悪魔は時に天変地異を引き起こす。地震や雷、飢饉は彼らの手によって引き起こされるものだ。
シトー会士ハイステルバッハのカエサリウス師は『奇蹟についての対話』で、ある村の教会に雷が落ちた際、聖職者がその教会で悪魔をみたと書いている。
また、ドミニコ会士、トマス師は『蜜蜂の普遍的善』にて、一二五六年のトリーアで、雷で葡萄畑がほぼ完全に壊滅した時の模様について述べている。この時、獣のような姿をした悪魔がその場所に現れた。
[一二二二年キプロス、一二二三年ケルンの地震。十三世紀のドミニコ会士ブルボンのエチエンヌの説教範例集にも話が及んだ。]
同じ様な事例は枚挙に暇がない。
凶事ある時、そこには必ず悪魔や悪しき“獣”の力が働いていることを、忘れてはならない。
さて、この村で何が起きたか――
[村人たちがざわめく。
クインジーは皆の顔を一度ゆっくりと見渡した。
そして、訴状を読み始めた。]