己(おれ)の名はマンジローという。
小さな島国の出身でな、故郷の狭さにほとほと厭気が差して出奔してきたのよ。その時、齢、十六歳。
若気の至りとはいえ、随分な無鉄砲だと今にしても思う事だった。何しろ身一つに刀ひとつ。
何をして喰っていけば良いかもトンと判らぬ儘だった。爾来およそ十数年、流れ流れて今ここに居る訳だが。
[奇妙な生物を見るような目つきのまま無言でいる二人に、ニカリと笑いかける。浅黒い顔の中、白く大きな歯がよく映えた]
それでも、不思議なものよな、まったく。己にどんな巡りあわせがあってこんな大仰な鉄船に乗る事になったのやら。自分でもまるで見当がつかんくらいだ。
いやいや、人の世の筋道とはどうにも読めんものよな。
そうは思わんか?はっははは。