−自室−
[部屋に戻ると、ケネスはノートにコマを割り、簡単な絵と台詞を入れ始める。]
うーん、宿に着いた時、ライターで遊んでいるのを叱られ、ふてくされて走り去る少女を描写しておくか。
伏線になるしな。
そして、温泉に入る直前に、ソファで寝ている女の子を見る……と。
[カリカリとシャープペンシルの走る音が、辺りに響く。]
……後は、男を不気味に思った主人公が、そこから去る際に「あの子の枷も外しておきました」と言う呟きを耳にする。
ページをめくった所で、燃え上がる左腕を見つめている少女を大きく描けば、インパクトあるかなー。
あ、そうだ、火を消すのに濡れタオルを使おう。
温泉から上がったばかりだから、当然タオルは濡れているし、自然な流れだ。
[話を作るのに行き詰った時間が長いほど、転がり始めると楽しいものだ。
ケネスはしばらく作業に没頭した。*]