おい、これ!
[開いて突き出した手も顧みられることはなく、まるで手の届かない場所に行ったそれにもう、興味を失っているかのようだ]
要らない……のか?
[虚しく行き場の無い手を引っ込めて、どこか寂しい気持ちで手の中の置き去りコインを見やる]
やれやれ…ご主人はお前の事必要じゃないってかね。
手元から無くなったら、そのまま忘れちまうんだろうか。
[ふるふる首を横に振る]
どうだか。
わからねえけどまぁ、戻してやるとも。
俺は義理堅く思い出を捨てない男よ。
[無論扉など使おうはずもなく。
外壁をよじ登り窓からの出入りで寮に向かい、ラッセルの部屋の扉の前にコインをそっと置くと、ナサニエルは自室に戻る]