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誰かが寝たまま起きなかったみたい。
あー、誰かなんか死んだっぽいね。
しぶとい奴は酒場の看板娘 ローズマリー、冒険家 ナサニエル、修道女 ステラ、異国人 マンジロー、書生 ハーヴェイ、学生 メイ、流れ者 ギルバート、お嬢様 ヘンリエッタ、お尋ね者 クインジー、学生 ラッセル、墓守 ユージーン の 11 人だと思っておこう。
ああ、旨い酒が待ってると思やぁな。
[琥珀と常盤が並んだ先に、
蛍火ゆらゆら菊の花。
ほうと小さく息漏らし]
いいねえ、菊かい。
意味など関係ないなぁ、綺麗ならいいのさあ。
白い曼珠沙華も似合いそうだぁな。
[問われた言葉に][僅かに視線を藍に向け]
――笑うてなかったか。それでは酒も不味くなろう。
[笑みを含んだ瞳][袖は口元から離さねど]
笑った方が良いのなら、今宵もそのように。
[くすり][いつものようにか笑みもらし]
[視線は開耶の舞を待つように] [酌の続きをするだろう]
>>0:#3
惨殺されるのは林檎飴屋の店主とかでしょうか?
他にNPC居たかしらと思いつつ意見あればメモでどうぞ。
無ければ適当に発見してあとから赤で殺して貰いましょうか。
纏めたプロフを再度貼ってあげると親切だと思います。
喧嘩や殺し合いする人は相手を思い遣りつつ頑張って下さい。
[猫の言葉にまたこめかみをひくつかせたが]
ふん…。許される許されない関係ありませぬよ。
そちらこそ、こそこそを動く位にしておけばいい。
[吐き捨て、扇を持つ二人へは]
お気に召してもらい嬉しいですよ。
何を見せて頂けるのか、楽しみにしましょう
[舞いを眺める姿勢崩さず
片手が懐の珠を握りしめている]
[ふわ ふうわり
うすら漂う香に、目を細めたりと。
宴が終われば、
人けの無い林に散策にでも出かける*心積りのよう*]
[常盤に白が乗るを見て。
開いた扇、返す手で己が口許へ]
やれ、あまり期待するでないぞ。
[姿勢正せば足元で微かに草鞋が鳴こうか]
[楽が無くば己で歌うか。
なれど歌は良く知らぬ]
[扇は滑りて花弁迎え。
踏み出す足は何処か女の其れを思い起こさせようか]
酒が美味い不味いでは無い。
[差し出せば満ちる杯、緋色の瞳を暫く眺め。
くすりと浮かぶ笑みにやおら笑んで視線を外し
始まる舞いを眺める]
楽が無ければ舞えませぬか?
[蒼い目に手をかざし、ぽぅと光を掌に。
ふぅと吹けば2人の周りをくるくると。
一つが二つに、二つが四つに限りなく。
チリンと玉響の音重なり、一つの楽となり]
何かの足しに、なれば良く。
[蛍火飛ばした己の眼。湖底の蒼消えて黒き眼が]
久方ぶりに両の黒目も悪くなく。
気兼ねなく舞をどうぞ。
楽しけりゃなンでも好いヨゥ。
[遊螺り] [姿勢ただし] [開く扇] [ひらり]
[琥珀に向かい] [一足踏み] [流れる白の手]
[伸べる手の先] [端持つ扇] [小刻み] [震わせて]
[起こる風] [舞うは] [花弁か] [扇か] [琥珀と碧か]
誰か謡ってお呉れかえ?
[謡う気無く] [鳴る鈴の音] [赤の少年] [流し目一つ]
[琥珀向かいつ] [白の手伸べ] [寄り添い] [離れ] [擦違い]
おっとと。
[見れば万次郎は地に座り、懐手で舞を眺める姿。邪魔をすまいと口を噤む]
そうか、あの時有塵が咲かすことができたのは、固くとも蕾があったからじゃろうか…
[青司に思案顔で目を細め、だが続いた言葉には]
それはいかん、その落とし腕早う探して拾ってきい。誰ぞに喰われるやもしれんよ?
舞いじゃと?…やあ、これは。
[慣れぬ感覚に警戒するやら、甘い飴に舌鼓を打つやらしているうちに、どうやら現れていたらしい。
白水の声で、宴の中の茶の浴衣を着流した古草鞋の男に目をやって]
初めて会うのに名も名乗らなんだ、わらわは礼儀を知るゆえ今メイと伝えるぞ、そこの。
…ううむしかし、その姿で舞うか。わらわは舞い人はもっと、華美に飾っておるものと思っていた。
[到底礼儀を知らぬ者の物言いで素直に述べる。しかし舞が始めれば黙ってそれを眺め始めた]
あれまぁ…
[司棋が口笛を吹けば小さな竜巻と共に大きな犬が姿を現し、心臓は一度大きく痛んだけれども。
蛍火をかければ、それは扇や白い菊に形を変えて、目を楽しませる。気分も良くなり微笑んで]
見直したわ。中々やるようじゃな。
おや、嬉しいネェ。
折角だから謡っと呉れヨゥ。
[此方で鳴るは] [華の鈴の音]
そう言やァそろそろ夜斗は腹ァ減らせてるんじゃないかえ?
[ぽぅと光りて鳴り響く。
見遣れば蒼は黒へと色を変え]
やれ…それで見えておるなら良いが。
無くとも舞えぬわけではないが、有れば節が取り易い。
[ちりん][りん]
[鳴る音に合わせ。
向けらる扇、向け返し]
[閉じて開いてくぅるり返り]
[風乗り花弁舞い上がる]
[瞳を細めて舞いを見る。
白い繊手舞い、扇がひらひら桜の下で
琥珀の髪を彩って
常盤の揺らめき闇夜に映えた]
……お。
[しゃらりしゃらりと鈴の音と
何処から聞こえる笛の音と。]
ああ、迷子の嬢ちゃんかい。
[小さな唇笛に当て、
澄んだ音が響きだす]
わかりました。では何かを唄わせていただきたく。
…そうでしょうね…夜斗も随分と皆様を楽しませられたようなので…。
次は夜斗にも楽しませてやりましょうか。
できるなら、翠の君のご希望にも添えますよう。
[白水歌い、
笛が響き鈴が鳴る。
櫻が舞台となっている。
何処かで有塵も見ているだろう、
琥珀と常盤がふわりと舞う]
よっ、待ってましたぁ
[などと掛け声入れつつも。]
あちらでは白水様が謡ってくださるようで。
綺麗な声でありましょう。
こちらではお望みのとおり。
僕だけ楽しめる華を見るのもまたよいもの。
[軽やかな声はメイという]
さて、命か鳴か…どれだろか。
我は開耶。
舞に着飾るは人の決め事。
我が従う謂れは無い。
[落つる花弁 扇受け止め]
[白水の唄、司棋の音、赤き娘の笛音]
[ゆぅるりくるり]
[*舞い狂う*]
[浮かぶ蛍火、揺れる白と茶が闇に浮かび
笛の音重なり涼やかな声重なり、ひらりはらり花弁舞う]
[暫く魅入られ、メイの声に囁くような声を返す]
無から花咲くかはあの男に聞かねばわからぬ。
己はそう思うただけだ。
[くつくつり、腕を捜して拾えと云われ声を殺して笑う]
己の腕はさてはて、今頃海にでも流れついているか。
探す前にせねばならぬ事があるから拾いにいくのは最後じゃ。
[りん] [ちりりん] [鈴の音]
[重なる] [白の少女の歌声]
[ひらり] [ひらひら] [節を取り]
[閉じた扇] [ぱぁん] [開いきつ]
嗚呼、楽しいネェ。
[背中合わせ] [一足踏み] [顧みて]
[返す扇] [ひらり] [ひらり] [擦違い]
[ひら] [ひら] [ひらり] [また寄り沿い掠め]
[はら] [はら] [はらり] [薄紅舞い上がるか]
[メイから賞賛の声が上がれば顔をあわせ]
猫にも音を楽しむ心はあるか…。
しかし、そう気に入って頂けると悪い気はしないですよ
[黒い両目で微笑む顔は先程の威嚇の痕は微塵も見せず]
さァて、アタシァ誰でも好いヨゥ。
先ずは手始め異形でも喰わせてやるかえ?
そンなら此処で謡ってお呉れヨゥ。
司棋の兄さんの歌声はどンな風にアタシを酔わせて呉れるかネェ。
では…
風渡りゆき 青春(はる)深き
比例(たぐ)いなき貴姫(美人)の憂愁よ
故郷はいずくのかたぞ
欄干(てすり)より 玉涙(なみだ)落とし
[更に続け]
朗君(きみ)が身は 思うに任せぬ
我はまた 煩い多し
この人とこの我ともにかくばかり 心通う
古代人(いにしえびと)に恥ざらまほし
[歌い終わって一息と]
うん…
[白水の唄は楽に沿うように耳に響く。
思わず目を瞑り聞きほれるところを]
いかん。
これでは舞いを見逃すな。
[司棋より受け取るを使いこなし、
音に合わせて優雅に動く舞い人の手の中の扇。
小さく風を起こせば花弁もふわり舞い上がって]
そうか、見に纏うものなど華美でなくとも。
まわりの全て、自然までもを舞い人を飾り、そして見る者の目を楽しませるものへと変えてしまうのじゃな。
ふふ、わらわは鳴であり明でもあり、そして命よ。
…悪かったぞ、開耶。
おぬしそのままの姿で、十分に美しい。
存分に舞え。
[ひらり] [遊螺り] [謡に舞う]
[ちりん] [ちりちり] [華が鳴る]
[白の手返し] [ひらり] [扇] [赤の髪掠め]
[閉じて] [頬なぞり] [濡れた碧] [浮かぶ悪戯]
[先に止んだは] [舞いか] [鈴か] [謡声か] [笛か]
[ゆぅるり] [閉じられる扇] [琥珀覗き] [ニィと笑み]
有難う、楽しかったヨゥ。
[しゃなしゃなり] [赤鬼の前] [歩み寄り]
[扇仕舞い] [代わりに出す] [木目の盃か]
さァさ、注いでお呉れかえ?
[楽しそうな常葉の少女] [司棋の楽と笛の音で舞に彩を添え]
[暫しの余韻を残し] [唄い終われば藍を見て]
代わりの芸となったかえ?
[水とは関わりなかろうと]
[小首を傾げて刻む笑み]
―林の奥にて―
[はだけた結城紬、其の襟からは蝶の翅。仮初の契りを結んだ後の、虚しく気怠い時が流るる。]
嗚呼……貴方……また、いつか。
[自身の身体から流れる、白い液の糸。指先に取りて独り遊び。]
………ふふっ。
[其の糸を、懐に入れた草紙にぺとり。娘子が好んで読むような、色香に欠ける春画の草紙――]
嗚呼、面白し。
人も妖しも、情慾には克てず……ふふっ。ふふふふ……
[草紙を見やり、紅が頬まで乱暴に延ばされた唇を動かす。]
『あ い し て お り ま す』
[――刹那にして、草紙は黒く腐れ落ちた。]
[前のめりの頬杖で、ふたりの舞を眺めやる。
瑠璃も瑪瑙もないけれど、
其の姿は典雅で優雅]
ああ、いいねぇ。
[笛の音、鈴の音、澄んだ歌。
蛍火2人を照らして踊る。
菊の花が揺れている。]
[舞が終わって手を叩く]
眼福だあ。
ありがとうよ、碧、琥珀の。
[酒をねだるは真理の声。
にっと笑って瓢箪を手に]
勿論だ。
存分に呑むといいさあ。
[木目の杯酒精で満たし]
綺麗だったぜえ。
[暫くぼうと眺めていたが、舞いも終わり散る人影。
白の声にゆると振り向き、幾度か瞬き笑んで]
成った。同じ驚くなら此方の方がずっと良い。
[杯咥え、くしゃりと頭を撫でる]
[次いで司棋へと、目を細め返し首を微か傾げて]
わっぱも呑むか?
[ぱしと自分の膝を叩いて呼んでみる]
[ぼんやりと2人の舞を眺めつつ。
すべて自分の術のはずなのに、妙な酔いが回りはじめ]
お綺麗でしたよ、お二人…と…も…?
[気だるさにようやく気付き]
…? な に ?
[開耶の髪の香、夜斗の変化と蛍火が絡めとり
分身たる自分へと伝えたか]
むぅ、無から花生み出せるならば確かに今頃は、良い花売りとして名を成していそうなものじゃな。
まあ言うとおりじゃ。
われらがわいのわいのと考えてみたところで、聞いてみねばわからぬか。
[言葉を肯定してふふと笑い、舞いの邪魔にならぬよう慌ててその声を潜める]
ふん、その頃には骨ばかりになっていそうじゃな。
一本腕は何かと不便ではないか。
何ぞ助けの入用な時あらば、この丈夫な二本腕もそれを助けてやれると覚えておきや。
[恩売るが如く胸を張るメイではあるが、純粋に他に人の面倒を看てやれる所を見せたいのだろう。
恐ろしげな色はもう微塵も感じさせぬ二つの黒い瞳にも素直に、いや僅かばかり余裕ぶった上からの笑みながらも、にこにこと笑む]
うん大層気に入った。
これから毎晩鳴らしてくれても文句は言わぬよ。
[舞うごとに触れられて、誘われるように笑み向けられて。抗うことはせずにその手捕らえてゆると抱きしめ]
…どうしても、僕を挑発せずにはいられないお方のようで…。
[翠の瞳に唇落とし]
[盃寄せる] [薔薇色の唇] [すぃと乾し]
[綺麗と謂われ] [濡れた碧] [弧を描く]
そうかィ、そンなら好かったヨゥ。
アタシも開那の兄さんと遊べて楽しかったしネェ。
[謡い終わる] [白の少女]
白水の姐さんも謡を有難うネェ。
なンだい、茄子の兄さんは本当に解けちまうのかえ?
[翡翠の仔猫] [林檎飴] [忘れた様子]
命の姐さんは林檎飴は気に入ったかえ?
[赤の少年] [歯切れ悪い言の葉] [瞬いて]
有難うねェ…って、司棋の兄さん大丈夫かえ?
また酔っちまったかネェ。
[くしゃり]
[撫でられた頭に幾度か瞬き]
ならば好かった。
[くすり]
[いつもの笑み乗せて]
過日は汝れの桜を見そこねたゆえ、
今日は良いものを見せてもらえて素直に嬉しい。
礼を言おう。
[舞を終えた開耶に声かけて]
[さらり顎なで辺りを見回し常葉の女に]
さてはてしかし、開耶もさることながら
お前さんもなかなか芸達者ではないか。
赤鬼にたんと酌して貰うと良い良い。
[ふらり、去り行く男の背に]
おやおや、舞を見せるだけでもう帰ってしまうのか。
おうい開耶、ひとつ持っていけい。
[未だ封の切っていない瓢箪を投げ渡し見送る]
[引き寄せられる手] [抵抗も無く] [しな垂れて]
[胸に頬寄せ] [互い違いの双眸] [覗く碧] [弧を描き]
綺麗な鈴と素敵な謡の礼をした心算だったんだけどネェ。
司棋の兄さんはお気に召さなんだかえ?
えぇ、気に入りませぬ。
少し、礼を多くもらいすぎたようですが?
[くすりと笑い、頬へも唇を落とし]
もらいすぎた分は、お返しするべきでしょうか?
[開耶の香に大分酔いながらつむぐ言葉]
[舞いや楽の余韻に目を瞑って]
他にも芸ができるのか。
代わりどころか、唯一のものと言われても不思議でない声で唄っておきながらのう白水は。
ああ、常磐のひめ。
あれほど大きく見ゆるものじゃったが、わらわはとうに食べてしまった。
口の中でどんどんと、甘く溶けていくのじゃもの。
……ん?
[蘇った林檎飴の味に口の端を持ち上げて。
機嫌よく、そうだ白水のみならず奴へもと称える顔色でぱちり瞼を開けると、妙な様子の司棋。
顔を青くして行ってしまった]
どうしたんじゃろうな…?
少し…香が過ぎたようで…。
犬は鼻がききますから。
夜斗は半身、蛍火は眼、あんなに近くに在ったから
僕まで中々に酔ってしまいましたよ
席外すかと思えば以外と元気じゃないかィ。
[コロリ] [コロコロ] [コロコロリ] [軽やかな笑い声]
多い分にも気に入らぬたァ贅沢もンだネェ。
釣りは要らないから取っといてお呉れヨゥ。
[触れる唇] [長い睫毛] [小刻みに揺れ]
[すぃ] [押し返す胸] [白の腕伸べ] [さらり] [赤の髪梳き]
[飲み干す様に満足そうに]
ああ、琥珀の兄ちゃんも見事だったしなあ。
ほんのり香る香も味だねえ。
人が多いところが厭だと謂うが、
碧のもアイツのも魅せるに足る芸だぜ、勿体ねぇ。
[己の杯また満たし 口に運んで上機嫌]
墨は水に溶けちまわぁなあ。
薄墨で絵を描いてみちゃあどうだい?
[墨と水とに声を掛け
ふと様子の可笑しな姫に肩をすくめて頚傾げ]
そう呑んでもないのに酔っちまったかい?
おいおい、そのまんま斃れんなよ。
―雑踏にて―
[妙な胸騒ぎ。平時なら避けよう雑踏を、今日は気紛れに歩いている。]
……おやおや、何か騒がしいですねぇ。
[彼方に黒山の人だかり。ざわざわざわと、騒ぎ立てる。]
『きゃああああっ!』
『誰か、医術の心得のある者は居らぬか!?』
『いいや…通報が先だ…』
『ねぇ、この人…死んでるの…?』
[人だかりを掻き分け、その中心を覗き込む。]
…………………!!
[内心に響くは、]
――もう、助かりますまい。
[踵を返し人を掻き分け、遥月は再び宴の席へと戻った。]
アタシァ遊ぶ事ならなンでも好きだからネェ。
なんなら白水の姐さんと茄子の兄さんにも酌をして貰おうかえ?
[去り往く琥珀] [ひらり] [ひらひら] [白の手振って]
開那の兄さん、また遊ぼうネェ。
[赤の少年] [覚束無い足取り] [一拍見詰め] [零れる言の葉]
大丈夫かネェ。
[乾いた盃] [くるり] [手の中で弄び]
開那の兄さんと遊ぶのは楽しいネェ。
また其の内に気が向いたら舞って貰おうかィ。
其れとも次ぎは喰児がアタシと舞うかえ?
かっかっか。左様左様。
しかしあの男はそこまで器用ではなさそうだがな。
うむ、次逢うた時に聞こう。
己はそのように朽ちはせぬよ。
不便なれどこれが己の行く所じゃ。
手助けしてくれるとな…
応、頼もしい。
しかと覚えておこうかの。
[舞いも終わってからメイへと返し頷くいていると
常葉の「解ける」に肩をすくめる]
さてなぁ?
悪戯心で己にためそうと云うのか?
[くつり笑んだ]
おや、難儀だネェ。
命の姐さんより開那の兄さんの方が余程に、司棋の兄さんと夜斗の天敵かも知れないネェ。
余り無理をおしで無いヨゥ。
[常葉の少女に視線を投げて]
汝れの舞も綺麗であった。
――何より、楽しそうなのは良いことじゃ。
[メイにもくすり、向けた笑み]
わらわの歌はただの真似ごとに過ぎぬ。
それでも――嗚呼、礼を言おう。
[司棋の去る姿目に留めて]
[いつもと違う様子に僅か気をやる]
[笑う白の頭から手を離す]
うむ。やっと確り笑うたか。
…ん、すまない少々外そう
[先ほど呼んだ司棋を見ると
青い顔してふらりと出て行く後を
追いかけようと席を立つ]
おい、わっぱ。司棋。
[社より少し離れた、大木のそば。すっかり香に当てられて。
夜斗も蛍火も己の分身、あれだけ開耶の近くにあれば自分へ伝わるもそも道理]
う…っ。
[胸を押さえてうずくまり、吐き気に耐えながらずるりとしゃがみ
夜斗と蒼い目は明日には己の傍に*戻るだろう*]
[宴席へ戻って来た遥月へ顔を上げ]
残念、ちと遅かったな遥月。
おぬしももう少し早う来ておれば、見事な舞いに歌に蛍光までも楽しめたものを……おや。
[見逃さずに済んだことを自慢げに語るが、
僅かに乱れた遥月の様子に瞬き一つ]
何ぞあったか?
[押し返され、また腕の中から逃げる常盤の髪
追いかける気力もなく]
確かに…。笛と香は苦手かも…しれません…
本当に咽せてしまう…はぁ。
[青い顔を抑えながら吐き捨て]
[心なしか、歩みは早まる。
カラリ、コロリ。カラリコロリ、カラコロ、カラコロ、カッカッカッ……]
嗚呼、皆様!!
[下駄を鳴らして着物を乱し、遥月は息を切らして宴の席へと。]
嗚呼……嗚呼……皆様。
どなたかが、御亡くなりに……。
いいえ只の亡くなり方では御座いません。
あれは………!!
そィつァ好かったヨゥ。
命の姐さんも林檎飴の虜かネェ。
[コロコロコロリ] [軽やかな笑い声]
[青鬼] [くつりと笑むに] [ニィと笑み返し]
さァて、面白そうなら試してみようかえ?
飴みたいに解けるなら良いが煤に成られちゃ喰えないネェ。
[白の少女に褒められ] [薔薇色の唇] [綻ぶ]
楽しくなきゃ舞う道理が無いさァ。
褒めて呉れて有難うネェ。
酌をして回る酌をさせて回るも面白そうだなぁ。
[謂いつつ目の端司棋の姿]
あーああ、まぁ相棒が追ったし
大丈夫じゃねえか。
[ちぃんと杯爪弾き]
そうだなぁ、琥珀の兄ちゃんに
また約束取り付けるかぁ。
俺と舞うかい?
俺ぁ歓迎だが俺じゃあ舞じゃなくて
昨日の獅子舞になっちまわぁ。
2人で舞えば中獅子舞かねぇ。
[ふと気配を感じれば
僅かながらに眉を寄せ]
どうしたい、遥月―――血ぃの臭いがすんなあ。
[しゃがみこむ司棋の姿に、傍ら膝をついて]
酔うたか。
まだ酒も呑んでおらんだろうて、どこぞ具合でも悪いのか。
[顔覗き、首捻り、困ったような顔で背を撫でる]
[息を切らして遥月は語る。
ぴくりと片眉上げて見せ]
ほぉ、
そりゃあ何かい、
「狩る者」の仕業ってかい?
[唇ぺろりと舐めて笑み]
確りおしヨゥ。
[そぅと] [赤の髪撫ぜ] [囁く声] [柔らかく]
茄子の兄さんがそっちに行ったから大丈夫かえ?
/*
今宵の襲撃は如何しようかネェ?
夜斗が往くかと思ってたんだけどさァ。
[喰児に視線をやる。]
ええ、ええ。
あの殺され方からは、妖しの仕業という『色』は何処にもありませぬ……。ただただ恐ろしい、人間のにおい……。
嗚呼、やはり人間が紛れ込み、狩りをしていたとは本当だったのですね……
[紬の袖を、ついと口許にやった。]
[立ち去る藍に][司棋は大丈夫だろうかと思案して]
[今度は常と異なる遥月を認め][其の内容に眉根を寄せる]
普通でないとは――
[一拍][伏せた目]
[顔を上げれば瞳は鮮やかな緋色を宿し]
――狩る者かえ?
[首を傾げて艶のある声]
/*
明日以降はお互い想う人襲撃で好いんじゃないかえ?
襲った方が描写すりゃ好いと想ってたさァ。
明日にでも時間巻き戻して回想で夜斗に往って貰えると助かるけど、若し今日は襲撃せなんだらアタシが後でやっとくヨゥ。
[司棋の言葉にぴくり。見回し井戸はあれども]
………。手のかかるわっぱじゃ。
[井戸の傍、縄手繰り、桶引き寄せて]
[躊躇]
[そうと手で掬い口に含む。
黒い浴衣の端で手を拭えば、
司棋の顔を掴んで口元寄せる]
酌して酌され呑んで周るも楽しそうさァ。
お姫様の処には王子様が駆けつけるってネェ。
開那の兄さんは優しそうだしまた来て呉れそうだヨゥ。
次ぎは酒も勧めてみようかィ。
獅子舞は疲れそうだし遠慮しとくさァ。
[宴会に似合わぬ声] [遥月の取り乱す姿] [瞬いて]
―――狩る者かえ?
これこれ常磐のひめ、溶けてしまうという者をあまり苛めるでないよ。
……だけども本当に溶けてしまうのならば、少しばかりわらわも見てみたい。
ふふ、喰児と常磐のひめの舞いも同様じゃ。
[愛嬌のある真理からかい言葉をわざわざ真面目な顔して諌めているつもりで、結局悪戯者としての本心を零す。
雄々しいだろう紅と可憐に違いない緑の二人の対照的な舞い姿を想像すれば、口許も綻ぶ。
――だけどもそんな和やかな宴後の空気も、不吉な知らせに乱されて]
どなたかが、お亡くなり…
ただの亡くなり方でない…
[耳に届く、問う喰児と答える遥月の言葉。
そして白金の狐の言葉も思い出されて]
人間…狩る者が、本当に力ある妖をそうやすやすと殺せてしまうものだったとは……。
嗚呼、メイ様、白水様……。
其の通りで御座います。
嗚呼、この中に本当に、狩人が紛れ込んでいるのですね……。
[社を見上げ、溜息をつく。]
……主は、狩人の魂を放って置きますまい。捕え喰ろうことを欲しましょう……
はぁん、
痺れを切らして鬼ごっこ開始ってワケだぁ。
[杯片手に愉しげに]
そのようだぜぇ、白水。
ああ、こいつぁ命がけだ。
命がけであいつらも向かってきやがるのかあ。
いい覚悟だ、
面白い、面白いねぇ。
喰らえばさぞ旨かろうさあ。
鬼が鬼と鬼ごっこだなあ。
愉しいねぇ。
[くくくと喉の奥の笑い]
[求めていたものが口に伝わり。ふわ、と青司の頭をかかえ、更に水を求めるか]
…ん…んん…
[ほしいだけ水をのめば一息つき、ようやっと顔を上げればそこには青司の蒼い髪]
…っ!
[驚きに、顔を朱に染めても体をねじって逃げようと]
/*今日も参るのはまた夜に…。今日ほど遅くはなりませんが。それでもよければ夜斗にいかせましょう。
ちょうど、遥月様が場を作ってくれましたので、それにあわせればと。
人間――…。
…まったく、恐ろしいことのできる者よ。
ああ、わらわも覚えている遥月。
あの白金の狐もその様な事を言っておったもの。
放っておかぬなら今すぐにでも、捕え喰らうて下されば良いものを。
じゃが今この瞬間にはまだ、妖仲間であるはずの面々の中に、人間が紛れて……
[腕を回し己の肩を抱きながら、窺うように妖達の顔を一つ一つ見やって、…こんな時だというのに鮮やかな緋を見せる白水の瞳を美しいと思う]
――左様か。
[返された答えに]
[その場には不似合いな穏やかな瞳]
[喰児の声に視線をうつし]
敵も命懸けならこちらも命懸けか。
本気の鬼ごっこはさぞ緊迫感があろうて。
鬼の指導者たる汝れがヒトでないことを祈ろう。
[くすり][くすくす] [愉しげに]
………っ
[掴まれ逃れる事も叶わずに、口を離せば伝う水]
司棋の頬持つ指先、白い頬に薄墨が残るまま。
己が口元を伝う水を浴衣の袖で拭うと眉根を寄せて]
この阿呆ものが。
[身体をねじり逃れようとする司棋の襟首掴む]
どこぞ目の届かぬところに居っても誰もわからぬだろうに。
わっぱは如何してこのように手がかかるのか。
[濡れた碧] [遊螺り] [揺れる様] [蠱惑的]
[紅い舌] [微か酒の味] [薔薇色の唇] [ちろり]
漸く鬼ごっこの始まりかえ?
嗚呼、恐い、怖い、強いネェ。
こん中に居るってんなら
全員に聞いて回れってかぁ。
酒は旨いし面白い奴らばかりだがねぇ。
そんならヒトでも別段かまやしねぇんだが。
さぁて、
面白くなってきやがったなあ。
[心なしか金の眼が輝き増したように見え
片方上げた口の端、鋭い白が*見え隠れ*]
[首根っこ捕まえられて逃げられず、怒りを含んだ声には少ししょげ]
また…酔ってしまいまして…。
あのような猫もいる場で弱みなど見せられませぬよ
誰にも、見られたくなかったのですが…つかまってしまいましたね…
[青い顔はそのままに、少し調子を戻したか僅かに微笑み]
[顔色が僅か戻るのを認め
ぺしりぺしりと手の甲の方で額を叩く]
ではこのような所で猫のみに見つかれば良いのか。
[藍の瞳は司棋をひと睨み]
良いか、お前さんはわっぱじゃ。出来ぬ無理などするでない。
あちらもなにやら騒がしい。様子を見てくる。
わっぱは休むか歩くか?
[喉の奥から笑い声を響かせ愉しげに笑う喰児に]
ふうむ…頼もしいこと。
どうやら食べるためでもなく、狩るために妖を殺せるような人間の狩る者の存在をも、おぬしを震わせるには足りぬと見えるな。
[白水までも怯えるでもなく、くすくす愉しげに笑う声を聞けば急に、肩に食い込ませる己の指が恥ずかしくなる。
ゆるゆるとそれを外しながら、命がけの鬼ごっこと嘯く喰児に首を傾げて]
しかし…どのようにそれを見分けるかなどの、心当たりでもあるのかのう。
何せ喰児のように鬼の身であろうとも、いやいや奴こそ真に鬼の如き存在狩る者よとばかりに、あたりをつけて追うたは良いが間違いじゃったでは、そう面白い事にもなるまいからな。
[命の様子] [眺めて] [ニィと] [笑み深め]
[赤鬼の大きな手] [奪う瓢箪] [くぃと煽り]
異形がどれで人間がどれかなンざァ興味無いけどネェ。
誰と誰が遣り合おうが命懸けの鬼ごっこってェだけさァ。
[甲でぺちりと叩かれ眼を丸くして]
…だって…猫になんか…
僕だって子供じゃない…。
[ぼそりと呟き。離れようとする青司の着物をつとつかみ]
…行かれますか?
[いつの間にか戻った片方の蒼。
爛、と光り、青司を見つめる]
厭なら着いて行かねば良いだけさァ。
如何しても駄目なら夜斗が助けて呉れるだろゥ?
アタシァ遊んで呉れるみんな好きだヨゥ。
今宵お気に召したは開那の兄さんかネェ。
喰児を喰って茄子の兄さんと遊ぶも逆も楽しそうだが、さて司棋の兄さんから王子様を奪うのも気が引けるしさァ。
あやかし仲間に狩る者か――
舞も宴も楽しませてもらったがゆえに――やはり難儀じゃな。
[関わってしまえばろくなことはない]
[けれど][それゆえに][笑みは深くなるのだろうか]
見分ける力――か。
事前にわかれば最低限の殺生で済むであろうに。
[口元に当てた袖][当てたままに思案の色]
[まだ酔いの残る、潤んだ眼をむけ]
実は先程の香で酔ってしまいまして…。
しかし一人眠るのは少し心細く。
僕が眠れるまで、いて頂けると嬉しいですよ?
[ふわ、と首に手を回し、酔いと艶の篭った目で見つめ]
それに、まだ水が、たりないのですが…
[小さく、口付け]
鬼ごっこ……
嗚呼、そういうことですねぇ。
目隠しをされ、頼り無きまま「鬼さんこちら」……。
[唇の紅をぺろりと舐める。]
……嗚呼。死の鬼ごっこ。
主よ、あなたはわたくしに、宴の仲間を殺して喰らえと申されますか……。
[身体に走る毒液が、どくんと小さく波打った。]
…ふふ。
[常磐のひめが恐い怖いと呟いても、その物言いではそれほど大事ではないかのに聞こえるのうと、少しだけ緊張が解けて笑う。
面白い奴らばかりだからそれなら人でも構わないと言う喰児に、害をなさぬヒトならば当然わらわも存在を許そうものよと笑いかけようとして]
……。
[その喰児の口の端からは、四本足でも二本足でもとの言葉通り、何でも噛み砕けてしまえそうな鋭い白が見え隠れ。ごくり生唾飲み込んだ。
続く真理の言葉にもやはり、まあるい眼をニ、三度瞬く]
鬼ごっこにならば、わらわも自信がある。
じゃが命がけのそれを、そう言うてしまえるか。
うん、常磐のひめよ…おぬしも中々腹が据わっておるようじゃな。
[負けてはいられぬと握った袖の中、拳を握る]
[すくり][席を立てば]
¨鬼ごっこ¨は始まった。
わらわは今一度泉に帰る……。
[――禊をしに行くのだろうか]
[ふらり][ふらふら] [*泉に向かう*]
[ふわり、首元に回される手]
[蒼の目に――囚われては]
[ゆらり、頷くのは己の意思か幻惑か]
…ああ、良かろう。
[とすり、凭れる大木の幹。ずるり落ちて]
水は嫌いじゃ……
[ぼうとした藍の目のまま、司棋の袂を掴み口付けを返すか]
目隠し鬼かえ?
手探りで一突き鬼が鬼を殺すかィ。
[はらりはらはら] [舞う薄紅] [未だ潤む碧]
厭だヨゥ、命の姐さん。
アタシァ臆病者さァ。
[言葉と裏腹] [コロコロコロリ] [軽やかな笑い声]
刹那に生きるアタシにゃ今しか無いからネェ。
未だ咲き乱れても居ないのに散るのは詰まらないじゃないかえ?
