と。
あれ、と思って小首を傾げる。
金魚の袋越し、目に入った奇妙な姿。
変な着物を纏った、自分より少し年嵩と見える少年が、往来の向こう側に立ってさっきの自分と同じようにきょろきょろと辺りを見回している。
他の人はまるで彼が居ない者であるかのように、その脇をすり抜けていく。
ふと、目が合った。
つやつやと濡れたような黒い眸。切れ長の目。
血の気の薄い白い面は、少年が今浮かべているのと同じ不思議そうな気色を湛えて。
薄い唇が物問いたげに開かれて。
それが。
莞爾として微笑んだ。
──その笑顔。
つきり、と胸の奥が、痛んだ。