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[祭の喧騒の中。
――妖しの気配。]
……おやおや。「人ならざるもの」がこちらにも。揺らめく色がひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ……。
美しい色。儚き色。
揺れる、揺れる……。
[下駄を微かに鳴らし、吸い込まれるように「人ならざる影」に近づいてゆく。]
[「呑ませてやろうか」の一言に、小さく笑い]
それは親切心でしょうか?それとも何か下心でも?
あったとしても何も差し上げられませんが。
お付き合いならいたしましょう。
興味がないとはいいませぬ。
[紅い男の言葉] [長い睫毛瞬き] [また] [コロコロコロリ]
アタシは今しか判らぬから、褒めて呉れるンなら何でも好いヨゥ。
司棋の兄さんはアタシの酒なら呑んで呉れるかえ?
[チャプリ] [瓢箪揺らし] [華揺らし] [見上げる少年]
[犬に向き直り] [耳の後ろを撫ぜ] [犬より先に眼を細め]
佳ゥし、佳し。
夜斗は可愛いネェ。
[伸べられる手] [顔を上げ] [浮かぶ笑みは艶やか]
[緩く首振り] [薫る白粉] [桜の色香は際立つばかり]
アタシは刹那に遊ぶ者、永劫の時は判らないヨゥ。
こうして司棋の兄さんが、次逢う時もアタシを飾って呉れりゃ好い。
其れなら華は綺麗に咲き誇るさァ。
[くふん、と真理に懐く夜斗。ふと夜斗が顔を上げる。
つられて見ればまた一人の男性。
否、自分らと同じモノというべきか]
おや…。また新しいお人が。
どうも、今晩は皆月に呼ばれたのか、ここまで集まるとは。
下心なんざ在るわきゃねぇって。
この俺の親切心が分からないたぁ悲しいねぇ。
[言葉裏腹笑い笑い。]
別になんも欲しかねぇさ、
旨い酒が呑めればそれでいい。
酔うのはなかなか楽しいぜ。
血肉にゃない味わいがあるぜ。
[杯飲み干し舌なめずりで
仰ぐ空に雪洞ゆらり。]
そうかい、そうかい。
刹那に生きる常盤色ってか。
そんなら遠慮なく褒めるとするか。
いいね、其の華綺麗じゃねぇか。
なかなか小洒落た術だねぇ。
[澄んだ酒をもう一杯。
すいと少年に差し出した。
そのまま眼だけを動かして、
新たな影にまた笑う。]
おやおや賑やかだなや。
艶やかな御仁が増えたとみたね。
[結城紬の袖をついと上げ、唇を隠すような仕草を見せる。紅を纏った視線をそっと動かす。]
ええ……
全ては美しいこの月のせい……。
罪深きは、月の光。
[袖の奥で、微かに笑った。]
[返された言葉に苦笑しつつ]
それは失礼を。
しかし釘を刺さねば食われてしまいそうな雰囲気でしょうよ。酒もそう悪くはないのでしょうが。
ではお相手しましょう。こちらも随分とたしなまれる口のようですし。
[差し出された杯を受け取り、一口だけ。度は低いだろうが焼けるような感触にやや柳眉を顰め]
けほ…。
[酒に噎せる赤髪の少年を見て、遥月は目を細める。]
……おやおや。
いけませんよ、御酒で無理をなされては。
もっとゆっくり、一気に呑まずに、そうっと舌に触れるだけがよろしゅうございましょう……
同族喰いは趣味じゃねぇよ。
お好みならやらんでもないがな。
[冗談めかして謂った後
咽る様子に眼を見張る]
おいおい兄ちゃん大丈夫かよ。
まぁ慣れないならしゃーねぇか。
[からから笑って自らも
杯を手に呷って干して]
酒と人数集まってェ、酒盛りせぬ道理が無いネェ。
[夜斗の顔あげる気配] [遊螺り] [立ち上がる]
[手に持つ瓢箪] [栓抜いて] [クィと一口] [喉へ]
[コロコロコロリ] [軽やかな笑い声] [紅い男へ]
褒めるはアタシじゃ無くて其処在る司棋の兄さんの術かえ?