[青司より口付け返され嬉しそうに微笑んで]
僕が眠ったらどうぞ遠慮なくお戻りを。
今は青司様を縛る気は全くありませんので…。
[頬に口付けを落とすと、胸元へ頭を預け。
暫く後、小さな寝息が*聞こえるだろう*]
[事前にわかればとの白水の言葉にこくり、頷き]
うん、妖の中には勘に優れた者もいるのではないかな。
勘など頼りにならぬかもしれんし、そもそも見分けがつくと言い出す者がいるとして、それが本当のことかもわからんが…
皆に尋ねるくらいしてみても、悪くなかろ?
[遥月の嘆きが耳に届く。
仲間の血肉を口にする事を想像してしまって、指先で触れた唇の向こうで小さく喉が鳴った。
泉に帰る白水の姿を見送りながら、真理に首肯]
そうじゃな…おぬしに今しか無いとそのようにわらわは思わんが、咲き乱れるより早く散ってしまうことを望まぬは、わらわも同じ。
きっと、狩る者などには負けぬぞ。
[だが決意に見開くはずの眼は、とろんと眠そうで]
ん…負けぬしがんばる気ではおるが、戦士にも休息は必要よの。
[薔薇色の唇] [ニィと笑み] [黙し] [命の言葉を聴くも]
おや、命の姐さんはそろそろお休みかえ?
無理はするもンじゃないヨゥ。
[焦点の合わぬ目のまま、司棋へと微笑み返し]
ああ。眠るまでここに居ろうて。
[胸元に落ちる温み。
やがて寝息が聞こえれば、
藍は元の色を宿して、幹に頭をもたせ長く息を吐く]
己は何をしているのだ……。
約束事などもうするまいと――。
[苦く呟き、暫く目を閉じる]
左様ですねぇ、メイ様。
誰にも休憩は必要かと。
嗚呼、なんならわたくしと共に参りますか?猫又の蜘蛛様に、蝶の毒の味をご賞味戴くもまた一興……
[紬の袖、奥でくつくつ。]
……冗談ですよ、今宵はね。
では皆様、おやすみなさいませ。
[ヒラヒラと手を振り、何処へと消えた。*]
[寝こける司棋からそっと離れ
頬に残る薄墨に吐息をかける。
ふわとはがれ離れるそれはやがて何にも成らずに消えるだろう
司棋の袂に残した墨には気づかぬまま、
そろりぺたり、一度振り返り、境内に戻る]
ん…?
[くぁあと大きな欠伸で目の端に涙を溜めた目で、妖し笑いの口許を袖に隠して笑う遥月を見やり]
そうじゃなぁ…わらわはどうせ味わうならば毒より、甘いのが好みじゃ。
同じ蝶ならば、舌にとろける花の蜜を分けておくれな…ふぁ…
[涙で霞む遥月の姿が見えなくなる迄見送って]
うん。
別段無理などしておらぬが…もうわらわは休む。
常磐のひめよ、おぬしも明日からの戦いのためにもよく休むのじゃぞ。
[それから前後不覚の態で、社の軒下に良さそうな隙間を見つけると、するする身体を捻じ込ませて、気持ち良さそうに*はまり込む*]
[遥月の置き土産] [微か薫る血] [桜の色] [白粉と混じり]
[戻る気配一つ] [濡れた碧] [すぃと青鬼捉え] [ニィと笑む]
司棋の兄さんは大丈夫かえ?
[碧の瞳に][さらり顎を撫で指先は口元を隠す]
あぁ…大丈夫だ。あの様子なら大丈夫であろう。
ところで先ほどなにやら騒がしかったが?
[人影引けた宴の後を眺める]
[隠す口許] [眇める碧] [遊螺り] [立ち上がり]
[しゃなりしゃなしゃな] [下駄の音響かせ] [歩み寄り]
お姫様にお休みの接吻でもしてきたかえ?
さて、騒ぎの正体は聴いたが未だ観て無くってネェ。
是から観に往くけど茄子の兄さんも来るかえ?
馬鹿を申すな。
[眉根寄せ、視線逸らす]
見に行く? 何かあったのは此処では無いのか。
――ふむ、行こう。
[ぺたぺたり、常葉の女について歩き
浴衣の胸元、手は握り。つきり水痕 傷むか]
[寄せられる眉] [逸らされる藍] [其れ以上謂わず]
[隻腕に] [すぃと腕絡め] [握る手] [見下ろし] [瞬いて]
其ン手は如何かしたンかえ?
―――鬼ごっこが始ったのさァ。
[未だ人だかり] [人混み掻き分け] [辿り着き先] [林檎飴屋か]
おや、此処だったンかィ。
なに、少々戯れが過ぎた。
[絡まる腕] [握る手の平、黒く煤痕 覗く赤肉]
鬼ごっこなど既に始まっておろうて。
[人だかり分け進み、此方を向く数多の視線]
成る程…これは礫のひとつふたつは飛んできそうだな。
――狒狒の店主か。
何故この者か。さてはて、手当たり次第はあちらも同じか。
[見下ろし、さらり顎なでる]
今宵は過ごしてばかりだネェ。
[周囲の喧騒] [密やかなる声] [変わるか]
[煤痕の合間] [覗く赤肉] [濡れる碧眇め]
嗚呼、恐い、怖い、強いネェ。
襲われたら護ってお呉れヨゥ。
林檎飴が喰えなくなっちまったネェ。
[呟くも] [濡れた碧] [頬撫でる手] [見詰めた侭]
[ついと視線を巡らせて。
密かなる声は一度止むも、
視線を外すとまた何処からかはじまる。
常葉の女を隻腕側へと押しやって]
こちら側に寄っておけ、腕があかねば如何しようもない。
ふむ、運試しの余興もここまでか。
[呟くと、林檎飴が食えないと女が云うのに半目を返す]
お前さんはそれでも林檎飴か。
[押されるのに] [腕解き] [青鬼に] [身を寄せ]
[濡れた碧] [藍を覗いて] [周囲へ移し] [ニィと笑む]
嗚呼、林檎飴だヨゥ。
別に狒狒の兄さんにゃ興味も無いが飴は美味しかったからネェ。
[ざわめく周囲] [飛ぶは] [飛礫か] [屋台の刃物か]
[眇めた碧] [蠱惑的に揺れ] [コロコロコロリ] [笑い声]
やれ、本当に来るとはネェ。
確り護ってお呉れヨゥ。
やれやれ、食らうのも面倒だ。
そこの店主、番傘ひとつ貰おうか。
[飛ぶ礫に構わずに、
露店から番傘一つ引き抜き、刃物を弾き
ばさり開いては礫を弾く。
握る手力込めれば傷跡から滴る墨。
滴るままに吐息かけて、地に落ちては這う蔦の様]
そら、未練が無いよう林檎飴も奪っておけ。駆けるぞ!
[蔦は人ごみの足を絡めとり、転ぶ物の怪。
雪崩れる隙に傘差し常葉を急かして人気のない方へと連れて行く]
そンじゃ遠慮なく貰ってこうかィ。
[ひゅうい] [振るう白の手] [見えぬ糸]
[掴み] [寄せて引く][紅い] [苺飴] [林檎飴]
[ひらり] [返す手] [中空に] [留まる刃]
[カラリ] [刃は落ち] [青鬼と共] [駆け出すか]
此処まで来れば大丈夫かネェ。
[木々聳える] [森の奥] [歩を緩め] [両手に飴持ち]
手は大丈夫かえ?
数揃わずに追って来るほどのものは居なかろう。
あぁ、面倒じゃ面倒じゃ。
いくつか喰ろうてやったほうが大人しくなったかのう。
[木立歩み、適当な切り株。腰を下ろして番傘捨て置く]
手は仕方あるまい。
余り雑に扱うと良くない減り方をするがなぁ。
お前さんの方こそ何処も怪我はなかろうな?
傷でもつけたら赤鬼に合わせる顔が無い。
喰うンなら飴なんざァ要らなかったさァ。
[歩み寄り] [小首傾げ] [覗く藍]
[林檎飴持つ白の手] [つぃと差し出し]
減り方ってェ、本当に茄子の兄さんは墨絵かえ?
おや、赤鬼青鬼は仲違いかィ。
怪我でもしときゃ面白かったかネェ。
飴も物の怪もお前さんには同じものか。
[呆れ顔で返す。手の平に滲む墨。
息をかけるとさらり、煤に還り傷跡残すか]
さぁて、己の正体は如何かの。
気が向かぬから教えてやらん。
[手を伸ばし、林檎飴受け取り齧る]
……馬鹿を申すなとさっきも云うただろうて。
お前さんの戯言は戯言に聞こえぬわ。
それとも仲違いでもさせたいか。
美味しければ其ンで好いヨゥ。
おや、つれないネェ。
哀しい、淋しいと泣いて見せようかえ?
[言葉と裏腹] [コロコロ笑い] [カリリッ] [苺飴齧り]
本気も本気の鬼ごっこするンなら其れも面白いネェ。
いっそ此処で茄子の兄さんを喰ろうて喰児と鬼ごっこでもしようかィ。
逆に喰児を喰ろうたら茄子の兄さんはアタシと遊んでお呉れかネェ。
はいはい、はい。
泣くのなの字も見えんぞ。
[しれっと飴齧る]
それならいっそ此処で己がお前を食らうてやるか?
しかしそれでは己が喰に喰われてしまうわ。
どちらにせよぐるりひと巡りの鬼ごっこになるじゃろうて。
己の気に入るものを喰われれば己が食い返す。
それとて他も同じものだ。延々喰うか喰われるか。
どちらか食い尽くされるまで終わらぬ。
生憎アタシァ喰う専門さァ。
[吊り上がった] [薔薇色の唇] [戻った筈の] [碧の双眸]
[やおら潤み] [ニィと笑んだ侭] [白い頬伝うは] [透明な雫]
[瞬けば益々零れるから] [長い睫毛] [震えるばかり]
[藍を見詰め] [薔薇色の唇] [尚もニィと笑んだ侭に]
厭だヨゥ、笑ってるさァ。
其れとも泣けば慰めてお呉れかえ?
[藍の瞳は困惑を浮かべ][常葉の女を計りあぐねている様]
笑っているなら、頬を拭え。
泣かれるのは嫌いじゃ。
煩くて、煩わしくて、泣き止むまで如何にもし様が無い。
お前は泣いているのか笑っているのか。どちらだ。
茄子の兄さんに嫌がらせ出来るンなら、では泣こうかィ、喚こうかィ。
欲しけりゃ目玉一つ呉れてやるヨゥ。
[笑み] [崩れる前に] [俯き] [雫] [はらはら零れ]
[白の袖] [顔を覆い] [声も無く] [震えれば] [袂の墨も揺れ]
[するり手を伸ばし、袂を除けると落ちる涙、指に当たる。
涙の痕に浮かぶ薄墨、眉根を寄せて、指握りこむ]
[次いで伸ばす手、頭に置いて]
では好きなだけ泣け、喚け。
それでも触れてくれるな、痛くて痛くて解けてしまう。
墨がぱきりとひび入ってしまう。
泣き止んだら顔を上げろ、それからじっとしていれば良い。
墨絵の茄子の兄さん解かしちまおうかィ。
[歪む視界] [ぼやけた墨色] [袖に隠れ] [噛み締める唇]
[乗せられる手] [声は漏れず] [静かに] [はらり] [はらはら]
[零れる雫] [白の袖濡らし] [落ちれば墨も] [染めるか]
嗚呼、嗚呼、情けないネェ。
遊びの時間は是からだって謂うのにさァ。
ほら、もう泣いてないヨゥ。
目玉一つ持ってくが好いさァ。
[顔を上げ] [未だ濡れる] [長い睫毛] [震え] [ニィと笑み]
ほんに情けない。
誰も彼もわっぱのようじゃ。
[からり、ひとつ笑い。
顔上げる常葉の女、頭から手はゆるり離れて
変わりに動かぬようにと顎を持つ]
鼻汁は垂らしていないようじゃな。
まあ、良かろうて。ほれ屈め、そのまま動くなよ。
[するりと口寄せ、濡れる睫毛に口付け瞼を舐める。
ざらりと舌はそのまま目のふちをなぞり
涙掬って 差し入れ 眼球転がし
水音立て 唇離れ つうと伝う銀糸もひと舐め攫う。
両の目そうして舐めとれば、目玉は喰わずに置いておく]
良く泣くわっぱの目玉喰えば、
次の目玉も直ぐ食う事になろうて。
盲目の手をひくのも手間ゆえ。これで勘弁してやろう。
[顎掴まれ] [僅か眉根寄せ] [濡れた碧] [藍] [見詰めて]
[大人しく] [碧の眸] [舐められ] [片側終り] [瞬いて]
[また寄る顔] [逆の眼] [舐めて] [離れる顔に] [戦慄き]
[白い手] [空を切り] [青鬼の頬] [打つ] [乾いた音]
目玉呉れてやると謂い、何で手を引けと頼むのさァ。
幾ら情けなくとも其処まで落ちぶれちゃ居ないヨゥ。
[白い手] [己が眼に伸ばし] [片目抉り] [飛び散る紅]
[薔薇色の唇] [血に塗れた碧] [寄せて] [くちゃり] [食む]
次に泣いても目玉はやらないさァ。
変わりに墨絵を解かそうかィ。
[黒々と竜蛇を思わす幹にその身を預け]
[高枝の上で夢うつつに微睡む。]
[白き花霞に包まれて。]
[もとより耳目は飾りに過ぎねど]
[見ても視えず][聞いても聴こえず]
[夢幻のうちに揺蕩う。]
[下界を望めば、]
[物の怪どもが凶事に打ち騒ぐ様]
[穏かならぬ気配に覆われゆく様が、ありありと見えようが]
[心幽境に遊ぶ墨染めの衣には知るべくも無い。]
[打たれた頬。飛ぶ紅。薔薇の唇添える赤]
―――っ
[藍は目を見張り]
かっかっかっか
[からからから空を見上げて笑う。
腹の底から笑う 笑う。ひとしきり底から笑った後に、
藍の目細めて弧を描く、細く細く弧を描く]
――気に入った。
目玉の無礼の代わりじゃ。
己と本気の鬼ごっこ解かすか喰うか、いつでも参れ。
さて、嘘か真か戯言かわからぬ己とお前よ、
お前は黒猫描けと言えば良い。己は黒猫描きに来たと言えば良い。
それでお前の魂食らうか己の魂食らわれるか、
鬼ごっこのはじまりじゃぁ
[片目抑え] [零れ] [白の浴衣] [紅く染まる]
[残る碧] [糸の如き弧を描く藍] [覗き込み]
一つ謂い忘れたヨゥ。
アタシの赦し無く触れた分は呪(まじな)いがかかる筈さァ。
片目と謂うに両目舐められちまったからネェ。
アタシの残るこの眼も何れ腐れ落ちる。
けれど兄さんの片目も同時に腐れ落ちるヨゥ。
[ニィと笑み] [片目抑えて] [片目瞬き]
まだまだ本気の鬼ごっこにゃ足りないさァ。
盲目になっちまう前には鬼ごっこ出来ると好いけどネェ。
[片目顰めて、残る碧を焼き付ける]
かっかっか、成る程成る程。
それもまた愉快じゃ。己の片目のひとつ解ける前に往くか。
お前の両の目潰れたその時は、残るもの全て攫いに往こうぞ。
後にも先にも約束一つ。
如何なる時にも合いの言葉で己はお前を食らいに行く。
本気になる前に、よその誰かに食われてくれるなよ。
たとえ喰児だろうて、邪魔をするなら容赦はせんわ。
[くつり笑む藍の色は強く、睨む程強く強く常葉を刻み
ゆるり背を向け歩き出す。何時の間にか落とした林檎飴拾い上げ]
はよう本気になれ常葉の娘。
[言の葉と番傘残してぺたりぺたりと木立の*向こうへ*]
[覗く藍] [真っ直ぐに] [見詰め返す] [隻眼の碧]
生憎と盲目に成ったくらいじゃそう易々と攫われやしないヨゥ。
さァてネェ、アタシァ気紛れだからさァ。
でも鶏より足りない頭でも一応は覚えておこうかィ。
[睨む程] [強い藍] [見据える碧] [弧を描く]
そンならそろそろ咲き乱れようかィ。
でも茄子の兄さんもさっさと本気におなりヨゥ。
[ぱたぱた] [紅零し] [苺飴片手に] [青鬼と逆へ*歩き出す*]
[春霞 ゆらりゆらゆら緋が映える。
祭りは終わりと雪洞消えて、石畳には血の痕が]
死んじまってらぁ。閉店だなぁ店主。
これじゃ飴も買えやしねぇ。碧は残念がるだろうなあ。
相棒も泣き付かれた時に困るだろぉ。
[ざわざわざわざわ百鬼夜行]
なんだぃ、てめぇら。
[咥え煙草で視線を向ける。剣呑、剣呑、殺意と疑惑。]
ああ、礫投げられたとか謂ってたなぁ。
狩る者が怖いか。
怖いのか。
怖いんだろうなぁ。
[揶揄含みの言葉を放ち、ざりっと砂を踏み躙る]
血が見たいか、てめえらは。
仮初めとはいえヒトの姿だからなぁ。
[くつくつ笑えば飛ぶ礫、手を翻し跳ね除ける。
誰ぞの牙か、それとも爪か。裂かれた甲に緋が滲む]
仮初めでも緋いかぁ。腹ぁ減っちまうな。
ほぅら、俺たちの好きないろだぜえ。
[傷を爪で引き裂いて、さらにぱたりと緋が落ちる。にやり笑みはそのままに。
唸る四つ足、睨む一つ目、ざわりざわりと百鬼夜行。緋色の鬼は高笑い。]
はっははははは!
安心しなぁ、俺たちゃ俺たちでケリをつけるだろうさぁ。
お気に入りに傷ついちまったら俺ぁ怒るぜぇ?
同属でも喰っちまうかもなぁ。
[男の傍では鬼火が揺れる]
[うっすらと目開けば]
[やはり白霞の夢幻境のうち。]
[はらり、散り、]
[ほろり、咲く、]
[白い桜の花群の中。]
……喉が。乾いた。
[夢うつつの眸で呟くは、何とも味気ない言葉。]
[宴の在りし社にて。
渡り廊下に腰掛けて、道具箱をぱかりと開く。桜の花びらが、その中へとヒラリハラリ迷い込む。]
ふうむ……
[紅の器の蓋を開け、己の毒液をひとたらし、ふたたらし……紅に深みが増したのを見てくすりと笑み、其れを指先でくるくる掻き混ぜる。遥月の白い指は、あっという間に深い紅色に染まりゆく。]
困りましたねぇ……
そもそも、わたくしは同族を食らうのが好きでは無いといいますのに……。嗚呼、早い所、人間を狩ってお終いにしとう御座います……。
[指先につけた紅をぺろりと舐める。]
嗚呼、なのに……
わたくしの毒針は、早う食らってしまいたいと、わたくしの身をつき動かして止みませぬ……
[鏡に向かい、己の目尻と唇を紅で染めた。]
因果な身体で御座いますねぇ……
[遥月は蓋を手にし、道具箱に花びらを閉じ込めた。]
[道具箱を風呂敷で包み、しゃなりしゃなりと歩き行く。カラコロ、カラコロ、下駄が鳴る。]
嗚呼、桜が美しい……
[手を翳し、春の光に目を細める。せめて今は緩やかな時を視界に入れようと、ぐるりと周囲を見回すが……]
嗚呼、やはり血のにおい……
いやなにおいですねぇ……
嗚呼、どうにも好きになれませぬ……
[白い指先で、そっと鼻と口許を塞いだ。]
[目指すは物の怪の群たる辺り。]
[音も無く、桜の風纏て舞い降りる。]
[ざざっと退き、遠巻きに息を呑んで見詰める化物どもの只中で、]
酒をくれ。
[常の冷たく硬い面が、朧な笑み浮かべ]
[張り詰めた気と漂う敵意も気付かぬ様に。]
[帯に指を引っ掛けて 腰に手を当て振り返る。
幽玄無限黒櫻。]
よぉ。有塵じゃあねえかい。
それに遥月も居るようだぁなあ。
[ひらひら振る手、緋色の雫。]
これはこれは、喰児様。
其の赤い雫は、如何為されましたか?嗚呼。畏ろしき血のにおい……
[白い指先で己の粘膜を塞いだまま、紅の視線を喰児へ向けた。]
嗚呼、有塵様もおいでですか。
では、この桜色の空は貴方様の仕業ですね。
[掛けられた声に頭を廻らし]
……喰児か。
酒をくれ。今は酔いたい心持ちなのだ。
[ふぅらりと衣揺らし、無造作に歩を進める。]
なぁに、命知らずどもが礫を放ったんで
見せ付けてやっただけさあ。
[口には常の笑み浮かべ、傷口既に塞がり始め]
忌わしいたぁな、
遥月は喰いたかねぇのかい?
[低く笑って有塵見遣り]
へえ、お前がそんなに呑みてぇなんてなあ。
自分の花に酔ったかい?
まあ見事な花だったがよ。
夢見心地だな、有塵。
[瓢箪差出しくつくつと]
……あらあら。
いけませんよ、有塵様。まだ陽の高いうちから御酒など……
[平時より陰鬱な色を帯びた有塵の視線が、遥月の目に飛び込んでくる。其の色に囚われ眩暈を覚えた遥月は、ふぅと小さく溜息をついた。]
ええ。承知致しましたよ。
只今お持ち致します故、少々お待ち下さいませね。
[にこりと笑い、どこぞの店から瓢箪をひとつ買って来た。]
[瓢箪を持ったまま、喰児の言葉に首かしげ。白い首筋には、昨晩の逢瀬の傷跡ひとつ……其れを隠すことなく、遥月は喰児を見つめる。]
ええ……。
わたくしは血のにおいよりも、身体から湧き上がる『香』を好みます故。わたくしが食らうは其の『泉』。生きとし生けるものが持つ『精』に御座います。
人も妖しも、その身はあまりに生臭そうて、わたくしの舌は好みませぬ。
そういう意味合いでは、わたくしと喰児様の嗜好は違うのやもしれませんね。
[喰児にふっと微笑みを見せた。]
確かに嗜好が違わぁな。
[笑みに笑みを返して見せて]
俺ぁ裂くのも愉しきゃ千切るのも面白れぇ。
臓腑を引きずり出すのも好きさあ。
喰らうだけじゃねぇ、そういうのも好むのさ。
[白い首筋赤い痕、無骨な指でなぞってはなれ]
ヤってんのが愉しいのと同じかもしれねぇさあ。
[咥え煙草でくくくと笑い、
捨て置く吸殻鬼火に消えた]
[差し出された瓢を受け取ると、]
[蒼白い喉晒し、くい、と仰のいて呑む。]
[喉を鳴らしてごくごくと、酒を身体に取り入れれて、]
[ふう、と熱くなった息をつく。]
おう、いい呑みっぷりだねえ。
櫻も紅く色付くかあ?
[白い肌が色付いて匂う櫻を思わせる]
それにしたってやつら殺気立ってんねえ。
さっきからじろじろ見られてらぁ。
[愉しそうに見回した。]
[首筋に、喰児の武骨な指……ヌルリと生温かい感触が走る。なぞられた悦と、忌み嫌う血のにおいに、目を閉じ眉をひそめて溜息をつく。]
嗚呼、嗚呼。
お止しに下さいませね、喰児様。
[濡れた瞳と紅の視線を、隠すことなく喰児に送る。]
今のわたくしは、どうにも感覚が冴えて困って居りまして。御酒の力を借りずとも、貴方様のひと撫でで酔い痴れてしまいそうで……畏ろしゅう御座います。貴方様との逢瀬は、さぞや野性的で愉しゅう御座いましょうねぇ……
ふふっ……
常盤様に叱られてしまいそうで。嗚呼、こわいこわい。
――くつくつ、くつくつ。
[紬の袖は口許隠し、紅の視線は鬼火へ流れる。]
[やっと人心地付いたのか、ほんのりと目許を朱に染めて]
[喰児と遥月を未だ夢に漂う眸で見詰め]
またまた喰児の色好みか。常磐の女君はどうした。
如何に色めく稚児とても、二股は感心せぬな。
うん…?
[今更に気が付いたと言う風情で辺りを見回し]
……そう言えば常はこの辺りは店立ち並び、やれ博打だの宴だの騒がしいというに。
何故こやつ等は群集いて殺気だって居る?
[零れる吐息に笑み浮かべ、悪戯に瞳覗き込む]
おやおや、冴えちまってるのかい。
そりゃあいけねえ、
遥かに遠くに揺れる月に吸い寄せられちまわあ。
[冗談交じりに軽く謂い]
別の意味で喰われちまいそうだなぁ。
怖い怖いはこっちの科白さぁ。
溺れるヤツが出ちまうわけだ。
[常盤と謂われて目を細め]
碧かあ。叱るか拗ねるか、どうだろうなぁ。
おっと、こいつぁ思い上がりかねぇ。
[体を離してにいと笑う]
嗚呼、有塵様。
わたくしは所詮、日蔭の身。
好いた惚れた御相手が居られる方を、影で泣き泣き、言葉を放たず、密やかに愛するのが常……。ましてや、女人には決して敵いませぬ……
――くつくつ、くつくつ。
いいえ、冗談はともかく。
こちらの皆々様は、わたくし達を忌み嫌うような視線を向けて居りますねぇ……。
昨晩、林檎飴屋の御主人が殺されましてね、其の嫌疑がわたくし達に掛けられている様子。
嗚呼、人も妖しも、其の暗い疑念の目が畏ろしい……。
手厳しいねぇ。
綺麗なもん愛でるのは世の常さぁ。
碧が居りゃぁ嬉しいがねえ。
[相変わらずの調子で謂い、なぜと問う有塵に]
気づいてないのかいお前ほどのヤツが。
酔っ払いもほどほどになぁ。
[笑い流し見百鬼夜行]
ヒトの姿となっちまってる俺たちが狩る者じゃねぇかと
疑ってかかってやがるのさあ。
殺された…?去んだのか。そうか…
あやかしを狩る人間の仕業なのだな。それで人型の吾らが怪しいと…そういう事か。
[目を伏せ、悼む風情を見せるが、憂いや恐れはそこには無い。]
[何処と無く夢中に漂う気色の侭。]
それ故、わたくし達はヒトの姿の呪いは解けず、更にはこれ以上狩られぬよう、わたくし達の中から狩人を捜し出さねばなりませぬ……。
命を掛けた『鬼ごっこ』。
わたくし達はそれに巻き込まれたのですよ、有塵様。
遥月が日陰なんざ、罪な世の中もあったもんだなあ。
[笑みを浮かべて頷いて]
そうさあ、鬼ごっこだなぁ。
十一人の中にヒト二人。
主様は供物に魂を御所望なのさ。
喰え刺せ捧げろ。
やれ殺せ、やれ狩り立てろ。
[祭りの囃子を歌うかのよう、響く声で緋色が謳う]
おれは、物の怪には興味がない…なかったからな。
元よりあまり注意を払わぬ。
こやつらの方でも、おれの気紛れで散々な目に負うているから、普段は近寄りもせぬ。
[くく、と苦笑が浮かぶ。]
とは言え、酔うておるのも確かよ。
『鬼ごっこ』のう……。
殺すか、喰うか。壊すか、千切るか。
[血に浮かれたような喰児に、酔いに潤んだ流し目をくれ、]
おまえの好きそうな趣向だ。
[眼下の黒を覗き込み]
まあそうだなあ。
酷い花の嵐で吹き飛ばされたヤツも多いだろうさあ。
危うきには近寄らずってな。
酔ってるのは見りゃわかるさ。
櫻色になってるからなあ。
[からかい笑みで眦指して]
[囃立て、声を響かす喰児を見てカラカラ笑う。]
嗚呼、いやですねぇ、喰児様。
ほうら、益々皆様が殺気立っていらっしゃる。まだ陽の高いうちに緋色の雨を降らせるのは、お止しになって下さいませね?
あらあら、有塵様まで。
いけませんよ、酔いに任せて殺しては。
[口許は、紬でそっと隠したまま。]
[ゆらゆらと紅差した若衆の、艶めく白面を見遣りて]
そう言うて、おまえも存外好きそうだ。
のう…?
貪りとうて堪らぬ気色が見ゆる。
[薄く色づく笑みを浮かべる。]
[ほんのりと紅差す闇桜の男へと、くすりと笑って首を傾げた。]
ふふふ……さあ、如何でしょうねぇ……。わたくしは血肉は欲しませぬが。
しかしヒトも妖しも『生』を求むる時の『精』が最も甘美な味がします故、殺して食らえと言うのなら、喜んでその『精』を戴きましょう……。
おれは……面倒臭い。
どうせ散る桜の命に憂き世の塵は無縁……
と言いたいところだが。
散るを待てぬは無粋の極み。せめて春の終わりまでは。
日が高いうちは駄目ってか。
夜になったら降らせてやろうかい?
同じ名の月も紅く染まるだろうなあ。
[血潮と同じ色した髪が櫻の風に弄られる]
咲いた櫻が散るまでは
有塵もこの喧騒無視できねぇだろう。
綺麗な花が咲きそうだ。
[顎に手を当てくつくつ笑う]
[有塵の言葉に、コクリと頷いた。]
ええ、ええ。
殺すと言って死ぬと言う方はまず居りますまい。
だからこその、命を掛けた『鬼ごっこ』……。
愉しいか否か、感じる暇は無さそうですねぇ……。
[喰児を見ながら、ふぅと溜息。]
嗚呼、喰児様。
わたくしを紅く染めるのは、わたくしの血ではなく、貴方様の熱でお願い致しますね。
[屈託の無い笑み。子どもの様にニコリ。]
ふん…さして惜しい命でもない。
もうあまり時が……
[と、そこから先は言葉にせず。]
ただ、咲いた桜を半ばで散らす、無粋は手向かうだけのこと。
彼のおとことの契りの時が過ぎるまで。
ええ。その通りですよ喰児様。
[屈託の無い笑顔のまま、喰児の腰へと掌を。]
貴方様が欲しないならば話は別ですが。嗚呼、呉れ呉れも、常盤様にはご内密にお願い致しますね?
[瓢からまた一啜り、]
[これ見よがしに墨染めの衣の襟をはたいて扇ぐ真似。]
[いや、薄紅に染まる胸を見れば、本当に熱くなっているのだろうが、]
おお、おお。暑い暑い。見せ付けてくれるな。
常磐の女君には見せられぬ。
[途切れた言葉のその先を 追うかのように眼を細め]
櫻、櫻霞か雲か、ってな。
散るからこその花だが、
お前が逝ったら櫻が見られなくなっちまわあ。
そりゃあ困るねぇ。
[ひらひら櫻の花びら踊り金の瞳のその奥に宿る色は何色か]
誘うか、俺を。
喰っちまいかねねぇぞぉ?
[笑いを浮かべてそのままに紅の瞳を覗き込み]
さもなきゃ俺が碧に喰われるかねえ。
碧は喰う専門だと謂うがなあ。
[ちゃぷり][湧き出る泉の力]
[両の腕(かいな)に抱きつつ]
人型のままというのも、難儀じゃな――。
[背後の気配]
[飛礫は頬を掠めて瞳と同じ緋色をひくか]
汝れは狩る者におびえているのか。
[泉の水を一掬い][腕を一振り雫は散りて]
[聞こゆる悲鳴は霧で隠して薄い笑み――]
[女にとっては水掛遊び][男にとっては鉛の銃弾]
石の飛礫よりも痛かろう。
――見逃してやるから去ね。
[泉は色濃く霧を宿すがややもすれば霧は晴れ]
[頬を一撫で、染まる緋に眉を顰めて衣を脱ぐ]
やれやれ、また浴び直しか――。
[返り血がいくらか咲いた衣を岸に]
[ちゃぷり][沈むは*水底に――*]
ふふっ……
有塵様は存外にうぶですねぇ……嗚呼、可愛らしい。このようなことで頬が赤う御座いますよ?
それとも、御酒のせいですか?
いずれにせよ、酔った有塵様は可愛らしいですねぇ……。ふふっ……。
[談笑する人妖たちに焦れたのか、油断と思うたか、]
[囲みの端から石礫、]
[ゆぅらり揺れる墨染めの、舞い散る桜に触れたと思えば、]
『ぎゃっ──!』
[逆巻く花風に礫を撥ね返されて、目の玉押さえて転げまわる怪一つ。]
……無粋は好かぬ、と言うた。
[目を半眼にとろんと潤ませ、ぼそり、呟く。]
[喰児に絡まり、吐息を掛ける。其の刹那――]
嗚呼、いやだ。
どこからか石の飛礫が。
無粋な方も居られますねぇ。
[遥月の頬に、うっすらと血の紅色。]
わたくしは、血が嫌いだと申しましたでしょう……?
[悲鳴聞こえて視線をやれば]
ははあ、やつら懲りてねぇみたいだなあ。
墨染めの櫻も見た目に反して怖ぇ怖ぇ。
綺麗なものほど危ないねぇ。
[飛んだ礫を払い除け
白い頬に流れる血を舌でぬらりと舐め取った]
さぁて、甘いお誘いは嬉しいが、
ちぃとやつらの体に覚えこませなきゃならねぇ事があるみてぇだなあ。
[ひらひら手を振り歩み出て、
*おいたのアヤカシねめつけた*]
[次々と飛び来る礫を花弁含んだ竜巻で防ぐが、]
[酔いに赤らんだ顔にはありありと嫌気の差した表情が浮かぶ。]
面倒臭い。
喰児、何なら見せてやれ。おまえの力。
少々痛めつけられれば、格の違いが分かるだろう。
[と、遥月の声音に気付き、]
……こちらの方が先に来た、か。
[くく、と嗤う。]
[掛けた言葉が終わらぬうちに緋の鬼が歩み出るのを見て、]
[暢気に手を叩く。]
ほほ。面白うなってきた。良い酒肴だ。
[にやり嗤って酒をまた。]
は………んっ。
[頬の血を舐めとられ、潤んだ視線を喰児へと。]
あらあら、ではわたくしも加勢致しましょうか。
わたくしに石の飛礫を投げたのはどなた?
