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……さよなら、ヒューバート・バンフロフト。
最期に娘に会えて良かったな。
[自らが死に追いやった男に、彼は低く囁いて、手向けの言葉とした。]
谷間の町は死に瀕していた。
外界から隔たったこのヘイヴンの、更に小さく土砂災害によって切り離された一画で、あちこちから悲鳴や怒号、銃声が上がった。
打ち続く災厄が人々の心を打ち砕いたのか、閉じ込められた恐怖が本能に火をつけたのか。
理性の軛が外され、人間の奥底に潜む獣性が解き放たれた。
アーヴァインの屋敷は再び炎に包まれていた。
倉庫は彼が一次保管していた救援物資を奪う為に鍵がこじ開けられ、屋敷内もめぼしいものを奪うために荒らされた。
たまたま強奪者に行きあった電気工事工の親子は、発覚を恐れた強奪者によって口を開く前に射殺された。
「自衛」に熱心な猟友会の手によって不審な余所者が捕らえられた。
その男はほんの数日前にネリーを襲おうとしてギルバートにのされた、あの大男だった。彼は食料を奪おうとしてある家に押し入り、不首尾に終わって取り押さえられたのだった。
その場で死ななかったのが彼の不運だった。「善良な」町民達は、撃たれて重傷を負った彼の首に縄をかけ、容赦なく引っ立て、小突き回し、大きな木の下に連れて行った。
凄惨な私刑の末に、男は木の枝に吊るされた。
汚物を垂れ流しながら痙攣する男の周りで、それを祝うかのような銃声が鳴り響き、人々は歓声を上げた。
元愛人と愛息の担任教師の遺骸を安置所に収めて帰って来た夫は、頭を骨と脳髄が覗くぐちゃぐちゃの塊に変えてキッチンの床に横たわっていた。
傍らには、マグカップの破片と零れたコーヒー。
妻は、子供部屋で先生の死に心を痛める息子を寝かしつけながら、どうやって死体を片付けようか考えている──。
[死者にはもう興味がない、と言わんばかりにヒューバートに背を向け、悠々と室内に戻って行く。
亡骸を抱いたシャーロットを後にして。]
[私はギルバートをただ見つめ、見送っていた。
彼にはきっとまだこの街で残された事があるのだろう。
私は依然「彼」を抱いたまま、ギルバートや父娘を見つめていた。]
[一糸纏わぬ姿の男の唇が、開く。]
―――素晴らしい。
[ナサニエルは、喉の奥から這い出すような音を響かせた。]
ところで、ギルバート……
俺はお前に、頼みがあるんだ。
聞いてくれるか………?
[ギルバートを、チラリと見やった。]
─ナサニエルの家1階の小さな部屋─
[結局ぶち破った窓からもう一度中に入ることにした。
窓際のネリーの頭をぽんと叩くと、奥のナサニエルに向かって歩いて行く。]
[少しだけ首を傾け、ナサニエルを見詰める。
その瞳は黄金に染まったまま──元々の輝きを取り戻したままで。]
頼み、か。
ちょうど俺もアンタに話があった。
[ギルバートがナサニエルに近づく途中に私と私と擦れ違った。その際頭をすこし叩かれる。
いろいろな感情が入り混じり何とも表現できないものであったが、これまでの長いやりとりが生んだものかもしれなかった。
私はそれを好ましいものだと感じた。]
まずは、くだらない身の上話からさせてもらおうか………
[小さく、笑う。]
俺は最近、ヒトをひとり殺してきたんだ。
お前が俺に与えた、「死」の官能――俺は他人の死を感じる度に、俺はどんなクスリよりも激しく甘い恍惚を手に入れることができる―――そんな身体になったモンでな。
―――ならば。
誰かが誰かを殺すのをただ待ちわびて居るよりも、自分で誰かを殺せば良いじゃないか――と思ったわけだ。
[大仰に両腕を広げ、声を張り上げた。]
結果は、どうなったと思う……?
[ヒューバートの腕は動脈が大きく切断されているのであろう。
腕の傷口から血飛沫が舞い上がる。噴出する勢いで血管が更に破れ勢いは増す。
腕の中で、愛するものの生命が完全に失われる音を聞いていた。心臓が停止する最後の音まで。──ただの人間で有れば、聞くはずの無い音を。
じっと、愛する男の目を見つめたまま。
涙腺は壊れたまま、滂沱の涙が落ちる。]
[ギルバートが室内へ入った事には反応せず。
動かなくなったヒューバートを、丁寧な動作で地面に横たえ。シャーロットは、ヒューバートの頬に両手を差し伸べると、彼に深くくちづけた。]
……………世界で一番愛してるわ、パパ。
[ギルバートが窓から完全に室内に入ってしまってもまだ、シャーロットは長い時間を掛けてキスをしていた。
暫くして、ヒューバートの下唇を噛むように強く吸い、唾液を滴らせながらくちびるを離す。
シャーロットは焦点の合わない目のまま、ギルバートの入って行った方向。そして、ネリーを見た。]
[目の前の一見華奢な少女にドキッとする。
彼女はこれほど意思を持った人物だったか。私が言うのもナンセンスだが、それだけの何かがある。]
あなた…シャーロット…?
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