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でも。村長さんがいろいろ言ってたわよね。村長さんはセシリアお姉ちゃんをどうしたいのかしら。その…やっぱり、死刑にしてしまうのかしら。
なら何もこんなことしなくてもいいのに。
お姉ちゃん、ごめんね。私、たとえお姉ちゃんが悪い人でも助けたいと思うの。でも、それは絶対無理なような気がする…
[ウェンディは申し訳なさそうに、そのままゆっくりと*檻から出ていった。*]
―宿坊―
[カミーラは、たった今ベッドから起床をした。だが、周りに何かしらの違和感が生じている。なんと一人の中年女性が、自分が寝ていた場所の近くにあるベッドで横たわっているのではないか。]
…何だこれは…!?
[寝ている女性の状態を見て驚き、思わず一言発してしまった。]
それより…腹が減ってきたことだし、朝食でも食うか。
[カミーラは、煮炊きができる暖炉を使い*料理を作り始めた*]
[ジェーンを憐れむ者、彼女が差し当り教会へ運ばれた事に安堵するが居ないわけでは無かった。
セシリアが人狼ならばせシリアには罪がある。
が、ジェーンが人狼とは限らない。
ジェーンが人間ならば、寧ろ悪鬼はノーマンだ。衆人環視の元、酷い暴行を受け、更に裸で転がされたジェーン──。]
「ジェーンもこれじゃ、いずれ死ンぢゃうわよ。ね?」
「アイツにぶつからずに済んで良かった。」
「……ちょい待て。
い、今、叫びながら、ノーマンが笑ってたぜ…。」
[安堵][驚愕][良く知ったチンピラへの嫌悪]
「一瞬だったけど、あの気持ち悪い顔が満面の笑みに──。」
「泣き顔じゃなくて?」[疑問符]
「……でも、村長さんが殺されたって聞こえたわよ?
神父様だってほら、森に向かわれるって。」「2人は兄弟よ?」
[したり顔][舌打ち]
「莫迦」
「どンだけあの二人がいがみ合っているか。」
「出来損ないのクズって言ってるじゃねえか、村長さんは何時も人前で。」[失笑][嘲笑]
「そうだぜ、ノーマンならアーノルドさんが死んだら、自分が村長だって思ってるだろ。」
[唾棄]
「──嫌だ。」
「やめてくれッ!ノーマンに俺の姉は犯されたんだぞ。姉さんはだから未だに嫁げやしないんだ。」[引き絞る様な呻き声]
「神父様が村をどうにかしてくだされば──。」
「そうだ神父様なら、悪魔が厄災をもたらしても、我々を救って下さる。」
「聖銀を作られたのは神父様ですって。」
「副団長は駄目だな。」
「なら、馬で駆けつけられたあの方(ヴィンセント)は?」
「神父様にクインジーも揃っていれば、ノーマン1人<だけ>なら敵じゃないわよね。あの顔とあの体格だもの──。」
「お前、あの用心棒に気があるのかッ!」
「──────兎も角、ノーマンは論外だ。」
[派閥が分かれる。人間関係が錯綜し、村に不吉な暗雲が*広がりはじめていた*。]
─森─
[彼が現場に着いたのは、ノーマンの大仰な演説が終わりに近付いた頃だった。概ね善良な─そして単純で愚かな─村民達と異なり、彼はこの芝居がかった嘆きの仕草に明らかな偽善の香りを嗅ぎ取っていた。
ルーサーは歩を緩めずありったけの威厳─と自制心─を保って近付き、村長の遺骸の側に跪いた。
そして、短く聖句を唱えた後、大げさに悲嘆に暮れた素振りを続けるノーマンの肩に手を掛けた。]
兄を喪って悲しみにくれるのは無理からぬことですが、そのように嘆くのはお止めなさい。
死は苦しみからの解放であり、栄光に満ちた主の御許に迎え入れられることを意味するのですから。
ですから、むしろ彼の魂のために祈りなさい。
[立ち上がって両手を広げ、彼は居並ぶ村人に向かってよく通る声で宣言した。]
村長……アーノルドはこの村のために尽くした、立派な人物でした。
私は彼の葬儀を教会にて執り行いましょう。
皆さん、彼の魂が罪の赦しを得、永遠の安らぎを得られるように祈りましょう。
神父さん……。
[目を潤ませて、ルーサーに抱きつく格好。]
ありがとな…本当にありがとなァ……。
[ルーサーの登場すら、村人たちの心を掴む
駄目押しの策に転じようとする。]
[今この場に居る人々の大半は、騙されやすく権威に弱い心脆い人々だ。そのことはルーサーにも痛いほど良く分かっている。
それは同時に、彼らが『まだ』教会の権威とそれがもたらす罪の赦しや死後の安息、そして教会からそれが得られなかった時の煉獄や地獄の恐ろしさを愚直に信じている、と言うことだ。]
さあ、村のために犠牲となったアーノルドを教会へ!