ああ……貴方様ですか。
[カラコロと歩み寄り、飛礫を持った妖しの身体をそっと抱く。己の掌をゆるりと胸から腹へ、そして相手の膨らむ場所へと滑らせる。]
嗚呼……いやだ、いやだ。
[紅の唇を、飛礫を持った妖しの唇に重ねる。くちゅくちゅと唾液を吸い取り、嫌がる舌を絡ませ転がす。唾液で溶けた紅を舌で押し込むと、唇を放し、耳元で囁く。]
嗚呼、貴方……
『愛しております』
[次の瞬間、遥月の目の前に居た妖しは、ずぶずぶと黒く腐り落ちた。]
……味はいまいち、といった所ですねぇ。
[ぺろりとひとつ、舌舐めずり。]
さて有塵様。
……わたくし達、いよいよもって憎まれてしまいましたねぇ。如何なさいます?
このまま蹴散らすも良し、喰児様に殲滅をお任せするも良し。
御酒の肴をご所望で?
[白面の若衆の手管の一部始終を眺めていたが]
[流石に酒を呑む手を止める。]
……なるほど。それがおまえの技か。
契り得ぬか。
[黒く崩れて原形を留めぬ怪の残骸に目を落とし、]
[それでも変わらぬ夢幻の眸。]
[瓢を掲げて残った酒を揺らし、]
言ったろう、おれは面倒臭い。
喰児に任せて高見の見物と洒落込むよ。
桜の上にて酒盛り…。
おまえも来るか?
[朧な笑い。]
ええ、有塵様。
誰とも決して契り得ぬ、難儀な身体でございますでしょう?
[紬の袖ごしに、くつくつと笑う。]
いいえ有塵様、たまにはわたくしも舞いましょうぞ。せっかくの紅をこのような無粋な方々に使うのは心踊りませぬが、目には目を、歯には歯を……致し方ありますまい。
有塵様。お気が変わりましたら、いつでもご加勢下さいませね……
[風呂敷包みをヒラリ解き、取り出だすは毒紅の器。風に吹かれて、閉じ込められた桜の花びらは、ヒラリハラリと主の元へ。]
嗚呼……いやだ。
わたくしの毒針が、このような無粋な方々相手にも疼くだなんて……。
[紅の蓋を開け、白い指先に惜しげもなくべとりとつける。唇に紅を乗せ、動かし紅をゆっくり延ばし拡げる。紅を乗せた遥月は、ぐるりと周囲を見回した。]
嗚呼、皆々様。
覚悟は、よろしゅう御座いますか?
[其の紅色の唇はひきつれるように歪んだ――*]
[淡絞り] [白の浴衣] [数多浮かぶ] [赤黒の華]
[片袂] [赤黒に染まり] [一層深いは] [墨の残りか]
白水の姐さん、半刻程泉を貸してお呉れヨゥ。
[白の少女] [見えぬ木の裏] [声かけ] [気配消える]
[剥き出しの白い肩] [かかる常盤色] [滑る水] [清ら]
もゥ好いかえ?
[泳ぐ夫婦金魚] [隻眼の碧] [追いかけ] [弧を描く]
[白い手伸べ] [パシャリ] [水面叩き] [コロコロ笑う]
未だだヨゥ、もう少しさァ。
[赤黒の華咲く] [白の浴衣] [羽織り] [帯締め]
[常盤結い上げ] [紅引き] [映る面] [窪んだ隻眼]
[殺気立った気配] [取り囲まれ] [薔薇色の唇] [吊り上がる]
おや、遊んでお呉れかえ?
生憎と兄さん達じゃ咲き乱れるにゃ足りないヨゥ。
嗚呼、でも紅い血が見たいネェ。
[コロコロコロリ] [笑う声は軽やか] [合図になるか] [地を蹴る異形]
ほゥら、捕まえてご覧ヨゥ。
[ひゅうい] [振った白の手] [見えぬ糸] [木の幹にかけ]
[高く高く跳ね] [赤黒の袂] [はためかせ] [木から木へ]
こっち、こっち、此処だヨゥ。
[ひらりひらり] [飛び回り] [飛礫も刃も] [かわすばかり]
[不意に] [何が起こったのか] [一匹の異形] [腕が飛ぶ]
[辺り見回す] [異形達眺め] [幹に腰掛け] [コロコロコロリ]
捕まえたヨゥ。
[赤黒の袂] [煙管取り出し] [薔薇色の唇] [咥える]
[火打石を打つ間] [いきり立つ異形] [眺めて] [ニィと笑み]
下手に動くと危ないネェ。
[煙管持つ白の手] [ひらり] [舞う様に返し] [紫煙吐く]
[ごとり] [転がる異形の首] [見えぬ糸] [張り巡らされた巣]
もう遅いさァ。
[顔色を変え] [背を向ける異形達] [ひらり] [返す白の手]
[断末魔も無く] [転がる肉片] [広がる血溜り] [響く軽やかな笑い]
[はたり] [揺れる] [苺色の鼻緒] [白の足] [片膝立て]
[ゆるり一服] [仄か薫る桜] [白粉] [咽帰る程の紅の香]
嗚呼、良い、好いネェ。
[太腿に覗く蝶] [隻眼の碧] [濡れて] [広がる紅見下ろし]
[くゆらす煙管] [吊り上がる薔薇色] [眇める隻眼] [落ち窪んだ隻眼]
[カァン] [幹叩く煙管の音] [肺に残る煙吐き] [地に降りる]
さァて、旨い奴ァ居るかネェ。
[血溜り眺め] [伸ばす白の手] [ぶちり] [掴み出すは心の臓]
[てらてら] [紅い其れは] [まるで林檎飴の如く] [妖しく光り]
未だ温かいヨゥ。
[うっとり囁き] [薔薇色の唇寄せ] [一口齧り] [染まる口許]
[紅より紅く] [濡れた唇] [ちろりと舐め] [浮かべる三日月の笑み]
[一口齧り] [投げ捨て] [べちゃり] [潰れる紅]
[濡れた五指] [丁寧に舐め] [染まる口許] [指先で拭い]
未だ未だ足りないヨゥ。
束ンなってかかって来る様な奴等じゃお話にならないネェ。
誰に遊んで貰おうかィ。
夜斗は誰と遊ぶンかネェ。
[呟き] [下駄の音] [カラコロカラリ] [何処へと]
そう言や茄子の兄さんは一人で戻ったが司棋の兄さんは無事かネェ。
遥月の兄さん辺りに見つかってなきゃ*良いけどさァ。*
―回想―
[宴のあと。ざわめきを抜け出して独りくらい林の中へ。
取り出したるは、掌におさまる程の珠―――。]
[夜明けの一瞬。空がひととき茜に染まる。
茜を映した珠は きろり きろり と光を含み
茜と蒼とをいったり きたり]
彼の者がヒトか否か、我に告げよ。
名は――――遥月――――…。
[きろり きろり
目玉のように色を変え。夜明けの茜が消えると澄んだ蒼に落ち着いた]
[澄んだ蒼に落ち着いた珠見つめ、ふうと一息]
…彼の者はヒトにあらず…か。
[珠を懐深くしまい込み、夜が空け切った空を見上げた。
纏いかけた黒の霧を振り払うように踵返し
ふぅわり
狩らんコロ カランコロ カラン殺...
下駄の音響かせどこぞへと]
―今朝方の出来事―
―夕闇迫る現在―
[今朝方よりすっかりしんとなった出店界隈。
注意深く歩を進めていれば、石畳に血痕赤黒く]
人死にか?
『へえ、なんでも林檎飴屋の……が、酷くやられたそうで…』
詳しく知っている者は。
[眼光鋭く言及すると、相手は首振り、手振りそそくさと行ってしまう。眉をしかめて、下駄の歯を血痕に押しあて
がり、り
見つめても状況判らずじまい。
興が削がれたかふらり来た道を戻る]
然様か。なよやかななりをして勇ましいことよ。
では……
[軽く地を蹴り、花嵐と共に宙へ。]
[見る間に高く]
[己が宿る薄墨桜、その咲き誇る白き花群にどっかと腰下ろし]
[眼下の血闘眺めつつ、瓢の酒をぐびりぐびり。]
……ふふ。喰児よ、お株を奪われたな。
これは負けて居れぬぞ。精々励め。
[無責任な声援を飛ばす。]
[カランコロ カラン殺...
来た道戻る最中、周囲から剣呑な雰囲気を感じ取り
出店の通りを離れた所で足を止め]
其方等も、"鬼ごっこ"か。
生憎、我は鬼ごっこに付き合う気分ではない……と云っても通じぬか。雑鬼どもめ。
[わらわら。囲む気配に柄へ手を遣る
狩らん殺...一歩動いては下駄を放り 狩らん、コロ]
火影、垂氷。
腹は膨れぬだろうが、降り掛かる火の粉を払除けるつもりで動いておくれ。頼むぞ?
[くつくつ。嗤いながらすらりと片刃を抜いた]
[白緑の柄を握り
――チャリ―
構えたのは瞬き一つ分。
ゆぅらり、黒の霧をうすらまとって、垂氷を振るえば]
『――ギャ―――…!』
『ググ―グ…』
[くぐもった悲鳴とともに刃は緋に染まり
囲んでいた輪が崩れ、崩れてちりぢりに。
負け惜しみか、遠方から礫を投げる小鬼もいたが]
煩い、消えろ。
[濃くなる黒い霧に礫は吸い込まれ消えたとか]
[蠢く気配を見送るとともに薄らぐ黒い霧。
明るくなった周囲を見渡し、緩慢に下駄拾い]
…よう動いてくれたな、垂氷。
次は火影、其方の番よ。
いつまでもへそを曲げておらず、たまには動いておくれ。
[刃を振るい、緋を落とすと鞘に納める。チャリン…
収められたままだった片方は、キチキチ、カタカタと鳴り
何らかの意思を示しているのか]
さぁて、今宵の酒宴はどうなるやら。
[嗤い声は止まない。拾い上げた下駄を片手に提げ
ぺたりぺたりと*社へ向かう*]
[瓢をまた傾けるも]
……もう無いのか。詰まらぬ。
[逆さに振っても一滴だに口中には落ちてこぬ。]
また次を、と言うて下はそれどころではない、か。
やれやれ面倒臭い。
[と、眠たげに眼を閉じ]
[ゆぅらり身体を揺らして、幹に凭れ掛かる。]
[暫し泉を常葉に貸して] [付近をふらふらさまよい歩く]
[衣に付いた小さな紅は] [微かな匂いを出しただろうか]
事前にわかる手立てがあらば悩みを抱えず済むものを。
[くすり][くすくす] [緋色の目]
[右の頬には瞳と同じ紅い線――]
[カラリ][コロリ] [夜店の通り]
結界のせいか――。
[空を見つめてぽつりと一言]
[周囲の目つきも気にすることなく]
[カラリ][コロリ] [下駄を鳴らして]
[難儀難儀と呟きながら][己が棲家へ*帰るのだろう*]
終わったら呼んでくれ。
おれは一眠りする。
[修羅の巷と化した下界に、場違いに穏やかな声を掛けて]
[そのまま*夢の続きへ。*]
[ふと目を開ける。どうやら昨日はいつの間にか眠ってしまっていたようだ。
切れ切れに覚えているのは舞や歌声。]
酒を飲んだわけでもないのになぁ。
……なんというか、いよいよわっぱ呼ばわりされても仕方ない気がしてきたな。困った困った。
[肩をすくめ、立ち上がる。少々空腹ではある。]
[そういえば、昨日は万次郎にもらった苺飴しか口にしてなかったことに気づく。]
林檎飴は結構大きかったな。でも、食べ余すのはいやだし。
……誰かと半分こできたらいいけれど、誰かいるのかな。
[露天のほうに足を向けるが、なにやら気配が妙なことに気づき]
?商売をしてる風情ではないなぁ、どうしたんだろう?
[首をひねりつつ、それでも露天のほうへ]
[地面には、喰児が撒き散らした緋色と、遥月が作り上げた黒の海が広がっている。ざわめく妖しの渦の直中で、精を吸い取った遥月の肌は、いつもより艶やかな白い色をしていた。]
ふっ……ふふふ……
いけませんよ、皆様……
これでは修羅場か宴か分かりませぬ。
[着物をはだけ、上半身を露にした遥月は、くつくつと笑った。胸にこびりついた、誰のものとも分からぬ精を指先で掬い、紅が延び拡げられた唇でぺろりと舐める。]
[歩むうち目に飛び込んできたのは、妖しの者どもの血みどろの地獄絵図。
拳ほどの石礫が飛んでくる。指を唇に当て
──ひゅっ──
己が指を笛にして一吹き。砕け散る石礫。
月の君、と呼ばれていた青年に気づくと]
どういうことです?
[と問う。赤鬼、青鬼の姿も目に捉えてはいたが、声はかけられそうにない。]
嗚呼、山吹様。ごきげんうるわしゅう。
ご覧の通り、ヒトの姿の呪いが解けぬわたくし達が責めを受けているということで……。
[絹のように白い肌に汗が滲み、胸の蝶が呼吸に合わせて翅を動かす。状況が飲めないと言わんばかりの山吹の娘に視線を送った。]
……と言いますのも、昨晩こちらの林檎飴売りのご主人が殺されましてね。どうやらそれが、妖しではなくヒト……我ら妖しを狩らんとする人間の仕業のようなのですよ。
それで、ヒトの姿をしたわたくし達に嫌疑が掛けられて、皆様に憎まれているという始末……。
ふっ、ははははは
どうだい、有塵。お株は奪い返せただろう?
遥月もやるがねぇ。くはははははッ
[血に酔う赤鬼、手を朱に染めて]
他愛もねぇ。
他愛もねぇなあ。
酒の肴にゃ丁度よかったかい、黒櫻。
しっかし、すっかり着物が衣替えだなあ。
[血肉を千切る白い歯は刃物のように鮮やかだ。
ぽいと放るは蒼白手首。
着衣は染まって煉瓦色。
ふと見た先には蘇芳色]
おうおう、迷子の嬢ちゃんか。
なぁに、ただの鬼ごっこさ。
[月の君の説明を聞く間にも、あやかし達の襲撃は続く]
……林檎飴は食べそびれたか。
[場違いな感慨をもらすと、辺りを見回す。]
……社ということは、ここに生えてる樹にはそれなりに霊験があると思ってよさそうだなぁ。
御神木はまずいだろうけど。
[言うと、懐から笛を取り出し
──キ ィィィィ ン──
悲鳴のような音とともに、御神木らしき大木のそばの若木が
──バチッ──
と音をあげて砕け散る。周囲のあやかしどもは欠片が当たると同時に掻き消えてしまう。社に向け、神妙な顔をして]
すみません、きりがなさそうだったんで。もしかすると、もう2〜3本ほど。
[と頭を下げた]
いいええ。ありがとうございます。山吹様。
それにしても、鮮やかな技でございますねぇ。素晴らしい笛の音で。埒が明かぬ故、そろそろ飽きて来たころなのですよ。
[にこりと微笑み、ぱちぱちと拍手。]
嗚呼、確かに林檎飴は食べられませんねぇ。まだ食べたことが無かったので、わたくしは少々心残りです。
ま、赤鬼さんと青鬼さんは、物足りなげではあるけど、このくらいで、お互い勘弁したほうが、ね。
……しかし、普通は、ヒトとあたしたちというのはやはり憎しみあうものなんでしょうかね。
あたしは、ヒトの手になる物が変じた者なんでいまひとつわからないんだけど。
[月の君に向けた言葉だったはずが、後のほうは誰にともなく問いかけるような言葉になる。]
左様ですか、蘇芳様。
確かに蘇芳様のように、人間の姿をした方が妖しに成ったのなら、人間が狩りに来たとなっても憎む気も起きますまい。
[遥月は、目を伏せ首を左右に振る。]
……わたくしは……如何ように妖しに成ったか分からぬ故、人間を憎むとも憎まぬとも……言えませぬ。わたくしに在るのは只、契りを結べぬ哀しさだけ……。
ただ、わたくしの命を狩らんとする者を排除しようとする……本能のまま動くのみで御座います。
[ヒトの身を保つ者達へ襲撃を厭わない、あやかし共の気配。
──バチッ──
そして、木が砕け散る音]
む…
[社の軒下にまで届く剣呑な気配に眠りの中の意識は揺らされて、メイは戦士として瞼を開け――]
[雨も降らぬ] [佳い宵] [青鬼残した] [番傘差して]
[カラ] [コロリ] [音響かせ] [下駄の向く侭] [気の向く侭]
嗚呼、良い、好いネェ。
[紅い雨垂れ] [ぽたあり] [紅く染まる] [番傘回し]
[てらてら紅い] [林檎飴の如き] [番傘に] [張り巡らせた]
[蜘蛛の巣綺羅り] [月夜に映り] [綺羅綺羅り]
佳い宵さァ。
[コロコロコロリ] [軽やかな笑い声] [薫る白粉] [色めく桜]
[赤黒の華咲く白の浴衣] [隻眼の碧] [窪んだ隻眼] [闇を湛え]
---それは昨日の宴の宵の口---
扇と為し、蛍と為って愛でられるも
本性(つね)はやはり血を求め。
開耶の香りにやはり夜斗も狂いつつ
手放された後獲物(かて)を追い。
犬の現し身変わるのは夜の毛をもつ狼か。
天翔け下り、異形集まる祭りの元へ。
林檎飴、己の主が食してた
紅い紅い丸い玉。
甘い甘い匂いのそれは
さぞかし甘美な味であろ。
銀の瞳が映すのは主が食らった飴でなく
それ売る異形の心の臓。
まぁ、あたしもせっかく幾百年もこの世にあるからには、
そう簡単に消えてしまいたくはないし。
[遥月の言に答えを返し、ふと一人ごちる]
…………それに、あたしが消えたら、山吹と盛遠のことを覚えている者がいなくなってしまう。
[表情を変えると]
じゃ、片付けでもした方が。
[というと、自分が粉砕した樹の欠片を*拾い集め始めた*]
頭さえ入ればどこにでも自由に入り込め…
そして出られたあの日々よいずこ?
[良さそうな隙間を見つけたからといって身体を捻じ込ませ、心地良くはまり寝していたはいい。
だが目ざめると、そこから抜け出せないのだった]
…人の身であるからだ。
今は姿を解くことも叶わぬ。
それもこれも、狩る者などが妖の中に入り込んだりするからじゃ。
く…ゆるさんぞ狩る者めぇ…!
常には見えぬその姿、風の如く牙をむき
心の臓だけ抉り取る。
心を食われたその体
傷は無くとも血を放ち。
体の中央(なか)の心の臓
抉り取れば諸々も。
胃やら肝臓、能、目玉。
ずるりと引きずり己が主への土産にと。
あはれなるかな異形の者、
血をぶちまけて内臓盗られ。
この世に残るは骨と皮。
[...はニィと笑む真理に見つけられ、困ったように一鳴き]
…み”、み”ゃー。
[しかしそのまま誤魔化す言葉を探して目を逸らそうとして、彼女の姿の昨日までとは異なる異様さに、狭い隙間でもがく情けない姿でも、思わずキリリと表情を引き締めて]
…はっ。
どうした常磐のひめ、その傘その浴衣、何よりその眼…!
[高い桜の木の上で、足をぷらりと投げ出して
くちゃくちゃ、ぽきん
行儀の悪い音立てて、赤毛をなびかせ食べるのは
傍目にいつか好んだ林檎飴
ただただ
林檎に目玉はついてるか。
林檎に脳味噌ついてるか。
林檎に血は滴るか]
…まぁ、食べられる、位かなぁ…。
もう少し甘くて美味しいと、思ったのに。
[手の平の、林檎大の肉塊は
血液滴る心臓と神経続きの目玉や脳]
夜斗、ご苦労さん。ほら、お前にも。
[無邪気な顔し、心臓ちぎりくれてやる]
[命の声] [助ける気] [あるか] [ないか] [しゃがみ込み]
[指摘され] [番傘くるり] [残る隻眼の碧] [弧を描く]
ちょいと鬼ごっこをネェ。
夜斗はこれでも少食ですから。
食い散らかすからお行儀悪いけれど。
あの異形、あんまり、美味しくなかったみたい。
でも次の食事は翠の君へ。
美味しいものを見つけたら夜斗にもちぎってやってくれると。
ぬぅ、そうか…にしても、オニの奴らの気の利かぬこと!
追いかけまわす側にまわったが嬉しくとも、常磐のひめのお召しを汚し、何より宝玉のごとき眼までも取ろうとは。
見ておれ常磐のひめ、わらわは無粋で礼儀を知らぬ者には同族・異族関わらず厳しいぞ!
わが爪にて報いを受けさせてくれるわ…
[ぐ、と握っていた拳を開けば長く伸びる爪。
しかし今はそれが届く範囲も限られて、虚しいじたばたもがき]
…も、もうしばし時の過ぎたならきっと。
犬が喰い散らかすなァ多少は眼を瞑っておやりヨゥ。
おや、アタシにもお呉れかえ?
嬉しいネェ。
アタシが狩っても旨い馳走は夜斗と司棋の兄さんにもお裾分けするヨゥ。
一緒に喰らえば酒は無くとも宴かネェ。
[くすりと笑いながら頬へ唇を送り]
あまり犬というと夜斗が拗ねますよ。
たまに狼になれば勝手に偉そうにしますから。
食べかけでよかったら、どうぞ?
[半分千切れた心臓やら手をつけてもいない内臓やら]
そいつァ頼もしいネェ。
[誤解受け] [否定するでもなく] [コロコロ] [軽やかな笑い声]
[もがく仔猫] [暫し眺め] [すぃ] [傘持たぬ白の手] [猫へと伸ばし]
アタシァ気が短いのサァ。
ほゥら、捉まりなヨゥ。
[社に現れた、着物袴の姿。所々黒く染まっているのは返り血か。
ぺたりぺたり。カラコロ。
周囲の惨状など目もくれず、下駄を放り投げ]
メイか。
…無様な。ほれ、手を貸せば出られよう?無理か?
[社の縁の下。はまり込んだ小娘に片手を差し伸べ遣る。
袖には紺に滲みた緋が黒となって。死臭もするやもしれず]
ひとまず爪は仕舞うがいい。
得物を振り回しておっては、でられるものも出られまいて。
[くつくつ。メイを見おろして可笑しそうに笑い声。
惨状にそぐわぬ、笑みとそうと差し伸べた手]
[ふわ、と木から夜斗と降り、社をみやりと常盤の髪。
雨ふらぬのに傘を持ち]
翠の…?
[それをみつけ少し嬉しそうに。
そちらへ向かおうと、近づくにつれ猫の気配に夜斗は殺気立ちながら]
常葉の君、こんな所で。
…何をして……ん?
[はまる猫を見て、絶句]
…何してるんですか、そこの猫。
[触れられ] [震える] [長い睫毛] [隻眼の碧] [弧を描く]
如何もこうも鬼ごっこさァ。
邪魔なもンは捨てっちまうに限るからネェ。
[寄せられる唇] [離れれば] [白い指] [そぅと唇をなぞり]
其ンじゃあ狼さんと呼ぼうかィ。
悪気は無いんだ赦しと呉れヨゥ。
[ちらり] [指し示される方] [すぃと視線移し]
遠慮しとこうかィ。
さっきも喰ろうてみたが弱い奴ァ旨く無いからネェ。
呪い解けぬ程に巧く人間に化けれる奴等なら旨いかネェ。
[ゆらり][岸には昼間の妖し]
[見渡せば幾許か増えている連れ]
やれやれ、折角見逃してやったというに。
――二度目はないぞえ。
[冷たい紅が敵を捕らえて]
陸で挑めば良いものを……
此処で挑むは愚の骨頂じゃな。
[泉に映る月は歪んで小さな漣を起こして]
それ以上水に踏み込むな――穢れる。
[差し伸べる手] [一つ増え] [白い手引き]
[遊螺り] [立ち上がり] [万次郎の姿] [眺め笑む]
兄さんも中々に好い形(なり)じゃないかえ?
[一つ声] [ゆるり] [首捻り] [揺れる常葉]
[赤の少年] [見詰め] [隻眼の碧] [僅か弧を描く]
命の姐さんが居たからちょっかい出してたのさァ。
昨夜は大丈夫だったかえ?
おお身を起こすのに助けをくれるとはありがたい。
[もがきは抜けられぬゆえと見破られていようとも、いまだに身を起こすためと言い訳をしながら手を差し伸べる]
…いかんいかん。
[するり伸びた爪をひっこめればメイのそれは、もう真理の肌を傷つける心配もない、白く柔らな小さな手]
では、お力ちょうだい。
[じたばたを止めて、番傘を持たぬ方の手を貸してくれる真理へと片手を差し伸べる]
……ぐっ。
[そこに現れたは、その使う力は麗しく目を楽しませようとも、やはり弱みなど見せたくない相手、司棋。メイは答えぬままに顔をあさっての方向に逸らし]
[そしてマンジローの姿をも見つけると]
万次郎…その姿。
おぬしも戦いより戻って来た後か?
…いやいや、ともかくそういった事はここを出てから聞こう。
[姿に見合わぬ優しい笑みと伸ばされた手に安堵し、残った手を万次郎に差し出して]
さあ遠慮は要らぬ。すっと出しておくれ。
…面倒なものに笑われぬうちに、早う。
あまりいい気にさせても面倒なのでそのまま夜斗と呼び置き下さい。
綺麗な目だったのに…。
蛍火でもよかったら、新しいお目でも入れましょうか?
紅、翠、玄、縞(しろ) 蒼に金銀…お好きな色を。
[再び目元、頬…唇へ口付け落とし]
やはり翠の君が好まれるものはもっと好い物でなければ、ですか。
ではご希望下されば夜斗とともに狩りましょう。
[猫がもがくをせせら笑いながら]
いつも見る猫は随分とずるがしこく逃げ隠れしていたけども…こんな猫を見たら一噛みで食い殺してくれるのに。
お互い、知らぬ身でなくてよかったと思うだけでしょうかね
[くくく、と笑いながらやはり傍観、夜斗は後ろでうなるだけ]
常葉のひめと慕われておるのだから、其方が助けた方が彼の者は喜ぶのではないか?…まあいいか…。
好い成りとはなんだ。
其方こそ、眼はどうした。美貌が惜しくはないのか。
[さらり云ってのけ、メイに差し出した手は招く形で]
爪は仕舞ったな?…確り掴まるのだぞ。
頭を低くして、そう。得意だろうに?
[ずるずる。途中メイの後頭部を庇うようもう片方の掌を添え
肩が抜けたと判ると、担ぎ上げるようにしてすとん、と
縁下前に抱き降ろした]
無茶はするな。小娘が。
そうかィ、そうかィ。
なら夜斗と呼ばせて貰うヨゥ。
新しい眼を入れて貰えば見えるかえ?
其れとも只の飾りかえ?
司棋の兄さんが見立てて呉れるンなら華も眼も何でも好いヨゥ。
[落とされる口接け] [一つ] [一つ] [呼応する様] [睫毛震え]
甘露な血肉と魂が喰らえるなら誰でも好いヨゥ。
其れも司棋の兄さんが見立ててお呉れかえ?
静かなる者を喰ろうて喧嘩祭りに華を添えるも一興かも知れないネェ。
[ゆらり] [女の周りから湧き出る蒸気――否、其れは霧か]
[ゆらぐ視界の隙間から] [それでも紅ははっきりと見え]
同族喰い――か。
したことはないが、喰ろうてみようか。
[ゆらゆらゆれて][岸辺の手前]
――……汝れの魂は不味そうじゃな。
やはり黙って去ね。
[パシャーン] [少し大きい水の音]
[弾かれたように飛ぶ水飛沫――]
[憐れ][妖し] [瞳見開き虫の息]
ああ、すまん――
ヒトの姿では力に制約があるようじゃ。
ひと思いに殺れなんだな。
[ふわり硯に残る青墨飛ばし。
するり、黒の浴衣を脱ぎ捨て藍の浴衣を着直す。
乾いた浴衣から墨は剥がれ、すっかり元の色]
さぁて己もそろそろ本気の支度よのう。
[からからからり。カラコロコロリ。下駄鳴る。
袂から腰帯移り下がる帳面。綴られた紙には数多の鳥獣。
カラコロコロリ、向かうは何処。
あちらこちらに赤の名残。遠巻き眺める百鬼共、
浮かぶは畏怖か敵意か。くつり、藍の浴衣に殺気纏う]
腹が減っては本気も出せぬのう?
久しく碌なもの食うておらぬわ。
それ、貴様ら程度でも腹の足しに変えてやる。
[紙千切り、咥え息吹きかければ
黒い数多の蝶が百鬼を覆い食らう。
赤、黒織り交ぜ。血を吸い骨まで砕く]
――戻れ。
[蝶は赤を取り込み黒の煤へ。
煤は男の口に戻り呑まれて行くか。ぺろり飲み込み口元舐める]
お望みであれば。
蛍は儚さ、儚さは美しさと申します。
貴女様の目が綺麗でなければ何が綺麗といえますか。
翠の君のお美しさを際立たせるには飾りと申してもよろしいかと。
[軽く笑い]
ご安心を、元通りにして差し上げますよ。
華と同じく、貴女様が望めば何時まででも何でもご覧になれまする
ただし、呪いだけは元にできませんがね。
律儀だねえ。
[片付け始める人影2つ、
赤鬼足先蹴り上げて ごろんと転がる生首1つ。
口元拭えば滴る緋色]
ははは、ちぃたあ腹の足しになったなあ。
さぁて、そろそろ気配が増えてきたぜえ。
社の酒宴の時間だな。
なぁんか猫が鳴いたような声が聞こえたなあ。
隻眼のアタシァ醜いかえ?
醜さで司棋の兄さんにつれなくされるンは寂しいネェ。
飾り一つで気が引けるなら易いと見るか難いと見るか…
[笑む様子] [伸ばす白の手] [赤の髪梳き]
司棋の兄さんの双眸が互い違いなンも蛍火だからかえ?
一緒に成るなら其れも好いネェ。
この身は呪いだらけさァ。
自分でかけた呪(まじな)いでアタシが呪(のろ)わばこの身と共に触れた相手も腐れ落ちるからネェ。
其ン内にゃ残りの眼も腐れるだろうヨゥ。
[カラリ][コロリ] [歩み寄り]
[屈んで][其の魂を手にとりて]
やはり、不味そうじゃな――
[くすくす笑って立ち上がる]
[泉をそろりと振り返り][浮かぶは月と白き花弁]
花の命は短くて 苦しきことのみ多かりき――
[カラリ][コロリ] [下駄鳴らし]
[行く当てもなくふらふらと]
[右は茶の懐に、左は昨夜のままの瓢箪ひとつ。
草鞋音微かにゆぅるりゆるり夜店道]
[夜店は並べど影疎ら]
[ゆぅらり揺らぐは殺しの気]
やれ…懲りぬ輩よ。
…嗚呼、仕方あるまいか。
[ざりり足裏緋き跡]
幾つか喰われてしもうたか。
知らぬが寄るか、やれ面倒な。
[ひとつ礫を始めとし。
幾つ飛び来る礫々と]
[するり右腕取り出せば、扇を返し只弾き]
[不意に生まるる左の気]
[ふわりと漂う、紅や蒼い気、心なしか嬉しそうに相好崩し]
皆様、おいでになったようですね?
[先程まで心の臓を食らっていた己の浴衣
白地に蒼い水の波紋、飛び散った朱は紅梅のように鮮やかに]
さて、今日は皆様随分と血なまぐさい。
酔いそうなほど、好い匂いでありますが…
[かぁん]
[鳴るは瓢箪。
突き立つるは氷の刃]
…やれ、未だ開けてもおらぬに勿体無い。
溶けては酒が流れよう。
仕方あるまい、早々に参るか。
[右の扇ぱぁんと開き。
風に乗せれば噎せ返るかの幻香]
[足を止めるる妖おいて、一人香を抜け出しつ]
夢幻(ゆめ)の花嵐(あらし)に巻かれるが良い。
[ぱちり扇を閉じようと。
暫しは香は留まろう]
好かったネェ。
[助け出される] [仔猫に声かけ] [番傘くるうり]
命のお姫さンは殿が助けりゃ好いのさァ。
こン面(つら)なンぞより大事なもンは幾らでもあるヨゥ。
[恥じる事も無く] [隻眼の碧向け] [ニィと笑み]
[ぽたり] [ぽたあり] [番傘から落ちる] [紅い雨垂れ]
司棋の兄さん、紅く染まったこの形(なり)に今宵も華ひとつお呉れかえ?
[カラコロリ、下駄の音に見上げる藍の目
花散る向こう白の姿に目を細める]
咲いた桜に陽はあらぬか。
[いつぞやの答えにそう問うてみる]
[常盤色の声がふと聞こえ、猫の救出終わったかと一目みやれば片目失う君のかんばせ]
…!どうされました、その傷は…。
[思わず指で頬に触れ]
―社の裏手、井戸の縁―
[水で清めた身体を灰色の結城紬で包み、遥月はふぅと溜息をつく。]
……ああ、嫌ですねぇ。せっかくの気に入りの着物だと申しますに。
[道具箱には、毒紅の器。
先ほどの乱行ですっかり無くなったそれを、誰にも見られない場所で作りたいと思った遥月は、人知れず井戸の縁で毒紅を調合していた。]
そろそろ皆様お集まりですかねぇ。
顔でも出しますか……。
応、相棒。
そろそろ宴の時間じゃろうて、来てみたが
桜あればつい見てしまうものよ。
咲くは本懐、散るも本懐。見ずして何の桜かのう。
醜いなどとは。
ただ、あまりにも痛々しく。
[その顔は、母親を心配する子供のように]
僕のこの眼は理由があり。いつかお話する時もありましょう。
はて、翠ではなく別の瞳をお望みですか?
