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[一階へ降りる。
と。
そこに見覚えのある客の姿を見つける。]
あぁ、ちょうどいいじゃねぇか。
お前、宗冬のマスターだろう。
いつぞやは、世話になったな?
クックッ…。
[抑えた笑い。]
おい、あいつ、昨日会ったんだがよ、戦いへ行くと言って出て行っちまいやがった。
どうなったんだ?
勝ったのか? 負けたのか?
それとも他の結果か?
[エルダー、ローズマリー、ショウガ、エキナセアのお茶を入れて
ケネスに差し出したところで彼が降りてきた。]
店にでてこないでっていってるのに
どうしてでてくるの。
それにお客様にそういう言い方をしないで。
[ぽこんとガトリングの頭を叩く。]
柳生さん、美貴さんとの未来のために
沖田敬一郎を倒すって出かけていったんですけど。
……ケネスさん、あなた令呪……。
[力無く立ち上がり、部屋を出てリビングに向かう。
戸棚から酒瓶を取り出して、そのままグラスに注いだ。
誤って愛犬を凍らせて以来、宗冬に誘われるまで断っていた酒をあおる。]
ゲホッ、ゲホッ……。
[久しぶりの強い刺激に喉が悲鳴をあげた。]
「ワフ?」
[心配そうに主人の顔を覗き込む愛犬を引き寄せ、抱きしめる。]
宗冬様……。
「ワフーン。」
てめぇ…。
[ぞわぞわと殺気が脳髄へ浸透していく。
がくがくと右腕が震える。
こいつ、ひとつも俺のことを理解しやがらねぇ。
空想で壊すものがもうこの街にはあまり残っていない。
数少なくなってきた建物を穴だらけにする想像で、なんとか銃を出すのを我慢する。
逃げ惑う人々。
残さず撃ちつくす。]
フシュー…ッ。
[息を吐く。]
何不満そうな顔してるの。
悪いことしたんだから怒られて当然でしょう?
[そういいながら作りおきのラタトゥイユを温めて差し出す。]
店にいるのならせめて客の振りしてちょうだい。
[ハーブティではなく水をおいた。]
[ケネスは、お茶を飲みつつ香野とリチャードを見つめ]
宗冬は沖田にやられちまった……
リチャードの話は宗冬から聞いてるよ。
何か、あいつが色々迷惑かけちまったみたいで、すまねぇと伝えておいてくれ。
……もう一度くらいやりたかったんだけどな。
刀対銃でよ、どちらが早く獲物抜けるかってな……
[そう言いながら、リチャードの方を見た。]
そうか。
クハッ。
残念だな。
奴と戦うのは、楽しかった。
次は、殺してやろうと思ってたのに。
あぁ、そうだ。
「彼」…リチャードのことは気にしなくてもいいぜ?
奴は、「この身体を使う二人のうち、何にもできねぇ方」さ。
クックッ。
宗冬も、リチャードは斬る価値がないと思っていたんじゃないか?
いやあ、あいつは価値とか考えねぇ男だ。刀を振りたい時に振るって奴さ。
リチャードには切る価値とかより、ただ単にぶん殴りたかったんだろうな、全くひでぇ話ではあるが……
[ふと外を見て]
さて、ちょっと人を待たせちまってるんでこれで失礼するわ。
香野、あんたはまだ聖杯戦争に参加しながら、大勢の人間に居場所を知られている。
聖杯を見守るのも良いが、自分も店も無くさねぇようにな……
できりゃあ、安全なうちに降りる事を進めたいが……まあ、余計なお世話か……
[静かに笑う。]
まあ、達者でなってことさ。
次会うときは、俺は気づかずにすれ違っちまうかもしれないけどよ、許してくれや。
[ケネスは会計を済ますと、店の外へと歩く。]
あぁ、最後にもう一つ!
今は、撃てないがよ。
お前も、いつか俺が殺してやるよ。
覚えとけ。
俺は忘れないぜ?
あの時邪魔をしてくれたことをな。
[ぶる、と右腕を震わせる。]
だから、その時まで生きていろよ。
[ケネスは振り向かずに、リチャードに手を軽く振り]
ああ……覚えておくよ。できればな……。
[と告げて、その場を去った。]
[暫く待ちくたびれて中へ入ろうか、とした頃。出てきた姿を見つけた]
何か、挨拶でも?
