―天賀谷私室―
[...は今の自分の手には重過ぎるというとでも言うかのように、ゴトリと拳銃を天賀谷のベッド横にあるサイドテーブルへと置く。
――空の一輪差しが目に入る。
翠が手にしていたように、短く一枝だけ持ってきていた花蘇芳をそこへ挿した]
…うるさいな。客気取りでいつまでも偉そうに。
[長く姿を見なかった来海が騒いでいる様子に、冷たくそう吐く]
天賀谷様はもう居られないし…それに。
[来海に慇懃に返事をしていたシロタの声を、肯定するかのように頷いて]
それに――…また一人、死んだって言うのに。
夜桜さんの言う通りだった…望月さんに行かせちゃあ、駄目だったんだ。
由良さんを望月さんは殺してしまった…翠さんも俺も、止められなかった。
全部終ったあと、翠さんは言ったよ。
自分はレイシができる者だって。
だから今、由良さんの魂を視に行ってる。
彼女が本物で――由良さんが屍鬼だったことを祈りたい。