なんなりとお望みの色をお出ししまする。
呪いなぞかけぬまま、お美しくあればよいものを…
[すこぅし、悲しげに]
[幻香の塊背後に置きて。
ゆぅるりゆるり歩き往く]
やれ…ひとつふたつ当たろうが痛くはないが。
喰われてしまうは好みはせぬ。
やれ、面倒な。
[落としたひとつ礫を蹴りつ。
やがて現るは昨夜の宴場]
……やれ、此処でもか。
面倒は付き纏うようだな。
[緋く緋く地は染まり。
未だ乾かぬ緋も在りて]
[赤の少年] [頬触れる指] [睫毛震わせ] [柔らかな笑み]
[白い手] [そぅと伸ばし] [頬触れる手掴み] [小首を傾げる]
喰ろうただけさァ。
隻眼のアタシにゃ華はお呉れで無いんかえ?
メイは其方を、昨日よりひめ、ひめと慕っておったではないか?
[片手の指、己の顎を撫で]
さて、そのかんばせより大切なものとは如何に。
[気まぐれな問いをひとぉつ常葉に投げかけた]
[助け上げた手をそうと離し、翡翠の髪を撫で梳きながら]
メイ、其方もじきに狙われるであろうよ。
雑鬼どもが騒いでおるでな…。この染みも、あれらのモノ。
臭うか?それとも、心躍るか、どちらだろうなあ?
[くつくつ。着替える気はさらさら無いらしい]
[心配そうに眉ひそめ]
いいえ。君が望まれるなら星でも差し上げまする。
この眼えぐった時は、さぞかし痛かったのでありましょうか?
[酷く悲しげに呟いて]
そうだなぁ。
見られりゃ櫻も本望だろうさあ。
見事だねえ。
[青鬼謂えば頷いて]
そろそろいい時間だねえ。
どうだい、先に一杯やっとくかい?
痛く無いたァ謂わぬけれど堪えられぬ事も無いから大丈夫さァ。
心配かけちまって御免ヨゥ。
[子供の様] [優しく髪梳き] [宥めるか]
さて、何時聴かせて貰えるかネェ。
眼で見えずとも気配は判るから不自由はないさァ。
司棋の兄さんの眼の秘密を訊いてから入れる眼の色を考えようかィ。
誰彼構わず触れられる様なもンは美しくなんて無いヨゥ。
易々と触れさせたアタシも触れた相手も腐れれば好いのさァ。
[哀しげな様子] [見詰めて] [隻眼] [柔らかく弧を描く]
咲かぬは陽、咲くは灯、白の言葉も謎かけのようじゃ。
では散るはなんとする?
[白、首かしげ。揺れる袖には滲む赤黒。
ちらりと赤の一筋覗く]
やれやれ、お前さんも礫でも投げられたか。
厄介ごとが多くて堪らぬのう。
[痕残る手を伸ばし、白の頬撫でる]
ふん。初めて見た犬は体もずいぶんと大きく、きゃんきゃん吠えずともその姿を静かに佇ませるのみで、周りを圧しておったものじゃが。
[メイの気には障る司棋の笑いから耳は塞げなくとも、笑う声と唸る姿から、どうにかつんと顔は逸らし]
そうじゃな知らぬ身ではなかったゆえに、弱い犬ほどよく吠えるとは本当の事のようじゃと、また一つ学ばせて頂いた。
うん仕舞ったぞ万次郎。わらわが傷つけたく思うは、おぬしではないもの。
[司棋から逸らした頭をも庇うように片方の掌を添えられ、その丁寧な扱いで抱き降ろされると、小娘と呼ばれようとも満足げに微笑みを見せて]
うん、やはりじゃ。少々口の悪い所があろうとも、万次郎はわらわをも姫のごとくに扱う。
おぬしのそういうところが気分が良うて好ましい。
問題ないぞ、おぬしに助けられてもわらわはちゃんと喜んでおる。
[青鬼向こうに見えた赤鬼]
[ゆるり首を傾げれば][くすり笑って手をあげて]
今宵も愉しい宴会かえ?
鬼ごっこは始まったというのに呑気じゃのぅ。
[かけた言葉に嫌味はなく]
[いつもと変わらぬ様子に穏やかに笑み]
おお、赤鬼に青鬼か…司棋も…揃って物騒な格好をしておる。
[赤鬼のなりを見て嘆息]
ずいぶんとまた、愉しんだようだな?赤鬼。
我にも、一献頂けるか?
先のような醜態はもう晒さぬよ。
足りぬのなら、調達して参ろうか…と云っても出店は殆どが畳まれてしまったようだが。酒くらいは調達できよう。
[酔いたい気分隠さずに。ぺたりぺたりと赤鬼のもとへ
酒の具合を確かめるように首を捻り問う]
見事も見事。有塵の顔も忘れられぬわ。
桜見るたび思い出しそうだ。かっかっか。
そうさな、酒の匂いあれば他も寄ってこようて。
桜の下で花見酒と洒落こむか。
[ゆるり赤鬼見て、思い出すのは常葉の片目。
少しばかり浮かない顔。それも一時愉しげに口元上げる]
白水も来たかい。
櫻はアヤカシを惹きつけるのかねえ。
[眼を細めてくくくと笑い
相棒の言葉ふと気づき]
はあん、お前らもやられたか。
水遊びでおいたしたヤツを屠ったかい?
[メイの言い草にカチンと来たか、好戦的な色を瞳にうかべ]
へぇ…弱い弱いとよくも。
猫なら猫らしくこそこそ隠れればいいものを、よくも堂々と僕の前へ出てこれる。
そんな年で縄張りも守れぬ犬と同視するとはいい加減、我慢もできぬよ?
[苛々と、いよいよ...も身の毛を逆立てるように]
慕われるなァ好いが姫を助けるなァ殿の役どころってだけさァ。
兄さんがもう少し舞台袖で待ってて呉れりゃ助けたヨゥ。
[問いに] [笑みを絶やさず] [番傘くるうり]
人様に話す程無い詰まらないもンだヨゥ。
[赤の少年] [哀しげで] [白の手伸ばし] [赤い髪梳き]
痛く無いたァ謂わぬけれどそンなに軟(やわ)じゃないヨゥ。
さァさ、今宵は何の華を見立ててお呉れかえ?
[気配三つ] [赤鬼] [青鬼] [白の少女]
[遊螺り] [顔向け] [番傘くるうり] [ニィと笑む]
おや、お揃いかえ?
[笑みそのままに少女を見おろして]
そうか?嫌われてはおらなんだ。
[くつり、と戯けてみせた]
其方が傷つけるのは、何ぞ。雑鬼か、それとも鬼狩りか。
はたまた―――、我ら主様の命に従い動く者共か。
ははは。其方がヒトで無い限りそれはないな。
ヒトでない女子供を斬る趣味は無い故、丁寧に扱うのも当然。
[するり―さらさら。
翡翠の髪を指から流し、頭を撫で梳く手を降ろした]
―社にて―
[灰の結城紬を着込んだ遥月は、いつもの人だかりへとやってきた。]
これはこれは皆様、ごきげんうるわしゅう。
……?
どう為されました、常盤様。
嗚呼、其の眼はどこで傷つけられたのですか……?
まさか、ヒトの狩人に…?
[青ざめた表情で、常盤の顔を見る。]
散るを悲と評すのは無粋じゃろうて。
―――……さしずめ緋かのぅ。
[くすり][困ったように笑み]
[撫でられた頬][俯いて]
水の礫を返して一度は見逃してやるも
大勢連れてきよったでな――全部狩ってやったわ。
ほんに難儀じゃ。
[顔をあげれば][くすりと笑い]
同族喰らいをしてみようかと思うたが
不味そうじゃったから捨ておいた。
["せんせい"の問いには薄く笑み]
おいたをしたからたっぷりお仕置きしてやったわ。
なぁに、水浴びの延長じゃ。
[くすくす笑って報告か]
[白水笑えばにやりと笑い]
愉しいは愉しいが
赤が見れるかもしれないねえ。
[ふと相棒の曇り顔、眼を細めて覗き込み]
どうしたぁ、相棒?
酒が足りねぇかい。
[続々気配を感じつつ]
ああ、万次郎。
そういうお前も相当なんじゃないのかあ?
おう、呑め呑め。
こんな櫻の花の下、ぼおっとしてるのこそ無粋ってもんよ。
[瓢箪突き立つ氷刃。
つぃと撫でればひやりと冷たく]
さて、暫しは溶けはせぬようだが。
急がねば時の問題か。
[時折ぴちゃりと緋色は撥ねて。
古草鞋、足先、点々と]
[着けば周りは噎せ返る]
…やれ、酷い血の香よ。
[つぃと見遣るは赤隻眼]
ではせめて…
[また蛍火が舞ったかと思うと、真理の眼元へ宙を舞い。触れたか触れぬか、ガラスのような翠の瞳が現れて]
あまりにも、悲しく思いますゆえ、形だけでも。
その眼は、明日には消えますし、恐らく何も見えはしませんが
女性の顔に傷などとは…。
[いつもの結い髪蛍火顕わすは白く可憐なひなげしで]
あぁ、気分も華に通じるのか、なんと悲しげな…
[気持ち顔をゆがめて、それ以上は見ようとせず]
[真理の声にそちらを見れば、眉間に皺を俄かに寄せて
呼びそうになった真名押さえ]
……おいおいそいつぁどうしたい。
随分な格好じゃぁねぇかあ。
[常盤は隻眼番傘くるり。]
そうなって一層艶が出るたぁ
さすがと謂えば流石だがなあ。
子鬼どもにやられたってぇワケじゃなさそうだなあ。
顔ぶれはほとんど揃ったな。
今宵の宴もそろそろ始まりか?
[と思えば、犬猫の争いが始まろうか]
青鬼、司棋を見はっておれよ?
犬猫の争いで、酒宴が台無しになってはかなわん。
[通る声で青司に告げる。
己はちらと翡翠の少女を返り見てひとりごち]
挑発に乗らねば良いがな。
[集った面々にも気がついて]
おおいつの間にやら、増えておるわ。
>>219
髪を撫で梳かれれば、心地良さそうに目を細め]
そうか。おぬしならば雑魚ごときに狙われようとも、さぞたやすく打ち倒したことじゃろう。
ふむ、心は騒いでおるのやら踊っているのやら、わらわにもようわからん。
…思えば、助けられるのは二度目じゃな。
高枝より受け止められしときは、礼もせなんだ。
[足元で身をくねらせすり寄っているつもりで人の身故に胸の辺りでうろついたのは、礼のつもりのよう]
じゃがおぬしの言う通りにわらわもまた狙われようとその時こそ、わらわも助けてもらうばかりで無いと見せられようぞ。
>>228
おぬしの前へ出てこれる、とな?
いやらし笑いを常磐のひめに向けながら近付いて来たのは、おぬしの方じゃったともう忘れたか。
我慢もできねばさあ、どうする。
わらわとて、いつも優しく諭すばかりではないのじゃからな。
[つられて身の毛を逆立てるのは、果たして勇猛果敢な勇気ゆえか、木の上へと避難したくなる心を誤魔化すものゆえか]
[現れる気配] [遥月へと向き直り] [幾度目かの問い]
[青褪める様] [見詰めて] [コロコロ] [軽やかな笑い声]
鬼ごっこの合間にちょいと自分で喰ろうただけさァ。
[遠く] [薄墨桜] [はらり] [ひらり] [隻眼の碧] [潤む]
[伸ばされる手] [灯る翠] [俯き加減] [雛罌粟をなぞり]
御免ヨゥ、悲しませる気は無かったのにさァ。
気配は判るし未だ片目ある内ァ見えるけどネェ。
有難うネェ、今宵も蛍火に彩られて嬉しいヨゥ。
[瞬く双眸] [碧と翠] [そぅと少年の頬撫ぜ] [赤い髪梳く]
[集う物の怪人混じり。
常葉の女に細い目弧を描き、番傘見つけてまたひとつ笑む]
ああ揃いさぁ。
[するり弧を解き白へと]
緋か。ますます白の謎かけ判らぬわ。
ほほう、泉で仕掛けるとは愚かな奴等よ。
食えば当たるやもしれんのう、食うも食わぬも好き好きじゃ。
そのうち烏にでもつつかれようて。
[頬なぞる手離して、赤鬼此方を覗けばゆると笑んで]
なぁに、寝起きで可笑しな顔でもしたか。
酒は足らぬが酔うてはおるさ。
[くつり、細める藍の目]
犬猫の争いも無粋よ。
嗚呼、呑もう。この数では酒も足りなかろう?
我がもう二三本調達してくるとしよう。
酔いたい気分なのだ。
[赤鬼へそう言い残し、どこか清々しげな笑みを浮かべつつ社を離れようと]
メイ、其方も来るか。
[ふと口をついて出た言葉。自分でも判らぬまま声を掛けていて]
嗚呼、美しい翠……
[司棋が造り出した硝子玉をじぃと見つめ、溜息をつく。]
ですが、やがて消えゆく定め……。
常盤様、もしお嫌で無かったら、わたくしが化粧を致しましょうか。喪った目は戻せませぬが、瞼を紅で彩ることはできましょう……。
よろしければ、いつでもお声をお掛け下さいませね。
[真理に触れられ暫く神妙に俯くも、メイの言葉にいよいよこめかみに何かがひくつき]
この猫…!言わせておけば!
[ぷちんと音がしたのは気のせいか
瞬間に夜斗が眼を見開き猛然と吠え立て今にも噛み付こうと]
[万次の物言いにからり笑い]
かっかっか。己は放し飼いゆえ、
大人しく膝に乗っておるかは司棋に聞かねば。
しかし酒の席壊すのもつまらぬものよ…ふむ
[身を逆立てるメイと司棋をゆるり眺め。
先日のやりとり思い出しメイに話しかける]
さてはて、己の腕は一本しか無い。
酒呑みで片手使うてしまうから、
わっぱの襟元掴むわけにも行かぬ。
無い腕の代わり、酒の席潰さぬよう頼りにしても良いかのう?
そうかい、相棒。
寝起きかい、いい夢は見れたかい?
[肩をついと叩いて瓢箪傾け]
酔う、酔うねえ。
血に肉に花に女に男に、酔うさ。
祭りだからなあ。
[呑みたい気分と万次郎、
ほお、と愉しげ緋色鬼]
そりゃあいい、
本気で呑んで遊ぶとしようかい。
猫がお気に入りかねえ。
主と猫かあ。
[返る袖から香る緋色。
既に乾くも香は変わらず有るかの如く]
やれ…一度に幾つも見ればもう飽きた。
一体幾つの妖を狩った?
我からすれば其方も狩る者も変わらず思えるぞ。
[隻眼の袖取りゆるり擦り。
ぱらりぱらぱら煉瓦は落つる]
[常葉の少女に目を見開いて]
[その答えに僅か眉根を寄せる]
自分で喰らうとは――奇妙なことを。
其れも刹那を愉しむコツか?
[青司の様子に緋色を細め]
そうじゃな。
妾にも――……ようわからんわ。
[続く言葉には笑みを浮かべ]
愚かなことこの上もない。
泉で妾に挑んだことも――拾った命をまた捨てにきたことも。
……妾が喰らうは魂ゆえに肉は烏にくれてやろう。
[言えば、カラリコロリと歩を進め]
司棋様、メイ様。
いい加減になさいませ。
……まったく、犬と猫の争いだなんて、あなた方は童子ですか?
そんなつまらない理由で喧嘩なさるなんて……嗚呼、情けない。ほら、爪をしまいなさい。みっともない。
[灰の紬の袖を口許にあて、眉をしかめて犬猫を見やる。]
[赤鬼の声] [振り向き揺れる常葉] [見詰める眼は碧と翠]
[薔薇色ニィと笑み] [妖し蛍火] [隻眼の碧と共に弧を描く]
鬼ごっこだヨゥ。
そう言う喰児も中々に好い形(なり)じゃないかィ。
心配せずとも小鬼に狩られる程に落ちぶれちゃ居ないヨゥ。
でも鬼ごっこはもう始まってるからネェ。
何時消えるとも知れぬは誰しも一緒さァ。
[青鬼見詰め] [くうるり] [回る番傘] [ぽたあり] [紅い雨]
[てらてら光る] [紅い番傘] [月夜に映る] [蜘蛛の巣綺羅リ]
今宵は一献、茄子の兄さんと酌み交わそうかィ。
[遥月の言葉] [紅い化粧を呉れると謂う] [ニィと笑み]
遥月の兄さんも優しいネェ。
紅は血の色、綺麗さァ。
こン侭でもアタシァ構わぬが見苦しけりゃ好きにしと呉れヨゥ。
開耶も来よったか。
あちらこちらに赤ばかり。そろそろ別色見たくなるか。
しかし手を出すのはあちらゆえ、
あらぬ疑いかけられたまま大人しく食われるのもつまらぬものよ。
[開耶が落とす煉瓦色。
くつり笑って、赤鬼見遣る]
ああ、ああ。朧な夢を見すぎておったわ。
すっかり目覚めればうつし世の香にほろ酔いよ。
祭りも祭り鬼ごっこじゃ。
お前さんも派手にやったようだのう。
そうかい、
そりゃあいい、良く出来ました、だ。
[白水答え、先生返す。ごっこ遊びの延長線。
琥珀が眉を顰めて諭す]
さぁ。どうだったかなあ。
数えちゃいねえ。
はははは、俺ぁ愉しければいいのさあ。
それに、売られた喧嘩は高く買えってな。
[赤鬼に、肩を竦め笑う]
さぁて、猫に主は必要か?我の記憶では、猫は主を持たぬと。
[引き寄せたメイの後頭部をわしと掴み、ともに踵を返し]
ゆくぞ、酒の調達だ。其方も呑むのだろうに。
先の礼の件も含め、これで御破算にしようて。なあ?
[盃を仕舞い、ぺたぺた歩き出す裸足。片手は未だ翡翠の頭を掴んだまま社を離れてゆき―――。]
[周りにさんざ呆れられてもぷつり切れたものは直りもせず]
だって最初にあの猫が…!
[子供のような言い草で。みっともないやら情けないやらと呆れられ、耳垂れるようにしょげるもつかの間]
…いいですよ〜だ。ふん。
でも猫と一緒の席だけは勘弁ですから!
[興奮する夜斗にまたがり、泉まで*駆け抜けて*]
陽に灯に緋か。ふむ、さて。
[緋色細める白に、暫く首かしげ、ぱちり指鳴らす]
それは命のようじゃのう。
陽に蕾抱き、咲くは命の灯火、散るは緋色の血の色じゃ。
ふむ、捨てるも拾うも己が裁量。
賽の目振れば、出る目を捨てるはまた無粋。
[常葉の女の言葉。小鬼と聞けばくつりと笑う]
己と呑むか、よかろうて。偶にはお前さんに酌でもしようか。
[紬の袖の奥で、遥月はくすくす笑う。]
嗚呼、可愛らしい司棋様ですこと。
まぁったく、拗ねる姿は子どもそのもの。嗚呼おかしい。
はいはい。わかりました司棋様。
気分が直ったら、また戻っていらっしゃい?
[紅の目尻を緩め、男はくすくす笑い。]
>>230
うん教えよう、万次郎。わらわが傷つけるのは雑魚であり、鬼狩りでもあり、おぬしを傷つけようと目論む者でもあり、そしてキャンキャンとよく吠える犬じゃ。
この身のこなしに働きをよう見て、ヒトであるならばどうあっても適わぬ動きと知るが良いぞ。
[降ろされた手を名残おしげにそれでもニッコリ笑って見せると相も変わらず、司棋達に向ける眼は激し火の色]
…おやおや。
>>236
[けれどもその眼がまあるく見開かれ、惑ったように首を振る]
困ったものよ。司棋の心根の悪さを見たと思えば、かように美しい瞳を常磐のひめに戻し、さらにはその髪に白い花を飾りもする。
懲らしめてやるべきなのやら、褒めてやるべきなのやら……ぬっ。
…我が心決まった。やはり懲らしめるべき!
[猛然と吠えたて今にも噛み付かんばかりの司棋>>245を見れば、迷いは消え、勇ましくも両腕を振りかざそうと――]
[表情に声、腕はとは裏腹にやはり……万次郎を盾として脚はさがる寸前、襟首掴まれ引き寄せられたはむしろ救いであったろう。
さがりそうであった己の脚には]
……ううむ。いやいや、違う、違う。
これは退却などではなく、楽しきいざないにのれとの天の思し召しに脚が従おうとしておったまで。
>>246
…おお、そうともそうとも。
青司とてわらわを頼りにしておるがゆえに。
司棋が酒の席潰さぬよう、ここは大人の態度で身をひこうとの思いがさせたことでもある。
>>250
なんと遥月め、そのように折れてやったわらわまでも一緒くたにしては酒を調達してきても、分けてはやらぬぞ。童子はそこな一匹、司棋ばかりよ。
[逃げるとは見せぬ悠然とした表情で、にこり万次郎に微笑み>>243]
うむ、行ってやろうとも。楽しき宴のための差し入れ物調達もまた、おぬしと共にならば一層楽しかろ。
見渡せど赤が目に付けば飽きもする。
[幾度擦ろうと落ち切らぬ。
飽いて袖を放ろうか]
適当に流せば良いにそれすら出来ぬか。
それとも最初からする気がないか。
なれば狩る者でなくとも狩る者と同じよ。
[下げた瓢箪引き上げて。
突き立つ氷片越しに藍を見る]
[隻眼の言に零るる溜息]
やれ、確かに数える間もなかろうが。
これでは主に人を捧ぐ前に妖が総て消えようぞ。
[番傘くるくる蜘蛛の糸
獲物捕らえて喰らう性。]
蜘蛛かぁ。よぉく似合ってらあ。
そりゃあ子鬼程度じゃ碧の相手はつとまらないだろうさ。
はん、
着物の色が染め変わっちまったぜ。
鬼ごっこかぁ。
そりゃあ命がけだねえ。
喰うか喰われるかだ。
俺ぁ鬼になり損ねたかあ?
[揶揄半分で杯掲げ その模様は木目色。
笑う青鬼振り仰ぎ]
そうかいそうかい、
夜の夢こそ真という言葉もあるがねえ。
祭りは派手なほどいいのさあ。
[白の少女] [問う声に] [振り向き] [ニィと浮かぶは三日月]
昼間は泉を貸して呉れて有難うネェ。
刹那を楽しむにゃ邪魔なもンもあるのさァ。
[新たな気配] [琥珀の君] [碧と翠向け]
おや、開那の兄さんもおいでかえ?
昨夜は楽しかったヨゥ、次ぎは何して遊んでお呉れかえ?
[青鬼笑い] [酌をすると謂う] [しゃなりしゃな] [歩み寄り]
[膝着き座り] [赤黒の袂より] [木目の浮く盃] [すぃと差出し]
そンじゃ遠慮なく頂こうかィ。
[開いた番傘] [くるうり] [てらてら光る傘] [積もる花弁]
[先生に褒められ][くすりと笑んで]
汝れも大分――指導者らしい形(なり)をしておる。
[吼える犬には首を傾げて]
やれやれ、ほんにわっぱじゃのう。
[けれどくすくす][愉しそう]
[遥月は、メイの髪をそっと撫でた。]
はいはい、メイ様。落ち着いて下さいな。だいたい真に強き者は、子鬼ごときに吠えますまい。それを言ったのは他ならぬメイ様ではございませぬか。
[メイの鼻筋を指先で軽く撫でる。]
その御手本をメイ様からお見せになれば、司棋様も負けたと音を上げるやもしれませんよ?御試しになってはいかがです?
[メイににこりと微笑んだ。]
[藍の謎解き][袖は口元のみならず顔まで覆うか]
[嗚呼けれど][くすり][もらした笑みが聴こえる]
命か。
汝れの例えも悪くない――。
[袖から出た顔][いつもの微笑み]
[捨てるも拾うも裁量なれば]
あの者には裁量がなかったのであろう。
[メイの云いに、笑い殺して神妙に頷く]
左様左様。
お前さんを頼りにしているゆえ、喧嘩止める無粋を承知で申したのよ。
万次とひとつ酒でも持ってきておくれ。
笑うて酒呑み交わせば、それもまた大人の態度よのう。
[見送り、開耶が瓢箪出せば、薄く笑む]
なぁに、少々腹の足しにせぬばならなくての。
流すも良いが、今宵はその気がむかなんだ。
如何思われようとも構わぬが、なればお前さんも礫を投げるか?
良く吠える犬か。せいぜい見極めてからにせいよ?
所構わず引っ掻きにかかる猫は厄介だ。
[翡翠の頭を掴む手は更に強く、両腕振りかざそうとするメイを無理矢理に回れ右させ、出店の並ぶ道迄強引に連れ出そうと―――]
そうころころと良く表情を変えるものだ。確かに猫なのだな。
うむ。行くか…。
[くつくつ。なぜかおさまらぬ笑い声。
翡翠の頭と肩並べ出店をふらりふらりと。
店は少ないものの、酒を並べる店だけは明るく灯がともる]
[喚くメイに去る司棋]
…やれ、一体何なのだ。
[騒がしきにゆるり息吐き]
[左を揺らせばちゃぽり瓢箪が鳴る。
碧と翠、異なる双眸に瞬くか]
やれ、何ぞ面倒が有ったようだな。
[呟きひとつ。問いはせぬ]
愉しきを求めておるなら良きことか。
我には次の術は無い。
愉しき手立てならば他に聞くがよかろう。
[番傘飾る緋蜘蛛巣糸。
やれと溜息零しつつ]
[開耶に問うといれば、此方を仰ぐ赤鬼]
かっかっか。真に真。そうさのう。
あれも真なれど、過ぎ行く泡沫の夢じゃ。
祭りも鬼ごっこも派手に花散らすが良いさ。
お前さんは色も赤も派手を好みそうだのう?
[しゃなり歩む常盤の女。
差し出される杯にそこらの瓢箪ひとつ掴みとぷりと酒満たす]
宵も酔いも何時まであるか。
過ぎれば全て泡沫か。今は刹那に身を任せ飲み謳おうか。
[番傘影に隻眼灯るは碧の義眼。目を細め眺める]
子供喰らうアタシァ女郎蜘蛛かえ?
[赤鬼に小首傾げ] [揺れるは常葉か] [妖しの蛍火か]
鬼さん此方、手の鳴る方へってかえ?
アタシが鬼なら欲しい獲物は横からでも掻っ攫うさァ。
遠慮なんてェ詰まらないもンはとうに忘れちまったからネェ。
[琥珀の君] [呟くだけで] [問いは無く]
面白い事があったのさァ。
おや、開那の兄さんは次ぎの術無したァつれないネェ。
司棋の兄さん居らぬ今ならまた幻でも見せてお呉れかえ?
主、其処の瓢箪をふたぁつ。
ついでに…是に利くものは置いているか?
[片手の拳を手首で丸めくいくい、と猫の真似]
『珍しい物をお求めで。少量なら…ございますが』
なら其れを貰おう。代はこれでいいな。
[ちゃらんと銭を投げ置いて。瓢箪二つと紙に包まれた粉末を手に]
メイ。面白い物を手に入れたぞ。
其方にとっては酒より林檎飴より面白いやも知れぬ。
さて、宴も始まっておろう。
雑鬼に絡まれる前にさっさと去ぬとするか?
[紙包みは懐へ、瓢箪提げた片手。空いた手で翡翠頭の少女の手を引き引き、社への道を戻り始め―――]
[袖が顔覆う衣擦れの音。視線は白へと戻して、もれる声]
白ならなんと例える。
[笑む顔に、満足げな笑みを返し]
かっかっか、己ら物の怪裁量こそが寿命となるか。
ああ、有塵様。
修羅場はとうに終わりましたよ。
わたくし達の舞いは、如何でしたか?
御酒の肴になりましたか?
[途中から殺戮か乱交か区別がつかなくなった自身の行動など気にも留めず、有塵ににこりと微笑んだ。]
[薄い笑みに細まる琥珀]
やれ、何ぞ面倒ばかりになりそうだ。
祭りが妖の血ばかりでは主も喜ぶまい。
さて、真に狩る者なれば主に捧げねばならぬか。
なれば礫など生温かろう。
[すぃと藍から瞳背けるば、枝のひとつで影動く]
…やれ、起きたか薄墨。
刹那の内なれば暢気なことよ。
[有塵の声] [顔あげ] [番傘つぃと傾け] [覗けば舞う花弁]
[潤むは隻眼の碧] [揺れるは妖しの翠] [一つ瞬き] [ニィと笑み]
有塵の兄さんもお目覚めかえ?
[満ちる盃] [つと掲げて] [細まる藍覗き] [ニィと笑み]
[盃乾かし] [ちろり] [薔薇色の唇] [紅い舌が舐め] [瓢箪奪う]
酔いの佳い宵、折角だから返杯しておこうかィ。
刹那に遊び今を楽しまないとネェ。
面白きか。
…やれ、確か其方の面白きは我の面倒だったか。
[組む両の腕、左の下でちゃぽり鳴る]
幻なぞ見せねども、薄墨が斯様に咲いておろう。
偽りに酔うならば真に酔うが良い。
[常盤に返し右の手返す。
ひらり白を掬えば潰すかの如く握り込み]
[有塵が起きるのに上を見上げて]
そんなところにおったのか。
[何と例える、その声に]
――妾の例えも命となろう。
されど、全く同じではないようじゃ。
[寂しげな紅][それも刹那で]
[次の瞬間には][やんわり笑みを]
そうじゃな。
妾どもの裁量如何が生死を分かつことになろう。
[哄笑するは藍の鬼、くくっと唇歪めては]
泡沫の夢かあ。
つつけば割れる夢だが刹那も今だけ真実さ。
そうさあ、相棒。
赤は血肉と炎の色だ。
俺ぁ生まれも緋だからなあ。
[遠慮なんて忘れたと、常盤が片目で笑って見せる]
ははぁ、そうかいそうかい。
蜘蛛にそう謂われちゃぁ喰うが性の鬼が廃るなあ。
そんなら喰らってくれようかい。
[常盤の髪をひと房とれば、
その髪引いて口付けて]
[泉の端、返り血浴びた浴衣を洗おうと。
代えの浴衣なぞ自分で作り出すこと造作もなく。
ぶつぶつと拗ねながら]
何だよ、あんな猫に。
あぁ面白くない。
猫となんか同席できるものか。
香が香れば酔うし笛が鳴れば頭痛まで。
それに…
[ふと、脱いだ浴衣を洗おうと、ぱしゃりと水に入れば襟元の墨に気がつき」
…?何、これ…?
[青司につけられた墨の痕とは露知らず
洗い終わった浴衣を岩に蛍火へ戻し、暫し泳いで戯れている]
寝ても覚めても酒だなあ、有塵。
薄墨櫻もきれぇな紅になっちまうんじゃないのかい?
[青鬼瓢箪投げ渡す
其の様子を見遣って笑う]
遥月のありゃぁ子鬼どもも驚いたろうよ。
ははあ、アレが紅毒かい、とな。
>>265
ええい遥月め…わらわはもう落ち着いておるというのに。青司とて酒の持ち帰りを待ちわびる姿じゃ。
[遥月の、だいたい真に強き者は子鬼ごときに吠えますまいの言葉には言い返せなかったが、にこり笑まれ、鼻筋を撫でられれば聞く耳も持ち]
ふん…じゃが強き者にも緒に限界はあるからのう。
堪忍袋のそれが切れぬうちは試さぬでもないが。
>>247
おお?主と言うたか。
わらわは自由も気高さも持たぬ犬と違い、へり下り尻尾を振り、その声のままに従ったりは――
[折角の聞く耳も喰児の言葉を聞けばそのように。
だが後頭部を掴まれたままに、メイの声は社から遠ざかっていったのだった]
>>254
…ぬぅ、これこれ、何という運び方じゃ万次郎。
さきほど姫のごとく扱うそなたの態度が好ましいと言うたばかりじゃのに、それでは――…おお。
思えば宴にて酒はいつも男どもと、勧められるるひめらのものじゃったなぁ。
わらわも口にできる時が来たようじゃな。
うむうむ、礼の件も含めこれでご破算ご破算。
[頭の掴みように膨らます頬も緩め、機嫌は直る]
[細まる琥珀に、口元上げる]
愉快な事があって、少々忘れておったわ。
なぁに、主様を迎えるゆえ少々色を添えても良かろうて。
起きて咎めるならば大人しくこの首差し出そうぞ。
さてはて、己の姿、開耶はなんと見るか。
云うは易し、信ずるは己が目、
主様へ果たす通りはあれど、食らわぬ通りはどこにも在らず。
[さらりと云い、瓢箪手元から失せると
袂から赤の杯、常葉に差し出す]
頂こうか。今を愉しむ刹那の遊び、
お前さんにしかと教わったしのう。
>>269
安心するが良い万次郎。
見極めるまでもなく、あの犬めは引っ掻いて良い犬じゃ。
わらわの仕置きを受けるに当然の獣ならば、厄介に思うのも無理からぬこと。
しかしおぬしまでもがそうは思わずとも……っと、力の強いこと。
[大きな手で回れ右をさせられ、出店の並ぶ道に連れ出されれば]
この身は素早く脚は高く跳ぶを叶え、わが爪は鋭く何者をも切り裂こうとも、力ばかりはどうにもならんなぁ。
鋭さは刃で補い、力も持つおぬしが羨ましいぞ…ん?
