──養鶏場の近く・車内(回想/山崩れの前)──
[元々、叔父の頭が弱かった事もあって、副主任がしっかりとしていた為、養鶏所での仕事はすぐに終った。
本の様に背表紙が厚く黒い手帳。日記の続きをエリザは綴っている。今、ここで全てをカミングアウトしなくてはならないと思っているかのように。
雨足が強くなった事に気付き、一度事務所に戻って自宅に電話をかける。家族が心配しているかもしれない。どちらでも良いわと言った際、マーティンが取り次いだのはシャーロット。]
…大丈夫、ママも今から帰るわ、ロティ。
本当に酷い雨ばかりね。
[車内に戻り、日記を書き終え手帳を閉じ、エリザは息を付く。
夫と娘の居る家に帰りたい、と少し彼女は思った。日記の内容が気になるのか、かばんには仕舞わず助手席に乗せたまま、車を発進させる。
その手帳が一時間もたたずに、アーヴァインに遺品として回収される事を*彼女は知らない*。]