[夜桜が食堂へと入ってくる。
手早く申し付けられた仕事を終わらせたらしい、翠もだ。
退出したさつきを見送り、それから入れ違いのような形で中へと入ってきた彼女に先生と呼ばれている男にも頭を下げた]
紅茶と…
[――ミルク。
新聞と牛乳を配達する鳶口少年は来なかった。
いつかは無くなってしまうかもしれないが、今はまだあったはずだ。
常に柔和な雰囲気を醸し出していると見え、それでいて異国風な面立ちの中の硝子のごとき碧眼が、時に人をひどく見下しているようにも見えてしまうのは気のせいだろうか。
…だからそんなシロタに、完全に新鮮なものではないと、さつきの師ならば肥えている舌を満足させられずに文句を言われねば良いがと思いながら、盆に載せたそれらを杏と呼ばれるメイドと話す彼の邪魔にならぬよう静かに運んだ]
…お待たせいたしました。