>>274
面白い物?酒や林檎飴よりとな。
わらわがそこらの店の物を眺めるうちに…中々どうして、素早さもあるようじゃな万次郎。
そうじゃな戻ろう戻ろう。
雑魚が来ようがわらわが守ってやるが、絡まれる煩わしさはよう知っておるとも。
[素直に手に手を重ね、歩幅に合わせて小走りで道を行き――]
[帰り道、堪えられなくなったか瓢箪の片方、栓を空け口元へ]
[ぐびり、ぐびり]
ふむ。旨いな…櫻を眺めながらならば、なお旨かろうな。
[機嫌は上々。肩の高さの翡翠の頭見遣り満足そうに頷いて]
開那の兄さんの面倒じゃないアタシの面白いはあるかえ?
[ひらり] [はらり] [紅い番傘] [蜘蛛の巣に降る花弁]
[返す右の手] [花弁掬い] [握り込むに] [互い違いの双眸眇め]
さて、有塵の兄さんの桜は何時まで咲いてるのかネェ。
[赤鬼の大きな手伸び] [捉まれ解れる常盤] [身を寄せて]
[番傘傾け] [ニィと笑み] [ちろり] [紅い舌] [寄せられた唇舐め]
あンまり勝手にお触りじゃないヨゥ。
眼の次ぎはこン唇まで腐れちまうじゃないかィ。
大体アタシァ喰らうが専門と謂った筈さァ。
[隻眼の碧] [妖しの翠] [弧を描き] [白の手伸べて] [頬なぞり]
[童の様に素直に瓢を受け取って、]
[水飲むようにごくりごくりと無心に干す。]
[口の端より零れ落ちるもそのままに、]
[はふ、と一息。]
ふふふ、調達を請け負っておきながら…
[ぐびりと喉を鳴らし早くも瓢箪に口をつける万次郎を、悪戯な子どもを咎める目で見]
案外と我慢の足りぬところもあるのじゃな。
それでは、わらわのこととて言えぬではないか。
[それでもくすくす笑って、握った大きな手を揺らし]
まぁ良い。
そのように旨そうに飲む顔を見れば、叱ってやる気も失せた。
皆にも報告などせぬから安心するが良いわ。
[喰児の目をちらりと見やり]
ふふふ……お恥ずかしい。
わたくしの毒紅、あの子鬼には過ぎた刺激のようで……。味すら残さず消え失せましたねぇ……。
[カラカラと笑い、開耶を見やる。]
噂に聞きし、開耶様の舞いのごとき優雅さを、わたくしも持ちとう御座います。
其方の素早さには敵わぬだろうよ、命。
我は、力と得物でねじ伏せるのみ。
正面きっての勝負以外は好まん。
[話の合間にも、ぐびり]
素早さか?其方が他をふらふらしておるからだ。
我の目当ての店は決まっておった故。
……面白い物は宴で披露するが、一興。楽しみにすると良い。
[僅か歩調をゆるめ、翡翠の歩調に合わせながら
片手では酒を煽り。社に到着する頃には半分に減っていたとか]
雑鬼共もここ迄は追って来られまい。
さて、宴の方はどうなっておるのか…?
[興味深そうに人ならぬ者達の輪に近づいて]
[続く酒宴][仰いだ月と][白い花]
[ゆるりと首を振れば][小さな瓢箪取り出して]
今宵も水を飲もうかの――。
[小さな瓢箪][一人用][杯もなくこくりと飲んで]
どうせ酒には酔えぬ身じゃ。
[吼えた犬は泉の中に][元気な猫はおつかいに]
[細めた目には過日と変わらぬ愉しい主演――]
有塵は良い飲みっぷりじゃのぅ。
――愉しそうとは言えまいが。
[杯手に、白を見る]
同じで在るものなぞ何処にもあらぬか。
そうさのう、寂しかれど愉しくもあるものよ。
[流し見る緋色の瞳、揺れるのか。
それも一時、静かに瞬く間に白は笑みを浮かべ]
その裁量ひとつにたゆたう生死。
人の儚さを我が身に憶えるか。
[すいと藍の目細めて、赤鬼唇歪むのを見る]
つつけば割れるからこそ現世。
割れぬは夜の夢ばかりよ。
また随分と鮮やかな色ばかりよのう、相棒。
赤鬼生まれ出緋色は血か炎か?
[藍の許にて上がる口端。
対し零るるは呆れた息か]
忘るるか。やれ暢気なことぞ。
これ程までに血に満ちて何が少々か。
咎められても手助けはせぬぞ。
さて、妖か人かは我には判らぬ。
聞くに信じるは無理だろう。
見たところで皆人の姿では判りもせぬ。
喰らう喰らうか。
人の味も妖の味も疾うに忘れたわ。
我慢の利かぬは、今宵の酒だけよ。
そも、我が呑みたいがために調達を請け負ったのだぞ。
代金も我が払った。好きにして構わぬのだ。
[くつくつ。愉しげに笑いながら応え]
しかしまあ、そうさな。告げ口せんでくれるとありがたい。
[ぐび、ぐびり]
[開耶の言葉に、興味深そうに耳を傾けた。]
嗚呼……開耶様は、随分と達観していらっしゃるのですね……。
人の味も妖しの味も忘れたとなると、貴方様は何を食ろうて生きておられますか?まさか、霞ではありますまい。
[ぱしゃり、水からあがり、濡れた髪はつむりを振って水を飛ばすに留めて]
戻る…か。
[浴衣を着付ける中、ふと思い出し、懐から取り出すのは白水から頂戴した水の球]
…綺麗だよね…、これ。何に使えばいいのかな…。
[ぽつり、夜斗の背にのり、歩は緩やかに社へと]
腐っちまうかい、そいつぁすまねぇなあ。
唇がなきゃあ碧の声も聞けねぇなぁ。
[さして悪びれる風でなく
己が唇を舌で舐め]
ははぁ、喰って喰われてってぇことかい。
俺も喰う方さあ。
なあに、喰っちまうのは惜しいくらいさ。
[金の眼細めて緋色を揺らし]
ははは、その呑み方は水みてぇだなあ。
有塵よ。見てて気持ちいいぜ。
開耶様とは別に仲たがいをしている訳では…。
あの香が強いだけです[むくれ顔]
あの猫が挑発するのではありませんか!
誰も止めねば夜斗が既に喉食いちぎっておりますよ
[苛々と]
[青鬼の赤の杯][とぷとぷとぷり] [命の水が満たし]
おや、そうかィ。
少しは愉しめそうかえ?
[赤鬼] [悪びれず] [薔薇色の唇] [僅か尖り]
唇が無くとも声は出るンだろうさァ。
喰って喰われる筈が喰うのが惜しけりゃ喰児は如何するンかえ?
さて、それは聞かねばわかるまい。
[右の手開けば歪み花。
傾けるばゆらり歪に舞い落つる]
それは薄墨に聞くが良かろう。
我に他の桜なぞわからぬわ。
[常盤が赤に吸われるを、気の無い琥珀は見送りて]
[酒を飲む薄墨の姿は童の如く。
漸く己を捉える薄墨に息吐き]
…やれ、増えてすまぬな薄墨。
桜は其方がおる、我は無粋か。
やれ、去ぬべきか。
[溜息琥珀に笑みながら]
蜜を受けるにはそれなりの器が必要ってぇわけかい?
怖いねえ、遥月は。
[くくくと笑って櫻を掬う
花びら藍にひらひらかけて]
両方さぁ、相棒。
俺は炎と血とで出来てるのさ。
お前が纏う藍とは真逆の色だぁな。
さあて、呑むといった万次郎は何処までお散歩かねえ。
猫の気まぐれにつき合わされちゃいねえかなあ。
[ついと座る影に目を向け]
よう、嬢ちゃん。
片付けはすんだかい?
わらわなら、翻弄のうちに仕留めるといった形になろうからなぁ。
得物とあわせてと言いながらも、その力でねじ伏せることに憧れもするのじゃ。
ふむ、店主も機嫌良く見送ってくれた。
万次郎は店を使うことには手慣れておるのじゃな。
興か。宴の興には事欠くことも無く良いことじゃ。
舞、唄…癪ながら犬めの蛍光、さてさて今宵は?
代金を渡したものが自由にして良い、か。
ううむ酒のみならず、店主を扱うこつについても得たようじゃ。共をして良かったわ。
[楽しげにこくり頷いて、共にこれから酒のもたらされるはずの宴の輪に戻っていく]
[ぺたりぺた。下駄は未だ社の縁下近くに転がっているらしく裸足。
賑わいが耳に戻れば、翡翠の少女の手を離すか]
それ、調達して来たぞ。呑め呑め。
我も呑む。醜態を晒さぬ程度にな。
[片手の封を切っていない瓢箪を酒宴の輪の中心へ持ち寄り
とす
と置いた。輪に加わり、手にしていた瓢箪を呷りながら]
メイよ、先の"面白いもの"でもためしてみるか。
それとも、酒が先か。どちらにする?
[どちらにしても己にしてみれば愉しいのだろう]
香が強いなァ謂っても仕方ないしネェ。
ほゥら、そんなに拗ねないでお呉れヨゥ。
そンなら次に夜斗の腹が減ったら猫を喰わせりゃ好いさァ。
アタシァ止めやしないヨゥ。
[地より毀れるは呆れ、気にする様子も無い藍]
かっかっか、天とは気儘なものじゃろうて。
元より主様にお咎め尋ねに来た次第。
三つも四つも変わらぬわ。
己が道は己が裁量、その時はその時よ。
左様、見分ける術、狐様すら無くば
食うか食われるか、食ろうて見ても判りはせぬ。
味も忘れたとは地は霞でも食らうて生きてきたか?
[常葉より満たされる杯、くいと煽る]
少しばかりか、己は愉快でたまらぬわ。
そうかィ、じゃあそう謂う事にしとこうかネェ。
司棋の兄さんが気に入らぬなら狩ってしまうが好いヨゥ。
猫が旨いかは判らぬが其ンで司棋の兄さんの機嫌が直るなら易いもンさァ。
アッチの意味で喰ってみるかぁ。
[などと嘯き常盤を見れば]
結局喰うってことかもなあ。
いや、喰う専2人なら共倒れになっちまいそうだが。
相棒が骨を拾ってくれるらしいからなぁ。
[藍色の男肩越しに]
消えるときぁ俺も骨ぐらい拾ってやるかぁ。
お、酒の到着かい。
そうじゃな……同じである方が不可思議となるかのぅ。
[藍の言葉に小首を傾げ]
有為転変の世の中よ――
変わらぬものなぞどこにもありはせぬように。
[瞳は僅かに揺れようと]
[浮かぶ表情(いろ)は笑みばかり]
妾は妖し――ヒトを狩る立場ゆえに其の裁量を量る者。
我が身に憶ふるはそれこそ罪じゃ。
[難儀なことだと苦笑をもらす]
いやですねぇ、喰児様。……好い器だなんて、そんな。
[カラカラ笑い、手をぱたりと縦に振る。]
相手がわたくしを愛する程、食らった時の味の佳さは増すのですよ。
嗚呼、人も妖しも、初対面の相手にいきなり恋ができましょうか?まして相手は無粋な子鬼。味を出すのはどだい無理……。そうではございませんか?
[少女の様子に薄く笑み]
――水でよければここに有る。
妾が口をつけたあとで良ければな。
[沸き出でる泉の清浄な水――酒とは違う命の水か]
汝れには名乗っておらなんだか。
妾は白水じゃ。汝れは何と申す?
[己が名の混じる遥月の声にゆるり琥珀向け]
永久の間は天より落つる雨ひとつ。
更にいうなれば刹那の酒か。
血肉など無くとも生きられよう。
[つぃと瞳は赤の娘。
いつぞや泉の傍に見た姿か]
嗚呼。一つは既に空きつつあるが、そちらは未だだ。
手さえつけておらぬ。
[赤鬼へ、瓢箪片手に両手を肩辺り迄持ち上げて見せ]
是が無くなれば判らぬが、
無くならぬ限りそちらには手を出さん。好きにしろ。
[到着、の言葉に軽く頷いた]
おやそれが面白いものなのか?
[注意深く観察する目を瓢箪に向けるが、別段面白いことは見つけられなかったようだ]
ううん、酒宴の輪の中へ置いたそれと同じものとばかりに思っていた。
気をつけてみても、やはりそう見える。
おお…そうじゃなぁ。
[尋ねられれば、光を反射する瞳をきらりとさせて]
わらわはな、楽しみは最後にとっておく者でも、一番にその楽しみに飛びつく者でもないのじゃ。
わらわは全ての楽しみを一挙に楽しむ者。
さあさ酒でも、その面白いものでも一度に全ての面白きを以て、わらわを楽しませるが良いぞ万次郎。
[瓢箪抜ける白の手] [指先は薔薇色を拭い] [琥珀を見遣り] [ニィと笑む]
見せもンじゃ無いヨゥ。
おや、蘇芳の姐さんもお呑みかえ?
[瓢箪奪った青鬼] [木目の盃差出し]
そりゃ何よりさァ。
アタシァ未だ足りないヨゥ。
[戻る気配] [猫と万次郎]
買出しお疲れさン、お帰りィ。
[赤鬼] [結局喰うと嘯く] [ニィと笑み]
恋われりゃ喰われるなァ好いけど、別の意味でアタシが喰い返すヨゥ。
満開の桜の木の下で心中みたいな共倒れは御免さァ。
[夜斗の背でゆらりとゆれていたけども
酷い眠気に襲われて。
夜斗は熟睡した己の主人を背に宴会まで戻れるか。
はたまたそこらの木の下で*眠るだろうか*]
[藍の髪に乗る花びら。
上目で見遣り、赤へあどけない顔浮かべる]
二人揃って敵わぬものが判ってしまうなぁ?
藍と紅はさてはて、混ざれば紫になるか。
茄子では泣く子も笑うてしまうから、真逆のままが丁度良い。
かっかっか、骨拾い合う藍と紅。それもまた良かろうなあ。
お前さんの骨は常葉の女の傍に在れば良いか。
[赤鬼へ悪戯に問うて首傾げ、
見れば白も首傾げる様に小さく笑う]
左様。姿さえ、また一時の括り。
戻ればおそらく触れられぬな。
[ひらり、藍からひとひら落ちる花びら
瓢箪下げる手の平落ちて、息吹けば白の眼前舞う]
罪か罰か、いつまでも量るだけでは居られぬ鬼ごっこよ。
[メイの相変わらずの物言いに口の端緩め]
この姿は、そうな。ヒトと関わるには良いとも悪いとも云える。
先のようにヒトの店を訪れるにはこの姿が良し。
しかして、この姿のままでは満足に腹もふくれぬしな…。
結界が張られてから、慣れたのだろうよ。
メイ。
其方も、鬼ごっこが上手く行けば店主の扱いくらい慣れようて。
[あぐらをかいて。楽な姿勢を取り
ぐびり、ぐび、と喉を鳴らし上手そうに瓢箪から酒をくらい]
しかして、刹那の御酒のお味は如何程でしょう?
其の他のものは何も欲しないとでも申されますか?まるで密教の僧の様……
[紬を口許にあて、紅の視線で開耶をじぃと見つめる。]
嗚呼、其の言葉はたいがいの者が言えば嘘かと思ってしまうものですが、貴方様が言うと真実に聞こえてしまいますねぇ。……嗚呼、不思議なこと。
申し訳なく…。
何か、気が抜けてしまいまして…。
お休みなさい、また明日。
ガラスの眼、御気に召したらまた明日にでも。
[ふわりとガラスの瞳に口付けを送り、そのまま*うとうとと*]
[くつくつ。肩が揺れる]
其方は欲ばりよのう。どうなっても、我は知らぬぞ?
先に、酒宴を楽しんでおいた方が良いとだけ忠告する。
盃は有るか?無ければ是を使え。
[懐から取り出す黒。其処へ、先の店で手に入れた紙包み
またたびの粉末をさらり。少し宙に舞ったろうか。
呑みさしの瓢箪から、とぷりと酒を注ぐと]
ほれ、其方の望みの物だ。
云っておくが…
どうなっても知らぬぞ?
[いたづらな笑み浮かべ、黒の盃をメイに差し出して]
[藍の笑い声に呆れさえ薄れ]
やれ、何ぞ面倒な話か。
面倒は好まぬ、訊きはすまい。
一人でどうにかするなら構わぬが、面倒に巻き込まれるは御免よ。
喰ろうてみても判らねば、いつ人を捧げらるかも判らぬか。
やれ、それでは狩る者を捧げたとて終わらぬのではないか。
[喰らう物は遥月に答えた。
繰り返すは面倒と口閉ざし]
…ほぅ、覚えておったか薄墨。
幾百年と戻らずにいたというに。
[声に混じるは感嘆とは異なり。
棘も隠さず冷々と]
はあん、成程ねえ。
いい味を出すのも難しいってことか。
愛する者を喰らう性かあ。
[意味深げににいと笑み
万次郎に頷いた]
おう、ありがとうよお。
まだまだ呑めそうだねぇ、ありがてぇ。
[鈴の鳴るよな娘の声に、杯口につけながら]
いいやあ、大丈夫さあ。
腹八分目が一番腹にもいいというしな。
気にすんなぁ。
司棋の兄さんがこの方が好けりゃまた明日も入れと呉れヨゥ。
[蛍火の眼] [寄せられる唇] [瞬き]
[眠る少年] [顔覗き] [そぅと髪梳く]
本当に童みたいじゃないかィ。
[コロコロ] [忍び笑う声] [優しく]
[眇める双眸] [翠と碧] [柔らかな色湛え]
[小鬼に上げて見せた瓢箪
常葉の杯に酒満たし]
未だ足りぬか。己の気は短いゆえ、はようするのだな。
いつぞ消えると判らぬ刹那よ。
[万次とメイの様子にからり笑い悪戯な色を浮かべる]
かっかっか。
子猫を酔わせてどうするつもりじゃ。
己の相棒のように色々な意味で喰ろうてしまうか?
[ゆぅらりゆらり墨染めの衣揺らし]
[目蓋重げに瞬いて]
憶えていた訳ではない。物の怪には心動かぬおれだもの。
木霊も花精もおれを厭うておるしな。
けれど、聞かぬ耳、見ずの目でも咲かずの桜の話は聞こえて来ようさ。
[僅かに目を伏せ][口元に袖]
元に戻れば触れられぬ、か。
妾はどうかの――何れにせよ、汝れが近づくには不向きか。
[霧の一件を思い出せばバツが悪そうに]
妾は所詮水鏡――自分の姿などありはせん。
100人居れば、100人ともが違う姿に見えよう。
汝れからは妾はどう映るじゃろうな。
[くすり][笑んで]
[眼前を舞う白の花][手を伸ばしかけて――引っ込める]
ほんに難儀なお遊戯じゃ。
ふふ。つれない御方ですねぇ……
[くすりと笑い、開耶から視線を離す。]
嗚呼、喰児様。お止め下さいな。
密教の高僧様の御前で、わたくしが情慾の塊であるという証をさらけ出すのは。羞しゅう御座います。
[遥月は、くすりと笑った。]
喰い返すか、そりゃぁいい。
そうこなくっちゃあな。
さあ、櫻は亡骸の上で狂い咲くんだろ?
[最後の花びらひらりひら、
藍の鬼が無邪気な笑顔]
違いねぇな。
こう違っちまうんなら引き立てあうように背中合わせがいいんだろうさあ。
茄子じゃあただの笑い話だなあ。
傍にねえ。
腹んなかでもいいなあ。
[冗談めかしてまた杯に
とくりと注いで花見酒]
おう、琥珀のと有塵も久方ぶりの再開かぁ。
花の下でめでたい事だ。
酔わせて喰らうつもりなぞ毛頭ない。
[翡翠頭をちらり。青鬼を見据え]
こやつが呑んでみたいと申すから盃を渡したのみ。
…まあ、多少の悪戯くらい酒の席だ、赦されようぞ?
[くつくつ…けらけら。上機嫌は変わらない]
[碧と翠、弧に歪み]
やれ…なれば其方は見ぬとしよう。
[懐から薄紅扇取り出して。
開かぬままに目元覆う]
[紅の視線に琥珀向け]
酒も飽いた。
刹那の間にどれ程飲まさるることか。
要らぬというても聞きもせぬ。
[酒の満ちたる瓢箪は薄墨に。
やがて空になろうが目もくれず]
偽り言うて何に成る。
喰らいたいならば隠しはせぬわ。
うん、ただいま戻ったよ常磐のひめ。
ふふ。じゃからそこの幼き妖よ、飲物ならば酒があるぞ。おぬしにはまだ早いか、白水のもたらす水の方が好みか?
[もうずっと長く生きてきたはずの蘇芳に、そんな声をかけて笑いながら、]
あれまあ。
[既に目許を朱に染め良い心地の有塵に目も丸く。]
もたらされた酒を口にする前から、もうできあがっている者までいたか。我慢が足りぬと見ゆるは万次郎のみに非ずとよ。
有塵とて、落ち着きと分別を持つオスと見えたことは同じだったのにな。
[妖の集いの中に、なりは大きくともまだまだ子どものような者の多いことと、大人ぶったクスリ笑い。]
ふむ…助言はありがたいが、そのようにぐびりぐびりとお主ばかりくらっていては、今に買ってきたばかりの酒も無くなって…
[あぐらをかいて道中から続けて旨そうに喉を鳴らし続ける万次郎に、主に自分の口が付ける分がなくなる事を危惧してそんな事を言っていた。
しかし懐から取り出された杯に粉と酒とを入れられて渡されれば、嬉しそうに受け取って]
ふふふ、酒にて羽目を外そうと宴の席では多少のことには目を瞑られるものと、連日の宴にて既に学んでおる。そう脅すものでもない。
[口へ]
[開耶と有塵の様子を横目で見る。]
……おや。
有塵様の探していた契り人は、開耶様でございましたか。
ふぅむ。……まあ、納得と言いますか、分かりやすいと言いますか。
[誰に言うでも無く、ぽつりと感想を述べた。]
[あちらこちらでなされるやりとり。聞いているだけでなんとなしに楽しいのはなぜだろう。]
……誰かと誰かが話してるのを、こんなに楽しく聞くのは何百年ぶりだろうな。
[満たされる盃] [すぃと乾かし] [瓢箪奪い] [赤の盃満たす]
奇遇だネェ、アタシも気は短いヨゥ。
誰ぞ茄子の兄さん喰ろうたらアタシァそいつを喰らうとするかネェ。
[くるうり] [番傘回し] [ぽたあり] [降る紅い雨]
[混じり] [ひら] [ひら] [傘に積もった] [薄紅の花弁]
嗚呼、狂い咲くヨゥ。
咲く間も無く散るなんざァ詰まらないからネェ。
[赤鬼] [青鬼] [茄子は笑い話と謂う]
[骨は拾うか] [はたまた腹の中に納まるか]
其ンなら骨までしゃぶろうかネェ。
喰児は旨そうだヨゥ。
[周囲の会話を聞き流しながら
ぐびぐびり。瓢箪もだいぶ軽くなって]
何を云うか。告げ口はせぬと先程口にしたばかりでそのようなこと。
[短い嘆息を翡翠頭の少女へ向けた]
酒なら心配せずとも未だ有る。
無くなれば赤鬼にでも強請ればよいのだ…。
ふう。今宵は良いな。良い具合にまわる。
[独り言ちた]
[薄墨の言、寝惚け眼に眼細め]
…やれ、人の里に攫われた我のことまで聞き及ぶか。
斯様な噂好きは誰ぞ、恨めしい。
[赤隻眼と遥月。
聞こえた言葉にちらと見て]
これがめでたく見えるか。
やれ、めでたきは其方らの頭であろう。
[視線戻せば薄墨は座り込む]
…やれ、起きて酒を喰らいてまた寝るか。
それ程飲んで熱くないわけがなかろうて。
刹那の春を待つは厭か。開耶。
おれは刹那の時を千歳刻んで、待って待って待って待って、待ち草臥れて、それでも待ち望んで、やっと分かった。
花は、
誰の為にと、
咲くのでは、
ないと……
[言葉紡ぐうちに目蓋の重みに耐えかねて眸閉じ、]
[夢幻の境へと*また戻っていく。*]
成る程雨喰うか。
水巡りて花咲かす、我ながら地とはよく云ったものよ。
[月への返答聞いて、開耶へと愉しげに藍の目弧を描き]
己も元よりその心算はないわ。
なぁに、気配みつけた狐様よ。気配が消えればふらりと戻ってくるやもしれぬ。終わりは狐が知るばかり。
[目を伏せる白に、弧は緩まり]
不向きか…そのようじゃの。いっそ今のうちに触れておくか。
[からからからり、何処まで本気か冗談か]
さてはて、ではその姿は誰が映した水鏡かのう。
どう映るかは映して見なければ判らぬことよ。
そのままの姿で笑うていれば良いがのう。
[はらひらり、触れる事無く落ちる花びら]
[頽れる櫻闇に]
有塵、随分と早くから呑んでいたようだな?
これで、櫻もますます薄紅に染まろうて。
それとも何か。贄が必要か?
[笑い声は止まない。からかい混じりに有塵に声を掛けた]
[開耶の言葉に、ふと表情を緩めた。]
御酒は、人間を慾の縁へと堕とすもの。快も不快も呑まれる方次第。ましてや、酔い痴れ理性を失うは恥……。
開耶様が浴びる程呑まれて飽きたのか、はたまた何か理由でもあるかは……あえて問いますまい。
おや。潰れてしもうたか?有塵……?
[透かし見るようにして様子をうかがい]
是で今宵は我も醜態を晒せなくなったなぁ。
よいぞ、よいぞ。
これは青司、異なことを。
ご存じないか、猫とは肉を喰らうし、わらわはもはや子猫でもないわ。
酔えば喰ろうてしまうのは、こちらの方かもしれんぞ…――さて、
[口へ運んだ黒杯の中身を、万次郎のぐびり飲みに倣ってか一息で呷る]
――…ふぅ。うん、これは…
[飲んだ先から体も温まるようで、なるほど面白い飲み物よと言おうとしていた瞳が、とろりと霞む]
……うん?
万次郎よ、悪戯などと聞こえるからピリリと舌を痛めるものでも入れたかと覚悟しておれば…これはこれは…酒とはこのように素晴らしいものか…
[空の杯を持ち上げるまでの間ももどかしく、有塵へ声をかける万次郎へ、押し付けるように両手で抱え上げて差し出す]
さあさ、次のもう一杯…くれるな?
くれるだろう…?
[琥珀の君] [扇取り出し] [目を逸らす]
冗談じゃないかィ、開那の兄さんは面白いネェ。
そンなつれない事ァ謂わずにこっち向いと呉れヨゥ。
[仔猫は元気] [万次郎の悪戯] [ちらと横目で眺め]
嗚呼、酒の席さァ。
命の姐さんもたァんと楽しんど呉れヨゥ。
蘇芳の姐さんも楽しいなら何よりさァ。
なンだい、大勢は久方ぶりかえ?
おや、有塵の兄さんはお休みかィ。
また昼間っから呑んでたのかネェ。
[蘇芳、小さく名を繰り返す]
妾も、このように大勢の者と毎夜会うは――久方ぶりじゃ。
確かに、確かに。居るだけで酔えそうじゃ。
常葉には酔うなら花じゃと答えたが――
[聴こえた有塵の声][目を細め][また眠るを見守れば]
自ら答えを見つけたならば、結構結構――。
[ゆえに酒を飲んでいたのか][わからねど。]
[赤の降らす桜止み]
背中合わせる。お前さん相手ならそれもよかろうて。
かっかっか、左様左様。茄子では鬼の名泣くわ。
腹の中が良いか。良い良い、覚えておこう。
[頷き、此方を見据える万次へと]
かっかっか。お前さんも悪戯するとは酒の席は愉快なものよ。
尤も、潰れたらきちんと介抱なりするのだぞ。
[手の中瓢箪奪われて、口の端咥えた杯手に戻す。
満るは酒。時は未だ満ちぬまま]
ほんに奇遇よのう。
己もお前さん食らう奴あればそうするとするかのう。
水を差されるのは気に喰わぬ。
[すいと細まる藍の色濃く]
[開耶の指摘に、ぽかんとした表情を浮かべた。]
……はぁ。
ふふっ……ふふふふ……確かに、わたくしの頭の中は情慾まみれ。何せそれを食らう性でございますから。ふふふふふ……。言い得て妙とはこのことかしら。
[笑いは止まらず、万次郎の呟きに横槍を入れる。]
万次郎様、醜態とは何のお話で?ふふっ……
なんだい、嬢ちゃん、
寂しいところから来たのかい?
なら存分に聞いていくといいさ。
呑んでも話してもいい。
[片膝立てて蘇芳に笑い
次いで真理の方を向く]
咲いて散るのが華ってね。
俺ぁ旨そうかい?
光栄だねえ、炎で喉を焼かれないよう気をつけなぁ。
[常の低い笑み零し]
琥珀の兄ちゃんはつれないねぇ。
そういうところがいいってぇヤツも居るんだろうさ。
[つと見る有塵斃れる姿]
おいおい、有塵。
はあん、どうしたぃ。
櫻は誰の為でなく自分の為に咲くのかい?
[薄墨に向かい手を伸ばす。
あやすように見えたかどうか。]
……呑みすぎかぁ。
本当、珍しいこともあるもんだ。
お。嗚呼…。
[翡翠の少女。した足らずにも聞こえる声音は気の所為か]
"面白いもの"と断ったではないか?
面白かろう?
と。其方がどちらも愉しみたいと申すからだ。
先の"面白いもの"も混ぜてみた故、味が変わったのだろうよ。
それ、もう一杯ゆくか。
[黒杯を受け取り]
そう急くでない。酒とは愉しむものだ。
[紙片からまた少し粉末を落とし。こぽこぽと酒と混ぜ合わせ]
ほれ、お望みのものよ。
もう少し味わって呑んでもらうが我の本望なのだがなぁ。
…今度は味わうのだぞ?
[メイへ、酒を満たした盃を返し]
あらあら、蘇芳様。お眠りで……お風邪を召したら大変ですよ?
[万次郎がメイに何かを呑ませ、メイは蕩けるように成った。それを見て、たまらず遥月は指摘する。]
あらあら、万次郎様。
可愛い猫を酔わせて、どうするおつもりで?
[メイの言葉に戻る藍色、きょとりとして]
かっかっか。それは失礼申した。
その呑みっぷり子猫と云うには立派なものよ。
しかしまあ、随分と懐かれたことよのう万次。
喰われてしまわぬように酒の加減を考えぬとな。
[司棋が寝こけたまま戻ると、悪戯な色浮かべて月へ]
ほれ、その情の獲物がきたぞ?
司棋も起きねば紅さされようて、確りいたせ。
[しこたま頭を打ち付けて、戻って見ればやや人少な目の宴会会場で増えたものといえば目の前に、黒い見覚えのない人物が酔いつぶれ]
…まだ、呑んでたんですか皆さん…
[呆れ顔で。勿論素面]
[言も聞かずに薄墨の声。
片の瞳が眸の奥に隠るるに、ふると震える薄紅扇]
…其方に何がわかろうか
待ち望める其方に何がわかる
幾度刹那が訪れようと永久は変わることは無い
我が許に二度と空は戻りはせぬ…!
[ぱぁん]
[開かる扇は荒く音上げ、瞬きの間に幻香を散らす]
[幻香は総てを咲かす]
[林の葉も薄墨の白も]
[総てを紅色に染め替えて]
嗚呼 嗚呼
怨めしや……!
[やがて香消え幻消えて。
葉の緑も薄墨の白も戻るるが]
[*琥珀の姿は其処に無い*]
[濃い藍] [細まるのに] [互い違いの双眸] [弧を描く]
茄子の兄さんも想う通りにするが好いさァ。
ただアタシの目玉ァ喰わねば呪いは解けぬから気をつけなヨゥ。
[此方向く赤鬼] [ゆるり首捻り] [揺れる常葉]
[金色覗き] [ちろり] [薔薇色舐める] [紅い舌]
狂い咲き乱れて散るなァもう少し先かネェ。
嗚呼、旨そうさァ。
心配せずともアタシァ腹も喉も丈夫だヨゥ。
謂ったろゥ?
アタシァ優しいのが好いのさァ。
つれなくされると寂しいじゃないかィ。
ふむ?酒の席での余興よ。
潰れているものも居るが、面白いものが見られるやも知れぬぞ。
なにせ、猫であるからなあ……。
どうもなにも、無い。ただただ、面白かろうとな。
[目を弧にして、翡翠の少女を見守り]
ふふっ……
万次郎様もお人が悪い。
ご自分は猫様酔わせて、わたくしに司棋様を手ごめにせよと?
……悪い話ではありませんね。
[屈託の無い笑顔]
〜──!
[開耶の香を直にくらい、卒倒しそうなほどむせ返り]
げほっ、ちょ、何をいきなり…げほげほっ
[涙眼で、それでも消える開耶に首かしげ]
鬼ごっこも始まっておるしのぅ――
触れられるのも今のうち、とはよく言ったもの。
[くすり][くすくす] [返す笑みは悪戯で]
此れは――妾が映した水鏡なのであろう。
見覚えがある姿じゃ。何故この姿なのかはわからぬが。
[彷徨う視線][思案の瞳]
この姿か否かは汝れ次第じゃな。
妾の姿に嘘はつけぬゆえ――見たくないものを見る可能性もある。
[落ちた花びら視線を落とし]
[一拍の間] [拾いあげればそっと握り]
まあ、良い。詰まらぬ話をした。
[うっすら笑んで][まだまだ賑わう酒の宴に目を細め]
[握った花を袖から出した水の珠にすぅと入れれば]
[内なる流れにたゆたうゆるやかな彩りとなりて]
これも縁なのじゃろう。汝れにやろう。
濡れてはおらん。大丈夫じゃ。
[くすりと笑めば][珠を置き]
[カラリ][コロリ] [*歩き出す*]
おう、お犬様とご帰還かい?
