[薄暗い部屋だった。壁には蝋燭がいくつも並べられていた。仄かな灯りが照らすその中央――人影が、もぞりと動く。]
風鳴(かざなり)、今は何時(いつ)だ?
[持ち上げられた彼女の右腕がしゃらり、と鳴る。鈴のような音は、手首につけられた細い輪の飾りか。十程の小さな石がつけられたそれは、炎の揺らめきに表情を変える。
引き寄せられた女の薄い口唇が、答えを紡いだ。]
三日か。奴に追いつかれるのもそのうちのことか。随分と手間取ってしまったな。
アァ、そういえば三日といえば、彼処の祭りも始まるのか。…丁度良い。お前は此処で奴を待てよ、風鳴。俺の顔をやろう。足止めをしてもいいが、気づいたら連れて俺の所にきても構わない。
――良い子だ。