[打消し線が引かれた由良秀一の名は、薄暗い部屋の中で暫し静かに赤く点滅して居たが。 ゴプリと粘り気のある水音がして──、丁度、由良の名前の打消し線が傷口で其処から出血する様に溢れ出し、壁を血に染まる。 血はまたしても重力に反して天井へ流れ、其のまま──…染み込み乍ら八方へ広がる。 天井にまるで毛細血管があり、全ての分岐へ、真っ赤な不定形生物がずるずると潜り込んだかの様に、天井に網目模様を浮き立たせ、そして──…消え失せた。]