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[煙草を咥え火をつけるでもなく部屋を出て通路を歩く姿は、歩調は違えど煙草を呉れた人物に良く似ていたかも知れず、ナサニエルの部屋へ無断で入り込み、自身の眼球が入ったカプセルと、咥えていた煙草をテーブルの上に置き、メモも残さず入った時と同じく静かに部屋を出る]
崩し将棋は――…無理か。
[呟き夢遊病者の如き常の足取りで、コーネリアスを探し通路を歩む]
[医務室にいたのはいつも以上に不機嫌そうなハーヴェイで、ニコルの所在を尋ねればやはり不機嫌そうに出て行ったと告げる言葉。
ややしてから男に尋ねる]
──人は、心臓と脳と、どっちを壊せばすぐに死ぬ?
[迷いも躊躇いもない声に軽く面食らったような表情の後に答えを教えてくれた不機嫌な研究者に礼を告げて、そしてやはりニコルを探して彷徨う。
廊下でその姿を見かければ声を発しただろうか]
───ニコル。
[稀な戯れには無言で和やかな視線を返し
去り際ハーヴェイが言い掛けた言葉に思考をあてて、
その表情には何も色はなく彼の去り際に薄く笑った。]
死神なんて、いない……。
[居るのは¨人間¨。
ラッセルの問いかけには]
――ああ、俺は……
[ちょっと、と言ってラッセルを見送った。]
[見えずとも気配に一旦は歩みを止め、声が聴こえると一旦は瞬くももう無意味と思い直したか、僅か口許を緩めるもあり]
コーネリアス、将棋しよう。
[相手の返事を待つでもなく、自室へ向かい常の歩調で歩き始め、部屋に着けばラッセルより貰い受けたタブレットを胸ポケットから取り出し、コーネリアスへと差し出す]
はい。
酒場の看板娘 ローズマリーは、流れ者 ギルバート を投票先に選びました。
…将棋?
え、あ。ちょっと。
[決心が鈍らないようになるべく短い時間で済ませたかったのだけれど、当の本人があれでは無理だろうと嘆息してから彼の後を歩き出す。
極彩色の部屋の中へと足を踏み入れたなら、差し出されたタブレットに唖然として]
…なに、これ。
[受け取ることなく、そのまままっすぐにニコルを見返して]
[戻るなりテーブルの上の゙それ゙と煙草を見つけて]
……それが、お前の答えか。
[苦い顔。]
どいつもこいつも馬鹿野郎だ。
[自分もまた――
ゆるゆると首を振り、テーブルの煙草の代わりに受け取ったオムライス味のレーションを胸ポケットに入れる。]
ちょっと行くとこがあるから。
……後で迎えに来るよ。
[瞳にそう言い残し……部屋にロックをかけて出かける]
コーネリアスの食料。
肉は食べないんでしょう?
[受け取られる事の無いタブレットを持った儘に、視線は感じるのか緩やかに首を傾げ]
冒険家 ナサニエルは、流れ者 ギルバート を投票先に選びました。
冒険家 ナサニエルは、文学少女 セシリア を能力(襲う)の対象に選びました。
書生 ハーヴェイは、流れ者 ギルバート を投票先に選びました。
俺が好かれる要素なんてあるはずもない。
好かれることも望んでない。
嫌われても平気。
[彼女と居ると、少し人間になれた気がした。]
君が誰かに殺されるのも、
君が誰かを殺すのも、
君が誰かに食べられることも、
君が誰かを食べることも……
…そういうことを聞いてるんじゃ
[ない、と言い切ることが出来なくて、俯いた。
瞳の色が変わっていることに気づけないほど、全てに耐えられないままゆっくりと手を伸ばしてタブレットを手にするだろう]
……ごめん。
[呟いた声は、空気に溶けて消えてしまうほどに小さく力なく震え]
コーネリアスが謝る事は、無い。
[受け取られるタブレットに手を引き]
コーネリアス――…
[薄い口唇を噛む]
我が侭は、もう云った。
是以上は、厭なら無理強いはしない。
でも――…
[拳を握る]
叶うなら俺を――…
[食べて、と小さく囁いた]
[足はまっすぐにセシリアの所へ。]
――ちょっと来い。
[ぐい、と腕を掴んで相手の承諾も得ずに引き寄せる。]
……船長、見つけたのは誰?
事故死か、殺人か……お前じゃないのはわかってる。
[耳元で囁いた声。
セシリアの髪を――常の乱雑さではなく――優しく撫でて、その手にレーションを握らせる。]
……やる。
前に煙草と交換で、ギルにもらった。
[彼に煙草は返された。
彼は覚悟を決めた。
食べるのは彼でも自分でもない。]
[どうせなら、心も完全に無くしてほしかった。
つまらない感情で動かないように。
くだらない感情で苦しまないように。
人ほど豊かな感情はないくせに、
意志や半端な感情を与えられた身は
曖昧な世界で浸食されて尚
今更こんな行動に走らせる。]
人は……残酷で、無慈悲だ。
機械は所詮機械――ならなんで、
完全な機械にしてくれなかったんだろうな。
…っ……!
[手の中に残ったタブレットの包装が、強くこぶしを握ったことで少しだけ悲鳴を上げた。
どうしようもない状況なのに、どうしたら彼の望みを叶えてやれるだろうかと考えることはそればかりで]
……ごめん。
ホント、ごめんね。
[涙が落ちるのと同じくらいだろうか。
タブレットを持たない手に握られていたのは子供騙しのような旧世紀時代のデリンジャー。
叶うならば、と告げる言葉にようやくまっすぐに前を見据えて]
…わかった、食べる。
他の、誰にもやらない。
ニコルの全部、俺が食べるから───
[堪えていたはずの涙がぼろりぼろりとやはり頬の上を伝い古い銃口はその額を狙って───]
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