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あの人が…あの人が何もかも知っているのだわ…
早くその場所へ…
もっと力を……もっと……
[私は全く整合性を欠いた言葉を呟いていた。内容よりもおそらく、呟く事自体に価値があったのだろう。]
―鄙びた道路―
[ネリーはあれからボブ、自分の主と人間としてこれ以上のない喜び、ハピネスを分かち合った。自分と関わった、特に大きく年齢の離れた人物はろくでもない人ばかりであり、それがネリーを酷く落胆させていたからだ。
ネリーは一生と言える程、ボブの事は大切にすることを固く心に刻み付けた。]
[一段落を終え、ゆっくりと休憩を取り、体力もほぼ通常通りになった。
ネリーはこれからの事を考えた。自分にはしなければならない事がごまんとある。アンゼリカにいる筈のソフィーの様態、雑貨屋に残されているえであろうフォトアルバム。ネリーは気が気でならなかったのだ。
ネリーはボブに外出の許可を貰い、再び街のほうを目指して歩き始めた。]
[片肘だけで激しい衝撃を受ける体を支え、手で自分の昂りを掴む。
それをナサニエルの動きにあわせて扱いた。]
ア、 あぁア、 ッ
[目を瞑り、顔をシーツに押し付ける。
髪の間から流れた汗の滴が滴り落ち、シーツに点々と染みを作った。]
[いつもの慣れた道、大げさに言えば目隠しでも歩けるわ、と吹聴しそうな程見慣れた道をネリーは進んでいた。
突如、見覚えがある人影がネリーの視界をちらつく。]
何…? あれは…
[人影が明確に映像化されて、ネリーの眼窩に入り込むと、ネリーは一目散に導かれるようにその方向へ向かいだした。]
あなた……ちょっと、待って!
[よく覚えている。雑貨屋でシャーロットが衣服をたくさんつまんだし、自分も身に纏ったので体型もはっきりと判る。一方の短い癖毛の子とは違う、もう一方の流れるブロンドの子だ。ネリーは駆け足になっていた。]
待って、ウェンディ…!
[ウェンディと目があったような気がした。彼女は不気味に恍惚の笑みを振り撒いているようでネリーはドキッとした。思わず2歩3歩後ずさる。彼女はこんな子だったか。
いやリック、対して彼には生気は感じられない。これでは逆ではないか。
いつだってリックがウェンディを抱えているような双子だったではなかったか。]
リック……どうしたの?
[双子の兄を悠々と抱える少女まであと数歩の所まで近づいた。相変わらずリックはぐったりしている。ネリーはリックに視線を移した。
外傷はなさ……と思ったが一転、彼の首に数本の痣のような跡が…まさか…もしや…
そんなはずはない。ウェンディはリックを愛しているし、そもそも腕力の差が不可能を物語っている。だが……]
ウェンディ、リックをどうするつもりなの…
[荒れた地の上で対峙する二人。先に動いたのはウェンディだった。]
[ネリーはリックを抱えるウェンディを追いかけた。走った。靴がずれるのも構わずに追った。
しかしどうしてだ。追いつくどころか……]
どうして… リックを抱いてるのに、離される……!
ウェンディどうして!
[やがてウェンディの姿はみるみる小さくなり、終に見失ってしまった。おそらくもう息をしていないリックと共に――]
はあっ、はあっ……リック…ウェンディ…!!
[ネリーは膝をつき、へたり込んだ。息が大きく乱れて、
あまりの混乱振りに思考が止まっていた。]
リック――!
[何分、いや何十分かかったであろうか。半ば動けなくなっていたネリー。
呼吸が元に戻るのと同時に、思考力も落ち着いてきた。
その落ち着きが、ひとつの言葉を生んだ。]
しまった――ここはどこ――?
ステラ、いいわよ。
でも、どこに触れたいの?
わたしの顔?
わたしの胸?
わたしの背中?
それとも、わたしがいま触れているここと同じところかしら?
[ローズマリーはステラに向かって少し意地悪く微笑んだ]
[やがて。
内部を抉るナサニエルの動きがより一層余裕のない、素早いものに変わっていき。
遂に、その欲望の色をギルバートの体内に注ぎ込んだ時。
彼もまた、同じ灼熱の白を激しく迸らせて*果てた。*]
[そしてその夜。
アーヴァインが、ここ、ユージーンのいる事務所(兼作業場兼住居)に担ぎ込まれてきた。
彼とは今日の午後会ったばかりだというのに、すっかり変わり果てた姿になっていた。
たまたま彼を訪れた町民が、二階の一室から煙が出ているのを発見して、慌てて何とか火を消し止めたところ、焼け焦げた死体が転がっているのが見つかったのだと言う。
しかし、この遺体が本当にアーヴァインであるのか、それは分からない。遺体はすっかり皮膚が焼け焦げていただけでなく、バラバラに解体されていたからである。単に屋敷内で見つかったから、そうと推測できるだけだ。]
[彼はそのバラバラのアーヴァインをそれなりの形に調えて安置所に収容した。
安置所を出る間際に、入口近くの壁に記された文字に目を走らせる。]
As o’er the cold sepulcher stone
Some name arrests the passer-by;
Thus, when thou view’st this page alone,
May mine attract thy pensive eye!
...
[ユージーンはその詩句を呟きながら、安置所の扉を閉ざし鍵を閉めた。]
――酒場アンゼリカ 地下――
[わたしは右目が見せる過去の映像に戸惑いつつも、しかし拒む事無くその事実を受け入れていた。いや、受け入れるしかなかったというべきだろうか。]
[ローズがわたしに熱い吐息越しに何かを囁く。その声は左耳では彼女の声と認識するも、右耳ではバートの声に変換される。
彼女がわたしの肉厚の素肌をなぞる感触は、半分は彼女の指であり、半分はバートの指に変わった。実際彼がこのような愛撫を行っていたかはもう記憶には無かったけれど、しかしわたしの躰はあったものと認識する。半分ずつ味わう快楽。同性として。異性として。感じ方は同じ。しかし心は真逆に揺れ動き、やがて挟間が生じる。]
[わたしは挟間を埋めようと、再びローズに快感をせがむ。しかし求めれば求めるだけ溝が深まっていきそうで軽い混乱を覚える。
さぁ、わたしは今、男と女どちらに抱かれているの?]
いじわる…触れたい場所なんて…あなたが一番よく解っているくせに――
[わたしは見透かしたような笑みを浮かべるローズに、唇を軽く尖らせて文句を言った。
彼女が触れて欲しい所は解っているつもりだった。でもそれを避けて通るのもまた面白いかと思い――]
じゃぁ…まずはあなたの顔に触れさせて?
あなただと…わたしに確認させて?
『そうしないと、わたしは一体どちらに抱かれているか解らなくなるから…』
[言えない言葉は口内で弾ける]
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