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[「塔」の前]
[開かれたコンテナとの間に立ち]
……舞台に上がらなければ、物語は始まらないか。
「私」にはしばらく休んでいてもらおう。
[と、頑丈の体躯の男──<パッチワーク・マン>?がコンテナの中で何かをしている]
──自分から舐めるとかどういう神経だ?
"Chaos Blood"の意味を考えて見ればいいものを。
[その"血"は毒]
[尽きることなく溢れ出て]
[触れた箇所から腐り落ちる]
[己が舐めれば、たちまち酩酊]
生きることを願った僕の力。
…?
[己の指先が黒ずんでいる。まるで、銀器が毒に触れたかのように]
かゆ、い。
[血に触れた手だけがむず痒い。皮膚がまた肉体から逃げ出しそう。やがて、左手の小指辺りの皮膚が浮いた。赤黒く変色して、どろりととろける]
…おなじ、におい?
[滴り落ちた黒い雫が足元を焦がす]
──3F──
[曇天──陽光の明かりが強さを増してゆく。
誰かの足音が聞こえたがグレンは動かない。やがて、別の足音が聞こえ、一度の剣戟/駿足→枝が撓る/数十合に渡る剣戟=争いの音色が聞こえ始めてきた。]
[硝子に映りこんだ雲が流れて行く]
[自分の爪の先が赤黒く染まっているのを興味深げに眺めた。試みにその爪で傍らの木を引っかいてみる。
…ややあって、樹皮がとろけていった]
……けひっ。
[驚きとも笑い声ともつかぬ呼吸音]
ひとつ──ふたつ。次々腐り落ちてくね。
早く手当てしなきゃ、その腕使い物にならなくなるよ。
ねえ、ドクター。手当てしてあげれば?
間に合うかはわからないけど。
[くらり、と血の芳香]
ふんふん……ふーん………。
[急に勢いよく屈む。彼の頭上を勢いよく剣が通り過ぎる。]
正義の楽しみを邪魔するのは、悪…だよなあ?
[壁に刺さった剣の刃に触れる。
シュオオという音とともに緩やかに折れる。]
正義の鉄拳!くらえッ!!
[フィルム状の免疫抑制剤をまだ普通に動かせる右手で口中に放り込む。
純粋な毒ならともかくも、元が生体ならば、免疫を抑えて取り込むだけ]
かおす…ぶらっど…。
[数えるように自分の指先を凝視]
これは、どんな、ちから?
[腐食はひとまず収まった]
―2F→3F―
ふう…またつまらぬ悪を殴ってしまった。
[赤いスカーフを首から垂らし、それ以外には
拳に金属製のナックルを装着。
シャワーの姿のまま、3Fへ。]
―2Fシャワー室前―
[顔の部分が黒く変色した死体が転がっている。
変色したというよりも、真っ黒な何かで覆われて
いるようだ。殴られた衝撃だけではない様子で、
顔面が不自然に崩壊しているようだ。]
[...は、3階から4階へ一度回り、そのまま割り当てられた2階の自室と戻ると、来ていた殺人鬼には似合わない聖衣を脱ぎ捨てた。
カーテンの閉じられた窓から射し込む薄暗い光の中で、真っ白な裸体が室内に浮かぶ。だが、そこにあるのは生娘のような純粋で決め細やかな、血液の乗りが良い肌ではない。妊婦の腹部のように強制的に伸びた皮膚痕や、手術痕が無数に肌の上に走り、中にはどす黒く痣となっている箇所さえある。
...は、その場でくるりと一回転すると、ぴたりと動きを止めた。
しばしの間――。
と、唐突に、彼女は大声を上げて笑い出した。
それは狂ったと言い換えてもいいのかもしれない。口角より唾液を垂れ流し、右手は胸を掻き毟って血が滲み、左手は陰部へと伸びる。
その姿は聖女のではなく、ただ何かに憑かれたような容貌だ]
ここは楽しめる。
クククク!
いい! 何て芳しい香り! 壁に滲んだ黒い血も最高だ!
クククク……くく、ゲヒャ、ゲヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!
[笑い声は止む事は無く、そのまま入ったシャワー室にさえ反響し続けた]
そのままの意味さ。
"Chaos Blood"──混沌の血。
人の理から外れた異常な血。
生きることを願う僕のARM.
まさか、取り込める奴が居るなんて思ってなかったけどね。
効果は君の見たとおりさ。
生体・非生体問わず触れた対象を腐らせ焼け爛らせる。
君は、どんな"物体"なのかな。
<パッチワーク・マン>。
とりこむ、ちがう。
[口調はたどたどしいが、それでも、薬を飲む前よりはよほど聞き取れる音声]
しばらくのあいだ、なじむ、だけ。
[すん、と鼻をならす]
おまえのあまいにおい、すこしだけ、なじんでる。すぐ、うせてしまう。
[どこかそれが寂しいというかのよう]
…くさらせる、か。
おれは、はじめから、くさっていたから、たぶんききにくかった。
―3F―
よう、相棒。暇そうだなあ。
[雲を見上げるグレンの真上に、モノをぶら下げ
つつ話しかける。不自然な真っ黒。]
命というのは限られたものである。
それを浪費するのは、悪だぞ?
[ニィッを笑みを向ける。]
いきる、ことを、のぞむ?
[けひ、とむせたような声]
むずかしい、な。おれは、いきたことがない、から。
おれは、はじめから、つぎはぎざいくだ。
しかばねを、かがってつなげただけ。
血の冷めるまで、と言うわけか?
[どこか寂しげな様子をきょろりと見上げ]
温もりが失せるのが寂しいか?
腐り冷えた身ではとっくの昔に忘れたことだろう。
村の設定が変更されました。
生きることを。
「私」は生きることも諦めているが、生憎「私」自身は生を望んでいるんだ。
だからここに居る。
君もかつてはどこかで生きていたのかもしれないぞ。
覚えていないだけで。
君を構成する要素、そのパーツの一つ一つもかつてどこかで生きていたモノだろう。
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