―数年後、とある花街の置屋にて―[すっと紅を一筆、白い肌の上に走らせる。]……さあ、できあがりましたよ。鏡を見てご覧なさい。[遥月は、芸者の顔から筆をそっと離し、鏡を見るよう促した。]嗚呼……若々しくて、佳い肌ですねぇ。今日は初めて御座敷に上がるのでしょう?……あまり緊張為さらず、いつもどおりの明るく可愛らしい貴女で居れば良いのですよ?……そう。その笑顔。[遥月は、にこりと微笑んだ。]