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―屋敷の庭・勝手口―
[髪をおろし、外へと出る。
何処か生温さを孕んだ風が頬を撫ぜる。
既に朝日が射していた、けれど。]
……月?
[煌々と紅く、満月。
血濡れの水晶玉のようだ。
望月という名の御客様だったな、とふとあの刀の煌きを思い出した。
空へと手を伸ばす。]
どうして……。
[翠は紅い月を追うように歩み出し―――
だがそれは叶わなかった。
浮遊感。
戻される。
届かない。]
天賀谷様にお会いしなければ。あの方はきっとこの原因をご存知の筈。
『それから、』
[と付け加えた。脳裏に浮かぶは昨夜“屍鬼”を知っている様な雲井の言葉。]
『雲井さんにも。もしも天賀谷様の意識がまだ戻っていなくてお話できなくても、あの方ならばきっと何か教えて下さるわ。』
[くたりと力を抜き、猫の様な仕草で一瞬、夜桜にもたれ掛かる。そして何事も無かったかの様に湯に浸かった。
浴室を去ろうとする夜桜に、]
アァ、此処に留まらず、彼岸にでも何処にでも逃げちまいたいのが本音で。
──…ロクでも無いモンを呼び込みたがって成功した旦那様を恨みたい気持ちも多々。
しかし、旦那様にはご恩があるんでさ。
簡単には忘れられん事で。
[首を傾け、]
アァ、出来るのならば。
翠は守ってやりたい気がするがね…。
夜桜さん、湯を有り難う。
…恩に着るよ。
[屍鬼を滅ぼすにはその首を…──。
或いは心の臓を…──。]
アァ、アンタは誰かを躊躇い無く殺せるのかい?
[金色の目も黒色の目も見開いたまま、*問うた*。]
[鼻にかかったような笑い声を洩らす]
[唇が仁科の耳を掠めた]
全く、厄介な主人です。
[湯船の音がぽちゃんと響く]
翠を?
そう謂えば、昨晩は少々体調を崩していたみたいですね。
[去ろうとした背に声がかけられる]
[夜桜は振りかえると、変わらぬ微笑を仁科へ向けた]
ええ──。
[食事をとってきます、
と言いおき、夜桜は一度仁科の部屋を*後にした。*]
─天賀谷邸の庭─
[いつからそこにいたのか、地面にへたり込む、 大河原の姿をただただ見ている。]
……オクだな。そしてオキ。
[それだけを口にする。]
そう云えば、昨日お部屋に来て下さったのに、色々あってまだ雲井さんのお話を伺っていなかったわ……
[動揺を鎮めるように張り出した胸に両手を当て、屋敷に向かって歩き出す。
こんな時にでもその足はダンスのステップを踏むように滑らかに動くのだった。]
[屋敷へと戻る道すがら、昨夜見知らぬ男が近くに立ってこっちを見ているのに気付いた。]
……?
貴方は……
[柳眉をほんの少し顰めて男の顔を見た。]
………江原だ。
[とても不躾に名乗る。]
こんな山村の奥に、海の向こう豚の国から
やってきた化け物―それも屍鬼だとかが
現れるだなんて、オキとオクだな。
貴様も、そうは思わんかね。
[目も合わせずに、ただ淡々と話す。]
江原様。
ひょっとしたら昨日の晩餐会でもお目に掛かりましたかしら。ご挨拶もせずに下がってしまって、大変失礼なことを。
私(わたくし)は大河原碧子と申します。お近づきになれて嬉しゅう存じます。
…私は女ですから、難しい事は良く分かりませんけれど…。
[目の前の気難しそうな男に向かって曖昧な微笑を浮かべて見せた。]
……貴様は日本人なのか?
純粋な日本人ではない私ですら知っているというのに。
[神経質に、胸の略綬を弄る。]
オク…山奥も、オキ…海上も死者の住む世界という話がある。
オキからやってきた屍鬼が、オクに現れる。
何とも傑作な話だ。ここはすでにサト…
生者の世界ではないのかもしれないな。
[口の端を少しばかり歪めただけで、それ以外は平然と。]
まあ、どうでもいいことだが。
[嗚呼、と云う様に目を少し見開いて、]
私の郷(さと)では海から来るものは皆常世の国から来るもの…それ故にお祀りを欠かしてはならぬと云う言い伝えがありましたけれど、それと同じ事でしょうか。
[ほんの少しだけ柔らかい視線を送った。]
生者の世界でない…本当に天賀谷様たちが仰るような“屍鬼”が居るとお思いですの?
どうも、私には俄かには信じられませんわ。
…そんなもんだろうな。
[天を仰ぎ、目を細める。]
古来より、高貴な者が海の向こうより訪れ
文化をもたらした後去っていくという話もある。
[表情を変えず、貴種流離譚というものだ、と。]
私の生まれ故郷にも、似たような理想郷の話があるが。
島国という性格上、海の向こうへの憧れが強いのだろう。
[生まれ故郷―それは自分が戦った地でもある。]
……同じように、屍鬼のようなものですら
人によっては信仰の対象になり得るのかもな。
[ただ淡々と。]
……ふん。大陸からやってきた屍鬼か。
その大陸も、眠れる獅子と呼ばれつつも
身を食い千切られた死せる豚であろう。
[声色に尊大さが浮かぶ。]
いようがいまいが、我々の外敵ならば排除するまで。
顔の真横を弾丸が通り抜けたこともある。
銃剣で腕を突き刺されたこともある…。
[左腕を押さえる。]
仲間の屍の上を進み、敵の死体を積み上げたこともな。
もはや、死の恐怖とかいうものが麻痺したようだ。
[時折、悲しそうな表情]
信じようが信じまいが、敵ならば打ち払う。
サムライならばそうするはずだ。
蚊トンボならば恐怖に身を食い破られるだけ。
天賀谷様は不死と云うものがこの世にあると、私にそれを見せると幾度か仰ってましたけど…
その天賀谷様が求めてらっしゃったものは本当は何だったのかしら…。
[小さく呟いた。]
まあ、この国は牙を抜かれてしまったということだ。
情けない。私は、サムライを相手にしていたとばかり思っていた。
屍鬼恐るるに足らず、そんな言葉を聞きたいものだ。
[憂いの顔付きで溜息をつき、それ以上は何も言わない。]
『嗚呼、この方は。
理想を追い求めてらっしゃるのね…それでないと、心が休まらないのだわ……』
[純粋な日本人でないと言い、サムライを相手にしていたと言うのならば、ではこの江原と言う男は日系人なのだろうか、そんなことを考えていた。]
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