縁も酣ってやつさぁ。
[司棋と夜斗を見て、
ひらりと大きな掌振って
続く琥珀の声色に]
なんだいなんだい?
琥珀の―――
[謂うが早いか紅幻香、全てを紅に染め上げて
くらくらするほど満開だ。
全てが消えた其の後に琥珀の姿は見当たらず]
ああ、逆鱗に触れたってかあ。
永く生きてるとどうもこうも。
ないねえ。
[落ちかかった緋色の髪が疵の面に帳を下ろす]
司棋の兄さんお帰りィ、夜斗もお疲れさんだネェ。
[声かけ] [琥珀の君] [声荒げるに] [顔を向け]
[咲き乱れる] [潤む碧] [揺れる蛍火] [ひらりひらり]
嗚呼、嗚呼。
[ひらり] [はらり] [番傘擦り抜ける薄紅] [辺り染め]
[長い睫毛震え] [やがて辺りは元通り] [ゆるり首振り] [揺れる常葉]
………ん?
つまり開耶様は、有塵様の契り人では無いと……
………!?
[開耶の扇、香る幻惑……心地良い紅に包まれ、遥月はくすりと笑った。]
嗚呼、美しい。美しい。
愉快で御座いますねぇ。
青鬼も、月の君も何を云い出すやら。
[肩すくめ、瓢箪最後の一口を味わって喉へ流し]
…このような小娘に喰われるつもりは無い。
ましてや、小娘酔わせて何をしようとも考えては居らぬよ。
[酒精の余裕か、つらつらと述べ]
月の君が司棋を手篭めにしようがしまいが、我は関知せぬしな。
青鬼はどうだか知らぬが……。
[青鬼見遣り、ふわと舞う香とともに現れた司棋をちらり]
呪い呪われ、
なんだい随分艶のある死合いの話じゃねぇか。
[頬杖ついて笑みのまま]
先かぁ、そいじゃあ待つとするかねえ。
其れも楽しみさ。
丈夫かい、そんなら安心だ。
心配しなくても俺ぁ優しいぜぇ?
佳い女にゃ特になあ。
[何やら話しが見えぬまま。残された幻香にまた当てられて。
少し頬に紅が差し]
うん…。青司様が手を出されるとしたら…白水様かとお見受けしておりましたが…違なんだ…?
[くすりと悪戯に笑いながら]
戻ってきたら来たでいきなり香が直撃で…
酔いそうですよ、まったく。
少し夢見が悪く、起きてしまいましたよ
[くつくつ笑い]
[意味ありげに、司棋に微笑んだ。]
手篭め……は、ふふっ。
大人になれば分かりますよ?それまで御待ち下さいな。或いは、わたくしが教えて差し上げましょうか?
……それより司棋様、顔色が悪いですよ?
面白いかなどと、問わぬでもわかろうに?
しかし面白いと言うべきか?と言うよりは…
……ああ、表現などどうでも良い。
[――潰れた様子の有塵その珍しさに瞬くでもなく、うとうとし始める長寿の少女に余裕の笑みで何かかけてるものを探してやるでもない。
夜斗が大抵の場合の腹立ちのもとを、その背で運んできたことにすら眉を寄せずに。
たんと楽しめと声をかけてくれた真理に頷くまでもなく、たんと欲しがるのは万次郎の手の中のもの。
返された杯を万次郎の手ごと掴み傾けさせて、するする口の中へ滑り込ませてゆく。
味わう暇があるのかないのか、あっという間に中身は空となる。
口の端から零れるのも構わず、つく息は熱い]
っは…。
…そうなのか、混ぜたゆえにこの味であると?
ああもちろん酒とは愉しむものであろうよ万次郎、じゃがよりわらわを愉しませたくば、その混ぜ物もっと増やしい。
味わえなどとうるさいことよ…さあもう一杯、もっとたくさん…
嗚呼、もう……
メイ様、少しはお控えなさいな。一気に酔っては、お身体に障りますよ?
万次郎様、もうそのお酒を与えるのはお止めなさいな。少しはお水を与えましょう。
[遥月から顔を覗き込まれても先程の香にて当てられて。
桜色の頬に蒼い瞳がまた深みを増し]
さぁ…?なんのことやら…?
[小さく、頬へ口付けを落としてくすりとわらい]
[味わう様子も無く喉へ流し込む翡翠の少女の呑みっぷりに
少々呆れつつも気圧され]
……しかたない。先の店では少量しか手に入らなかった故。
[黒杯を受け取ると、紙片から最後の粉をはらはらと。
今迄より量が多いやも。猫を潰すには充分のマタタビ。
其処へ、空いていない瓢箪から酒を縁迄注ぎ遣り]
ほうれ、メイ。是で最後よ。今度こそ味わって呑むのだぞ?
[念を押す。頷く迄盃を渡さないつもりか]
今回は運が無かったネェ。
開那の兄さんも司棋の兄さんにゃ気を使ってた筈だしさァ。
でもいい加減に毎度中てられ過ぎだネェ。
あンまり心配かけられたらアタシが開那の兄さんを喰らっちまうヨゥ?
[弧を描く常盤の言葉に片目顰めて、うすら笑う]
ああ、己は己の気の向くままに、だ。
成る程、まさに毒を食らわば皿までか、覚えておこうぞ。
[云い終えれば幻香包まれて、
咲く紅色、目を見張り。やがて消えうせるか。
白へと顔を見合わせると、悪戯な笑みが返る]
はじまっておるのなら、鬼が触れれば鬼と成るか。
さて、白が判らねば己も判りようがあるまいて。
嘘がつけぬのなら何が映るかその時よ。
……おやおや、香に酔われましたか司棋様。
[頬に触れた司棋の唇に、己の人差し指をあて、ゆっくりとなぞった。]
生憎わたくしは、情慾の塊。御誘いは拒みませぬよ?たとえどうなろうとも、酔った勢いだったと言い訳は為さらないで下さいね?ふふっ……
[くつくつ。遥月の忠告に笑い]
面白いではないか。これこそ酒宴よ。
昼は鬼ごっこなのだから、宵こそ楽しまねば。
さて。子猫もそろそろ潰れよう。
そうなれば、水でも汲んでくるか……。
後始末はつける故、見逃してくれ。なぁ、月の君。
わかっておりますよ。とても気を使っていただいて感謝しております。
酒同様、慣れねばと思い、明日からお傍にいさせてもらおうかと思っておりますが…。
しかし今回の香は以前のような悪酔いではなく。
寧ろ心地よいもので…。ご心配は入りませぬよ
[くすくすと、蒼い眼の瞳孔、猫のように]
やれやれ万次よ。己は放し飼いと云うておろうに。
けれどあの目で願われたらさてはてどうかの。
[司棋の言葉に半目を向けて]
ああ、ああ、わっぱも良く云うわ。
月に溶かされても介抱せぬぞ。
[杯咥え、ぺちり頭を叩いて。
カラコロ去る白、残る水珠]
縁か。仕方の無い縁ばかりが募っていくわ。
時に愉快はあれどもそれもまた刹那か。
[花びらゆれる水珠手にすれば
月灯りにかざし眺めて笑みひとつ。
カラコロ社の軒下*向かう*]
[遥月の問いかけには笑い声で返し]
さて、僕を殺めるおつもりでもあるような物言い、
あなたが狩人とやらでしょうか?
[冗談めかしてコロコロ笑い]
[消えた幻追う如く] [暫し隻眼の碧] [遠く見詰め]
[白の少女去るに] [ひらり白の手振り] [赤鬼にニィと笑み]
想い想われより気が利いてるだろゥ?
色恋沙汰より死合いのが刹那で楽しめるしさァ。
待ってる間に誰かに喰われちまったりしてネェ。
嗚呼、優しい喰児ァ好きだヨゥ。
アタシァ眼が腐れても唇が腐れても佳い女かえ?
[青鬼] [カラコロ] [去り往くに] [白の手ひらり]
毒たァ酷い謂われ様だネェ。
慣れるのかえ?
開那の兄さんを喰らおうと思ってたのは本当なんだけどネェ。
そンなら誰の元へ気紛れな蝶を送ろうかィ。
[蒼き目] [すぃと白の指] [目蓋を軽く押さえ]
悪戯っ子の眼だヨゥ。
[弾け散った幻香など、問題にもならなかった。
杯の中の酒――いや、それに混じる不思議な粉だけの虜となり、己を夢中にさせる。
遥月の窘めも、耳に届く前に消え去る泡にも等しく]
最後…。
[熱に浮かされたような瞳に万次郎とその手の中の杯を映して、まだ渡してくれない手を見やる]
ああ、ああ。
味わうとも。
味わうとも…じゃから早うおくれ。
早う…
[切羽詰ってこくこく頷く表情は真剣そのもの]
酒も慣れ、ならば香も慣れるでしょう。
さもなくば何時までたってもあの方の芸を見れませなんだ。
嫌いなわけでなし、是非とも仲良くして頂きたいのですが…。
しかし今日誰を食らうかは貴女様がどうぞお決めください。
お手伝いはいたしますゆえに。
いいええ、司棋様。
貴方様を殺すだなんて、勿体のう御座います。
ましてわたくしが狩人などと。疑われるのは心外に御座います。
[くすりと笑い、首筋に舌を這わせる。]
わたくしが欲しいのは、司棋様の命などではございません。司棋様の奥に眠る、その妖しい光……蠢く情に御座います。
嗚呼、司棋様。其れをわたくしに堪えろなどと、酷なことをおっしゃいますか?
やれやれ本当に餓鬼だぁな。
[司棋にくつくつ笑い。
猫がまたたび呑んで啼く]
万次郎は猫が好きかい。
だが猫に気圧されてるように見えるなぁ。
確りしろよぉ。
[悪戯笑いで眼を細め
百水去るに手を振って]
昨夜謂ったろゥ?
アタシァ開那の兄さんが気に入ったのさァ。
夜斗は夜斗で猫の処へでも何処でも好きに向かわせると好いヨゥ。
静かなる者を血祭りに祀りを盛り上げるなら笛の――蘇芳の姐さんかネェ。
とまれ、未だ時間はあるしのんびり考えるさァ。
[首を這う感触にふる、と震え。酔いは脳を麻痺させて]
殺しても価値がないと仰りたいのか…?
情なぞどのようなものかも知りませんし
差し上げる術も知りませぬ。
もし、耐えろと申せばどうされるおつもりで?
ああ、気が利いてるなぁ。
消えない疵をつけるのは味だなあ。
そうしていずれ喰らうのさ。
[謂えば舌出しおどけた様に]
誰かにか、それぁ好かねぇなあ。
鬼ごっこは青鬼とかい?
相棒のよしみも危ういなあ。
なぁんてな。
[赤鬼青鬼見送り笑う]
佳い女さあ。
碧が碧なら腐れようが骨になろうが佳い女だ。
それこそ何処までもなぁ。
はい…、わかりました。
では明日、また教えてくださいね。
[触れられた眼にはくすりとまた笑いをこぼし]
この眼は悪戯に使ったことは…ないのですが…
そこまで警戒されると傷つきますよ?
いいええ。
殺す価値とやらの有無など、わたくしは知りませぬ。其のような問いは、どこぞにいる殺人鬼にでも聞けばよろしいでしょうに。
情の晒し方が分からぬのなら、わたくしが引き出してご覧に入れましょう。勿論、貴方様が望まねば話は別ですけれど。
……もし堪えろと言われたら、其の時は如何致しましょうねぇ……。面白いとしか思えませぬ。
[独り言のように呟く。]
契りたくても契れず、結ばれたくても結ばれず、死を望まなくても殺してしまう……嗚呼。己の呪われた身体が恨めしい……
[ふるりと首を横に振る。]
[喜びと悲しみと僅かの痛苦が混じった]
[儚く脆い微笑が唇に浮かぶ。]
[閉じた目蓋の合間より、つう、と涙零れ、]
……切ない、
……いとおしい、
……苦しい、
……欲しい、
──あゝ、あゝ。
……恋しい。
[それでもどこかしあわせな。]
嗚呼、茄子の兄さんは何れアタシが喰らうさァ。
[舌出す赤鬼] [白い指] [つぃとなぞり]
鬼ごっこの鬼は増えるかィ楽しいネェ。
ほゥら、アタシァ此処だよゥ。
[笑う赤鬼] [ニィと笑み] [弧を描く] [隻眼の碧] [妖し翠]
喰児が喰児なのと同じでアタシァ何時までもアタシさァ。
仮令腐れようとも朽ちようともそいつァ変わらないヨゥ。
嬉しいネェ、褒められて佳い女に成れそうさァ。
そうだネェ、明日には誰か決めとくヨゥ。
司棋の兄さんはアタシに気ィ使う必要なンざァ無いからネェ。
[笑む少年] [見詰め] [ゆるり首捻り] [揺れる常葉]
本気なら尚の事危ないネェ。
アタシの心はアタシのもンさァ。
開那の兄さんの香に惑う時すら其れは変わらないンだヨゥ。
望むならアタシを其ン気にさせれば好いだけさァ。
[遥月の呟きを聞きとめて]
…契り?結ばれる?…情とは…本当にどういった…ことを…?
[わからない、といった眼を向けながらも]
先日の、水の礼だけでも…
[紅のさされた唇へ自分のそれを寄せ。
数回、ふれさせ離す]
柔らかくて…甘くて…心地よくて…
こういうのは、好きですよ。
[ふわ、と触れ、小さく笑い]
[遥月とじゃれ合う様] [横目で見遣り] [ニィと笑む]
一体どンだけの人にそうして居るンだかネェ。
あンまり易い唇でアタシに触れてお呉れで無いヨゥ。
貴女のそれに触れてから、ですが?
あんまり柔らかくて、気持ちいいから。
他の人にも、触れてみたくて。
本当に、僕は情やら契りやら、何もわからないから…。
『は、づ、き、さ、ん……』
[司棋が触れた場所へと、涙がはらりと零れ落ちる。]
『ああ……あなたは、どこへ……いったんですか……?ぼくをおいて、いかないでください……ああ……』
[涙を零した遥月から絞り出された声は、平時の彼とは異なる――どこか落ち着いた、清廉な声。]
司棋の兄さんは本当に仕方の無い子だネェ。
誰にでも出来て誰でも好いならアタシにはお触れじゃないヨゥ。
他の人にしておいてお呉れヨゥ。
……有塵のやつ、寝言かい。
やれやれいつもじゃ見せねぇ顔しやがって。
吹き飛ばされたアヤカシどもが見たら
どんな顔するかねえ。
さぞ怪訝な顔をするだろうなあ。
[眠る有塵、掛けるものは生憎無くて
花びら掬い黒へと掛ける。
はらりはらはら羽毛のように]
気に障る訳じゃないヨゥ。
誰にでも触れる易いもンに触れられるとアタシも司棋の兄さんも腐れちまうだけさァ。
そうだネェ、駄目と謂ったなァアタシさァ。
他の誰かで替えがきくならアタシに触れる事ァ無いだろゥ?
[哀しげな様] [小首傾げ] [顔覗き] [髪梳く手] [優し]
[喰らうと告げる薔薇色唇]
おいおい、相棒喰らっちまうのかい。
俺が骨を拾うことになるかねえ。
そんなら次は俺が喰うかあ。
[さて本気か否か思案顔]
鬼は多い方が愉しいぜえ。
三つ巴で皆が鬼とかなあ。
[くつくつ笑って常盤の傍の
地面に手をつき間近で見つめ]
変わらねぇならそれがいい。
もっと佳い女になってくれんなら
願ったり叶ったりだぜえ。
[にいと笑って片手を伸ばし
大きな掌髪を撫ぜ]
[遥月の涙に触れて、酔いもさめかけ。
髪を手で梳き、抱きしめたい衝動にかられ。
柔らかく頭を胸元へ寄せ、髪へ口付けを]
泣かれますか?それとも…離しましょうか?
そろそろ…また…
[瞼が重力に逆らえなくなりつつ。
ゆるく、遥月の頭を胸に抱いたまますや、と*寝息が*]
[咲かぬ桜の怨みの叫びも]
[夢幻のうちにありては届かず]
[白き花]
[はらり、散り、]
[ほろり、咲きつつ]
[神域を覆うさくらいろの花霞の*夢に揺蕩う。*]
[目を見開き、月を見上げる。]
『ああ……どうしてぼくはここに……?とおい、とおいばしょにいて……。「はづきさん」、僕はあなたにただ愛されたかった……。なのに、あなたはここにいない……どうして……?
ああ、これが……僕に架せられた罪なのですね……』
[司棋が己の身体を抱き締め、髪を撫でる。触れる唇、あたたかな身体。その感触に驚き、司棋へと視線を下ろす。]
『ああ、あなたは、だれ……?』
[溢れる涙を拭うことなく、ただその場で呆然としている。]
さァて、有塵の兄さんは如何したんだかネェ。
でも見様に依っちゃ嬉しそうかえ?
喰うか喰われるか、本気の鬼ごっこだヨゥ。
どっちが先でも好いが茄子の兄さん喰うンも喰児喰うンもアタシさァ。
茄子の兄さんは水を差されるは好まんと謂ったが、さて三つ巴なら何としようかネェ。
[間近迫る顔] [金色見詰め] [ニィと笑み]
[撫でられるに] [緩く首捻り] [懐く様に]
褒めて呉れりゃ佳い女にも成ろうさァ。
嬉しいかねえ、
待ち人が来た夢を見てるのかもなぁ。
[櫻はなおもひらひら舞った]
本気はいい、燃えるねぇ。
どっちも喰おうたぁ大きく出たなぁ。
水を差したら相棒は溶けるからじゃねえかい?
さぁて、どっちが先か相棒と賽でも振るかねぇ。
[細める瞳、鋭い光。]
そんなら幾らでも褒めるぜえ。
俺ぁ本当のことしか謂わねぇからなあ。
[薔薇色唇ギリギリに
近づき甘噛みをする真似をする]
腐っちまうなぁ勿体無いからねぇ。
[味わえと言われた通りにちろちろと、小さく出した舌で一心に舐めていた盃を持つ手が震える。
甘い痺れは舌のみならず、十分過ぎる程頭へ働きかけ、とうとう耐えきれず残りを一気に口の中へ。
――そして空となった、なってしまった、盃]
ああ……!
[暫くぼうっとそれを眺めていたメイの目に、じわりと涙すら滲んできた。
小さな玉が目尻に溢れるまま、悲痛な声で嘆く]
嘘じゃ。嘘じゃ、これで最後などと…
万次郎よ、そなたが意地悪を言っておるだけじゃ。
…本当は、まだあろう?
そこに隠し持っているのであろう…?
[懐を見せよと襟に掴みかかった指先からは、爪が伸ばされるどころか力も入らない。
酒はまさしく、見事に猫を潰してしまう寸前のよう]
司棋の兄さんはまた拗ねちまったかネェ。
けど知りたいと謂ったもンがあるのはこン先さァ。
早く他を忘れるくらいに触れたい者が見つかると好いんだけどネェ。
[激情のみがそれを阻み、がくがくその大柄な体を揺さぶろうとする手が万次郎の襟元を乱れさす]
そうしてわらわの居らぬときに、そっと取り出しおぬしが独り占めで愉しもうと…
でなくば、ただ三つの盃のうちに“面白いもの”が消えてしまうことがあろうか…ああ、口惜しや…!
…覚えておろうな。
酔うたら、喰らうのはわらわの方かもしれぬと言ったこと……怒らせてもそれは同じぞ!
[涙に濡れた目尻をきゅっと上げて、掴んだ襟の胸元に寄せた口から歯を覗かせる]
あの甘い痺れを再び、舌に感ぜられるならば…
おぬしの血を通してでも、わらわはいっかな構わぬのじゃから…!
[血を噴き出させて啜るための鋭い歯が、脅すように万次郎の首に付けられ――…しかし強く上下の歯が噛合わさるより早く、くたり身から力が抜ける。
またたびは狂おしく飽くない渇きを、そして酒が深い眠りをメイに*もたらしたようだ*]
[涙は止まることなく溢れ出す。目尻の紅はすっかり流れ落ち、涼やかな青年の眼が覗く。]
『は、づ、き』………
[大きな渦に飲み込まれぬよう司棋の身体を抱き締めて、ひとつの名をうわ言のように繰り返す。司棋の髪に目をやると、頭の中で抑えられて居た筈の記憶が蘇るようで、ほどなくして「遥月」は酷い頭痛と眩暈に襲われる。]
[やがて「遥月」は、司棋の身体を抱き締めたまま、途切れるように眠りについた。理性的で、清廉な男の表情を浮かべて――*]
佳い夢見てるンなら何よりさァ。
[青鬼の置き土産] [瓢箪煽り]
茄子の兄さんと死合いした喰児となら鬼ごっこも楽しそうさァ。
ただ茄子の兄さんの頭ァ無いとアタシァちィと困るからネェ。
アタシもだけど赤鬼青鬼も未だ未だ本気が足りないヨゥ。
[金色宿す鋭き光] [見据える隻眼の碧] [奥に蠱惑の光宿し]
褒めて呉れるなァ、嬉しいネェ。
[噛み付く振り] [白の指] [そぅと赤鬼の唇に置き]
誰にでも触れる易いもンで触られると腐れちまうからネェ。
そうだなぁ。
[朧月夜の真ん中でアヤカシどもの宴は続く。
戯言遊びか本気の言か]
墨塗れかも知れねぇなあ。
相棒は墨絵で来るだろうからねえ。
そんじゃぁ頭残しゃぁいいのかい?
[本気が足らないそう謂われ]
ははあ、もうちぃと血眼にならねえと駄目かあ。
まだ血が要るかねえ。
[蠱惑のいろは心地よい。
赤鬼の髪がざわりと揺れる。
ふっと置かれた白い指、あてられたまま笑いの形]
腐れはこっちの不手際かい?
安く見られたもんだなぁ。そんなら清めてもらおうか。
青鬼ァ頭まで墨に戻っちまったりしてネェ。
頭ァ残りゃ茄子色の頭抱いて咲き乱れようかィ。
[コロコロコロリ] [軽やかな笑い声] [戯言か] [本気か]
血も足りなけりゃ心も足りぬ、刹那に遊ぶにゃ本気じゃなけりゃ詰まらないヨゥ。
[指先に伝わる] [口許動く感触] [すぃと笑みなぞり]
清めは白水の姐さん辺りに頼んど呉れヨゥ。
戯言一つ吐けぬ程に身も心もアタシで埋め尽くされたら触れると好いさァ。
其ン時がアタシが喰われて喰らう時だヨゥ。
それぁまるで墨櫻だなぁ。
[墨がゆらゆら相棒の姿をふと想像し]
あぁ、こいつぁ悪かったなあ。
遊びも刹那も本気じゃねぇとなあ。
[目の前唇弧を描き]
白水に泉を借りて
血の匂いも洗うかぁ。
息も出来ねぇくらいに囚われちまえってか。
碧相手ならそれもいいさぁ。
[常盤の髪をひとつ梳きすいと体を離して胡座をかいて]
酒が足りないなぁ。
[緋色が額に落ちかかる。
*いつか夢に沈むだろうか*]
血の香りは好きさァ。
でも他の奴の匂いのする奴に触れられるなァ御免だヨゥ。
赤鬼ァ女郎蜘蛛の腹の中におさまるかえ?
[触れた指先] [そぅと薔薇色の唇に寄せ] [小首傾げ]
[大きな手] [撫ぜられ] [揺れる] [常盤色] [雛罌粟の花簪]
林檎飴が喰えなくなった今ァ喰児は甘露な魂貢いでお呉れかえ?
[青鬼から碧鬼] [碧鬼から赤鬼] [瓢箪胸にやり]
[遊螺り] [立ち上がり] [番傘] [くるうり] [舞う薄紅]
そろそろ咲き時かネェ。
[呟き] [しゃなりしゃなしゃな] [紅い番傘差して]
[カラリカラコロ] [下駄の音響かせ] [*何処ぞで暫し休息か*]
[東の空がほんのりと白み、ふと目を開くと幾人かの間で横になっていたのに気付く]
昨日のような修羅場は、妖しの者の仲間内ではありふれたことなのかな…
まぁ、ヒトにしたって、酷い事をやらかしはするけど…。
……あたしに半分でもいい、今のようなことができたなら
山吹も盛遠も、もっと永く生きていられたんだよなぁ、きっと。
はて、何かをしないといけないのはわかっているし、
できる力もあるのだけど、……誰のために?
[自分のそばで寝息をたてている者、姿の見えぬ者の顔を見たり思い浮べたりしつつ
はて、困ったなぁなどと言っているようだ。]
[遥月は鏡を取り出し、泣き濡れて流れ去った目尻の紅を塗り直している。]
嗚呼、いやだ。酷い顔。
涙の川が紅いとは。嗚呼、羞しい。
[崩れた化粧を落とし、再び紅を施す。唇の紅も塗り直し、ふぅと小さく溜息をつく。]
『は、づ、き』……
わたくしが妖しとして息を吹いた時、唯一識っていた言葉……『は、づ、き』。わたくしの最初の「契り人」が面白がって、名も無きわたくしに『遥月』と名付けた……。
あの時は、わたくしに毒針があるとさえ知らず、抱かれるうちに愛を囁き焼き、名付け親を殺してしまいましたねぇ……
懐かしく、いとおしく、苦しみに満ちた想い出……
[傍らで眠る司棋の頭を、己の膝の上に乗せる。赤い髪を白い指で梳き、柔らかく微笑んだ。]
……嗚呼、温かな人。
可愛い寝顔ですこと。
こうしている姿を見ていると、わたくし達を殺す狩人には見えませんけれどねぇ……ふふっ。
[指先は、司棋の耳を弄りくすぐる。]
嗚呼、しかしこの安堵こそわたくしの苦しみ。
愛し愛され、望まれ抱かれても……愛しい人をいつか毒で焼き殺してしまう、因果な身体を持つ故に……。愛しき人を殺めぬ為には、自ら身を引くしかない定め……。
地獄の炎に焼かれるよりも、激しい苦しみが我が身を襲うでしょう……嗚呼。ましてや片思いだなんて。困りましたねぇ……
[目蓋がゆっくり持ち上がり]
[黒い瞳を見開いて]
[暫し、空を眺む。]
[……ややあって、]
また眠っていたか……酒。
[眠たげに半眼、瓢を探して身を起こす。]
[側に転がるそれを探り当て、]
[栓を取りて中の花露を体内に流し込む。]
[ほう、と息つき、]
[紅の髪膝に乗せた若衆を見る。]
……呑まねば持たぬからなあ。
それに今更惜しむ身でもない。
[酒精が巡りて、蒼白い面が朱を帯びる。]
[やはり夢醒めやらぬ眸でじっとふたりの有様を見詰めて、]
遥月はその若者を恋うているのか。
[遥月は首を横に振った。]
……いいえ。
恋うてはおりませぬ。
司棋様は見目麗しく、またひたすらに可愛らしいとは思いますれど、恋とは違いましょう……。
まして司棋様は、わたくしを妖しとお疑いになり、殺すのではと嫌疑を掛けられる始末。嗚呼、ひどい話……。
[司棋の髪にはらりと落ちた桜の花びらを、指でそっと摘んだ。]
[くい、とまた一啜り。]
……然様か。済まぬな。
だが、疑いは皆持っていよう。その若者とても、人かも知れぬ。分からぬ。
久しぶりに会うた喰児や開耶も、人が姿を借りて摩り替わっておらぬとは言えぬ。
[と当の緋の鬼に横から声を掛けられて、]
……倒れたのでは無うて、寝たのだ。喰児。
ええ。
妖しならざる者を区別できる方が居られれば話は別で御座いますが……。本当にいらっしゃるのでしょうかねぇ。
手掛かりを出して下さらねばあっという間に妖しは皆共倒れ……。そうでなくとも、醜い疑い合う日々。嗚呼、あさましい。
人と怪を見分ける者が居ったとて、素直に名乗り出るとは限らぬが。
それその者が狩人よと指差して、真であっても嘘であっても争いは必定。素直に去ぬ者など滅多に居らぬからな。
斃れたようにしか見えなかったぜえ。
櫻の花びらかけといたが多少は温かくなったかねぇ。
[緋色の鬼はくつくつ笑う。
片手で髪をかきあげたまま]
あぁ、ヒトかどうかってぇ話かい。
放っちゃ置けねぇし、死合いだなぁ。
喰っちまえば味で分かるだろうが、
生きてる間に分かるような術の持ち主居るのかねぇ。
[顎に手を当て思案して]
万次郎のヤツがアヤカシか桃太郎か鬼がヒトかなんてぇこと聞いてやがったがねえ。
が……殺めずとも済む者を殺めるも愚かなことか。
せめて、人でないとはっきりと身の証が立てられる者が居ればまた違うのであろうが。
[万次郎、と言われて名を尋ねられた事を思い出す。]
そう言えば、あの者、最初に会うた時にしつこく名を訊ねてきおったわ。何ものか知りたがっておった。
[ふむ、と顎を擦る。]
[ゆっくりと頭を振り]
いや、山吹色の娘ではない。…生まれ変わっておれば、女になっておるやも知れぬが、それは。
それそこの……遥月が可愛がっておる童子よ。
おれが尋ねようとするといつも寝ておる。
[やや呆れたようにまた酒を呑む。]
……確かに有塵様のおっしゃる通り、誰かがヒトを見つけることができると名乗りを挙げても、争いは必定。ですが、頼りなきまま徒に、手当たり次第殺した結果、妖しを殺して共倒れとなりますれば、それこそヒトの思う壺……。
たとえ疑わしくとも、頼りは無いより在る方が好ましいかと存じます。疑わしいなら、その頼りを鵜呑みにしなければ良いのですから。
[喰児の言葉に視線を向ける。]
……万次郎様が?
桃太郎か鬼か、妖しかヒトか……分かるとでも?
それに、喰児様も「食べてみれば分かる」だなんて。どういうことです?
ほぉう、名前をねぇ。
どうして名前に固執するんだか。
何かに使ってんのかねぇ。
[考える間も愉しそうに]
会った時にでも聞いてみるかぁ。
さぁね。
本人に聞いたわけじゃねぇからわからねぇなあ。
俺かい?言葉通りさ。
アヤカシの肉とヒトの肉は味が違ぇだろお?
[さも当然と答えてみせて]
……ああ、なるほど。
喰児は人の肉なら厭と言うほど喰ろうておるだろうからな。
違いが分かっても不思議ではないかもなあ。
[くくく、と嗤う。]
[灰の紬を口許にあて]
……はあ。
喰児様、左様ですか。
わたくしは生憎、血肉は好みませぬ故、食ろうても区別などつきませぬが。……そういうことができる方も居られるのですねぇ。わたくしが精を戴いた相手は、誰も彼も黒く腐り果てる故、区別などつけようにもありませぬ。
万次郎様が、皆様の名を聞きたがるというのも、不思議な話。わたくしを「月の君」と呼ばれるのに、妙に名を気にされておりましたからねぇ。嗚呼、まずは万次郎様にお話をお伺いせねば。
俺ぁ悪食だからねえ。
[にやりと笑い]
そうか、血が嫌ぇだって謂ってたな。
俺ぁ逆に精じゃあ今ひとつ喰いでがなくて厭だねぇ。
ま、遥月のヤり方じゃあ喰えないのもしゃぁねえか。
なかなか見物だったがねえ。
愛の言葉で死を招く、か。
なかなか難儀だねぇ。
[さて何処から拾ったか瓢箪振るが中は空]
見分ける者とやらが居るとして、万次郎がそうであれば良いが。
これは確かに本人に訊くより他はあるまい。
既に狩人の目星が付いておれば上々、そうでのうても。
[有塵が司棋の顔を覗き込むのを見て]
ああ、司棋様で御座いますか?
ふふっ……此の方は如何でしょうねぇ。見た目どおりの子ども故、契る意味すら存ぜぬご様子……
もちろんわたくしが司棋様の全てを知っているわけではございませんから、如何ようにも……
ええ。難儀な身体でございましょう……?
[司棋の唇についた紅を手ぬぐいでそっと拭き取る。]
……嗚呼。
因果な身体がおぞましい……
[桜舞い散る中、遥月は物憂げに微笑み、思案に耽っていった――*]
[緋の鬼が先の血闘に話を向けたに思い出し、]
[浮かぶは紅ひいた若衆の、凄みの技。]
…ああ。なかなかに良い見物だった。
ああもされては毒が無うても恋死にする者も居るだろう。
色恋に疎い者には目の毒よ。
[本気とも冗談とも付かぬ声音で言い掛けて]
[物憂げな微笑に気付き、]
……済まぬな。遥月。
もう言わぬ。
[目を背け、残りの酒を一息に呷る。]
だから遠くで見るだけ、
相手が居る者に焦がれて咽ぶのかい?
[いつか謂われたその言葉、
繰り返しては覗き込み]
そうだなあ。
男色の気が無くても惑わされるものもあろうさあ。
[有塵の言葉に含み笑い。]
また熱うなってきた。
[空の瓢箪放り出し、己の分身の幹に背を凭れ掛けさせて]
[頭を付けて天を仰ぐ。]
[熟柿の香漂わす熱い息を深くついた。]
喰児。酒。
[少しく酔いが醒めた蒼褪めた顔で瓢箪を取り、]
酔うたか。おれとしたことが。
[言い訳がましく呟いて、急いで酒を口にし喉鳴らす。]
[転げた瓢箪追う有塵、赤鬼やや苦笑気味]
おいおい大丈夫かよ。
ずうっと酔いっぱなしみたいなもんだったけどなあ。
顔色元に戻ったかあ?
むしろ蒼いかぁ。
[戯れ混じりに青褪めた有塵の額に手を伸ばす]
[額に触れた手に、ハッと身を固くするも、]
[童子の様な面持ちで素直に受け入れる。]
[そのままその手の感触を静かに味わう。]
……喰児。
胸?
