──Mundane/orbit (現実世界/軌道) ──
『……この時代、個人の人格を形成する諸要素――思考、感情、記憶、更には肉体に基づく様々な感覚――それらの大半を科学は掌中に収めた。少なくとも、研究者たちはそう自負するまでに至った。
意識の情報化、それは同時に人間存在の情報化をも意味する。クローニングとサイバネティクスが肉体面での不老性を提供し、デジタル化された人格データはニューラルウェアの発達と相俟って望んだ外形にインストールされることが可能となった。
ハードウェアとしての肉体と、ソフトウェアとしての意識。技術の進歩が人類に齎したのは、随時保存可能で入れ換えの利く「私自身」――永遠の夢と考えられていた「不老不死」であった。……』