>>1313
[やや小さくため息をついて]
ネリー……。あなたのスケールに私を当てはめないで頂戴。
何を持って絶望か、それとも幸せかと感じるかだって、あなた次第、私次第よ。だからこそ、あなたはどう感じるの?って訊いたの。
私は幸せに感じることイコール快感原則だなんて、短絡的と思うわね。
私は現状から目をそむけている心算はないわ。
辛いと感じることはあるけど、それを乗り越えようとしている。そして絶望と感じるまでには至っていない。
[外の世界という言葉には、苦笑するしかなかった。収容所で育った人間には人間の苦悩というものがあるのは理解する。だが、収容所の世界しか知らない彼女に、外の世界の”苦悩”を理解しろと言っても、おそらく無理だろう]
……ほらね、考え方や捉え方だって人それぞれなのよ。私とネリーだってこんなに違う。
絶望を解消するために立ち向かう。結構なことじゃない。
あなたがそう考え、行動しているなら、私はそれを支持するわ。
[屈託なくにこりと微笑んだ。]
その人個人には答えは一つしかなくても、世界全体で見れば1つじゃないもの。
でも、光りの届かない深淵なら、いくら見つめても星は見えないわね。