[有塵の言葉繰り返す]
どうしたあ、胸を病んだか?
いや、そんだけ呑んでるんだからそんなこたぁないか。
[つと考えて笑み浮かべ]
さては、恋煩いかあ?
[細かく唇震わせて、歯を食い縛る。]
[乱れる呼吸を必死に整えて堪える。]
[ようやっと、笑い交じりの緋の鬼に答え]
[引き攣った微笑を返して]
恋は、もう先に煩って居るよ。
[歯を食いしばる有塵のかんばせ
少し怪訝な顔で見た]
……煩いたぁ待ち人かい?
来るといいねぇ。
[顔を背けてしまった櫻の
黒い髪を手で梳いて]
ずうっと探してるんだもんなぁ。
[手をすいっと離して謂った]
[出来るだけ平静な声音で答えようとして、]
ああ。来ると好い。来ると……
[そこで崩れてしまった。]
……来る筈など無い。来ない。
もう疾うに契りは…ッ。
[耐え切れず涙溢れ、]
[しとどに頬を濡らす。]
おいおい……
[泣き出した黒櫻、赤鬼また手を伸ばし]
待ってたもんなぁ。
俺と会う前からずうっとなあ。
辛ぇんだろう。
俺にゃ分からねぇことだろうが、痛ぇんだろうなあ。
[あやすように髪を撫で]
[撫でる手を邪険に振り払う。]
もう良い。良いのだ。
これで終わりなのだから。
おれは最後の夢を見ると、そう決めたのだ…っ。
[押し留めた筈の滴がまたも溢れ出す。]
[振り払われた手をひらり]
おうおう、出来上がってんねぇ。
呑むんなら勝手に付き合うが、
終わりたぁどういうことだい?
[木目の杯取り出して、自分も酒を注ぎながら]
そもそもの初めから、おれの一人芝居だったのだ。
破れた契りを、それでもあると思い込みたくて、
否、契りを忘れた彼のおとこに、おれの想いを知らしめたくて、
──我が身ひとつは、もとの身にして。
……おれはあの童子の頃から変わっておらぬのにと、
おれは。
愚かだった。
浅はかだった。
……だから、彼のおとこは来ぬ。
来る筈も無いのだ。
おれが桜の下で恋死んだ時も。
国司の勤めとて主に幣帛を供えに参った時も、此処へは現われなんだ。
桜鬼の噂は聞いておろうに。
それでも待った。待ち続けた。
いつか、思い出して来はせぬかと。
恐らくは彼のおとこも死んだであろう程歳月が経っても待った。
待つ為だけにおれは在る。
この桜がおれの心を拾い上げて、己が魂(たま)とした時から。
彼のおとこを待つことしか出来ぬ。
そうかい……
命短いくせに罪なやつだぁなあ。
[杯手の上乗せたまま、
その上櫻がひとひら落ちて]
待つことだけが在る意味たあ、
それはちぃと寂しいねえ。
[刹那は要らぬ
刹那は要らぬ
後の寂寥が募るのみぞ]
嗚呼 要らぬ、要らぬ
刹那は過ぎて消えて往く
帰りはせぬ、返りはせぬ
判っておるから姿も変えたのだ
[花の薄紅から枝の茶へ。
彼と異なる雌から彼と同じの雄へ]
忘るる為に変えたのだろう
捨てる為に変えたのだろう
何故未だに捨てられぬ…!
[激情が醒めたか、]
[思いに任せて言葉迸らせたことに気付き、決まり悪げに]
……すまぬな。喰児。
忘れてくれ。
[ぽつり、呟いた。]
――……
[櫻の木は終わるという。
薄墨桜は逝くという。
白い横顔白い花、交互に見ては笑い消し]
……枯れちまうのかい。
そいつぁいけねえ。寂しくなっちまわあ。
[だが消えるも定めかねえ。
眼を細めてつぶやいた。]
[林の緑、枝の上。
枝のひとつに琥珀在る]
[はらりはらはら雫落ち、その場限りの涙雨]
[伸べても届かぬ空の青。
地は所詮相容れぬ]
うん。喰児よ。
人の命は短く、心は移ろいやすい。
だからこそ、救われるものも有る。
人ならぬ身は忘られぬ。変わらぬ。
おれは最後にやっと、桜鬼でなく、花の精になれたと思うた。
彼のおとこを想いて咲くだけの花と。
見返りも要らぬ、求めぬ、ただひたすらに想うだけの花。
おれはそれで良いよ。
喰児は優しいの。
鬼であるのに…否、鬼故に、か。
情を掛け過ぎて、昔の如くつけ込まれねば良いが。
それだけが気掛かりよ。
常磐の女君とどの様になろうとも、おまえはそれで良いのだろうな。
刹那に遊び、刹那に死ぬかあ。
[有塵が言葉を紡ぐ様、どこか儚く清廉で]
……ああ。
櫻みてぇだなあ、お前。
いや、櫻なんだけどよ。
綺麗だなあ。
[杯傾け息を吐き]
優しいかあ、
どうかねえ。自分に素直なだけさあ。
[くつくつ笑って常の声]
そうだな、
俺ぁ思うままに生きて思うままに消えるさあ。
[ふと耳に響くのは泣き叫ぶような涙雨
琥珀の色が浮かんで沈む]
……春は揺らぐ季節だなぁ。
[薄墨に背向け顔覆う。
雨は腕を伝いて茶に沁みる]
[赤隻眼と薄墨と。
白の最中に気配動けど、白の最中に往きたくは無い。
潔しの白の内。
己が身は惨めでしか在りはせぬ]
嗚呼
嗚呼
[昨の刹那は花開けども、今の刹那は堅く結びて]
[狂いて咲かぬ茶の桜。
咲かぬ桜は何と呼ぶ]
[が、ふと先程の叫びを思い出し、顔曇らせ、]
咲いたと言えば、開耶はどうしたのだろうな。
昨夜は久方ぶりに遭うたと思ったら、何やら怒った様子。
もっとも、ここらの古い桜の精は皆おれを毛嫌いして居る故に、当たり前と言えば当たり前なのだが。
酒をくれたのに、ろくに話もしないうちに寝てしもうて、余計に腹を立てておらねば良いがな。
ああ、見事さあ。
相棒も碧も、皆酔いしれるくらいにな。
[隣で浮かぶ誇る笑顔に、赤鬼頷き答えつつ]
怒ってんのはどうしてだろうなぁ。
待ち人が居るようなこといってたがなあ。
ああ、あいつも咲けねぇ花なのかねえ……
[ふわり][広がる][水の波紋]
[さらり][湧き出る泉を掬い]
泉で戦れる機会の方が少ないじゃろうな。
[小さな珠を無数に作り]
[腕に絡める数珠となろうか]
鬼さんこちら――
[くすり][くすくす] [愉しそう]
[なれど緋色の瞳は矢張り*寂しそうで*]
手の鳴る方へってかえ?
なンだい白水の姐さんは恋煩いでもしたンかえ?
少し泉を貸しと呉れヨゥ。
[白の少女の泉借受け] [水浴び済ませ] [紅引いて] [一服済ませ]
もゥ好いかえ?
もゥ少し、未だ未だ足りぬ、未だ足りぬさァ。
[ぱしゃり] [水面叩き] [紅と黒] [夫婦金魚] [寄り添い離れ擦違う]
刹那に遊べりゃ其れで好いヨゥ。
[青い空] [紅い番傘] [くるうり] [陽光の下] [蜘蛛の巣見えず]
[赤黒の華咲く白の浴衣] [袂揺らし] [カラコロカラリ] [下駄の音連れ]
おや、昼間っから酒盛りかえ?
[僅かに頭を傾けて]
[まなこ半眼に思案顔。]
そうか。あれにも待ち人が……。
咲かぬ桜か、咲けぬ桜か。
噂は詳しくは教えてくれぬもの。おれもつい先頃まであやかしなどどうでも良かった。
開耶の噂もどうして耳にしたのやら。思い出せぬ。
[番傘差した浴衣の女、言わずと知れた常盤の髪。]
常盤の女君か。
花咲かす以外は、これしかすることが無い故に。
[笑んでまた、独り占めに抱え込んだ瓢の酒を呷る。]
[はらり散り落つ涙雨。
地に落つる前に触れたのは]
……何ぞ。
…やれ、斯様に殺さるるを見て未だ懲りぬか。
人の姿に寄らねば良いに。
[琥珀の足下、百鬼夜行。
さて今は夜に非ずば百鬼昼行か]
やれ…面倒な。
[ふぅわり降りる茶、散る雫。
拭わぬままにつぃと見て]
……我は今、気が悪い。
逃してはやらぬぞ。
[取り出す扇荒く開きて、噎せ返る程に幻香]
琥珀本人が叫んでたのさ。
辺り一面紅色の花に帰る幻を見せてなぁ。
ありゃあすごい香だったな。
[何が分かると悲痛な叫び、
さて今も泣いている]
喰って喰われて塵となり
待って待たれて忘れも出来ねぇか。
ヒトに関わるな、
そう謂いつつもヒトから変じたアヤカシも居るだろう。
結局のところ切っても切れねぇ腐れ縁なんだろうなぁ。
[一夜経ち] [蛍火消え失せ] [隻眼の碧] [弧に笑ませ]
[赤鬼] [黒鬼] [飲む様眺め] [ひらりはらり] [傘に積もる花弁]
赤鬼も今日は大人しく酒盛りかィ。
咲き乱れて酒なンざァ好いじゃないかィ。
打つはもう出来ぬし後は買う変わりに抱くくらいかえ?
鬼ごっこなんてェ遊びもあるネェ。
[戯言零し] [小首傾げ] [揺れる常葉] [ニィと笑み]
[白い喉逸らし] [番傘くうるり] [仰ぎ見る桜] [隻眼眇め]
少し歩いて来るかネェ。
佳い宵にゃ酒も貰いに来るヨゥ。
[歩み止まらず] [しゃなりしゃなり] [下駄の向く侭] [気の向く侭]
さて…如何割いてくれようか。
[緑湛えし林の樹、香に薄紅塗り替えて。
はたりはたはた落つる雨。
天も暗き暗雲に覆われて]
花に触れれば割けようぞ。
雨に触れれば貫かれん。
我が生むは幻なれど、この現夢(ゆめ)は真なれ。
[遠く逃るる妖も在ろうか。
なれど薄紅からは逃れられぬ]
さあ…せめて麗しく緋を散らすが良い。
[ざぁと風啼き花嵐。
舞う薄紅はくれなゐに。
風啼き声に混じるは断末魔]
血肉は昨日撒き散らしたからねぇ。
やつら遠巻きに唸るだけさあ。
抱くかあ、碧は抱かれちゃくれねぇかい?
鬼ごっこなら本気出さねぇとなぁ。
[かえす戯言にやり笑い。]
ああ、また酌してくれやあ。
[しゃなり歩くその背中
見送り金の瞳は光る。
*いよいよ空は青くして、赤の映える色合いだ*]
アタシァ買うにゃ高過ぎるさァ。
遊ぶにゃ未だ未だ足りないヨゥ。
[背に聴く戯言] [返す呟き] [林に踏み入り] [届く断末魔]
[微か漂う香] [鼻先擽り] [遠く見える] [紅く散る異形達]
この香りは開那の兄さんかえ?
鬼ごっこでもしておいでかネェ。
[どぅと倒れる一つ目鬼。
香の無きから見れば、百鬼は何もせず倒るるように見えるのか]
[ぱちんと扇閉じれば香は消え。
薄紅消えて雲消えて。
後に残るはくれなゐのみ]
[不意に届く音、知る声に。
すぃと其方に顔を向け]
[茶はいつしか緋色に染まり、頬の雫も乾き消え]
…やれ、常盤か。
[眺めて居る内] [香り治まり] [声に応え] [番傘くるうり]
[緋色の姿見] [ニィと笑み] [躯踏み付け] [血溜りに立つ]
随分と派手にやらかしてるじゃないかィ。
ご機嫌斜めかえ?
[半ば緋色の扇を懐に。
肌の露を指で伝えばぬるりくれなゐ]
…礫投げらるるが面倒になっただけよ。
[払いて落つる筈も無し。
落ちぬ手のくれなゐ、人の姿の舌で拭う]
開那の兄さんは鬼ごっこも面倒かと思ってたヨゥ。
[ぴちゃり] [血溜り一歩] [踏み出し]
[ぬらりと染まる姿] [隻眼の碧眇める]
旨いかえ?
ああ面倒だ。
なれど妖たちは放っておいてくれぬ。
捨て置けばいつまでも投げられよう。
消せば投げらる数も減るかと思うたまで。
[拭う口許緋に染まり。
歪んだ紅のようにも見えようか]
やれ…旨いなぞ思わぬ。
放っておけば固まり動き辛くなろう。
追われりゃ逃げると謂った筈が気が変わったンかィ。
刹那に散り逝く妖しの血は綺麗だったヨゥ。
[コロコロコロリ] [軽やかに笑い] [歪む紅] [映す隻眼]
白水の姐さんの処へでも往って来りゃ好いさァ。
血塗れた形は旨そうだヨゥ、舐め取るンなら手伝おうかィ。
幾ら逃げても限が無い。
逃げるるも面倒になった。
[碧隻眼眺め遣り。
つぃと左腕差し伸べて]
斯様な妖の血で泉を染めるは好まぬ。
舐めたくば舐めるが良い。
我を喰らおうとせぬならな。
[有塵と喰児の会話を聞くか聞かずか、遥月はひとり思念の海へ―…]
ふふっ……司棋様。
わたくしの紅をたいそう怖がられている様子。ならば毒の正体を教えて差し上げましょうか。
わたくしの毒の正体は……わたくしの精に御座います。身体中に廻らされた毒を、愛され抱かれて流し込む……ふふっ。至極単純なことでございましょう?紅には、それをひとたらし、ふたたらし……ほんの少しだけ混ぜているだけのこと。
ですけれどね、流し込むだけでは只の精。『或る言葉』を囁くか、其の言葉を恋われた相手に囁かれるかせねば、毒は毒として意味を為さないのですよ……。
それがわたくしの呪いの畏ろしさ。契りたくても契れぬ因果。恋うたくても恋えず、しかし恋われる程に相手の精は甘美な味を成す……。つくづく因果なものでしょう?
わたくしの身体の呪い……其の畏ろしさは、恋うて抱かれて知るのです……。
どれも是も面倒たァ相変わらず難儀だネェ。
[伸べられる左腕] [血塗れた面] [交互に見遣り] [ニィと笑み]
[白い手伸ばし] [そぅと紅い手取り] [軽く歯を立て] [手を解く]
噛み付く前に謂われちゃ仕方ないかィ。
弱い奴の血なンざァ旨く無いから遠慮するヨゥ。
[紅差す唇] [ぬらり] [更に紅く染まり] [ちろり] [紅い舌這う]
やれ、全く難儀よ。
此処に来てから難儀しか在りはせぬ。
[僅か歯が立つ左の手。
すぃと瞳は細まるが、解かれれば琥珀は冷めやりて]
弱きを望まぬならば強き者の血肉が良いか。
やれ、これらの妖は其方の眼に適う者は在りそうに無い。
[右の手己の口元のまま。
幾度拭えどくれなゐ消え去らぬ]
…やれ、面倒だ。
このままで良いか。
開那の兄さんは何処に居たって難儀そうだけどネェ。
こいつ等じゃアタシの腹ァ満たせぬさァ。
幻惑の桜咲かす兄さんは何時か真に咲き乱れたりはしないンかえ?
[落ちぬ紅] [拭う度歪む様] [濡れた白の指伸ばし] [すぃとなぞる]
[また面倒と謂う] [紅拭った指先] [薔薇色の唇に含み] [弧を描く片碧]
嗚呼、中々に男前だヨゥ。
しかし、不思議なこと……。
司棋様のお顔を見ていると、奇妙な声が脳裏に響くのです。
その深い蒼色の瞳のせいかしら……。蒼が深くなればなるほど、その声がはっきりと聞こえるのです……
そして、わたくしの哀しみを更に深めてしまう。嗚呼、畏ろしいこと……
[司棋の髪をさらりと撫でた。]
否定はせぬ。
何処に在ろうと難儀ばかりが付き纏う。
…さて、今は咲こうとは思わぬわ。
[つぃと袖取り貌拭おうか。
緋色の袖を当てるより先、白の指が口なぞり]
…やれ、其方は緋色なれば良いのかと。
緋色に何ぞ重ねておるのか?
[琥珀は難儀] [コロコロ笑えば] [血に混じり] [白粉薫る]
さて、何時なら咲くンだかネェ。
永久に咲かぬなら枯れ桜、灰の変わりに香り撒き枯れ木に華を咲かせるかィ。
桜も緋もアタシが好きなだけだヨゥ。
重ねる想いは置き去りに、刹那を楽しむにゃ邪魔が多いのさァ。
[紅の視線の奥から、澄んだ光が覗く。
辺りを見回し、清廉な声で独り呟いた。]
『ああ……春の香が。
茶席に添える花も、華やかな色にしなくてはいけませんね……。
「はづき」さんに聞かれたら、呑気なことをと笑われるでしょうか。人殺しの罪を背負った者らしくないと言われてしまいそうで……。そういえば、僕は殺人に相応しくないなどと、窘められてしまいましたものね。
ねえ…「はづき」さん……』
[男の澄んだ瞳は、青い空を見つめている―*]
[白粉に香に。
血の香の中にて稀有に薫る]
開かぬままに朽ちるも良いか。
なれど喰われてやる気はせぬな。
やれ、桜が良くば薄墨が在ろう。
緋色が良くば赤の隻眼が在ろう。
刹那の愉悦に想いは邪魔か。
なれば難儀な想いであろうな。
相変わらずつれないネェ。
好いヨゥ、喰いたくなったら勝手に喰うさァ。
[紅い番傘] [くるうり] [小首傾げて] [隻眼眇め]
なれば開那の兄さんには何が在るんかえ?
蝶はこの身でアタシと成りてアタシと共に刹那を遊ぶからネェ。
難儀なンは兄さんだけで充分さァ。
喰らわんとするならばさてどうするか。
逃げるは面倒なれば、抗うしかあるまいか。
やれ、それも面倒だ。
[くれなゐ張り付き煉瓦色。
僅か動かすば罅割れる]
さて、我に何ぞ有ったろうか。
刹那は捨てた、愉しも捨てた。
…何ぞ残って在るか?
[問われたというに返す問い。
纏う煉瓦は指先動くに軋み与え]
やれ、其方らは面倒な刹那を愉しんでおれば良い。
我を巻き込まねばそれで良い。
[泉に映る我が姿]
[はらり][はらはら] [しずくは落ちて]
咲かぬは陽――
咲くは灯なれば――
散るは緋じゃ……
[落つる涙][それすらもが清浄で]
恋煩いなど出来まいよ――
妾は出会ったものの全てを恋うておるのだから。
[散る涙すら数珠に変え][涙の痕は残さない]
[蒼白い膚にうっすら酔いの朱を刷いて、]
[はらりはらはら]
[散り急ぐ花。]
[地に降り敷いて、]
[淡く笑む。]
良い日だ。もうそろそろ他の桜も咲こう。
見たいな、山色づく様を──。
どれも是も面倒たァ本当に面白いネェ。
[コロリコロリ] [笑う度] [薫る白粉] [血の香りに混じり]
[煉瓦罅入り] [割れる紋様] [白い指伸べ] [ざらりとなぞる]
桜無く、緋無く、此処に残るは開那の兄さん其のお方さァ。
在る限りゃ面倒事にも巻き込むヨゥ。
刹那は永久を遊ぶも楽しいからネェ。
[パシャリ][己が姿を打ち消して]
[すいと立ち上がれば][いつものように薄い笑み]
今は暫し離れよう――やれ難儀、やれ難儀。
狩る者見つけりゃ終わりは来るかえ?
[幻見せる水鏡][映した姿は何としよう]
[カラリ][コロリ] [下駄を鳴らして]
[ふらふらカラコロ*気のむくままに*]
やれ…何ぞ面白きが在ったか。
我にはわからぬな。
[琥珀は細く、眉顰め。
煉瓦なぞられるばぱらり散り落つ血の欠片]
我が在れども何も無い。
咲かねば誰も気に留めぬ。
…やれ、境が無くばこのような場に留まりはせぬに。
刹那も愉しも要らぬと言うておる。
難儀で面倒なンは如何してかネェ。
[指先残る] [血の欠片] [擦り合せ] [ぱらり落ちる]
咲かぬ開那の兄さんと刹那遊ぶも楽しいヨゥ。
何処に居ても難儀なれば境が無ければ何処へ往くんかえ?
[少し離れて、愛しむ手付きでくれない色の髪撫でる、白面の若衆の姿見て]
[独り言とも傍らの緋の鬼にとも付き難く呟く。]
恋うては居らぬと言いながら、随分とあの童子を気に入った様子。
心静かにこのままに、居れれば良いが…そうはいかぬのだろうな、恐らくは。
[勿論、若衆の密かな呟きには気付かずに。]
やれ…今の其方の愉しは鬼真似か?
なれば尚の事面倒よ。
[落つる欠片は地のくれなゐに呑まれ。
追った視線はゆぅるり上がる]
我が在るべきところに戻るしかあるまい。
人の最中で誰の目にも留まらず在るだけよ。
嗚呼、本気の鬼ごっこは楽しいだろゥさァ。
未だ未だ足りないけどネェ。
[紅い番傘] [くうるり] [琥珀覗いて] [ニィと笑み]
永久に誰の目にも留まらずかえ?
大地は其処に在り須くを住まわせ、誰も彼も気にも留めぬも無けりゃ地に足着かず、在ると無いは全然違うさァ。
どうせ戻るが叶わぬならば一つ遊んで往けば好いのにネェ。
やれ、鬼真似望むならやりたい者のみで殺り合うが良い。
それこそ赤隻眼が好むところであろう。
[廻る番傘、蜘蛛糸無く。
覗く碧隻眼、対す琥珀に色は無し]
我と地と擬えたは青司であろう。
我は地に非ず、唯の咲かぬ桜よ。
桜は咲かねば誰も目にすまい。
やれ…愉しは面倒だ。
嗚呼、赤鬼青鬼と鬼ごっこさァ。
[陽光に映らぬ蜘蛛の巣] [色無い琥珀] [隻眼眇め]
咲くを信じて繰り返し刹那遊んで待つも一興さァ。
抱き込む躯も無けりゃ咲く華も咲かぬだろうけどネェ。
酒も桜も舞いも鬼ごっこも何もかも面倒かえ?
祀りの後が寂しけりゃまた祀っちまえば好いじゃないかィ。
赤鬼青鬼碧鬼の三つ巴か。
それとも其方が赤鬼青鬼共に相手にしておるか。
[眇める隻眼、すぃと視線逃れ]
刹那はもう要らぬ。
数え飽く程繰り返せども虚しきばかりが残るのみ。
柵の内に在れば誰も捕らえはできぬわ。
やれ、何を祀れというか。
刹那を繰り返せども所詮刹那にしか成らぬ。
[何処か下駄の音響いたか。
百鬼夜行の妖なれば、くれなゐ逃れ逃げ往くか]
[ふわり藍揺れ、さくら舞う。
月と童に赤と桜。
うすら笑うて有塵の隣、桜見上げて足止める]
心静かこのままに、何処へ流れて行くものか。
或いは心乱れたその時は、何処へ流れて行くのかのう。
なぁ薄墨桜よ。
[見上げたままの声は静かに
有塵へと問いかけるのか、咲く桜への独り言なのか]
どっちも喰らうさァ。
[逸れる琥珀] [遠く下駄の音] [音の在りか捜し] [首捻る]
静かは刹那の内にも在るヨゥ。
開那の兄さんの内に無けりゃ永久にも刹那にも静かは見つからぬさァ。
祀るもンなきゃ永久に刹那を祀るが好い、繰り返す刹那は那由他の花弁の如く永久を彩るかも知れないヨゥ。
──乱れて末は…
さあて。これからどの様になりゆくのやら。
散りゆく身には。
或いは考えても仕方の無いことやも知れぬ。
[くい、とまた一啜り。]
…呑むか。大概おれが呑んでしもうたが。
[手に持つ瓢箪揺すれば、微かに水音。]
やれ、元気なことよ。
あれらを相手にするは骨が折れように。
[下駄の音遠く去り往くか。
急ぎ足には聞こえねば、くれなゐ見えずか気にせずか]
我の刹那は騒がしばかり。
今の刹那も礫飛ぶ音が騒がしわ。
…嗚呼、要らぬわ。
幾度刹那を繰り返そうと我の望むは
[紡ぎかけの言は打ち切りて。
貌に浮かぶは苦き色]
…言が過ぎた。忘るるが良い。
やれやれこの桜は
まだ咲いておろうに、もう散るを想うか。気の早い桜よ。
先の末まで眺めて、それから散っても遅くはなかろうに。
先急ぐ理由でもあるか。
[有塵が瓢箪揺すれば、軽く手を挙げる]
ああ、呑む。
[呑み差しの瓢、藍の男に渡し、]
[朱に染まった目許を流す。]
別段急いでは居らぬ。急いで居るのはおれで無うて、刻(とき)の方……。
──空蝉の
世にも似たるか花桜
咲くと見しまに かつ散りにけり
……咲いたと思う間もなく散るが桜の運命(さだめ)なれば。
[くつくつと笑い声。]
[襟寛げて乱れたままにしどけなく。]
だから楽しいンじゃないかィ。
[見えぬ姿] [興味失い] [向き直り]
[止まる言の葉] [苦き貌] [小首傾げ] [ニィと笑む]
途切れた続きを聴きゃ全部忘れるかもネェ。
[渡された瓢箪そのまま仰いで]
刻が急くのか。
あれも気まぐれゆえ、
ながくながくゆるりとした時もあれば
瞬く合間に走り去る時もある。気分一つで変わりよるわ。
[とぷり、瓢箪下げればまるい音]
かっかっか。何がさだめよ。
今此処で咲く桜。皆咲いたと思うておろう。
思うてないのは桜のみか?
ふふ。咲いておるなあ。今。
ただ……ほら、
[と手差し伸べて、]
[己の周囲に常に舞うているのではない、]
[薄墨桜の梢より咲いて散りたる花弁を掌に受けて、]
咲いて、もう散り始めて居るよ。
刹那を遊ぶにゃ丁度好いのさァ。
[溜息眺め] [笑み変わらず] [逸れる琥珀] [追いかけ覗き]
其ンじゃ覚えておこうかィ。
とまれ、安心おしヨゥ。
アタシァ鶏より物覚えが悪いからさァ。
[ひらり]
[落ちる花びら有塵の手に乗り]
[桜見上げる]
咲くは散るか。
ああ、ほんに命のようじゃ。
儚きは人の夢と書くが、花の夢ならなんと読むかのう。
[覗く碧に遮るように左手振りて。
ぱらりぱらぱら煉瓦落つ]
鶏よりか。なれば忘れたと同義か。
やれ、言う通りに安心しておくとしよう。
[落つる煉瓦、ふと眼を遣って]
やれ、乾いてからならば落ち易いか。
[ぱんと叩けば崩れ散る]
嗚呼、嗚呼、本当につれないネェ。
[琥珀遮る手] [ニィと笑み] [舞う煉瓦色] [崩れるを眺め]
[顔出す月] [くるうり] [回る番傘] [月光浴びて] [蜘蛛の巣綺羅リ]
さて、そろそろ佳い宵かィ。
開那の兄さんは酒は要らぬと謂うが酒宴の席も好まぬかえ?
[昨夜は宴で猫を酔わせてみた。
今宵はどうするか――
酒宴の持ち寄り調達ついでに社から離れ歩いている。
まばらな店。まばらな人影]
居合い抜きの見世物はもうさすがに居らぬか。
早速疑われておったろうな……ヒトの身分で気の毒なことよ。
[遠く金月、きらりと番傘蜘蛛之糸]
やれ、もう斯様な刻限か。
酒宴こそ好まぬ。
酒も騒がしも面倒も揃うておる。
なれど昨夜は我が騒がせたか。
酒のひとつやふたつを持ってから行くとしよう。
[振り仰ぎ]
[白雪の如、降り積もる花。]
[墨染めの衣にも、地にも。]
おれは然様な言葉遊びは得手では無いが……。
そうさな、花の夢は存外と「とわ」ではないのかな…。
[瓢箪並べる店先を覗く]
『昨夜の兄さんじゃあねえですか。今宵は何をお求めで―――』
酒を……―――
『そうそう、昨夜は言いそびれたがね。木天蓼酒。どうだい。
こりゃ、人もたまらぬ好い気分になるッてェ代物でさあ』
…オニは、どうなのだ?
『―――ハァ、鬼?まさか兄さん、鬼だというんじゃぁ…』
冗談だ冗談。其のくらい察せよ、店主。其れを貰おう。
[凍り付きかけた空気を笑みで溶かして、銭をちゃらり]
空は戻らぬ、だっけネェ。
刹那より空かえ?
[蘇る記憶] [問い掛けか] [呟きか]
開那の兄さんは騒がせたと謂うが、アタシァ昨日のも気に入ったさァ。
好いもン見せて呉れて有難うネェ。
とまれ、律儀な兄さんの事、酒が来るの楽しみにしてるさァ。
またネェ。
[ひらひらり] [白の手振って] [踵を返し] [しゃなしゃなり]
[蜘蛛の巣映す] [番傘くるうり] [下駄を鳴らして] [*林に紛れ*]
おれは眠る。
出来うれば酒を置いていてくれ。目醒むれば呑む程に。
[そう言い置いて、眸閉じる。]
[はらり、散り、]
[ほろり、咲く、]
[*桜の花の樹の下で。*]
…やれ、何処が鶏ぞ。
鶏と言うならばそれも纏めて忘れやれ。
[琥珀は伏せられ、また溜息]
[去り往く番傘、蜘蛛糸廻り。
仰ぐ空は黒か濃紺か]
[つぃと逸れて常盤が往く道を背に。
煉瓦零して歩き往く]
司棋の兄さんはまた長くお休みかネェ。
何処ぞで鬼に喰われてなけりゃ好いが夜斗が居れば大丈夫かえ?
[一人ごち] [カラリ] [カラコロ] [林を進む]
[瓢箪提げて、ふらり。
覚え込んだ道を、考え事半分歩く]
酒宴の最中に少しでも尻尾を出してくれれば、視ようもあるがな。
さて、どうしたものか。
[昨夜から下駄はどこかへいってしまった。
特に執着はなかった。むしろ動き易いと思うほど
だが、傍目にはヒトとして妙ではある
ぺたりぺたり…*社へ向かう*]
[カラリ] [コロリ] [下駄の向く侭] [気の向く侭]
嗚呼、嗚呼、足りないヨゥ。
[現る異形] [獅子の面差し] [大きな口] [牙向き笑む]
おや、遊んでお呉れかえ?
お一人様たァ、ちったァ腕に自信がおありかィ。
[くうるり] [回る番傘] [顔出す月] [蜘蛛の巣綺羅リ]
[地を蹴り] [風きる獅子] [疾風の如く]
[寸で] [身を捻り] [飛び退き] [カラリ下駄の音]
少しは楽しそうかネェ。
[ニタァリ] [三日月描く] [薔薇色の唇]
[くるうり] [回る番傘] [蜘蛛の巣広げ]
鬼ごっこにゃ足りないが、遊ぶにゃ丁度かィ。
[ふわあり] [広がる蜘蛛の巣]
[切り裂こうと] [空を切る獅子の腕]
鋭い爪だヨゥ。
嗚呼、恐い、怖い、強いネェ。
[はらあり] [舞う蜘蛛の糸]
[ひゅうい] [白の手振り抜き]
ほゥら、もがくと危ないヨゥ。
[絡みつく糸] [もがくほど] [獅子を締め付け]
[唸る獅子] [眼光鋭き様] [眺め隻眼の碧] [弧を描く]
狩る者を狩ろうなンざァ、兄さんには荷が勝ちすぎさァ。
鼻は利くみたいだけどネェ。
[コロコロコロリ] [軽やかな笑い声]
[くぃ] [引く白の手] [飛び散る紅] [番傘に降り注ぐ]
嗚呼、綺麗だネェ。
でも旨かァ無さそうかィ。
刹那の中に永久はあるかもしれんのう。
けれど留まるは、また寂しきよ。
とわと読むには己ならば花眠ると書く。
[さくら舞う、落ちる、黒の男の髪に降り咲く花びら。
眠る男が聞こうが聞くまいが]
己は花の夢と書いてふゆと読む。
春には起きよ、花綻ばせよ。覚める花はけだかきと書こう。
咲けば散り往けど一夜の酒くらいは其処に在ろうて。
[渡された瓢箪そのまま傍に置き。ふらりカラコロその場を去る]
[歩み進めば衣と肌と張り付く煉瓦は割れて落つ。
跡まで消えぬが動けぬでもなし。
妖寄ろうが気にもせず]
[からころ鳴るは人の下駄。
境の中にて人の下駄鳴らすは人の姿のみ]
…やれ、青司か。
[ゆぅるり振り返る貌に髪、あかい煉瓦と共に在り。
歪み紅は唇染めるるままか]
[カラコロ、煉瓦の跡辿り。
視線落としていれば声掛けられて顔上げる]
その顔、月にでも描かれでもしたかのう。
[呆れた顔でカラコロ近づき]
お前さんも着物汚したままの口か。
やれやれ赤を浴びるなら替えの一つでも剥いでおけばよかろうに。
[くるうり] [紅い番傘] [ぽたあり] [紅い雨]
[ひらあり] [黒き蝶] [ひらあり] [血溜りへ]
足りないかえ?