[ルーサーは居並ぶ人々に向かって決然と命じた。自分が先頭に立つべく、教会に向かって歩き出す。
ノーマンにはもう*一瞥もくれずに。*]
ああ…ノーマン。
私は貴方が十分な悔悛の情を見せるまで、当分教会の敷地内への立ち入りを禁じます。
……破門しないのは、貴方の悔悟を期待しているからです。主もきっとそれをお望みだと思います。
[目を遣ることもせずにノーマンに慇懃に言い放つと、そのまま大股で*歩んでいった。*]
[ルーサーの背中を、憎悪たっぷりに眺める。
少なくとも、決死の演技でこの場の村人の
心は掌握できたはずだが、ルーサーはそれさえも
凌ぐカリスマ性を誇っているのではないか、と。]
ふん…まだだ。まだ終わっちゃあいねえ。
俺にゃあ、まだ奥の手が残っているんだ。
へっ、今に見てろよ。誰も俺に頭ぁあがらなくなるぜ。
[*呟いた*。]
──檻──
[ジェーンが運ばれたのを見届けたセシリアは、脱力した様に息を付いた。上方からつり下がる忌々しい鎖にもたれ掛った姿勢。虚ろな眼差し。
着替の前と比べて、鎖は全身に、不均一に巻き付けてあるものの、以前よりは、やや巻きが少なくなっている。特にノーマンが押さえていた方の腕には、彼の怒りを恐れた兵士には、あまり鎖を巻き付ける事が出来なかった様だ。
それ故に先刻のセシリアはギリギリ格子に触れる事が出来たのだった。
いつの間にかやって来た>>146ウェンディがまた檻に入ってこようとしている事に気付き、セシリアは*力無く呟いた*。]
あなたの様な子どもは、もう此処に来ちゃ駄目なのよ…。
―屋敷―
[セシリアの着替えを手伝った後、ネリーは屋敷に戻りセシリアの食事――否、「餌」の準備をしていた。]
ほンだってまァ……
狼っ子はなァにを喰うんだべかなァ……
[村長をはじめ、他の者が居ないことを良いことに、つい独り言に故郷のにおいが混じる。]
あの狼っ子が肉を喰うとしてもなァ……旦那さまァが、「餌に金ェかけるな」っておっしゃるもンでのぅ……はぁ……
[先ほどの食事で余った野菜クズと、干肉の切れ端を鍋に入れ、水で煮込む。塩をほんの少しだけ入れ――]
まァ、こンくらいは入れてもいいべ……
こンでもよォ、オレん故郷で喰うモンよりはァずぅっとマトモなメシだかンなァ……
[赤ワインをドボリとひとつ、鍋の中へ。]
[彼女の雇主、村長・アーノルドの死を知らぬネリーは、どうしたものかと思案しながら「餌」づくりをしている――]
―広場へと向かう道にて―
[鍋に入ったスープ(とおぼしきもの)をトレイに乗せ、ネリーはとぼとぼと広場に向かって歩いている。]
[ざわめき声、悲鳴。
運ばれている影がひとつ。そして、もうひとつ。]
………ん?
ありゃァ、何だべなァ……
[不穏な空気を嗅ぎ分け、ネリーは思わず眉をしかめ、首を傾げた。]
まァた化けモンが人喰ったンだべかのぅ……おお、怖ぇ怖ぇ。
オレもそのうち喰われちまうかのぅ……
オレが喰われてもよォ、旦那さまァのご一家もだれも、みぃんなオレの代わりを雇えばいいとしか思わねンだろォなァ……
オレの田舎の父ちゃんや母ちゃんも……
[はた、と止まり、鍋を見つめる。
――果たして、金のために自分を売った親が、自分の死を悲しむだろうか――
その確証がない――「確証」などという言葉をネリーはそもそも知らぬのだから、もっと漠然とした不安と推測される――ネリーは、ぶんぶんと首を左右に振った。]
………死ぬのは、怖ぇのぅ………
[トレイの上に乗った鍋の中が冷めぬうちに――そうネリーは考えながら、広場へ向かう歩みを*早めた*]
でも、パン…餌をあげる時はどうやってあげたらいいのだろう。
多分、ネリーお姉ちゃんが一番詳しくて、慣れてるんじゃないかな。今度聞いてみようっと。
村長さんにも一度聞いてみたいわ。
[ウェンディは自宅のほうへ*歩いていく*]
[ヴィンセントは困惑していた。
ジェーンの手当てはしたものの、とうてい事情を聞きだせる状態ではない。
セシリアが、拷問によって荒唐無稽な自白に追い込まれた、というのが最も自然だと考えた彼は、親子が無実だと証明すべく調べて回ったのだが。
まずは、医学を修めたと明かして、セシリアを取り押さえる際に負傷した兵士たちを診察した。一人一人に負傷の状況を訊ねても、彼らの証言、そして負傷そのものも一致しきっている。巧妙な偽証とするには、何より彼らを傷つけた他の何者かを想定しなければならない……。
彼がセシリアと話している間に殺されてしまった、村長の事もある。この村に尋常でない何かがある事は間違いないように思われた。]
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