情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
──水鏡前──
アァ、望月様が恐れるのは……、
[仁科は望月の背に声を掛け様として途中で止めた。
僅かだが、一種、憎しみに似た表情を浮かべている。]
[幼い頃の望月の姿が現れる──]
[山田浅右衛門に憧れ、木刀を振るう日々。]
[──供養塔が見える]
[景色は転じた]
[今の望月の姿──]
[震える。慄く。怯える。恐がる。畏れる。]
『俺は、何者だ……?』
『生きながら悪鬼羅刹となり人を殺めた俺が、たとえ記憶になくとも、時の狭間でも屍の肉を食らったとて何の不思議がある』
俺は……。
―医療車輌前
いけない!
――急がなくてはならない。
[私は医療車輌の扉を開き、ストレッチャーを引き出した。
防水布でできた死体袋を携える。]
待っていてくれ。
すぐに私が――君は誰の手にも触れさせはしない。
―屋敷裏手・搬出入用昇降機
[ヴヴヴ……。重々しい振動と共に上昇する速度が今までに増して遅く感じられた。
手も白衣の袖も重く血を吸い、赤黒く染まっている。
二人分の肉体を詰め込んだ防水布の袋はぱんぱんに張り詰めて、ストレッチャーの上から零れ落ちそうになっていた。]
もちづき、さ、ま?
[崩れ落ちる、その後姿の背を撫ぜる。
――恐れている。
それの、意味するところは―――?]
……ぁ
[声が、震えた]
……。
望月さまは、
屍鬼ではありません。
[滔と、夜桜は水鏡から顔をあげ、告げた。]
[望月の顔が、水鏡に克明に映りこんでいた───。]
[仁科は暫くの間、半目で望月を見ていた。
夜桜が望月を振り返った事に気付き、望月への視線は冷たいものの、僅かに口元に笑みを浮かべる。]
望月さまは、人間です。
……。
「だったらほかに誰が……。」
[その言葉に、水鏡の中が揺らめく。]
あたしが、未だ見ていませんのは──仁科さんと、翠さん。
それに、江原さまです。
[静かに告げた]
[何処とも知れぬ闇の帳の向こうから、愉しげな声が響く]
くすくすくすくす…………。
仁科さん。
何うして貴女、あんなにも『なぜ自分の影を見ようとしたのか』――と。其れを聞きたがっていたのかしらね? あんなにも、怯えたような瞳をして。本当は、もう少し――云い足して差し上げたかったのだけれど。
くすくすくす……
でも、残念。
私は、私の異能は、私の異能は。
唯一人しか此の眼に映す事を許さないものだったようですから。
本当に、残念だわ――。
―三階・廊下
[ガクン、と昇降機が止まるやいなや、ストレッチャーを押し出す。廊下を脇目もふらずただ駆け抜けていった。]
さつき君、父上と再会するためにここへやってきた君が――
君があんな……
[目にした惨状は、到底筆舌に尽くしがたいものだった。
白百合のように可憐に、時に黒水仙のように艶やかだった彼女。
その肉体は常に寄り添うようにつき従っていた杏と共に凶猛な嵐に巻き込まれたかのように引き裂かれ、悽愴たる姿へと変じていた。
折り重なり入り交じり一個の肉塊と変じていた二人は、どの部位がどちらであったのか容易に判断がつかない有様だった。
ただ、滑らかな輪郭を描くその面-おもて-だけが、愛を囁きあう恋人たちのように向かいあい、艶冶として笑みを湛えていたのである。]
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新