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[今となっては、もはやわからないが、
Hubertというプログラムに意思があったのか?
持つとしたら、それは何がどのように作用していたのか?
すべて闇の中に葬られてしまった。
ただ、Hubertはいつからか破滅志向に
プログラムされていたのかもしれない。
それも今はわからない。永遠にわからない。]
[Programの構文を全て分解してしまえばいい。
そんな意図から、だったのだろうか。]
……。
[ギリギリと障壁──Absolute A/B /shell──に喰い込む力が、僅か遅くなったかのように、思える。
瞬間、]
[乱れる視覚情報の中で目の前のクインジーが消える。]
待
[クインジーの移動先座標を特定しようと、
分析を開 ]
[止めだった。]
――くる、よ。彼らの視えないところから。
――ほら、すぐ、そこに。
[白の手袋が囁き、第二指を伸ばして空中の一点を指し示す]
――あれは――滅びを求める呼び声。タナトス。
[データの許容量を突破して溢れ出た自律的なコード群は自己増殖を繰り返し、軍事用ワームに近い浸透力で周囲を攻撃し始めた。瓦礫や看板を喰らい己の構成体に書き加え、攻性プローブを吸収しては増幅して射出する。
まるで亡者が生者を喰らい、己の同属に改変していくかの如き地獄の有様]
[無理に走らせた分析により、ビキリと音を立てるゴーグル。
ゴーグルから、周辺の情報が大きく乱れだす。
過負荷によって遅滞していた彼の周囲は、
今度は高速で雑音を作り広げる。
完全に彼を*飲み込んだ。*]
『……退避、を』
[唇を引き締め呟く執事に、白の中から詠うような声が答えた]
――現実は流れ逝く("flow-real")。
――想え、汝が死を("memento mori")。
[足元がさらさらと崩れ落ちていく]
[Daemonが怯えた声をあげる]
──ディー。
[状況が把握できない]
[無意味に大量のデータが溢れ、フィールドを埋めている]
[溢れるデータがループを繰り返す]
[それらは絶対領域すら侵し]
……やっちゃったか。
[そこで、彼女は状況を把握]
暴れたからなぁ。
ディー、危ないからこっちおいで。
[その一言を最後に、彼女の姿は掻き消えた]
[世界が崩壊していく。
路面はあちこちで陥没し罅割れて暗黒の中に滑り落ちていった。
空は崩れ落ち、降り注いだ破片の彼方は認識すらも拒む。
それでも目を凝らし、ただ一人その先へと視線を向けた]
――嗚呼、彼の場所が……Ras、Hubert、"memento"を受け容れられず砕けた魂が。ほら……やってくるわ。
『壊れます、お逃げを!』
――不要よ。それよりも、この身体を書き換えて。
――"The Right-hand of Darkness".
『しかし!』
[悲鳴にかかわらず命令詩句は実行され、淡い光と共に執事の身体は変貌していく。【Inc.】の制衣を纏い、黒い十字を載せた藍色の髪の少女へと。そして一瞬後――変容を終えた彼女の全身を、膨大な数の攻性プローブが*覆い尽くした*]
[ストラを吸い込むように揺らめかせる、
タナトスの中心を向いている。
重い。
重力場が発生したように。
Twinsの防壁──furia→Ignisが防壁を為す──が攻性codeの侵食を防ぎきれず──NIGRED/LutherもUnderの闇に飲み込まれるように姿を消した]
[処理速度が極端に遅延したかと思うと、高速で流れ出す。重さに耐えかねて墜落して来るWORM。筒状のおぞましいウィルスの群。耳を裂く様な重低音。地面は裂け、幾何学模様を複雑に描いて、薄い層が何重にも重なり合い混じり合う。お互いがお互いを侵食し合い──、
緑から赤へ変化する極彩色のオーロラが見えたと思うと、サバンナの景色が現れ。
──────────目眩。]
何処へ
何処へ
連れて
いかれるんだ?
[数多の敵意、無数の声なき声が少女を押し包む。
電脳世界(ウェブ)だけではなく星幽界(アストラル)からも喚び出された意識体の、行き場を失った思いが彼女を喰らい尽くそうと齧り取っていった]
――嗚呼、心地よい……。
――崩壊の序曲。滅びの呼び声。
――けれど、私はあなたたちと一つになることは出来ないの。
今は、まだ。
[ “崩壊” と言う言葉が唐突に実感される。
Geneの足元も崩れ落ち、闇が露出。崩壊に巻き込まれながら空を見上げれば、残骸が蜻蛉の様に揺れている。]
……あぁ、墜ちる。
[本能的な──と此処で使用すべき言葉では無いかもしれないが、記号化される信号の奥深い部分が恐怖に満たされ、Geneの全身に広がる。其れに痺れているのが本当に快楽なのかは自分でも分からない。]
何処へ?
闇の中へ──…
[ただ闇を映した真っ黒な目を見開いたまま、虚空へ*白い指先を伸ばす*。]
──ディー?
[問いかけに獣は低く唸りで返し]
強制転送なんて久しぶりに喰らったわ。
……やっぱキツいわね。
[ぐるりと首をめぐらせ、周囲を眺め、嘆息]
[そこは、あまりに見慣れた"懐かしい場所"]
─Under/Backstreet "Alchemist's LABO"─
[朽ちた"研究室"]
[かつての様子が思い出され、彼女は苦笑]
まさかこんなところに転送されるなんてね。
[歩くとこつこつと、木を叩くような靴音]
──Luther.
[先ほどの"プログラム"が思い出される]
ねえ、錬金術師。
あんたのAIは"memento mori"に侵されるほどヤワに作っちゃあ居ないだろう?
[虚空に向け*呟いた*]
─Under/After catastrophe ─
[墜ちて行く──闇、闇闇、闇の中。
時間の経過は分からない。
漆黒の向こう側、白い衣装を纏った少女の姿がうっすらと浮かんで見える。]
…何処へユク?
[手を伸ばしたまま、]
あの子は、一度空を舞っているのを見た
────天使?
─Under/Backstreet−
[Eugeneとはぐれ、地上への出口を探していた最中にデータ嵐に巻き込まれたが、ようやく視野が開けてきたようだ。どうやら座標が変更されているらしく、先ほどとは違った風景が広がりはじめる]
・・・・・・ ここは、どこだ。
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