ここは、アーチャーの陣地、ですよね。
[店の中をみつめ]
[ふん。
できればなんて口にする弱い意思じゃ、
生きてすらいられねぇよ。
とは口に出さず、見送る。
自分は忘れない。
それでいい。]
すまねぇ、かなり待たせちまったようだな。
……ああ、そりゃあ、あんたなら知ってるか。
そう、アーチャーの陣地だ。
1番始めに戦った相手でよ、その後もちょくちょく縁があってな……
ちと挨拶しておきたかったのさ。
さて、思わぬ長居をしちまった。
病院へ戻るか。
[そう言って歩き出す。]
[少し、店の中を覗いていたが、ケネスのほうへと視線を移し]
……そうですね。
早く、病院に戻らないと看護婦さんも心配しますから。
[何かを言おうとしてやめ、病院に向かって歩き出す]
― 病院 ―
[医者にこっぴどく叱られた後、病室のベッドに座り、脇にあるテーブルの上に便箋を広げる。]
何から書くべきなのか……何を書くべきなのか。
[自分に起きた事を思い、ケネスは滝田に伝わるのか不安になる。]
魔術師と5年暮らした後、騒がしい侍と組んで、聖杯奪い合ってたなんて信じるのかね?
[目を丸くする滝田を想像し、ケネスは笑った。
だが今は時間が惜しい、とにかく思いつくままに言葉を並べ、自分に起きた事を書き綴っていく。
そして次に自分の思いを書き綴る。
今まで目をそらしてきた存在への独白。
それは予想以上に時間を要したが、ケネスの意識は何とか持ってくれた。
独白は、滝田への詫びの言葉で締めくくられる。]
[聖杯戦争という中で出会わなければ、皆が何事もなく付き合えていたのだろうか、とわずかに思う。
その仮定は仮定として成り立たないのだから、考えるだけ無駄なのだと頭の一部が答える。
シャルロットの願いが、頭を掠めた]
聖杯戦争をやってる身で、こんなことを言うのはおかしいかもしれませんけど。
……みんなが、幸せになれる世界があれば、どれだけいいのでしょうね。
[病室の片隅で零すと、便箋へと向かうケネスの方を見た。恐らく彼はもう限界なのだろう、と書いている間の様子を見て思い]
真さんの目覚めた世界が、長く続くように、私もがんばらないといけませんね。
沖田敬一郎を止めなければ。
たとえ遠い未来に滅びが待ってるのだとしても、だからといって今滅びていいはずがないのです。
頑張ってくれ……としか言えないのが心苦しいけどよ、滝田には幸せになってもらいたいからな……
よろしく頼むわ……
[ケネスは静かに息をつき、ソフィーに改めて礼を言うと、自分の服からひしゃげたマルボロの箱を取り出した。
箱の中に残った最後の1本。
それを取り出したケネスは、その煙草が真っ直ぐである事に気づく。]
曲がってない煙草も残ってたんだな……
[周りの景色がかすみ始める。
意識が飛んだ後、目を覚ますのは滝田なのだろう。
ケネスは指にはさんだ煙草に火をつけることなく、*静かに目を閉じた。*]
クハッ。
[笑う。
食事を一気にかき込む。
水を飲み干す。
…お前と戦えて、俺は、光栄だったぜ?
楽しかったよ。
お前は満足したか?
俺は、まだ足りない。
また時空のどこかで会おうぜ、柳生宗冬。
今度は俺が、*殺してやる。*]
[目を閉じたケネスを暫く見つめていた。死んでしまったわけではない。けれど、もうあの男には会えないのだろう、と思い、その場を離れることが戸惑われた]
おやすみなさい、ケネスさん。
また、お会いできるのを、お待ちしています。
[手に持った最後の煙草を、そっと指の間から抜き取り、手紙の横へと置く]
[寝顔をもう一度見つめてから、病室を後にする。医者へは記憶障害があることを伝えておいた。
病院を出る頃、既に日は低く、赤い日が西の空に*沈もうとしていた*]
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