どうせならアタシを褒めてお呉れヨゥ。
[碧はすぃと現われたる男へ] [仕草にか] [言葉にか]
[碧は弧を描き] [薔薇色の唇] [ニィと吊り上がるか]
厭だヨゥ、兄さん。
御月さんを罪作りにしてるなァ、兄さんじゃないかえ?
[酒に咽てからかわれ。
夜斗も呆れたように...を見上げ。
涙目を隠せずにとも反論だけは]
な、慣れれば大丈夫…。
今はこれだけで…。
[飲む度に眉を顰めながらも何とか一杯]
[常盤色の女に、ふっと視線を流す。]
いいえ……。
月が無ければ、わたくしも貴女もこの夜をどう過ごしていたでしょう……?
美しくも罪深き月に心惹かれた故に、わたくし達は偶然出逢った。……それで良いではございませんか。
[互い違いの眼] [潤むのを覗き] [長い睫毛瞬く]
[少年見詰め] [伸ばす白の手] [赤の髪そぅと梳こうと]
酒は無理して呑むもンじゃ無いヨゥ。
桜の咲き乱れる頃にはきっと酒も旨いさァ。
―――酒なくてなんの己が桜かなってネェ。
はてさて、
男か女かはどうでもいいか。
月の光に罪を問う前にまぁアンタも一杯どうだい。
[結城紬のあやかしに
杯傾けその後に、常盤色の女が強請る]
ああ、ああこりゃ悪かった。
綺麗だぜ、常盤の姉さん?
ってのも味気ないやな。
この酒の席に免じて名前教えちゃくれねぇかい。
[右手で掲げる杯に、
女と華を映しながら。]
[ひらり][はらり]
[藍の男に描かれた] [黒い蝶は傍に有り]
何れ消える身であるならば――清い処へ行くが良い。
[浮き出る水玉] [やんわり蝶を包み込み]
[揺れる水晶 其の中で] [儚く消える黒き蝶]
汝れも何れは消えるのかえ?
[華に手を添え一撫でし、まだ在ることに薄く笑む。]
華を呉れた少年は――確か司棋と言うておったか。
[くすり][くすくす]
[カラリコロリと歩き出す]
おうおう頑張ったな。
まぁ慣れりゃ旨く感じらぁ。
[涙目、咳き込む少年の
頭をぽんと撫でてやる]
桜が咲くまでにちぃとずつ呑みゃぁな。
[常盤色を流し見た]
[髪と気配に深い赤を纏った男から盃を受け、微かに唇を緩める。]
……ふふ。
御酒、いただきましょう……
[両手で受けた盃を紅色の唇につけ、そっと傾ける。透明な液が唇から舌を通り、喉の入口から身体の奥へ、ゆっくりと降りてゆく。]
ふぅ。美味しゅうございます……
[先ほどまで温かな肌をなぞっていた舌の上に、冷えた液の心地を馴染ませる。]
[遥月の言葉] [聴けば一拍] [間を置いて] [コロコロリ]
兄さんがそう言うンなら兄さんにはそうなんだろうネェ。
アタシにとっちゃ御月さんは其処に在るだけ照らすだけ。
綺麗なだけで罪も無ければ功も無いと言うお話さァ。
[強請れば零れる] [褒め言葉] [喰児にニィと笑み]
有難う、兄さんも素敵だヨゥ。
なんて…アタシァ社交辞令は欲しく無い贅沢者さァ。
[チャプリ] [傾ける瓢箪] [白い喉揺れ]
[向き直り] [白い指] [薔薇色の唇拭う]
名前かえ?
呪(しゅ)を欲しがるは人も異形も変わらぬかァ。
でも兄さん、名を尋ねる時は自ら名乗るが呪を求める人の礼儀。
人と同じく呪を求めるンなら兄さんの名も教えて呉れるかえ?
[白い手に髪を梳かれ、一瞬反応を示したけども
ゆっくり眼を閉じてそれに応え。
夜斗は酒に当てられたのか、...の傍らで眠りに落ち]
慣れるのにも時間は必要でしょうか…。
ならもう少しでも頂きたく。
桜の時まで間もないでしょうし…。
折角お会いできた故、早く慣れたく思います…。
[大きな手でも撫でられて少し溜息を]
子供でもあるまいに…。
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