だろうネェ。
こン侭じゃ咲き乱れる前に消えっちまうかィ。
[コロ] [コロ] [コロリ] [軽やかな笑い声]
[闇に解ける蝶] [見詰め] [眇める] [隻眼の碧]
[からころからころ]
[近付く藍は僅か記憶を呼び覚ます]
いやこれは…常盤にされたか。
[一度なぞった白の指。
描かれたというには語弊もあろうが]
やれ、其処まで考えもせなんだ。
動けぬでもなし、このままで良い。
[良く見れば、髪まで乾く煉瓦にまみれているか]
あぁ、月ではなくて常葉の女か。
どちらにせよ遊ばれておるのう。
[半目のままくつり笑んで
わしわしばさばさ
開耶の髪を撫でくりまわし、煉瓦落とす]
これでは風流もなかろうて。
替えが要るなら己の着てた黒の浴衣
枝に掛けたままじゃろうし、それでも着るか?
[カラリ][コロリ] [下駄の音]
[点々と在る煉瓦道][緩く首を傾げるも]
随分とまた、派手じゃのう。
[遠くに見えた影二つ] [煉瓦色に目を細め]
[カラコロゆっくり近づいて]
そんな形(なり)でどこへ行く?
[くすり][微笑み首かしげ]
未だ未だ足りぬ、未だ足りぬさァ。
[くるうり] [林檎飴の如く] [紅い番傘]
[月光浴びて] [てらてら光り] [蜘蛛の巣綺羅リ]
鬼ごっこに鬼対峙、遊びにゃことかかなそうだネェ。
人も異形も如何でも好いが鬼退治は何時にしようかィ。
[コロコロコロリ] [軽やかな笑い声]
[カラコロカラリ] [下駄の音も響くか]
[カラコロ下駄音、見れば白の姿]
ぽろぽろと道にそれが毀れてるゆえ、
辿ってみたら…うむ、ここは何処じゃろう。
何処へ行くかは開耶に聞くと良い。
[肩竦め返す]
[伸ばす手を止める間もあらば。
髪に差さされて掻き乱され]
[ばらばらばらと崩れ落つ]
やれ…放っておけと。
[ふるり振るいて手を逃れ、煉瓦色の右手で掻き上げる]
…何と勘違いしておるか知らぬが、これも妖の血ぞ。
[舌先紅くれなゐなぞり。
その程度で落ちはせず]
やれ、気になると言うなれば借りようか。
どちらも構いはせぬが。
[からりころり、下駄ふたつ目]
やれ…それ程に気になるか。
昨夜の赤隻眼の方が酷かろうに。
[ぱんと肩口叩けども、沁みた血の色落ちはせぬ]
酒でも買いに行こうかと。
昨夜騒がせた侘び代わりにな。
すでに遅いわ。
[放っておけと云う開耶にしれっと返す]
何が何も見れば判るというに。
…ふむ、それなら拾いに行こうか。さてはて何処の枝だったかのう。
白、少々開耶のこの顔なんとかしておけ。気を抜くと笑うてしまいそうじゃ。かっかっか。
[云い終わらぬ内に、
からから笑いながら浴衣探しにふらりと*離れる*]
[答えた声に薄く笑み]
そうじゃな――喰児ならば気にはならんが
汝れがそんな形をしているは意外じゃから目に留まっただけのこと。
とはいえ、汝れらしさとやらが判るほどには付き合いも永うないが。
――何ぞあったかの?
[ぽつりと言って] [答えを求めるつもりはなく]
酒か。今宵もまた――酒宴かの。
酔える身ならばあやかりたいものよ。
[許可得るでもなくついていく]
[離れる藍を目で送り]
[開耶の顔に視線を這わせ]
――何とかしろと言ってものう。
[言いつつ左手を右の袖に這わせればしっとり濡れて
衣を気にした風もなく、すいとそのまま拭い始めて]
衣は青司が持ってくるなら、妾は此れを拭うだけじゃ。
[拭う手は優しく][遊びで汚れた子供を洗う親のよう]
[離るる青司を見遣り、つぃと唇撫で]
…やれ、どれ程に歪んでおるのやら。
[血舐めたときについた紅。
綺麗な形とは思いもせぬが]
[伸ばさる白水の袖が拭うのに、最早抗うも飽きたか息を吐き]
意外か。
確かに我もこれ程に濡れるは初めてやもな。
礫避けるに飽いただけよ。
[琥珀閉じて歩み止め]
皆酔うてばかりだろう。
薄墨も寝ては呑むを繰り返しておろうにな。
[唯拭わるるに任せるか]
[境内の裏手] [薄墨桜の気配あれど] [舞う花弁の見えぬ処]
[ひゅうい] [糸繰り枝に飛び乗り] [紅い袂より出す煙管咥え]
佳い宵にゃちィと早いかネェ。
[抗いもせず拭われるのに][もらした笑みは穏やかか]
避けるに飽いたか――其れも良かろう。
[閉じた琥珀をゆるりと見つめ]
そうじゃな――
酔うて刹那を愉しんで夜毎に其れを繰り返す。
[拭い終われば袖下ろし][染まった色を気にもせず]
その後妙に寂しゅうなるのは酔えぬからかと思うてな。
[くるうり] [紅い番傘] [ぽたあり] [今宵も紅い雨降らし]
[木にかかる衣] [小首を傾げ] [カラコロ歩み寄り] [眺める]
なンぞ、如何言う忘れもンかえ?
[拭うが終われば目蓋開け]
[不意に浮かぶは哀しき微笑]
…だから我は刹那は要らぬのだ。
[言之葉それきり再び歩み出し。
妖疎らな夜店道。
昨夜に比べまた減りて。
それでも残る瓢箪酒屋]
さて…幾つ買おうか。
皆が持ち寄るならば然程要らぬか。
さて、どこぞの露店の裏だった気がしたが。
[カラコロカラコロ、枝探してぶらり歩く。
見覚え在る所見つければ、先客常葉の女か]
己の忘れものじゃ。
[ぶんどって捨てたとは云わず、カラコロ枝に歩み寄る]
[ゆるり首捻り] [番傘越し覗く隻眼] [青鬼見て] [ニィと笑む]
嗚呼、あン時の浴衣かィ。
何処で手に入れたンだかネェ。
[哀しき微笑は波紋を描き]
[ざわりと内なる水騒ぎ]
刹那は要らぬか――汝れも矢張り迷子かの。
[何の例えか][並んで歩み瓢箪酒屋]
――無くなれば買い足すものもおろうて。
気の向く範囲でいいじゃろう。
さぁてなぁ。
[返す気さらさら無いように、くるり浴衣丸めて抱える。
紅滴る番傘眺め、碧の隻眼覗く。
弧の笑み浮かべて、囁く声は戯れる童のように]
黒猫まだか?
着替えるんじゃないンかえ?
[藍に覗かれ] [問い掛けの言の葉] [隻眼眇め] [ニィと笑む]
未だ未だ足りぬ、未だ足りぬ、アタシも足りぬが茄子の兄さんの本気も足りぬってネェ。
今の兄さんにゃ黒猫描いて貰う気にゃなれないヨゥ。
[迷子の言も聞き流し]
[紅無き口許手を当てて]
やれ…難しな。
全く限りが判らぬわ。
…店主。
酒をふたつ貰えるか。
[人の姿に様子変わらぬ店主。
客は変わらぬかそれとも虚勢か]
[代金渡して瓢箪受けて]
さて…青司は戻らぬか。
先に向かうても大丈夫だろうか。
妾も酔わぬゆえ、加減はさっぱりじゃな。
水があれば、それでいい。
[瓢箪買う様眺めつつ]
[煉瓦の衣に呟くは]
青司が戻らぬなら、其れも洗うてやろうか。
乾かすことは出来まいが。
[くすり笑って][いつものように]
歩んでおればどこぞで出くわすか社で会えよう。
どうせ目的地は変わらぬのじゃから。
[くるり][廻って] [カラコロゆっくり歩み出す]
用途は己が着るのみに在らずなり。
[笑む常葉。藍の目弧解けじろりと]
お前さんはまだまだ足りぬか。
――なれど己の本気、己より他に判りはせぬわ。
気が乗らぬなら唯そう云えば良い。
今度は誰が濡れたんだかネェ。
[解ける弧] [見据え] [薔薇色は] [三日月]
なンだィ好い面ァすンじゃないかィ。
其ンじゃあそうしとこうかネェ。
気が乗らぬとは謂わないが本気にゃ足りないだけさァ。
みっつ過ぎればおっ月さンも拝めぬ身、其ンでも好けりゃ相手になるヨゥ。
[己は酔わぬわけではないが]
…同感だ。
[かつり触れ合い瓢箪鳴る]
さて、どちらでも構わぬが。
なれどこのままおけば皆が問うか。
…やれ、それも面倒だ。
戻れども戻らねども後で洗うてもらえぬか。
[下駄音と共に宴場に。
血の跡黒く地に沁みて]
……やれ、確かに我は地色だな。
[呟き小さく地に落ちて。
隣の白水に届かぬだろう]
[するり、興が失せたか藍の目逸らし]
さてはてお前さんが紅塗ったか、遊んだ相手よのう。
期限はあと三つか。お前さんが本気にならぬまま過ぎれば己は盲の手引いて、また怒らせれば良いのかのう?
[くるり踵返して、カラコロリ闇に紛れて何処へ向かうか]
はよう本気に成れ。
[静かな呟き残して消える]
嗚呼、開那の兄さんかィ。
アタシァ怒りなンぞで本気にゃ成らぬ、手を引けと頼む心算も無いヨゥ。
[呟き聴き] [浮かべる表情] [見る者無く]
一日中鬼ごっこの事ばかり考えてるさァ。
近く咲き乱れ本気に成れるかもネェ。
心算無いからわざとするのよ。
怒りでないなら、さて如何か。
目玉食ろうた時のお前さんは本気だと思うたんだがのう。
[常葉の声に振り向かず返してそれっきり。
先ほどの場所へ戻れど二人の姿は無く、露店通りひと歩き。
浴衣小脇に瓢箪三つばかり下げて、カラコロ宴の場へ向かう。
二人の姿見つけて寄れば、開耶の瓢箪。ひとり頷く]
入れ違いだったか。
少々寄り道してきたゆえ、遅うなってすまぬな。
[変わらず眠る薄墨にやれと息吐き。
つぃと琥珀は地を滑る]
如何程舞ったか、薄墨。
[血を吸う地は白斑点。
問う声返る言之葉有らず]
やれ、寄り道か。
迷うておったかと思うたぞ。
[瓢箪置いて青司に向かう]
[青鬼去りし後] [カラコロ歩む道中] [現れたる異形達]
おや、なンぞアタシに用向きかえ?
[くるうり] [紅い番傘回し] [ぽたあり] [紅い雨降らせ]
[にたあり] [三日月の笑み] [用向き] [訊くまでも無く]
さぁって、こんなもんかねぇ。
身体がでかいと合うのが少なくていけねぇや。
[ぼやき着込んだ着流しは 緋色の映える濡羽色。
闇夜の鴉の羽の色。]
今夜も宴会、
それから血祭りってとこかねえ。
[吼えるもののけ、一瞥笑い]
[昨夜のいざこざからずっと濃紺に黒滲みた着物袴姿で。
ぺたりぺたり]
誰そ、我の下駄を見かけなかったか。
裸足の方がこの姿では動き易いとはいえ…。
そうそう。
ヒトも鬼も参らすと云う木天蓼酒なるものを手に入れて来たぞ。
猫の反応、今宵もまた楽しみよの。
[くつくつ。提げた瓢箪を掲げその場の面々に告げ]
やれやれ、変わらず寝こけて居るか。
とわの夢でも見ておるのかのう。
[桜埋まる有塵の姿に肩竦め。
こちらも瓢箪ひとつ置く。瓢箪いくつも抱えて薄墨桜は寝息を立てるか]
さてはて、無事逢えたからそれで良かろう。
[足元瓢箪置いて、
小脇に帯でまとめた黒浴衣。開耶へと放る]
[取り囲む異形] [百鬼夜行の装い] [隻眼の碧に映し]
[ぐるり眺めて] [隻眼眇め] [さらり白い手] [常葉かきあげ]
群れにゃ動けぬ小鬼風情がアタシに喧嘩売ろうたァ好い度胸だネェ。
[コロコロコロリ] [軽やかな笑い声] [開始の合図となりて]
[飛び掛る群れ] [ひゅうい] [白い手振り] [木へと絡めた糸引き]
ほゥら、こっちだヨゥ。
[迫る飛礫] [番傘向けて] [弾き返し] [蜘蛛の巣綺羅リ]
[剥がれ落ち] [群がる異形] [絡め取り] [枝の上腰掛け]
もう仕舞いかィ、詰まらないネェ。
お。常葉に開耶か。青鬼もおる。
赤鬼もまた緋にまみれて現れるか…。
[くん、と空気のにおいを嗅げばそこかしこから
濃厚な血の匂い。其れもまた一興とばかりに上機嫌]
同族のものでも血が騒ぐものなのだな。
なあ、垂氷?其方も味をしめたろう。
ふふふ。火影も嫉妬するない。すぐにでも血の宴が始まろうて。
今宵も宴か。血の宴にならぬとよいな?
[本心か否か。くつくつ...嗤い声を洩らす]
あぁ、そんな吼えてくれんなよ。
俺ぁ売られた喧嘩は高く買うのさ。
[足元千切れた腕足手
緋色の鬼は襷掛け 袖を捲って腕を組む]
ははは、
これじゃあまるで俺が狩る者みたいじゃねえか。
そんな事を琥珀の兄ちゃんが謂ってたねぇ。
人かアヤカシか。
俺ぁ愉しけりゃどっちでもいいのさあ。
[矢張り笑って歩き出す。
吼える声は聞こえない。]
[もがく程] [絡まる糸] [異形達締め上げ]
[はたり] [苺色の鼻緒揺らし] [煙管咥えて眺め]
嗚呼、嗚呼、足りないヨゥ。
こンなンじゃ全然足りないヨゥ。
[ぺたぺたり、裸足の音に百鬼かと向けば万次の姿]
見て居らぬなぁ。
お前さんの下駄は足でも生やしてどっかいってしもうたか?
ほほう、昨夜のまたたびといい何処で見つけてくるのか。
面白い酒じゃが参ってしまっては難儀ようのう。
[からり笑う]
[裸の足の音、万次郎見て]
さて、知らぬな。
誰ぞに履かれて往ってしもうたか?
[酒の言は聞きもせず]
[とわは永久と聞こえるば、僅か目線は逸れようか。
投げらる黒に反応遅れ、些か危く受け取ろう]
やれ…では着替えてくるか。
人の姿なれば見られて構うものでもないが、
厭という者も在るようだしな。
[浴衣小脇に泉に消え]
[暫しの後に黒に変わりて現れる。
手足も茶浴衣も洗うたか、しとり濃い茶より雫落つ]
[羽螺羽螺 はらはら 緋羅李
花びら舞い落ちる櫻の根元に腰を下ろし、傍観]
いつかは散るものと定められているが。
ヒトも何時かは散り果てるものの、
我ら異形は何時散るとも判らぬ存在。
…これは罪か?
[傍らの瓢箪から、黒杯へ手酌で一杯。
今迄と香の違う酒に目を細め。すうと喉へ流し込む]
[ギリギリ] [絡まる糸] [仕舞いに全て] [締め上げて]
[くぃ] [白の手引けば] [月夜に綺羅リ] [異形肉片と化す]
おや、喰児じゃないかィ。
今宵もまた随分と好い形だネェ。
[木の枝腰掛け] [番傘まわし] [ぽたあり] [紅い雨降らせ]
[煙管片手に] [紫煙吐きつ] [赤鬼見下ろし] [ニィと笑む]
[青鬼の返答、琥珀の返答。どちらも否と]
さすれば、どこかの雑鬼が盗んでいったか。
惜しくはない故、見つからねばそれで良いのだ。
[青鬼には笑い声で応え]
我、見る者也。故に、どこかで尻尾をつかまねばならぬのよ。
今宵は、誰ぞに潰れてもらわねばなあ。
[偽なのか真なのか、其れさえぼかし]
[取り落としかける開耶見て、首捻るも。
着替え見送り、戻る姿。それとなく距離置き、腰を下ろす]
地の。先ほどなんぞ考え事でもしておったか。
[片膝ついて、はらひらり。流れる花びら目を細め問う
万次の呟き聞こえれば、其方へも問いひとつ]
罪とは、物の怪の散り際わからぬ時か?
それともヒトの如く散る桜か。
[張り巡らされた蜘蛛の糸
滴る雫は玉のよう]
おう、碧。
そっちこそ随分派手にやってるじゃねぇか。
そいつが碧の獲物かい。
綺麗な蜘蛛も居たもんだぜえ。
[見上げてにやり笑み浮かべ
闇夜に金が鋭く光る]
散り際判らぬ物の怪というモノよ。
凡てに散り際有るというのに、我らにはどうだ?
何時とも判らぬ、勝負の敗走にかかっておる。
しかして。
この"鬼ごっこ"で幾つかの物の怪は散り果てような。
さて、青鬼も此の酒を一献、如何か?
味はなかなか。一応の保証はしよう。
[瓢箪を軽く掲げてみせ]
[くるうり] [番傘ひと巻き] [蜘蛛の巣戻り]
[かぁん] [木の枝叩く] [煙管の音] [響くか]
売られた喧嘩ァ買わないとネェ。
寝た子は起きぬ侭なれば獲物と謂やァ獲物かィ。
[金色の鋭き光] [見詰め] [弧を描く碧]
[ひらり] [舞い降り] [しゃなりしゃなり歩み寄り]
そろそろ酒宴も始まろうさァ。
開那の兄さんが酒持って来て呉れるってェ謂ってたし喰児も往くかえ?
[響いた音に眼を細め]
あぁ、そいつぁ同感だ。
より高く買い付けてやれ。
まだ隠し玉があるのかい、是非見て見たいねぇ。
[歩み寄った常盤色、見下ろしにいと笑み浮かべ]
ほおう、琥珀のがねえ。
どういう風の吹き回しか知るねぇが、ありがてぇな。
勿論行くさぁ。
さて、どこぞで下駄でも濡らしてしもうたのではないか。
[くつり笑って]
まるで散り際わかるようなもの云いよ。
我らには我らの裁量如何で散り際あろうて。
何処より匂うこの血の香がなによりの証。
それが仮令鬼ごっこであろうても、な。
[万次の掲げる瓢箪に袂から杯取り出し差し出す]
見るとはなんぞ、酔いつぶれた艶でも見るか。
それとも己の尻尾でも見ると云うのかのう?
[濡れた茶は置き息吐いて。
青司に向けたる万次郎の言に瞬いた]
…見る者?
やれ、其方が見る者だと申すのか?
[其方に気を取られたか、元より気にしておらぬのか。
距離置く青司にそれを問うもなく]
先程?
…嗚呼、大した事で無し、気にするな。
[腰は下ろすが杯持たず。
桜との声に顔上げて]
[青鬼の差し出す盃に
とくとく、こぽり
と酒を注いで遣り。
琥珀からも青からも向けられる問いかけ]
何時かは話さねばと思っておったが…
狩るモノは、正体を見破られることを嫌うでな。
今迄謂わずにいただけのこと。
そう。其方等の云う通り。
我が、狩るモノか否かを見分ける者ぞ。
そして既に一人は、狩るモノでないと判っておる。
[琥珀の瞳と青鬼を見比べて]
其方等。此の話、信ずるか?
さて、詰まらぬ喧嘩を買うより甘露な魂でも探そうかネェ。
目を醒ますにゃ未だ未だ足りぬと謂うのさァ。
起きりゃ厭でも目にするだろうけどネェ。
[見上げる赤鬼] [浮かべる笑み] [ニィと笑み返し]
[一拍金色見詰め] [一つ頷いて] [カラコロ歩き始め]
なンぞ、昨日の桜の侘びらしいヨゥ。
永久も刹那も空も桜もどンだけのもンかネェ。
[呟き] [歩きながら] [番傘ずらし] [月仰ぎ]
[袖は口元][目を細め]
[万次郎を見据えつつ]
見る者か――汝れは事前に判るものかえ?
結構結構……事前に見えるは羨ましい。
[袖を外してくすりと笑めば][開耶に向けて]
汝れは妾と水でも飲むかえ?
左様か。それならば……
[顔上げる開耶の様子に、ゆると瞬き逡巡して]
のう、開耶。
先ほど己と有塵で少々言葉遊びをしておった所よ。
桜咲けば散る儚さよ。
人の夢と書いてはかないならば、
花の夢と書いてなんと読むかと。
開耶ならどう読むか。
開那は酒宴は好きでないと云ったな?
まだ、そう人は集っておらぬ。
一献如何か。
[瓢箪口を開那へ向けて、今迄の話などなかったかのように
清々しく笑みを浮かべた]
はあん、寝起きが悪いのかねえ。
甘露の魂か、難題を吹っかけるねぇ。
其の分死合いは見事なんだろうなあ。
[くつくつ笑いで歩みを進め]
櫻ってあの一面の紅かい?
あれはあれでよかったがなぁ。
さぁねえ。どいつも背中合わせさ。
[月は金色瞳と同じ 女の肌を青々照らす。]
[立てる片膝、肘置いて。
つぃと唇に指滑らし]
さて、狩る者が偽り言うて出るも有る。
なれば容易く信ずるはできぬ。
が、どちらであろうと幾つかわかることもあろう。
其方の言う、狩る者で無きは誰ぞ?
[白の問い掛け、判らぬ部分も多く有り。笑顔消む]
事前にとは…?
さて、我の他に視る者がいるのなら…
それは喰ってはじめて判る、そういう力なのだろうな?
[確認込めて白を見据え。盃を地に置く
其の手で顎を撫で、思案げに]
そも、我は我の力のみ知る。
他の者の力に、我は関知せぬ故……
そのような者が在るとは知らなんだ。
[瓢箪も盃も置いたまま。口元を覆い深く思案に沈む――。]
[満ちる杯。口付け
くらり、酔いしれる。微か眉寄せ]
――ふむ。
半々よの。過信は危うき、けれど目を閉じるも愚か。
さてはて、面白い事に違いないが、
信じるかと問われればまだ話半も聞いて居らぬゆえ判らぬわ。
誰それが狩人であると聞いたほうがまだ話は早いのう。
やれ、水か。
貰うと言いたいところだが、我は杯は持っておらぬ。
[さてどうするかと唇撫で]
[青の問う声瞬いて。
返す言之葉、見付かり難く]
…せつな。
[ひとつ呟きふると払い。
茶の髪より雫が散り]
[万次郎の手、瓢箪ひとつ。
向けらる口に息吐いて]
杯無き以上は受けられぬ。
誰ぞ杯を貸してくれるというなれば一献くらいは貰おうか。
[思案から浮かび上がれば、琥珀色の瞳がこちらを]
……其れは、我も考えていた。
信ずるか否かについては、其方等に任せよう。
只、信を得るための労は惜しまぬつもりよ。
其方、畏れもせずよく訊くこと。
[くつくつと思わず笑い声零した]
月の君…―――遥月。彼奴は、狩るモノではない。
左様ですね。開耶様……。
狩る者が偽りを言うか、それとも万次郎様が本物の「見る者」なのか……。すぐおいそれと信用することはできませぬが……。
伺う価値はあるかと存じます。
さァてネェ。
魂無いと眼も醒まさないンじゃ探すより他無いヨゥ。
アタシの頭ン中ァ鬼ごっこでいっぱいさァ。
[赤鬼の眸と同じ色] [月を仰ぎつ] [カラコロカラリ]
アタシもそう謂ったンだけどさァ。
背中合わせに表と裏かィ、如何なンかネェ。
楽しければアタシァなンでも好いヨゥ。
[カラリ] [コロリ] [やがて見えるは始まった宴会の場]
………わたくし、ですか。
[それだけ告げて、万次郎の目を見つめる。]
確かにわたくしは、狩る者ではございません。ですが、それを信頼するか否かは……他の皆様次第、でしょう……。
[視線を落とし、吐息をひとつ。]
……貴方様が本物の「見る者」か否かの判断は未だつきかねますが、……承知致しました。
[あぐら。袂で腕を組み。
どうやら異種の酒にあてられかけた青鬼に
口の端を持ち上げた]
もう口にしてしまったことは仕方がないが。
我が思うに、狩るモノが見つかる迄暫し黙ろうかと思うよ。
如何か、其方等の考えも聞かせてもらえようか。
月の君の件に関しては…内々にしてもらえると助かる。
[ぽつりぽつり。其の割に長く言葉を選びながら話終えた]
では、このまま一口試してみてはどうか。
試す価値はあるものと、我は見る。
そこの…青鬼も、味わっているようだしな。
そうれ。
[栓をした瓢箪を開那に放り]
[声に見遣れば遥月]
容易く信ずる者が在るとも思えぬが。
[それと同時に遥月の名が出でて]
遥月は妖というか。
やれ、難しきことよ。
畏れていても何も変わるまい。
早々に狩る者見付け主に捧ぐのみ。
信ずるかは暫し置こう。
未だ何もわかりはせぬ。
[くつくつ笑う万次郎。
見遣る琥珀は思案色]
そうかぃ。
どっかから見繕ってこねぇとなあ。
鬼ごっこが楽しみで仕方ねぇさ。
[闇夜見えてくる櫻、
アヤカシたちの集う場所。]
義理堅いこったぁ。
はは、愉しけりゃなあ。
そりゃそうだ。俺もそう思うぜえ。
左様か。月の君がそう云うてくれて安心した。
我の力は真か偽か―――そう思った時もあった故。
ただ、今の話は他言無用。
宴の席でも聞かれぬ限り口にするでないぞ。
[誰にともなく。低く、低く。]
[万次郎の視線][くすり笑ってさらりと流し]
そうじゃな――
わらわも事前に判れば無用な死合いはせずにすむと思うたまで。
――されど。
[笑みは深く]
信ずるかどうかは汝れが死したら自分で決めよう。
[曖昧な答え][薄隅に作ってやった杯同様]
[自らかたどり型を成す]
たまには酔うてみるといい。
[差し出す杯][開耶に渡し]
[ふるり、飛ぶ雫。一粒腕焼き
杯持つ手がぴくりと動く]
…開耶はせつなと読むか。
有塵はとわと読み、己はふゆと読む。
三者三様おもしろき事よ。
ん、無いのか己の杯貸しても良いぞ。
己は直に飲むから良い。
[瓢箪投げる万次見遣り。
次いで遥月見て視線戻し]
ふむ、内内とな。良いが殆ど聞いておろう。
まあ良い、そのようにと云うなればそうしよう。
一度口にすればさてはて如何かな。
黙る内に消されるなれば、黙る時間は無駄のように思えるが。
内々にか。
…やれ、この中に狩る者在ればどうするか。
[放らる瓢箪受け取りて。
逡巡僅か栓開ける]
[すれば白水生み出す水の杯]
やれ…すまぬな。
[受け取り注ぐ瓢箪酒。
ひとつ注ぐば瓢箪は万次郎に投げ返し]
[再び思案しつつ]
黙る内に消さらば…。
それは…そうな。確かに無駄な時間よ。
ふぅむ。…其方の言葉、一考すべきか。
[瓢箪はどこへ]
…我にも、酒を。木天蓼酒でなくともよい。
なんでもよいのだ。
狩るモノ、追うモノが確と在ることが判った以上
宴は楽しまなくてはなあ。
[盃を手にとって、酒をさがし視線彷徨わせる]
本気の鬼ごっこまでもう少しさァ。
[ひらはら舞う] [薄墨桜の花弁] [隻眼の碧潤み]
誰も彼も小難しく考え過ぎだヨゥ。
アタシァ莫迦だからさっぱり判らないのにさァ。
[カラリ] [コロリ] [途切れ途切れの言の葉]
[酒宴の席へ着き] [周囲を見回し] [小首傾げ]
なンぞ、内緒話かえ?
[戻ってきた瓢箪から手酌で盃満たし
喉鳴らし、旨そうに流し込む。
鼻の良い者からすれば、木天蓼の香りは明らかか]
[視線を白へ移すと]
信ずるかどうかは我が死した時に…。
それは何ぞ、どのような意味を含む言か?
それとも、戯れか。
[盃を手元で弄ぶ]
[目をそっと開け、ふっと俯く。]
青司様のおっしゃる通り……。
もし仮に、狩人を見つけ出す前に、万次郎様が討たれたらどうなりましょう……?正直、恐ろしさを感じたのは確かです。
何故、わたくしが妖しであるという情報のみをわたくし達に差し出し、あとは暫く黙ろうとしかのか…。そして、何故「内々に」とされたのか……。真意がはかりかねます。
[雫が青焼くも気付かずに。
ゆぅるり杯廻し酒廻し]
ふゆか。
青司は何故ふゆと読む?
[差し出し戻る杯見遣り、水杯口付け]
やれ、気持ちだけ貰っておこう。
[酔わぬわけでは無いが酔い難い。
なれどこの酒は]
……何ぞ、これは…
[くらり僅かに意識揺れ]
[白の言葉にちらと視線投げ。
月へは己が口元に人差し指添える]
計れては真意も何もなかろうて。
やれやれ、これでは何処まで内々かのう。
[現れる常葉と赤色。万次へと肩を竦める]
万次から聞けば良い。
[青からまわった只の酒で盃を満たし舐めるように味わいながら]
月の君。
少々誤解があるようだな?
内々にというのは、我の存在ならずも
其方に危険が及ぶと考えた故。
あやかしであると証明されたなら、狩るモノ達も容赦はすまい。
[一息に述べれば、乾いた喉を酒で潤し。一息ついて]
[杯置いて、酒満たし。
ひとつ煽れば開耶へと]
花は春を待つのだろうて。
春の夢見て眠る季節はふゆよ。
[くらり酔い回る姿にからり笑う
己もゆらゆら揺れるは酔いのせいか]
かっかっか、これはさすがに効くのう。
おう、なんだい皆して辛気臭ぇ顔してよ。
[ふと香った酒の香に]
ははあ、変わった酒持って来てるんだぁな。
随分強そうじゃねえか。
真にな…此の宴では内々もなにも。
[嘆息とともに洩れる低い笑い声]
内緒話だ、常葉の君。
名を明かさぬ其方には、関係のないことよ。
[しれっと躱し、青から受け取った瓢箪を放り返す]
[青司から口許を制され、ピクリと紅の唇を動かす。]
……………。
[万次郎が言葉を発す。
その言葉に視線をゆるりと向け、青司の指に唇に触れられたまま言葉を紡ぐ。]
嗚呼、これも疑心暗鬼と申しましょうか……
貴方様がわたくしを楯にして、ご自分だけが生き残ろうかと……疑念すら及んでしまいました。
わたくしの「命」を守る為、ですか……。
なンだィ、辛気臭い顔並べちまってさァ。
どうせ酒飲むンならもう少し楽しそうな顔くらいしたら如何かえ?
[周囲の言葉も聞こえつ] [青鬼の言葉] [万次郎見遣り]
アタシの名はァ高くってネェ。
呪(しゅ)に囚われるなァ性(しょう)に合わなくってさァ。
別段に訊かずも構わないけどネェ。
内緒話ねぇ。
[眼を細めてにいと笑う]
ああ、万次郎の獲物は目ぇ覚ましたかい?
それともまだ寝ちまってるのかい?
一回死合ってみてぇもんだけどなぁ。
おいおい、それとこれで二口ばかりで酔うておるのに
またそれ遣すか万次よ。
よほど己を潰したいようだな。かっかっか。
[空の杯持つまま、瓢箪受け取り損ね胡坐に落ちかけ慌てて拾う。
そのままひとくち煽り、相棒へと投げ渡す]
よう相棒、お前さんでもこいつで潰れるかな?
さて、意味なぞ無いが。
ただ疑問に思うたことを問うたまで。
[赤隻眼、常盤。
二つの影が戻るを見れば細かに語れずそれに留め]
[酒の言に額押さえて]
木天蓼か…やれ、全く…
[は、と吐く呼気も乱るるか]
成程、なればふゆと見るも道理か。
[返しはするが酔い早く。
零さぬ前にと杯空ける]
[杯を置かぬは既に頭も酒が回ったか]
月の君よ。
主様からの命なのだ…
アヤカシらの存続を最優先し狩るモノを排せよ
とな。
[今度は木天蓼酒。
もう其の体は木天蓼の香にすっかり包まれて――
それでもなお、盃を満たし揺る緩と口にする]
[ぐびり][水飲み][万次をみやり]
魂は嘘をつかぬ――それだけじゃ。
わらわが先に逝くやもしれぬが。
[向ける笑みは妖艶で]
[染まった袖で口元を拭う][赤と碧が来る頃には続きの水を飲んでいようか]
おう、相棒。先にやってるな?
[瓢箪受け取り振り笑い]
俺ぁそうそう潰れねぇぜ。
っとお、こいつぁ木天蓼酒かい。
また猫の好きそうなモンだなぁ。
はァん、なンとなくは想像ついたヨゥ。
万次郎の兄さんが遥月の兄さんを妖と謂ったかえ?
そんな異形の能力があるなァ、承知さァ。
司棋の兄さんか夜斗が話を聴いてりゃ後で確認するかネェ。
ほう。
其の呪を賜るには如何すればよろしいか、常葉の姫?
[盃片手に、芝居がかって――其れもつかの間]
訊かぬでよいのなら、こちらも無理に名は問わぬ。
狩るモノを排したいと思うのならば、名を明かすが吉だがな。
[ちびり、ちびり...
飲み方を心得たか、木天蓼の香りをまき散らしながら
盃の中身を減らしてゆき]
おう相棒。さてはて、どれがどの瓢箪だったか。
どうにも酔いが回ったらしくてのう。
呑めばただの酒かそうでないか区別つこうぞ。
[からから笑いに反して据わり目、赤鬼へと返す]
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