ユージーン。
頼みがある。
しばらくこの場所に居させてくれないか。
[ユージーンの瞳が揺れた。あまり例のない要請だったに違いない。
長く渋っていた彼だったが、懇願に近い語勢の強さに、漸く肯いた。ただし、いくつか手順を守るようにと言い置いて。
まず、鍵は貸すことができないこと。そして、私がここに残る間も外側から鍵はかけていくということ。
気が済むだけ別れを済ませたなら、扉を開け呼ぶように。その時近くに居るなら、戻ってきて元のように鍵をかける。
扉の開け方がわからない場合、長い時間がかかった場合、いずれも一定の時間が経てばこの場所に戻ってきて私の所在と鍵の状態を確認する。]