──(回想)/三階・天賀谷自室…→二階・書斎──
[夜桜から受けとった手拭はヒヤリとしていた。張り付いて血塗れの顔を其れで拭う。生物の様に床を這う血液が内階段を伝い、書斎に向かって行くのを、呆然と眺めていたが…──。]
『…行かなくては。
旦那様のコレクションが。』
[血の後を追う様に、内階段の手摺に上半身を預け、滑る様にして書斎へ降りた。(階段はまだ血の海で到底、人が降りられた物ではなかった。)
無意識に手拭で両手の血を拭う。手拭は既に真っ赤に染まっていた。]
[仁科が降り切った後の書斎に、既に雲井の姿は無い。
血液が意志を持って、書物の方へ向かって居る事に気付く。
慌てて、机の上に転がっている物を全て回収しようとして、最初に目についた明らかな十三の自筆の絹張りの本の様な何か──を手に取った。書き付けの様な物だろうか。]