ましてや――、
旦那様を死に至らしめた者が、あるいはこの屋敷の中に居るかもしれぬと言うのに。
その可能性はお客様であろうと俺達であろうと、等しく……
[万次郎の呟きには取り合わず、くり返し指示の言葉を続ける施波]
……わかったよ。
[...は使用人の顔を形式的に取り戻して、動かぬ主を前にした苦しい胸の内を取り繕う微笑みすら見せずに、無造作に床へ倒れている大河原に歩み寄る]
それではお客様…、今お運びしますので。
[万次郎には到底軽々というわけにはいかずとも、力を込めた腕でその女を抱え上げると、大河原の部屋へと運んだ。
誰も見ていないその部屋の中で、自分を天賀谷の部屋前から離れさせたその「お客様」をベッドへと横たえさせる万次郎の所作は、とても丁重とは言えなかった。
...が放り出すようにベッドへと投げる美しい女を、柔らかなマットだけが優しく*受け止める*]