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愛した結果が
輪廻
[澄んだ美しい音を奏で88の鍵盤は呆気なく崩壊した]
[黒鍵/白鍵][宙に舞い、星が砕き、Dataの残骸は弾け、痕跡すら残さずに消え果てた]
―― bravo.
[霊魂の雨を回避しながら惜しみない拍手を送る]
――Mundane/中央部・あるビルの一室――
[工具を磨いて元の場所へと仕舞う。少し窮屈になったが、入らないことはない。手足の具合を確かめて、地図を見た。今のものと、記録されたものを]
動いてる……。どこに?
ま、いっか。なんにしても、エネルギー補給しなくちゃ。
[ポーチから携帯食料を取り出し、口へと運ぶ。フルーツの香りと、ゼリーの舌触りが心地よく]
──Central Tower/Basement (電波塔/基底部) ──
クソッ、駄目か……管制室まで行ければ楽に、と思ったんだが。甘かったな。代わりになる物は――
[辺りに素早く目を走らせる。非常用の連絡回線を見つけ、小型タップと携帯用端末を取り出した。ケーブルをバイパス接続し、アカウントハックによるシステムへの侵入を試みる]
── 理想郷<Utopia>/遊園地 ──
[Underには、旧世界を模した今となってはそれが何であったのかまったく見当もつかないPGM、廃墟郡が多数存在する──。
メインキャスト達の去った遊園地は、何故か誰かに啜り泣きが聴こえて来そうな錯覚に陥りそうな、言いようの無い寂寥感に満ちていた。
セシリアは、散らばる紙くずの中から、チケットを拾い上げる。]
ショーは終わった…のか。
グランギニョル(残酷劇)──?
[ショーの存在について口にした時のヴィンセントの暗い囁きを思い出す。ゆっくりと瞬き。]
── 理想郷<Utopia>/Closed:Morgan's Space ──
[マーシュ邸のガレージで、唐突にヴィンセントの車の後部座席に現れたように。]
ヴィンセント・キャロ。
センチメントの季節はもうおしまいですか?
[受動的防御PGMと攻撃性能動的防御PGM]
―― Möbius Ring & φ
[片方は、輝く捩れた三角形(トライアングル)の帯を指揮者の周囲に展開し防御を。片方は、輝く粒子で出来た渦/螺旋、黄金比率の矩形に従い内へ内へと全てのPGMを巻き込み、使用者に到達出来ないようにするPGMである。無限の渦の中に巻き込まれるのだ。それは、無限の渦≒相手のPGMへ高負荷を引き起こすものでもある。]
[φがMorganへ向かい、放たれた。]
― 理想郷<Utopia>/Closed:Morgan's Space - 車内 ─
[当然のようにその場にあった少女の姿に、男は微笑みかけた。
センチメント。
sentimental bus――
このバスの名前は少し物寂しさを帯びていると感じながら。]
――やあ。
ちょうど夢を見ていたところだよ。
[そうして、笑った。]
そういえば、前に会った時、聞いてみたいと思ってたんだ。
君は夢を見るのかなって――
[侵入の直後、サイバーアイの視界を覆ったのは頑強な防壁。
研磨された花崗岩のような、微細な罅の一つさえ見当たらないセキュリティが圧迫感さえ漂わせて立ちはだかっていた]
コイツは……さっすが、だな。
[思わず、音のしない口笛を吹く。が、一度目を瞑って、口にした]
……いや。こんなところで時間を食ってるヒマは無いんだ。
[呟いて、侵入設定を没入(ダイヴ)へと切り替える]
―→ Closed/Central Tower (専用領域/電波塔) ──
[馬に乗った騎士の姿をした光が向かって来る。
手に持つ槍が、「怪物」の頬を掠める。]
チクっとしたくらいだぜェ…だが痛ェ。
痛ェよォォォォォォォ!!!!!!!
俺、生きてるぜェ!痛みこそ実感だァッ!!
[光の騎士ごと、φを刺し貫く。
渦がトライデントを巻き込もうと。]
キくぜェ…最高の痛みだァ………。
[紅い火花を散らしながら、狂喜にむせぶ。
Siva―「破壊」の槍
巻き込みが減衰し、騎士の背中から
霊魂の柱が第八<ホド>に向かって伸びていく。]
お爺様、ずいぶん怖いお姿なのね。
[見覚えのない異形ではあるが、地図は師と退治する"怪物"が老人であることを示している]
これだけ派手な戦闘されてると確認のしようもないじゃないですか、師匠。
["NOE"展開][僅かな曇りに眉を顰める]
[手出しはせず、展開を見守る]
― 理想郷<Utopia>/Closed:Morgan's Space - 車内 ─
美しい夢が醒める時には、現実に帰ることが侘びしく感じられることがある。
君もそういう寂寞とした思いを感じることがあるのだろうか……と思ってね。
[少し寂しそうな口ぶりだった。
少し間を置いて唐突に――]
俺が犯人だよ――。
[と呟いた。]
― 現実世界<Mundane>/UGVワゴン車中 - 東部 ―
[UGVはネットワーク上の地図と位置情報を照らし合わせながら、定められた巡回コースを巡っていた。
どれほど経った時のことだっただろうか。
位置情報は東部区域にさしかかっていることを示している。
だが、男の意識はそこ―現実―にはない。
現実世界での状況を目視で確認できずにいる。
その場所が現在どういう場所となっているか、忘れている。
災害時には的確に反映される筈の道路情報は、システムの大規模なダウンによって完全には機能していない。
前方の障害物を探知する車載センサーはここへ至るまでも、路上に不正規に停車したままの車や落下した障害物などを正確に回避してきた。
だが、突如目の前にぽっかりと口を開いた巨大な闇に的確な対処することはできない。空間マップは未だそこに道があると表示し続けている。]
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