に息を呑んだ]
セシリア?
――Masterを愛してる?
……絶対やだ!
でも。
[このまま腕を差し出せば、どうなるのだろうと言う不安と、都市の崩壊への不安が交錯する]
腕を出して都市の崩壊が防がれるなら、いいよ。
ああ。皆が殺されなければ良いんだろう?
都市の記憶の崩壊すら防いであげるよ
[死の乙女のData Copy完了。最後に可能かどうかは分からないが、KotへのMaster権限譲歩を書き込もうとした]
なんか、騙されてる気がする。
うん、騙されてるよね。
[言いながらもトビーのほうへと近寄り、袖をまくって腕を出した。肘より上は、僅かに色が違っていて、人工皮膚でないことが判る]
よく胡散臭いとKotから言われる。
これでも努力しているつもりだが、
生来の性質のようだ。
[歪んだ哂笑をし、左手の掌を当てた。一度だけチクリとした痛みがして、直ぐに引く。ユニットは組み替えられながら手に戻っていったが、――Mayの開いた左手まで来た時、何かコロンと転がった]
[セシリアの表面を覆っていた被弾の影響は、すでに消えている。]
…愛してなどいません?
[何処か不確かな声音で呟き、そして、思い出したように流れた涙を拭った。]
うん、胡散臭いよ。色々。
……指輪?
[転がった指輪を眺め]
[セシリアの様子に一瞬寂しそうにしたが]
愛してる人を殺したことなんて、忘れた方がいいのかもしれない――。
[小さく呟いた]
一時的人格(パーソナルコアセルフ)、経験的自己としての人格が本質とその直感(オラクル)を上回る事例など百も千も万も見てきた。
[──遠くで、雪崩の様な音が響いた。
おそらくは、すでに半壊していた都市の一部が、更に崩れた音。
本来のクリーンな都市には相応しく無いダストが、三人が立っている場所にも流れてくる。]
さっさと何処かへって、ずいぶんな言い方。
言われなくても、ここにいたら危ないし。
トビーはどうするの?
[左手を握り、後方へと跳ぶ。]
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